icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科30巻6号

1976年06月発行

雑誌目次

図譜・404

伝染性軟属腫

著者: 岡田芳子 ,   大槻典男

ページ範囲:P.424 - P.425

患者 2歳,男児
初診 昭和49年11月29日

綜説

微小循環の病態

著者: 土屋雅春

ページ範囲:P.427 - P.430

 微小循環とは,細脈動から細静脈へかけて分布する微小脈管の機能と形態を総合した表現である.口径100ミクロン以内の脈管系に限定していう学者もいるが,一般には500ミクロン以内を研究対象としている.何故ならば,100ミクロン以内の血管はその前後の,より大きい細動静脈の影響を敏感に受けやすいためである.また,リンパ管の研究も微小循環の研究に含まれていることはいうまでもない.
 腸間膜や大網のような薄い組織が,透過光線法により直視的に観察されて以来,毛細血管と総称されていた微小血管も,メタ細静脈,真性毛細血管,前毛細血管収縮筋,集合毛細血管,各種の細動静脈間短絡路など,機能の異なる血管単位から構成されていることがわかり,同時に,微小血管系に関連する微小リンパ管の動態も明らかにされてきた.

原著

Yellow Nail Syndrome—2例の報告

著者: 大槻典男 ,   佐野勉 ,   川島愛雄

ページ範囲:P.431 - P.434

 yellow nail syndromeを持つた44歳の男と57歳の男の2例を述べた.2例とも,黄色爪とリンパ浮腫のほか,咳または咳と痰がよく出るという症状があつた.本症のわが国の記録例5例のほか,外国の文献を調べ,若干の考察を加えた.

Cutaneous Calculusの1例

著者: 手塚正 ,   大熊守也 ,   滝野長平 ,   中島馨

ページ範囲:P.435 - P.439

 両耳殻に生じたCutaneous Calculusの1例について報告した.従来記載されている如き母斑細胞は腫瘍塊中にみとめられず,むしろ結合組織の微小な限局性の退行変性ないし壊死がその原因と考えられた.カルシウムの沈着する基質としてはヘパリチン硫酸の他にシアロ蛋白が関与している可能性が組織化学的検索結果より推定された.

汎発性白癬性肉芽腫の1例

著者: 磯山勝男 ,   滝沢清宏 ,   寺山勇

ページ範囲:P.441 - P.448

 腎不全と糖尿病を基礎疾患とし.S.L.E.の疑診のもとにステロイド剤の長期投与を受けた汎発性白癬性肉芽腫の1例を報告した.全身諸々の鱗屑,膿瘍.爪などより初代培養で肉眼的形態の異なる4種の紅色菌を検出した.これら4種には部位的な関連は見出し得なかつた.
 4種をモルモットに接種した.そのうら2種類は10日後接種部位の発赤を認め,皮疹と毛髪に菌要素を認めた.しかし逆培養は失敗した.この意味で動物寄生性は不明とした.
 頭頂部の膿瘍直上の毛髪に菌の寄生像を認め菌が経毛嚢性に真皮内に侵入しうる所見と考えた.

骨病変を伴つたMycobacterium marinum感染症

著者: 東禹彦 ,   寺西晴満 ,   朝田康夫 ,   松矢浩司 ,   森益太 ,   吉良貞雄

ページ範囲:P.449 - P.454

 Mycobacterium marinum感染症では,病巣は単発あるいは多発してもスポロトリウム症のリンパ管型に類似の型を示し,汎発化したり,皮膚以外に病巣を形成することはまれである.自験例は27歳,男子の例で,右手,右前腕,左肘,左足に皮膚病変が存在するのみでなく,左第1中足骨,内側楔状骨には腐骨形成をみた稀有な症例である.各種抗結核薬を投与したがあまり奏効せず,全病巣の廓清術を行なつて略治した.4年前に左足肯に初発したと推定されるが,感染源は不明である.分離菌は37℃でも27℃におけると同様旺盛な発育を示したこと,患者は10年来悪性脱毛症のために副腎皮質ステロイドを内服していたことなどが,病巣の汎発化および骨病変を形成したことに関係しているものと思う.

老人性角化腫—18例の臨床・病理学的観察

著者: 木村俊次 ,   中村絹代 ,   長島正治

ページ範囲:P.455 - P.462

 昭和35年1月から49年末までの15年間に当教室で経験した老人性角化腫16例と,最近一部の関連病院で経験した2例を併せて検討した.その結果男女比9対9,初診時平均年齢男女とも65歳強,経過は2カ月から10年に亘るが,1〜3年が11例61%を占めた.個数は多発性と思われる2例を除いていずれも単発し,部位は顔面が16例89%を占めた.臨床症状は,疣状型3例,紅斑型6例,色素斑型5例,皮角型4例で,従来の本邦例とはやや異なる分布を示し,欧米例により近いように思われた.紅暈あるいは発赤は10例56%にみられた.組織分類では肥大型8例で,うち5例は表皮突起に相当する部分が肥大延長を示し,その他の部分は萎縮性であつた.萎縮型は6例で,うち4例は有棘細胞癌への移行を示し,うち2例は棘融解性の変化を合併した.なお臨床像と組織像には多少の関連があり,疣状のものはすべて肥大型,紅斑性のものは異型性・悪性化の傾向がより著明であつた.

新潟県下のスポロトリコージス

著者: 岡吉郎 ,   佐藤良夫 ,   佐藤信輔 ,   設楽篤幸

ページ範囲:P.463 - P.467

 新潟県下で昭和40年代の10年間に5例のスポロトリコージスが確認された.男3,女2例で,年齢別では30歳代1,50歳代2,70歳代2例であつた.病型はリンパ管型4,限局型1例,部位は顔2,上肢3例,外傷の既往の明らかなものは1例であつた.治療は4例にヨードカリ内服を,1例に温浴とソラックス灯照射を行なつた.ヨードカリ使用例はいずれも完治したが,温浴を行なつた1例は2年後に再発した,組織内菌要素は,全例に少数ではあるが,遊離または巨細胞内の胞子形真菌要素を,4例に星芒状組織形を認めた.

パーカーインクを使用するヘルペス感染症のウイルス性巨細胞検出法について—ヘルペス感染症の迅速診断

著者: 猿田隆夫 ,   猿田泰夫 ,   中溝慶生

ページ範囲:P.469 - P.475

要約 ヘルペス感染症の迅速診断に,細胞診が有用であることは以前から知られていた.しかし広く一般に応用されてはいないようである.
著者らはパーカーインクを用いる細胞診断法(PK法)を工夫し,単純庖疹,帯状庖疹,水痘に応用したところ,対照群と比較してかなり特異的に,しかも従来のギムザ法よりきらに簡単に迅速にウイルス性巨細胞を検出できることを知つた.
また本法を用いて,臨床的に診断の困難てあつた陰部庖疹2例,庖疹瘭疽2例,手脊,臀部の単純庖疹各1例に対して診断を下すことができた.
本法は非常に簡易なため今後外来診療において部位的に診断困難な単純庖疹,陰部庖疹,庖疹性瘭疽,汎発性単純庖疹,汎発性帯状庖疹,カポジー痘瘡状発疹の場合の種痘性湿疹との鑑別,痘瘡との鑑別などに利用価値が大きいと考えた.なお本法は単純庖疹,帯状庖疹,水痘の相互の鑑別には応用できない.

Trimethylpsoralen内服による尋常性白斑の治療

著者: 井村真 ,   戸田浄 ,   小堀辰治

ページ範囲:P.477 - P.484

 31例の尋常性白斑患者をTrimethylpsoralen (以下TMPと略)内服,その後Blacklightを照射する方法で加療し,著効42%,有効40%,無効18%の成績を得た.日光光源で加療したFitzpatrickらの成績と比較した場合,最終的成績には差がないが,治療期問を短縮でき,ほぼ満足できる治療法であることが確認できた.また,電顕組織所見を基礎とし,臨床症状,本療法に対する反応性も加味して,尋常性白斑の3型分類を行つた.すなわち,1)炎症型,2)神経型,3)自己免疫型である.本療法に最も反応しやすいのは炎症型であり,以下神経型,自己免疫型の順で有効性は低下していく.
 考えられる副作用は肝機能障害及び光過敏性の獲得であるが,いずれも認められなかつた.

印象記

第75回日本皮膚科学会総会・学術大会を見て

著者: 大城戸宗男

ページ範囲:P.486 - P.487

 この雑誌が発行される頃には,会員のほとんどが知ると思うが,専門医制度に関する件が,今総会で承認されたのをまず報告したい.昭和41年5月10日から行われたこの制度は,45年秋から実施の予定であつた試験制度が総会で反対,そのまま延期という凍結状態にあつた.以後毎年賛否両論が激しかつたが,昨年の総会以来過去1年間,各支部,地方会単位の意見を吸い上げ,再び理事会は原案を提出し,それが会場で承認されたのである.
 1)4年以上の学会会員.2)4年以上の皮膚科臨床経験.3)講習会4単位以上.4)論文2編および演説発表2つ以上,が資格である.三浦祐晶理事によれば日皮会誌8月号に告示し,11月に専門医認定委員会を開催するため,大至急各支部で教育講習会を開く予定という.10年かかつてこの制度が再発足するので,今後の学会が相当変動すると考えられる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?