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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科30巻3号

1976年03月発行

雑誌目次

図譜・401

頬部に発生した軟骨母斑

著者: 山本須賀子 ,   石川謹也

ページ範囲:P.176 - P.177

患者 生後1日目,女子
主訴 左頬部の腫瘤

原著

脂腺母斑とSebaceous Pseudomalignancyの問題

著者: 新井春枝

ページ範囲:P.179 - P.184

 45歳主婦.3年来緩徐に拡大する難治性,黄色調紅色の潰瘍が脂腺母斑下端に発生.病理組織学的所見は潰瘍辺縁部で基底細胞上皮腫様病変を示すが,主要病変は脂腺細胞類似の細胞で構成される小葉の集団であつた.小葉は表皮連続性,毛嚢との連絡もある.構成細胞に異型性,mitoseをみ,その配列は不整,真皮への不規則な侵入ある悪性腫瘍の像を有する.基質には著しい形質細胞浸潤を伴う.
 以上の組織像は良性および悪性脂腺腫瘍のいずれにも属せしめることができず,発癌性病巣の母地である脂腺母斑に加えた外的刺激が誘因となつて発現したpseudomalignancyの状態と診断した.

Amyloidosis Cutis Nodularis Atrophicans(Gottron)—症例報告

著者: 川島愛雄 ,   舘懌二 ,   江竜喜史 ,   北村清隆 ,   石倉多美子

ページ範囲:P.185 - P.192

 33歳の家婦のおもに腹部皮膚に柔らかい結節を生じたamyloidosis cutis nodularis atrophicans(Gottron)の1例を報告した.皮膚結節内にみられた沈着物は組織化学的ならびに電顕的にアミロイドと同定できた.

原発性全身性アミロイド症—症例報告

著者: 舘懌二 ,   川島愛雄 ,   松原為明 ,   水島典明 ,   松原藤継 ,   中西功夫

ページ範囲:P.195 - P.202

 原発性全身性アミロイド症でおもに顔面に丘疹と小結節を伴つた38歳の家婦例について臨床像・組織像・組織化学像・電顕像を述べた.本症にみられる皮膚病変について若干の文献的考察を加えた.

多発性血管脂肪腫の1例

著者: 石原紘 ,   望月輝三 ,   森安昌治郎

ページ範囲:P.203 - P.205

 36歳,男子の主として四肢に発生したmultiple angiolipomaの1症例を報告した.本人の体格は肥満型で,約8年前四肢の小腫瘤に気付き放置していた所,腫瘤の皮膚隆起は認められなかつたが,触診にて計27個の腫瘤を確認した.小指頭大以上の腫瘤では軽度の鈍痛・圧痛が生じ,そのうち6個を摘出した.病理学的腫瘤所見は,脂肪腫成分と血管腫成分の混在する間葉系腫瘍であつた.腫瘤の発生機序に関しては,血管腫起原説,脂肪腫起原説および両者二元説の3通りが考えられた.

Aquired Lymphangiomaの1例

著者: 南光弘子 ,   池田重雄

ページ範囲:P.207 - P.210

 64歳,女子.子宮頸癌第Ⅳ期の診断でテレコバルト照射し,その後,約6年経て外陰部に両側性にリンパ管腫様皮疹を多発してきた1例を報告し,考察した.特に,この成因が放射線照射によるリンパ循環障碍から結果した末梢リンパ管の拡張によるものて脈管の増生は腫瘍性というよりは反応性の増殖と解した.また,慢性リンパ浮腫の存在が自験例の様な皮膚症状以外に,リンパ肉腫を新生する可能性のあることから,長期にわたる経過観察の必要性についても言及した.

旋毛虫症にみられた皮膚病変

著者: 花田勝美 ,   見坊公子 ,   帷子康雄 ,   祖父尼哲 ,   山口富雄

ページ範囲:P.211 - P.217

要約 本邦最初の確実な旋毛虫人体感染例を14例経験した.皮膚症状としては膨疹が全例にみられ,瘙痒12例,発汗異常10例,蟻走感,知覚鈍麻・しびれ感各4例,眼瞼浮腫2例がそれぞれみられた.全身症状としては筋肉痛が必発で下肢に多い.その他疲労13例,脱力感,体重減少各10例,悪感,発熱各9例,口渇,無気力各8例,頭痛7例等が主なものであつた.治療前の主なる検査成績としては好酸球増多症が被検11例全例に,またIgE高値例は9例にみられた.皮疹部組織所見は真皮上層の毛細血管の拡張と充血,浮腫であり,左腓腹筋のそれでは筋細胞間に小円形細胞を中心とする密な細胞浸潤がみられたが虫体は検出されなかつた.治療として,全例にThiabendazole1日1.5gが7日間投与されて良い結果が得られ,7カ月後に好酸球はいずれも正常値もしくは正常値付近に復したが,IgEには一定の傾向が認められなかつた.

多発性角化性皮疹と有棘細胞癌との合併例—とくに砒素との関連性について

著者: 木村俊次 ,   長島正治

ページ範囲:P.219 - P.226

 64歳男子,30年来手足に角化性皮疹,4年来左手に有棘細胞癌がそれぞれ多発した症例を報告した.24歳頃肺結核にて内容不明の液体を約半年間にわたり服用した既往がある.角化症は主に小鶏眼様であるが,黒褐色扁平皮疹,落屑性紅斑性皮疹の形を示すものも散在する.また瀰漫性の角化も一部みられる.組織学的には,小鶏眼様および落屑性紅斑の角化症に軽度の異型性,黒褐色扁平な角化症にはより強い異型性がみられた.既往歴,現症,検査成績,組織学的所見などについて砒素角化症ならびに砒素癌の報告例と比較検討し,自験例も砒素との関連性ありとの印象を受けた.

基底細胞腫にみとめられたメラノソーム大集塊—その生成機序について

著者: 手塚正 ,   大熊守也 ,   広瀬至

ページ範囲:P.227 - P.233

 54歳男の陰嚢に生じた基底細胞腫にみとめられたメラニン色素塊を電子顕微鏡下で観察したところ,メラノソームはメラノサイトの樹枝状突起内ばかりでなく,ケラチノサイトの細胞質内に大集塊をなしてとりこまれていた.これらのメラノソーム大集塊は限界膜に囲まれあるいは囲まれずに存在した.これらのケラチノサイトは胎生期のケラチノサイトへの方向に分化し,メラノソームを大集塊として貧食したものと考えられた.

膿皮症病巣由来の黄色ブドウ状球菌のBacteriocin様活性

著者: 米沢郁雄 ,   原田哲男 ,   岸本裕義

ページ範囲:P.235 - P.238

 205名の膿皮症患者から分離した黄色ブドウ状球菌について,黄色ブ菌寺島株・209P株をIndicatorとして,Bacteriocin様活性を検討した.伝染性膿痂疹病巣由来48株中45株,リッター皮膚炎患者由来18株中16株にBacteriocin様活性が認められたのに対し,癤・癤症・多発性汗腺膿瘍など深在性病巣由来の54株では1株のみが陽性であつた.また一見伝染性膿痂疹様の皮疹のみられる新生児の表在性膿皮症においては,Bacteriocin様活性陽性菌は45株中6株にすぎず,新生児においては,伝染性膿痂疹より,ボックハルト膿痂疹・化膿性汗口炎に属する症例が多いのであろうと推測した.なお一部の症例については,鼻前庭部から検出した黄色ブ菌と病巣部の菌とのBacteriocin様活性の相関を調べた.

木村氏病の3例

著者: 北村和子 ,   亀田洋 ,   峯村協成 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.241 - P.246

 3例の木村氏病について,臨床並びに免疫学的検討を行い,その病因について若干の考察を行つた.3症例とも末梢血液において好酸球数およびIgEは高値を示し,皮下硬結の増大縮小と平行して増減した.
 このIgEは,螢光抗体間接法でカンジダ抗原に対して明らかに高い抗体価を示した.細胞性触に関しては,rosette forming cellが軽度ながら低値を示したが,リンパ球の幼若化試験では,PHA,カンジダに対して共に正常であつた.治療に関しては本症の病態がⅠ型アレルギーに関連していると考え,抗ヒスタミン剤およびoxyphenbutazoneを使用したところ,明らかな効果があり,特にoxyphenbutazoneが有効であつた.

薬剤

ヒスタグロビン3vial療法の使用成績—用法・用量の検討を主として

著者: 末次敏之 ,   山崎律子 ,   村田譲治 ,   鳥山悌

ページ範囲:P.247 - P.252

 今回,われわれは"アレルギー"が何らかの発症因子と考えられる皮膚疾患を中心に,ヒスタグロビン(以下HGと略す)の用法,用量の検討をするべく3vial療法を試み,ある程度満足すべき治療効果が得られたので報告する.なお,HGに関する詳細は他文献1〜7)に譲るが,HGはhistamine固定力を有するヒトγ—globulinと特定の割合のhistamineとから成り,アレルギー性疾患患者に欠如あるいは減少しているhistamine固定力を誘起させて,アレルギー性疾患を治癒に導くものであるとされている.
 その作用機序の説明に,HGの創製者パローらは『HGはhistamineをhaptenとする複合抗原で,投与を受けた個体では抗ヒスタミン性免疫を得る』という仮設を立てているが,抗ヒスタミン性抗体の産生はまだ証明されていない.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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