原著
老人性角化腫—18例の臨床・病理学的観察
著者:
木村俊次1
中村絹代1
長島正治1
所属機関:
1慶応義塾大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.455 - P.462
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昭和35年1月から49年末までの15年間に当教室で経験した老人性角化腫16例と,最近一部の関連病院で経験した2例を併せて検討した.その結果男女比9対9,初診時平均年齢男女とも65歳強,経過は2カ月から10年に亘るが,1〜3年が11例61%を占めた.個数は多発性と思われる2例を除いていずれも単発し,部位は顔面が16例89%を占めた.臨床症状は,疣状型3例,紅斑型6例,色素斑型5例,皮角型4例で,従来の本邦例とはやや異なる分布を示し,欧米例により近いように思われた.紅暈あるいは発赤は10例56%にみられた.組織分類では肥大型8例で,うち5例は表皮突起に相当する部分が肥大延長を示し,その他の部分は萎縮性であつた.萎縮型は6例で,うち4例は有棘細胞癌への移行を示し,うち2例は棘融解性の変化を合併した.なお臨床像と組織像には多少の関連があり,疣状のものはすべて肥大型,紅斑性のものは異型性・悪性化の傾向がより著明であつた.