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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科30巻9号

1976年09月発行

雑誌目次

図譜・407

毒ガス取扱者に発生した有棘細胞癌

著者: 木村俊次 ,   長島正治

ページ範囲:P.666 - P.667

患者 66歳,男子
初診 昭和46年2月25日

綜説

血管透過性亢進物質

著者: 藤井節郎 ,   田村禎通

ページ範囲:P.669 - P.675

 血管透過性を亢進する物質として,ヒスタミン,セロトニンおよびこれを遊離させる物質,キニン,あるいは補体系の生成物としてのアナフィラトキシンなどが知られている.これらの物質は炎症のchemical mediatorであり,生体が何らかの原因によつて損傷を受けたり,抗原抗体反応が起こつたりすると,補体系,線溶系,キニン産生系のプロ酵素が活性化され,それに伴なつて産生される.本稿では,これらの血管透過性亢進物質の化学的性状や生成機序および炎症における役割について概説したい.

原著

播種性好酸球性膠原病の1例

著者: 森安豊子 ,   樋口道生 ,   山口全一

ページ範囲:P.677 - P.683

 22歳,女子の播種性好酸球性膠原病の1例を報告した.自験例は臨床所見ではほぼ全身,殊に両下肢に著明に熱感を伴う浮腫性紅斑,蕁麻疹様,痒疹様あるいは多形紅斑様の多彩な皮疹が出現し,臨床検査成績では末梢血と骨髄像で著明な好酸球増多や蛋白尿を示し,全身的には発熱,肝腫大等を認めた.表在性リンパ節腫大や胸部レ線上の異常所見はみられない.病理組織学的には紅斑部の生検像で,真皮乳頭下層〜皮下組織にかけて著明な好酸球を主とする細胞浸潤が認められ,治療としては副腎皮質ホルモン剤の内服が著効を奏した.
 以下,本症につき自験例を中心に,従来の報告例を併せて検討し,その臨床的,病理組織学的所見,臨床検査成績,病因及び他疾患,特に好酸球性白血病との相関性につき論述した.

Pseudoxanthomatous Rheumatoid Nodules

著者: 北村啓次郎 ,   籏野倫

ページ範囲:P.685 - P.690

 63歳男子,慢性関節リウマチの経過中多数の大結節を全身諸所に生じ,ついには肺線維症,肺性心で死亡した1例を報告した.本例の皮下結節は大きく多発性で,破れると漿液膿性粘稠液の流出をみとめるcysticなもので,1967年Wattらがpseudoxanthomatous rheumatoid nodulesとして報告した症例に極めて類似するものであつた.Wattらの例は組織像では特異な所見に乏しく詳細な記述がないが,自験例では,fibrinoid degenerationを伴うnecrobiotic collgen tissueに加えて,著しいfoam cellの浸潤を認め,これらが崩壊してcyst内容物となつてゆく様に見えた.さらにこれらfoam cellは脂肪染色陽性でcyst内容及び血中の脂質の分析などから何らかの不明のストレスのために,異常に貪食能の亢進した組織球線維芽細胞系が血中由来の脂質を貪食し,かかるfoam cellが形成されたと考えた.したがつてRA noduleの1異型としてのpseudoxanthomatous rheumatoid noduleという病名は,組織学的にも妥当性のあるものと思われる.

石灰沈着を伴つた皮膚筋炎の小児例について

著者: 桑原京介 ,   長嶋典安 ,   西山千秋 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.691 - P.695

 現在,著明な筋症状はなく,臨床検査上GOT, GPT, CPK, Ca, P等に異常所見を証しえないが,顔面,耳介から耳後部,指指間関節背面に紫紅色斑あるいはpoikiloderma様病変および肘頭と膝蓋部に石灰沈着を併発するなどの特有な皮膚所見を呈し,筋電図および筋肉,皮膚の生検像に典型的所見をみとめ,石灰沈着を伴つた小児皮膚筋炎と診断しえた10歳男児例を報告した.かかる症例の報告は本邦皮膚科領域においては少ない.また小児皮膚筋炎の特徴は生命に対する予後が良好なこと,悪性腫瘍の併発を欠くこと,高頻度に石灰沈着を伴うことなどであることを再確認した.

耳下腺混合腫瘍に合併した多発性脂腺腫瘍

著者: 奥知三 ,   山田瑞穂

ページ範囲:P.697 - P.702

要約 75歳,男子.約15年前より全身に瘙痒性紅斑があり,また約8年前より右耳下腺部に腫瘤があつた.初診時,全身に強い落屑ある紅褐色斑があり,右耳下腺部に手拳大の弾性硬の腫瘤をみとめた.また,胸部および背部にはそれぞれ1個ずつ,小指頭大の表面扁平な小結節がみとめられた.組織学的には,耳下腺部の腫瘤は多形腺腫から明細胞癌への悪性化がみられ,背部の小結節は脂腺腫および脂腺癌の像を呈していた.
本例では,耳下腺腫瘍および脂腺腫瘍いずれも転移などみとめられず,予後は良好であり,更に,興味ある脂腺腫瘍の組織像がみとめられた.また縦隔洞に腫瘍を疑わせる陰影を認め,紅皮症を合併していた.
最近,多数の脂腺腫瘍と内臓の悪性腫瘍特に結腸癌との合併する症例を"Torre症候群"として報告されているが,本例はこの症候群に類似している.

紅斑性天疱瘡にみられたIsolated Epidermolytic Acanthoma

著者: 玉置邦彦 ,   小川喜美子 ,   石橋康正 ,   宮本正光

ページ範囲:P.703 - P.710

 50歳,男子の典型的な紅斑性天疱瘡の1例を経験したが,その皮疹と考えて切除した組織片の一つに,組織学的にEpidermolytic Hyperkeratosisを認めた.これをIsolated Epidermolytic Acanthomaと診断し,紅斑性天疱瘡とは独立に存在する病変と考えてここに報告する.また紅斑性天疱瘡皮疹の電顕像で,細胞間に特異なループ状構造を認めたので,その所見について若干説明を加えた.

北海道におけるTrichophyton verrucosum感染症について

著者: 川岸郁朗 ,   三浦祐晶 ,   小野塚仡

ページ範囲:P.711 - P.717

 北海道大学皮膚科,札幌斗南病院,および道内協力病院8施設において,昭和47年8月より昭和50年8月迄の3年間に観察されたTrichophyton verrucosum感染症105例を集計して検討した.北海道においては,Trichophyton verrucosum感染症はさほど稀ではなく,今日では北海道全域にわたつて蔓延しているとの印象をうけた.

悪性リンパ腫に合併した汎発性単純疱疹

著者: 猿田隆夫 ,   木村秀人 ,   大隈貞夫 ,   中溝慶生 ,   光山正男 ,   加地正郎 ,   日野由和夫

ページ範囲:P.719 - P.726

 悪性リンパ腫の経過中に,汎発性単純疱疹の出現をみた43歳,男の症例を報告した.
 悪性リンパ腫は,頸部,鼠径部,腋窩のリンパ節腫大と,全身皮膚の播種状小結節としてみられ,光顕的,電顕的に悪性リンパ腫と診断した.検査所見ではIgAの減少,ツベルクリン反応陰性で,末梢血,骨髄像はほぼ正常であつた.VEMP療法開始1カ月後,全身皮膚に水疱形成をみたが,電顕的にヘルペスウイルスを認め,水疱内容のVero細胞接種により翌日,CPEを認めたことから単純疱疹と診断した.この際,CPEの形態で円形綿胞の弱い結合を認め,また水疱組織の電顕所見で核内に線維状構造を認めたことから,分離単純疱疹ウイルスは2型と同定した.また興味ある所見として,水疱底部の下方の真皮に浸潤している腫瘍細胞内にも,その核および細胞質に電顕においてヘルペスウイルスを認めた.本例は悪性リンパ腫に合併した汎発性単純疱疹としては,本邦における第1例である.

下口唇に生じたCirsoid Aneurysm

著者: 田村晋也 ,   北村啓次郎 ,   長島正治 ,   藤野豊美

ページ範囲:P.729 - P.733

1)20歳男子の下口唇部に発生した異型血管腫の1例を,Conwayの記載に従つて,cirsoid aneurysmと診断し報告した.
2)下口唇部は暗赤色に腫脹すると共に,右下顎部には拍動性皮下腫瘤を触れ,同部には血管性雑音が聴取された.
3)組織学的にはいわゆるcapillary hemangiomaを伴うarteriovenous malformationであり,その変化は真皮のみならず皮下組織から筋層にまで達していた.
4)外科的にこれを加療し,美容的にも満足すべき結果を得た.術後約1年未だ再発を訴えていない.

一頁講座

Trichophyton violaceumによる小水疱斑状白癬

著者: 岩重毅 ,   村田譲治

ページ範囲:P.683 - P.683

患者 1年6カ月の男児
初診 昭和49年5月8日

薬剤

尋常性白斑のFluocinonide外用療法—二重盲検法による評価

著者: 清寺真 ,   加藤泰三 ,   飯島進 ,   長尾貞紀 ,   久木田淳 ,   伊藤裕喜 ,   浜田稔夫 ,   三島豊 ,   松中成浩 ,   高折修二

ページ範囲:P.735 - P.746

 尋常性白斑に対する治療については,色素細胞内のメラニン生成能の回復を目的としたミラチロシン療法,本症における血清亜鉛の低下,血清鉄結合能の低下,血清銅に対する血清オキシターゼ値の異常2等にもとづく,鉄・銅イオントフォレーゼ療法3)などの他,点状皮膚移植法4),Thiersch植皮法5),クロールプロマジン療法6)など多くの療法が提唱されたが,今日広く用いられているのはナイル河デルタ地域に野生する草(ammi majus Linn)の種子および根より抽出分離された8—methoxy—psoralen, 8—isoamylene oxypsoralenを主成分とするpsoralen療法であるが,これに抵抗する症例も数多くみられる.またその光毒作用(phototoxic reaction)によるsun burn等の皮膚障害,正常皮膚の色素沈着,胃腸障害等の副作用もみられ,病巣を治癒させることはいまだ容易でない.
 尋常性白斑における色素細胞メラニン生成能の欠落は,色素細胞内におけるゴルジ器官のpremelanosome膜形成能の欠如により発生するがその原因はいまだ明らかでない.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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