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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科30巻11号

1976年11月発行

雑誌目次

図譜・409

尋常性狼瘡

著者: 蔵本陽子 ,   三浦隆 ,   加藤祐二

ページ範囲:P.850 - P.851

患者 33歳,女子
 家族歴・既往歴特記することはない.

原著

B型ウイルス性肝炎の初期症状としてみられた非定型的蕁麻疹様紅斑

著者: 斉藤隆三 ,   山手哲明 ,   新井春枝 ,   柏崎禎夫

ページ範囲:P.853 - P.857

要約 HB抗原陽性肝炎,すなわちB型ウイルス性肝炎の初期症状として発熱,関節痛,一過性の発疹をみることがあり,これをSerum-sickness-like syndromeと呼ぶことがある.これはHB抗原に対する抗体と補体の関与によるimmune complexによるものと考えられ,黄疸の出現する前に起る現象である.
われわれは,慢性関節リウマチで通院加療中に,急速に関節痛の消褪と共に全身倦怠感と発熱を伴い,ほぼ全身に蕁麻疹様紅斑の出現をみた30歳主婦を診察する機会を得た.皮疹は瘙痒感が強く日毎に形,大きさに変化があり,下肢では出血性となるなど非定型的な蕁麻疹様紅斑であつた.約5日間の経過で皮疹は消褪し,その後に黄疸の出現,肝機能検査の異常,HB抗原陽性所見を得,B型肝炎と診断した.ウイルス性肝炎に伴う発疹について若干の文献的考察を行つた.

SLEの肢端壊疽とレセルピン動注療法

著者: 川津友子 ,   秋元隆道

ページ範囲:P.859 - P.863

 SLEの経過中に指端壊疽を生じた36歳と35歳の女性2例を報告した.治療としては十分量の副腎皮質ホルモン剤で原病のコントロールを行い,壊疽は保存的に治療し,ミイラ化した後に断端形成術を行うのが最良と考える.
 またSLEの肢端壊疽の予防には,原病のコントロールに重点をおくと共に,レイノー症状の強い症例にはレセルピン動注療法を併用し,持続性の有痛性紫藍色斑や痂皮様黒褐色斑が認められたら,ただちに大量の副腎皮質ホルモン剤の投与にふみきるのがよいと考える.

硬化性萎縮性苔癬から発生したと思われる頭部有棘細胞癌例

著者: 松原基夫 ,   大島良夫 ,   冲田和男

ページ範囲:P.865 - P.868

 72歳の男の後頭部に有棘細胞癌と連続して硬化性萎縮性苔癬を,また左大腿部に老人性角化症(Bowenoid型)を併発した症例を経験したが,このように頭部に有棘細胞癌と硬化性萎縮性苔癬とが併発した報告例はまだ見当らない.

Bowen Carcinomaの1例

著者: 梅田定

ページ範囲:P.869 - P.872

 92歳男子の頬部の腫瘍を病理組織的に検索し,臨床的にも病理組織学的にも一部老人性角化腫を思わす所見がみられるが,大部分はBowen病様であるので,Bowen carci—nomaとし,若干の文献的考察を加え報告した.患者は全切除後,約1年間,全く異常は認められない.

最近のリール黒皮症における原因物質

著者: 高橋洋子 ,   須貝哲郎 ,   高木喬

ページ範囲:P.873 - P.878

 最近2年間におけるリール黒皮症27例について,持参化粧品,タール系色素,香料系,パラベン類およびラノリン系のパッチおよび光パッチテストを施行し,タール系色素,特に赤色219号に起因するものの多いことを認めた.光パッチテスト陽性はタール系色素ないし色材化粧品で30%程度,香料系で14.3%にすぎず,リール黒皮症の発生に紫外線の関与することは意外に少ないと考えられる.なお,最近のリール黒皮症の臨床的特徴についても述べた.

亜鉛内服が奏効した腸性肢端皮膚炎例について—症例追加

著者: 森嶋隆文 ,   八木茂 ,   遠藤幹夫

ページ範囲:P.879 - P.885

 4歳時以来,腸性肢端皮膚炎の診断のもとにキノホルム製剤で加療するも寛解・増悪を繰返していた20歳,女性例に亜鉛療法を試みて著効をえた.そこで,1年間にわたる治療経過の概要を,殊に硫酸亜鉛内服の量・期間と臨床像・検査成績との相関・必須金属間との拮抗などに主眼をおいて記した.毛色異常は本症の1症状であることを確認するとともに,休薬によつて血清亜鉛値が20μg/dl以下に下降した時点から約1カ月後に再発がみられること,ならびに胃腸障害や血清鉄の低下を除けば重篤な副作用はみられないことを知つた.

扁平苔癬様薬疹—3例の経験

著者: 鏑木公夫 ,   神田行雄 ,   石氏澄子 ,   安達一彦 ,   伊藤宏士

ページ範囲:P.887 - P.891

 高血圧症にて加療中に生じた扁平苔癬様薬疹3例について報告した.原因薬剤と思われるものは,アプラクタン,エンボールであつた.臨床像は扁平苔癬の汎発型あるいは播種型を呈し,色素沈着が高度であつた.組織学的にはほぼ扁平苔癬の像を示した.皮疹の拡大が4カ月以内に急速に起つたこと,色素沈着が高度であること,老人で汎発型であつたので,汎発性色素性扁平苔癬との関連性について検討してみた.

転移性皮膚癌の検討—発生部位ならびに予後について

著者: 田中雅祐 ,   居村洋 ,   山本忠利 ,   武田克之 ,   桑原章 ,   木下浩彰

ページ範囲:P.893 - P.898

 内臓癌から皮膚転移した19症例について転移部位と予後を中心に臨床病理学的に検討した.
 原発巣は乳癌が最も多く,続いて肺,胃腸癌であり,転移巣は原発腫瘍に近接する皮膚に好発した.なお皮膚転移巣が出現した患者の予後は悪く,生存期間は平均9.5カ月であり,ほとんどが2年以内に死亡した.
 原発巣手術症例の多く(71%)で手術瘢痕部内またはその周囲の皮膚に転移巣が生じたことから,皮膚転移の機序については摘除腫瘍の残存,手術操作による播種のほか,肉芽に転移が形成きれやすいことも一因と考えた.したがつて肉芽形成が旺盛である術後5〜10日頃に制癌剤を投与することが内臓癌からの皮膚転移の予防に役立つものと推測した.

女子外陰部に発生した基底細胞上皮腫—組織学的にIntraepidermal Epithelioma像を呈した1例

著者: 森下玲子

ページ範囲:P.899 - P.903

 基底細胞上皮腫は,大部分が顔面に集中し,躯幹,四肢,外陰部および肛囲は稀な発生部位である.われわれは外陰部に発生した本症を経験したので報告した.
 71歳,主婦.約2年前に右大陰唇に発症し拇指頭大の腫瘤となつた,その組織学的所見ではintraepidermal epitheliomaの像を呈し,その好発部位ではないが,eccrine poroma, eccr—ine poroepitheliomaとの鑑別が必要であつた.

皮膚の細網肉腫—本邦報告92例の統計的観察

著者: 吉江治彦

ページ範囲:P.905 - P.913

 皮膚原発細網肉腫の2症例を報告,更に皮膚に細網肉腫の出現をみた本邦例を文献より集計,臨床経過により次の5型に分類した.皮膚初発Ⅰ型(皮膚腫瘍単発),皮膚初発Ⅱ型(皮膚腫瘍多発),皮膚初発Ⅲ型(多発性皮膚腫瘍とリンパ節腫が同時に出現),リンパ節初発,その他臓器初発.以上の各病型をリンパ性細網肉腫(リンパ節原発細網肉腫)と比較検討した.皮膚初発I型は従来の皮膚原発細網肉腫単中心型に相当し,年齢,性,腫瘍の進展形式,白血化,予後などがリンパ性細網肉腫とは異なり,皮膚原発細網肉腫と呼ぶにふさわしい.皮膚初発Ⅱ型とⅢ型は同一型であり,従来の皮膚原発細網肉腫多中心型に相当するが,その性格はリンパ性細網肉腫により近い.しかし,病初より皮膚腫瘍が多発経過中に白血化が高頻度に出現,予後が非常に悪いことなどから,リンパ節原発と断言できない特殊な病型であり,皮膚親和性のあるリンパ性細網肉腫と解釈した.

特殊化粧料(カバーマーク)と紫外線防御

著者: 佐藤吉昭 ,   入交敏勝 ,   大川原脩介

ページ範囲:P.915 - P.921

 特殊化粧料として用いられているカバーマークおよびカバーマークSの健常人皮膚に対する紫外線紅斑抑制作用について述べ,両者,とくにカバーマークにはPF 30というすぐれた効果のあることから,紫外線遮断剤としても応用しうると結論した.

特論

野口英世博士の業績—生誕100年を記念して

著者: 渡辺武彦

ページ範囲:P.922 - P.924

 今年は野口英世博士の生誕100年にあたる.
 1928年(昭和3年)アクラにおいて51歳余の生涯を閉じるまで,野口博士の足跡,特に細菌学領域の研究に残したものは大きい,1901年蛇毒の研究にはじまり,梅毒の血清診断法,梅毒病原体Treponema palli—dumの純培養,麻痺性痂呆,脊髄癆の組織中からTreponema palli—dumを検出し,同疾患が梅毒性疾患の晩期型であることの証明,各種スピロヘータの培養およびスピロヘータの分類の基礎を確立したこと,さらには黄熱の病原体,オロヤ熱,ペルー疣病,トラコーマの病原体の研究など多岐にわたり,公表した業績は27年間に約200編,これは驚異に値するものである.

薬剤

表在性化膿性疾患に対するシグママイシンの臨床効果—二重盲検法による検討

著者: 須貝哲郎 ,   朝田康夫 ,   池上隆彦 ,   渡辺昌平 ,   若井淑人 ,   赤木正志 ,   宗義朗 ,   土井顕 ,   山田瑞穂 ,   山本哲雄 ,   南晃次 ,   石神襄次

ページ範囲:P.925 - P.933

 シグママイシン(台糖ファイザー社)は塩酸テトラサイクリンとトリアセチルオレアンドマイシンの合剤で静菌性抗生物質同志の相加作用を期待してつくられた優れた抗生物質の一つとして今なお広く一般に用いられている.
 今回,われわれは表在性化膿性皮膚疾患に対するシグママイシンの治療効果を,新しく市場に出て繁用されているセファレキシンを対照剤として二重盲検法によつて比較検討し,シグママイシンの有用性を立証しえたので,ここに報告する.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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