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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科30巻4号

1976年04月発行

雑誌目次

図譜・402

表在性基底細胞上皮腫

著者: 小澤明 ,   木村俊次

ページ範囲:P.264 - P.265

患者 41歳,女性,主婦
初診 昭和49年11月6日

微細循環シリーズのはじめに

微細循環シリーズのはじめに

著者: 坂本邦樹

ページ範囲:P.266 - P.266

 第5回日皮学会の夏季教育シンポジウムのテーマは「微細循環」と定められ,私にその世話を命ぜられた.幸いに大過なく務めることが出来たけれど,前日に台風が近畿中国を襲つたため,交通事情が悪化し,関西以西の参加者が少なく,また各方面に多大の御迷惑をおかけしたことと思う.当日の各演者は我国における権威者ばかりで,その内容がこれからシリーズとして本誌に掲載される運びとなつたことは喜びに耐えない.
 このシンポジウムは,基礎から臨床へという趣旨が副記されていて,毎年それに沿つて運営されている.ただ,今回のテーマが微細循環という,基礎に膨大な領域をかかえているものだけに,時間的制限と考え合せて,どうしても基礎に重点を置かざるを得ない立場にあつたことを御理解願いたい.

綜説

Angiogenesis (血管新生機構)—生体顕微鏡下の観察と血管新生誘発因子について

著者: 西岡清

ページ範囲:P.267 - P.272

 胎生期の組織あるいは損傷部組織で,血管新生が認められることは衆知の事実となつている.このような血管新生の機構(Angiogenesis)にはじめてメスが加えられたのは,18世紀の中頃である.Duhamel1)が,鶏雛の脚を折り,化骨形成が見られた時点で,脚の軟部組織を除去しても,大腿動脈から注入された色素が趾尖に迄行きわたることを観察したことにはじまつている.彼は,切断された血管の断端が,たがいに延長し,端々吻合が形成されると考えた.これに対し,Hunter2)は,端々吻合のほかに,既存血管とは別個に血管が新生され,切断端間を連絡すると考えた.続いて,血管新生様式についての仮説が,種々提出されたが,結論を得るには,Meyer3)の観察を待つ必要があつた.彼は,既存血管から発芽(Sprouting)するようにして新生血管が形成され,動脈あるいは静脈に分化することを明らかにし,現在の血管新生機構に対する考え方の先鞭をつけた.

原著

Rudimentary Polydactyly

著者: 小林まさ子 ,   田辺義次 ,   中村宣生

ページ範囲:P.273 - P.276

 21歳女子の拇指に,幼少時より徐々に増大してきた無痛性の小腫瘤を切除し,組織学的検索を行なつた.その結果,臨床像より考えられたacquired digital fibrokeratomaは否定されrudimentary polydactylyと診断した.組織像は,真皮内にMeissner小体と神経線維の増殖がありmyelin sheathの染色でRanvierの結節やLantermannの切痕が明瞭に見られた.出現時期が幼少時であること,無痛性であること,瘢痕性の線維増殖のないことなどから,一般的な外傷性のneuromaとは一応区別されると考える.

Sezary症候群の1例

著者: 益田俊樹 ,   小玉肇 ,   武誠 ,   中島豊 ,   植木絢子

ページ範囲:P.277 - P.283

 丘疹およびそれに続く紅皮症を皮膚症状とし,末梢血中に異型単核細胞の出現(20%→55%)を認め,2年余の経過後に胃潰瘍と肺線維症のために死亡した67歳男子のSezary症候群の1例を報告した.末梢血中の異型細胞はPAS陽性顆粒を持たず,また大部分は羊赤血球を結合しなかつたが,電顕像はSezary細胞のそれで,Sezary症候群と診断した.
 本症候群の帰属に関しては,現在のところ菌状息肉症の亜型であると考えられることを述べた.

カンジダ性肉芽腫—経過中に各種免疫学的異常を認めた例

著者: 東禹彦 ,   潮田妙子 ,   寺西晴満 ,   中野和子

ページ範囲:P.285 - P.291

 20歳,女子.患者は生後7カ月頃よりカンジダ性肉芽腫に罹患し,13歳時にアンホテリシンB点滴静注療法を受けカンジダ性肉芽腫は一たん完治した.19歳時に指間,鼻背に外傷を受けてから,該部に角化性皮疹を生じ,しだいに増悪したために受診.初診時,クームス試験陽性,溶血性貧血合併,RA反応陽性,高ガンマグロブリン血症,膵炎などを認め,経過中にLEテスト,LE現象陽性などの異常所見を生じるに至つた.痂皮の機械的除去および抗カンジダ剤による治療により,ほとんどの異常所見は消失した.DNCBによる皮膚感作試験は初め陰性であつたが,後に陽性となつた.カンジダエキスによる皮内反応も,初め48時間では陰性であつたが,後に陽性となつた.これらの結果から,本例において認められた異常所見はカンジダ性肉芽腫を惹起する誘因となつたと考えるよりは,カンジダ感染によつて生じた結果と考えられる.

潰瘍性大腸炎を合併した壊疽性膿皮症

著者: 安野洋一 ,   前田基彰

ページ範囲:P.293 - P.299

 潰瘍性大腸炎を伴つた壊疽性膿皮症の1例を報告し,本邦で報告された壊疽性膿皮症72例中,詳細の明らかな67例について文献的に検討を行い,本症の臨床像と合併症,検査所見との関連性などにつき若干の考察を行つた.

皮膚原発クリプトコッカス症の1例

著者: 高安進 ,   赤木正志 ,   清水洋子

ページ範囲:P.301 - P.304

要約 右頬に限局して痤瘡様丘疹を生じた37歳女性の皮膚原発クリプトコッカス症の1例を報告した.組織学的に表皮に変化なく,真皮全層にわたり密な肉芽腫性病変があり一部に膿瘍を形成する.PAS染色により巨細胞内および炎症性細胞浸潤の間に多数の菌要素が認められたが,ムチカルミン染色による莢膜の証明はできなかつた.しかし生検組織の培養によりC. neoformansを分離し,分離菌をマウス腹腔内に接種して腹水塗抹標本から典型的な厚い莢膜を証明した.一般検査では胸部レ線,喀痰培養を含めて異常を認めなかつた.皮疹は無処置で1カ月観察したところ次第に扁平化の傾向があつたが,ウンデシレン酸の外用を約1カ月間行ない全く扁平となり僅かに色素沈着を残して発生後約3カ月で治癒した.
また,本邦の皮膚原発クリプトコッカス症につき若干考察を加えた.

基底細胞腫—最近15年間の教室例の検討

著者: 木村俊次 ,   長島正治

ページ範囲:P.305 - P.310

 昭和35年から49年までの15年間に慶大皮膚科で経験された基底細胞腫53例59個について統計的および臨床・病理学的に検討した.今回の検索では当教室例の傾向を観察すると共に,被覆および周辺表皮の変化にも注目し,また臨床像と組織像との関連の有無も再検討した.その結果,臨床的および組織学的には従来の報告とほぼ一致を示した.表皮の変化はいずれも反応性あるいは二次的なものと考えられた.また臨床像と組織像との間には明らかな関連はみられなかつたが,色素性乾皮症由来の症例では角化型の要素を含むものが高率にみられた.

ビチオノールによるPersistent Light Reactorの1例

著者: 猿田隆夫 ,   中溝慶生

ページ範囲:P.311 - P.318

 約10年間の薬用石鹸の使用により,その含有成分のビチオノールによると思われる光接触皮膚炎の1例を報告した.その型はpersistent light reactorであつた.MEDの短縮化がみられ光貼布試験において,ブラックライト(BLB)照射によりビチオノール陽性を示した.また一般の読書用螢光灯にも陽性反応を示した.その作用波長は,ピークは352nm付近にあると思われたが,作用域は400nm近くまでおよんでいると推測された.ビチオノール貼布によりBLBで陽性を呈した部は1カ月後,BLBの再照射により,再び陽性を示した.このとき最初にBLBで陰性であつた部は,再照射によつても陰性であつた.遮光剤テストをしたところ,ウィルソンパスタ,30%亜鉛華硼酸軟膏,サンスクリーン,カバーマークに強い遮光効果を認めた.2年余の入院の間,種々の治療法を検討したが,結局β—カロチン内服,ウィルソンパスタ,ステロイド外用の3者併用が最も優れた効果を示した.

パッチテストの再検討

著者: 谷奥喜平 ,   吉田彦太郎 ,   山本康生 ,   原田昭太郎 ,   久木田淳 ,   石原勝 ,   安田利顕 ,   中山秀夫 ,   新井裕子 ,   永井隆吉 ,   須貝哲郎 ,   東順子 ,   旭正一 ,   占部治邦 ,   森川藤凰 ,   浜貴子

ページ範囲:P.319 - P.324

 全国8施設の参加で,パッチ絆2種,すなわち国際接触皮膚炎研究班(ICDRG)推奨のAl-testと鳥居薬品製パッチ絆(トリイ絆)との比較がなされた.傍脊椎部両側の左側にAl-test,右側にトリイ絆を用い,対称位に同一被検物をつけ,6段のうち最下段はブランクとしてパッチ絆のみを貼布した.なお,Al-testの絆創膏にはDermicel (Johnson&Johnson)を使用した.各施設所在地の毎月の平均気温と平均湿度を調べ,各月の陽性率との関係を調べたが,無関係で,むしろ季節の変り目である10月と4月にブランク陽性率が集中し,48時間後では,トリイ絆のブランク陽性率の方がAl-testのそれより高かつた(α=0.05).絆創膏カブレもトリイ絆の方がDermicelより多かつた(α=0.01).また,両パッチ絆で陽性反応に有意差を示したのは1/3に達し,被検物質の基剤が水溶液の場合,48および72時間後とも,トリイ絆の方がAl-testよりも陽性率が高かつた(α=0.05).

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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