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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科30巻8号

1976年08月発行

雑誌目次

図譜・406

尋常性狼瘡

著者: 藤沢竜一 ,   矢代昭夫

ページ範囲:P.578 - P.579

患者 51歳,女.長野県飯山市在住
 家族歴・既往歴 特記すべきことなし.

綜説

血管内皮の構造と機能

著者: 竹重順夫

ページ範囲:P.581 - P.588

 血管内皮は単なる被覆上皮ではなく,物質交換の様々な機能的意義を分担しており,血管の種類や場所によつても意義が異なることは言うまでもなく,近年の血管病理・生理学の進展に応じ,内皮の微細構造の正確な把握が従来以上に要求されるようになつた.
 近年,走査電子顕微鏡(SEM)が医学生物学に応用されるようになり,血管内皮を表面から一度に広範囲に観察出来るようになつて,従来透過電子顕微鏡(TEM)で見すごしてしまわれたいろいろの所見が把握出来るようになつた.

原著

代謝性汎発性石灰沈着症の1例

著者: 吉井恵子 ,   田代正昭

ページ範囲:P.589 - P.594

 5歳男子.約2週間前に気づいた右膝蓋部の膿疱様丘疹を主訴とする.両側膝蓋下部の伸側を中心として皮表は凹凸不整,触れると硬く大小の結節を触知し,右膝病変部の中央には膿疱様丘疹がみられ,周囲を圧するに粥状内容物を混じる漿液を圧出する.レ線撮影により同部に一致して大小の陰影を集族性にみとめる.内容物はCa3(PO42が主成分であり,病理組織学的には真皮の中〜下層にかけて,一部は皮下組織にまでおよぶ石灰沈着がみられ,膠原線維・弾力線維の変化もみとめられる.血清電解質の変化をはじめとする臨床検査では特異な所見はみられず,また他の組織や器官への石灰沈着もみとめられなかつた.
 本症の発生機序・分類など種々意見の多いところであるが,本症をふくめ文献的考察を試みた.

Eccrine Ductocarcinoma—臨床的,組織学的,組織化学的ならびに電顕的特性

著者: 小倉治雄 ,   三島豊

ページ範囲:P.595 - P.604

 附属器の微細構造ならびに機能的(酵素組織化学的)特徴は近年明らかとなりつつあり,具体的各種附属器腫瘍の本態の追求に応用できる段階となつている.
 右下腿に8年来あつた腫瘤が2カ月前から急速に増殖するとともに転移を来し,死亡した72歳男子例を検索した.1)腫瘍細胞は索状構築を示し,特に腫瘍辺縁部には正常エクリン汗管のみならず,一部癌化した管壁細胞を有するエクリン汗管を見た.2)腫瘍細胞巣はSDG,P-laseが強陽性;AcPase,β-Gが陰性,一部弱陽性でエクリン系の酵素パターンを示した.3)大部分の腫瘍細胞は糖原に富み,更に少数のsialomucin含有細胞が存在していた.4)電顕的に管腔様構造,villi様突起,D-T complex,糖原,sialomucin顆粒,管腔の辺縁に小空胞があり,高電子密度の粘液顆粒,分泌細管の欠如,等より本例はeccrine ductocarcinomaとしての構造ならびに機能的分化を示すと考察した.

Sudoriparous Angiomaの1例

著者: 丸山光雄 ,   亀田洋

ページ範囲:P.607 - P.611

 Sudoriparous angiomaの典型例と思われる1例を報告し,若干の文献的考察をおこない,その診断基準につき検討した.Blue rubber bleb nevusとして報告された例の中にもsudoriparous angiomaとしてよい症例が含まれており,いずれにせよ両者は近い関係にある疾患と考えられる.

姫路赤十字血液センターの梅毒スクリーニングの統計(昭和50年度)

著者: 小野公義 ,   原功 ,   河瀬正晴

ページ範囲:P.613 - P.615

 姫路赤十字血液センターにおける昭和50年度の献血者31,994名に対する梅毒スクリーニングの結果を報告した.その統計から言える梅毒抗体保有者の分布の特徴は1)梅毒抗体保有者の割合は女性よりも男性に多く,しかも高年齢層になるほど,その保有率は男女ともに高くなつている.2) BFPの割合も高年齢層になるほど高率になる傾向が認められることである.
 最近5年間の本センター梅毒スクリーニングの統計結果は,ほぼ同様の傾向を示し,本邦の梅毒の状況が現在なお固定していて大きな動きを示していないとみてよいであろう.

異所性胸腺腫と合併した落葉状天疱瘡

著者: 晒千津子 ,   川津智是 ,   三木吉治

ページ範囲:P.617 - P.622

 75歳,女性.6年前から右側頸部に異所性胸腺腫が存在し,60Co 2700rad照射.照射終了直前にアミノピリン,フェナセチン内服とともに全身に落葉状天疱瘡を発症.筋無力症の合併はない.
 上記の症例を報告するとともに,既報告例と比較して検討を行つた.

Acquired Digital Fibrokeratomaの1例

著者: 菊池禮子 ,   大滝倫子

ページ範囲:P.623 - P.626

 右第4指の近位指節間関節背部に臨床上および組織学上典型的なAcquired digital fibrokeratomaが発生した14歳男例を報告し,文献的考察を行つた.

いわゆるWashboard Thumbnailsの1例

著者: 滝野長平 ,   有田里加

ページ範囲:P.627 - P.630

 拇指爪のみならず示指爪にも両側性にみられた25歳女性例.発症は物心がついた頃よりでその経過は長い.患爪には中央部を縦走する帯状の陥凹面と同部にほぼ等間隔に横走する一連の幅の狭い小隆起がみられ,ちようど洗濯板の外観を呈した,原因として拇指爪では同側示指爪の先端,また示指爪では同側拇指を支えとし同側中指尖で習慣性に無意識のうちに強く圧迫し,爪あるいは指をもてあそぶ病癖の存在することを認めた.矢田部・ギルフォド性格試験ではB'型(不安定不適応積極型の傾向を示す)の成績が得られた.
 本症に関する文献は少なく,未解決のまま残された問題も多々あり,あらたな症例の追加ならびに研究が望まれるが,そのためにも本症の独立症としての臨床上の地位を確立し,一般の関心を高めるべきことを強調した.また病名としては簡にして要を得たものであることが望ましいが,一案としてHabit tic nail dystrophyを提案した.

X-linked Ichthyosisの1例

著者: 平井玲子 ,   戸田浄 ,   小堀辰治

ページ範囲:P.631 - P.635

 患者は14歳男,生後10カ月頃より全身に魚鱗癬様皮疹が生じた.家系内の男子2名にも同様の皮疹をみとめ,組織学的には顆粒層の菲薄化を欠くことより,X-linked Ichth—yosisと診断した.皮疹の出現時期,保因者の角膜所見等は従来の記載と矛盾する点を中心に考察し,本症の診断には遺伝形式がもつとも重要であることを報告する.

Stellate Spontaneous Pseudoscars

著者: 斉藤隆三 ,   山手哲明 ,   山本達雄

ページ範囲:P.637 - P.640

 Colombら(1967)により報告された"Stellate spontaneous pseudoscars"は60歳以上の老人の手背から前腕伸側にしばしばみられる皮膚変化で,その臨床像は線状,三角形,星形などを呈し,やや浸潤ある白色調瘢痕様皮疹で,自覚症状はない.病理組織学的には真皮上層での線維性結合織の集塊とされているが,自験例はいずれも膠原線維の変性が主体をなしていた.その発生頻度について統計学的検索を行つたが,平均37.4%の発生率をみるも,男性は女性に比し有意の差をもつて多く発生することが知れた.年齢別の発生率は男女共に年齢差はなく,本症は60歳でほぼ完成され,その後の発生は少ないものと思われる.

刺青における墨粒子の電顕的局在ならびに粒子の動態に関する考按

著者: 大熊守也 ,   手塚正 ,   田中卓

ページ範囲:P.641 - P.645

 刺青の5症例につき,電顕的に検索した結果,墨粒子はすべて組織球様細胞中に存在し,大部分,血管周囲にみられた.また粒子は,リンパ系を経て,一部除去されたものと考えて粒子の真皮内動態に関しての仮説を提示した.

マイオジールによるFlare Up現象

著者: 江竜喜史 ,   斎藤利子

ページ範囲:P.647 - P.649

 後腹膜リンパ系造影のためマイオジールを両側の足背皮下リンパ管内に注入後,17日目に両側の足背から下肢の内側に帯状に配列した小紅斑を生じた症例を報告した.患者におけるマイオジール皮内反応は15分後・48時間後ともに陽性であつた.しかし,正常人(対照)4人における皮内反応がいずれも15分後一次刺激反応陽性であつたことから,患者における皮内反応の成績は15分後が偽陽性反応,48時間後が真の陽性反応と判定された.マイオジール注入から皮疹発現までの期間,皮疹の分布,および皮内反応の成績から,皮疹はリンパ管から漏出したマイオジーレによるflare up現象と推測された.なお,対照1人において皮内反応後2週間日にflare up現象が見られた.

薬剤

5-Fluorocytosineで奏効したクロモミコーシスの1例

著者: 久保勇治 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.653 - P.657

 クロモミコーシスの治療には外科的療法とアンホテリシンBの局注ないし点滴静注療法が広く行われてきたが,最近Hoffmann-La Roche社で開発された5—Fluorocytosine (5FC)が出現して以来,その主役の座は5FCに移行した感がある.
 我々も最近,51歳,女性のおそらくは自家接種によると思われるクロモミコーシスに5FCを使用したところ,顕著な効果がみられ,治療中止後6カ月に至るも再発をみない1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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