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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科30巻5号

1976年05月発行

雑誌目次

図譜・403

皮角の像を呈したInverted Follicular Keratosis

著者: 栗原誠一 ,   原田敬之

ページ範囲:P.338 - P.339

患者 57歳,男子
初診 昭和49年11月5日

綜説

生体顕微鏡法により観察された皮膚微細循環の動態

著者: 浅野牧茂

ページ範囲:P.341 - P.348

 著者は,これ迄に様々な生理的および病態生理的条件下,または薬理学的条件下に,皮膚の微細循環(microcirculation;MC)の動態をウサギ耳介透明窓(rabbit ear chamber;REC)を用いて生体顕微鏡法により直視下に観察するとともに,微細光電プレチスモグラフイー(microphotoelectric plethysmography;MPPG)により連続的かつ定量的な記録を行い,分析を加えて来た.さらに,ヒト上腕皮膚透明窓(human arm chamber;HAC)を用い,ヒトについても同様な追求をして来た.RECの再生血管およびその神経支配に,正常との間で差異あるいは特殊性の存在するという指摘もあるが1,2),RECならびにHAC内の血管および神経の組織学的ならびに生理学的関連が確かめられており3,4),皮膚という特殊な臓器5)の代表として,RECおよびHAC内の組織について著者の得た観察結果を中心に,生理的条件下のMC動態を簡単に纒めたい.

原著

Photo-onycholysis

著者: 大槻典男 ,   仲村洋一 ,   金原武司 ,   川島愛雄

ページ範囲:P.349 - P.354

 9歳の少女においてドキシサイクリン服用によつて生じたphoto-onycholysisについて述べ,爪甲剥離は爪床出血の結果として起こるものと推測した.なお,photo-onycholysisの文献例をまとめ,若干の考察を加えた.

列序性配列を示した斑状アミロイドージスの1例

著者: 西山芳夫 ,   石橋明

ページ範囲:P.355 - P.357

 16歳女子の左上肢から躯幹にかけて偏側性に線状配列を呈した皮膚アミロイドージス(macular type)の1例を報告した.アミロイドージスの成因に関しては種々推論されているが,未だ確定されておらず,自験例は母斑性要因の関与が強く示唆される興味ある1例と思われる.

扁平苔癬と尋常性天疱瘡の併発

著者: 川津智是 ,   三木吉治

ページ範囲:P.359 - P.366

 扁平苔癬の経過中に尋常性天疱瘡の像を呈した,21歳男子例を報告した.初発症状は頬粘膜のびらんで,当科初診時には口唇に典型的な扁平苔癬の所見があり,陰茎にもびらん面が認められた.近医で内服中の副腎皮質ホルモン剤の漸減中止とともに,Fowler水の内服を行つたところ,粘膜疹の増悪,扁平苔癬の汎発化が起こり,薬剤の中止,入院とともに副腎皮質ホルモン療法を開始した.病勢は一時改善したが,数カ月後に再燃し,粘膜疹とともに,掌蹠に広汎な,難治性びらん面が出現し,約半年後にようやく寛解した.
 病理組織像では扁平苔癬と尋常性天疱瘡の所見が交錯した.臨床検査成績では,赤沈,γ—グロブリンの高値とともに,一過性ながらLEテスト,ANF,直接Coombs反応陽性,寒冷凝集反応高値などの異常所見がみられ,血清抗表皮細胞間抗体は,発症後約4年でも40倍稀釈で陽性であつた.
 本症例では扁平苔癬の増悪によつて天疱瘡が誘発されたと考えたい.

特異な有棘細胞癌の1例

著者: 堀真 ,   前島和樹 ,   西本勝太郎

ページ範囲:P.369 - P.375

 65歳,女性の左大腿前面に小指頭大の黒褐色隆起性腫瘤を1個生じてきたが,自覚症ないまま放置,その後,周囲に星芒状に米粒大迄位の黒褐色小丘疹を発生した,その後,種々の治療を行つたが,病状はリンパ管型の皮膚転移病巣を左下肢,下腹部,臀部に生じつつ,徐々に進行し,次第に衰弱が加わり死亡した.組織学的には,細胞間橋を有する腫瘍細胞間に黒色色素顆粒を豊富にもつ樹枝状細胞を多数認め,有棘細胞癌に樹枝状メラノブラストの共生を伴うものと思われた.電顕的には,よく発達したtonofilament,desmosomeを有する腫瘍細胞と,tonofilament,desmosomeを欠きmelanosomeを有する正常細胞がみられた.

Pilar Cyst—Hybrid typeの1例を中心に

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.379 - P.384

 60歳男子,頭頂部に近い右側頭部に単発したpilar cystについて報告した.嚢腫壁は組織学的に内腔に向うに従つて大型・明調化する上皮性細胞から成り,突然角化して好酸性ほぼ均質な内容物に移行する,壁の一部は破開しその付近にケラトヒアリンと考えられる顆粒を有する部分が認められたことから,これをhybrid cyst (McGavran)あるいはmixed cyst (Pinkus)と考え,その発生機序について若干の考察を加えた.またpilar cystあるいはtrichilemmal cystとして報告された本邦例を集計し,自験例を含めた6例について概観した.

汗疱状白癬の感染源に関する2,3の検索

著者: 境繁雄 ,   石河知之 ,   佐藤静生 ,   加畑雅行 ,   帷子康雄

ページ範囲:P.385 - P.389

 汗疱状白癬は難治性,再発性の伝染性疾患で,直接感染の他に共同施設などを介する間接感染も考えられている.最近,当院職員間に汗疱状白癬の増加傾向をみたので,感染源と考えられる中央手術部の共用サンダル,浴室脱衣場のマット,床,および汗疱状白癬患者の靴下類につき,Tetracycline, Gentamycin, Cycloheximide加Sabouraud培地を用い,皮膚糸状菌の検出を試み,サンダル22足中の1足から,脱衣場のマットからは高率に,4つの脱衣場の床の1つからそれぞれ皮膚糸状菌を検出した.患者の靴下類からは10件中8件の高率に菌を検出し,菌が病巣から容易に脱落することを,また,長期間使用してなかつた靴下10件を調べ,靴下中でも菌が長期間生存しうることを確認した.脱衣場のマットを120℃10分間加熱滅菌し,毎日交換した後の検査では皮膚糸状菌は全く検出されず,著明な改善を認めた.

表皮型多形紅斑と薬剤過敏

著者: 東順子 ,   須貝哲郎

ページ範囲:P.391 - P.397

 臨床的に多形紅斑,スティーブンス・ジョンソン症候群,紅皮症の像を示した症例を組織学的に検討すると,1)古典的な多形紅斑,すなわち表皮は特に異常なく,血管周囲性の細胞浸潤,真皮乳頭層の浮腫さらには表皮下水疱を認める真皮型と,2)真皮の炎症性変化は軽度であるが,表皮の変化の著しい表皮型の2型に分けられる.このように多形紅斑を組織学的に2型に分けうることは,Orfanosらによりすでに報告されている.著者らは臨床的に多形紅斑で初発した症例7例について,発疹時服用していた薬剤の誘発テストを行ない,臨床像の差に関係なく,組織学的に表皮型多形紅斑の像を示した5例では全て薬疹であることを確認し一方真皮型多形紅斑の像を示した2例では原因薬剤が見出せず,他の原因によるものと推定した.多形紅斑における組織学的な差異が発症原因の差とも関連していることが見出され,興味深い所見と考え報告した.

講座

紅斑症

著者: 荒尾龍喜 ,   緒方克己 ,   坂崎善門

ページ範囲:P.399 - P.408

 紅斑症あるいは紅斑類と呼称される皮膚疾患はすべて紅斑を主徴とする疾患であるが,まことに種々雑多な多種の皮膚疾患ないし症候群を包含している.諸家によつて皮疹や経過などに僅かの差違が強調され,しばしば独立疾患として報告され記載されているので,紅斑症に属する疾患ははなはだ多数にのぼり,同症異名として整理される一方今日も猶本症に属する新しい疾患が報告される現状にある.この中には,多形紅斑や結節性紅斑など我々にとつてなじみ深い疾患が少なくなく,紅斑症は日常の皮膚科臨床に重要な地位を占めることには異論がない.これらを理解し易く,かつ記憶し易いように,何らかの形で整理分類することが出来れば,我々皮膚科医にとつてはなはだ有意義と考えられるが,これにはかなりの困難を伴う.著者らは紅斑症について考察する機会を得たので,本症に含まれる諸皮膚疾患の整理分類を試み,そのいくつかについて検討を加えたい.

薬剤

5-Fluorocytosine療法を行つたChromomycosisの2例

著者: 岩津都希雄 ,   苅谷英郎 ,   田辺義次

ページ範囲:P.409 - P.414

 Chromomycosisの治療は従来より種々の試みがなされてきているが,現在は小病巣に対してはAmphotericin Bの局注または切除ないし切除後植皮術を行う手術療法が,広範囲な病巣や内臓転移を有する症例にはAmphotericin Bの点滴静注が通例行われている.しかしAmphotericin Bの局注療法は長期入院を要し,また疼痛などの副作用もあり,その全身投与は有効血中濃度および有効組織内濃度が得られにくく,また副作用も大きいため,これにかわつて副作用が少なく経口投与が可能な薬剤の出現が待たれていた.5-Fluorocytosine(5-FC)はこれらの条件を満すものであるが,一方治療中に耐性が生じやすいという欠点を有していることが指摘されている.先に著者の1人である苅谷1)が5-FCを用いて完治したChromomycosisの1例を報告したが,今回,我々はさらに2例のChromomycosisに5-FCを投与する機会を得たので,その治療経験について報告し,そのうちの1例に対して,5-FC内服後のその血中濃度および尿中濃度の時間的推移を測定しえたので,その結果もあわせて報告する.また教室および関連病院で分離された16株のFonsecaea pedrosoiを用いて,これら臨床分離株に対する5-FCのMICを測定したところ,興味ある結果を得たのでこれについてもふれる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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