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原著
文献概要
要約 22歳,女性.発症は15歳で瘙痒性小皮疹として気付く.漸次増大.初診時右乳暈自体の外側より下部にかけ,乳頭に接しそのほぼ半周を囲む勾玉状の蚕豆大,境界鮮明,軽度隆起性,黒褐色の局面で,軽度の鱗屑,痂皮を付し,幾分硬く触れ湿性の感触がある.周囲に炎症症状なく自覚症もない.組織学的には一見乾癬様で肥大,延長した表皮索はやや大型のグリコーゲンに富む明るい細胞の局面で占められ,病巣の境界は不鮮明ではあつたが本症と診断,全切除後植皮術施行,10カ月後残存乳暈部に再発をみたので,一見正常にみえる乳暈をもすべて再発巣と共に切除,植皮術を施行.組織学的には正常にみえた乳暈部にも表皮索内に初期変化がみられ,病変の顕症化の過程がある程度推測された.また本例の病変は右乳暈のみに限られ,組織学的に汗管との関係も考慮されたことなどから,本症としては特異例ではあろうが,その本態は腫瘍性あるいは母斑性の性格を示すものと考えた.
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