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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科31巻1号

1977年01月発行

雑誌目次

図譜・411

基底細胞上皮腫を併発したOrganoid Nevus

著者: 篠島弘 ,   木村和敏

ページ範囲:P.6 - P.7

患者 31歳,男子
初診 1974年4月9日

原著

紅色硬結を主訴とした白血性細網症

著者: 北村啓次郎 ,   田村晋也 ,   栗原誠一 ,   籏野倫

ページ範囲:P.9 - P.17

 腰背部前胸部の結節性紅斑様皮疹および両側乳房内多発性結節を皮膚症状とし,末梢血中に異型単核細胞(64.5%),骨髄異型細胞(92.8%),の出現をみとめ,約8カ月の経過で死亡した29歳女子のleukemic reticulosisの臨床的知見を記載した.本例の直接死因は病末期に合併した全身性カンジダ症,とくにカンジタ性腸炎による麻痺性イレウスであり,本症における真菌感染症合併とその予後に注目した.
 更に,皮膚,末血,リンパ節,骨髄中の異常細胞について光顕的,電顕的,細胞化学的に検討を加え,すべて同一の細網細胞様異型細胞からなることを認めた.
 臨床皮膚科学的に本例は現時点では原発部はきめがたいが,malignant reticulosisの白血化したもの,即ち,leukemic reticulosisあるいは,reticuloblastosisの1例として整理しておきたいとする考えを述べた.

Acrogeriaの2例

著者: 玉置邦彦 ,   赤城久美子 ,   磯山勝男 ,   石橋康正

ページ範囲:P.19 - P.28

 27歳男子,24歳女子の典型的なAcrogeriaの2例を報告し,自験例を含めた本邦報告例の5例について,外国での報告例と比較しながらまとめた.また,病変部の電顕的観察により,本症においては病変部における線維芽細胞の機能異常の存在が推測される所見を得たことを述べた.

Microsporum canisによるケルズス禿瘡—DLE病巣上に生じた成人例を含めて

著者: 滝沢清宏 ,   紫芝敬子 ,   玉置邦彦 ,   飯島正文 ,   南光弘子

ページ範囲:P.29 - P.34

 過去1年間(昭和49年9月〜昭和50年9月)にMicrosporum canisを原因菌とするケルズス禿瘡を3例経験した.2例は小児であり,その1例の母に本菌による斑状小水疱性白癬を認めた.残る1例は円板状紅斑性狼瘡(DLE)の病巣上に生じた成人例である.3例ともその経過中局所ステロイド剤が連用されていた.M.canisによるケルズス禿瘡の成人例は稀であり,本例では病巣の特殊性(特に毛孔の開大)に加え局所ステロイド剤の連用が発生因子として重要と思われた.

Granuloma glutaeale infantum

著者: 山崎紘之 ,   戸田浄

ページ範囲:P.35 - P.39

 Granulorna glutaeale infantumは主として,乳児のおむつ部位に発生する原因不明の肉芽腫性疾患であるが,我々は女児の1歳5カ月という比較的遅い時期に発症した1例を経験した.
 患者は未だ離乳をしておらず,栄養状態不良であつた.生後1カ月頃よりおむつかぶれとしてフルコートクリームを常用していた.1歳4カ月頃より左大陰唇,及び陰部外側に紅色結節を生じ漸時拡大してきた.大きさは鳩卵大の暗紫紅色の表面平滑,弾性硬の半球状腫瘤であり,一つは小指頭大である.いずれも境界明瞭で皮下組織との可動性を有する.皮疹は発症後2カ月頃より無加療にて消退し始め5カ月後ほぼ消失した.
 組織は不全角化を伴う軽度の角質増殖と表皮の肥厚,一部顆粒層の肥厚を示しexozytoseを散見する.真皮上層から下層に多形核白血球,好酸球,リンパ球,形質細胞の浸潤が著明な肉芽腫像である.
 真菌類は証明されなかつた.
 本症の発生原因は未だ明らかではないが,過去の症例と自験例を比較し,発生原因,治療等に言及した.

特異な臨床像を呈した石灰化上皮腫の3例—最近10年間の教室例の集計を併せて

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.41 - P.47

 最近われわれは水庖様外観を呈した本腫瘍の2例と潰瘍形成をみた1例とを経験したのでこれを報告するとともに,最近約10年間に当教室で経験された症例を集計し,計36例について主に臨床所見から検討を加えた.この結果は従来の報告とほほ同様であつたが,被覆表皮に何らかの変化を伴つた症例は65%にも達した.その内訳は色調の変化を示したものが多く,この他毛細血管拡張,水疱様変化,潰瘍形成,紅色腫瘤形成などもみられた.なお,水疱様変化を示したものは,最近経験した症例を含めて4例を数えた.これにこれ迄の本邦報告例14例を併せ,計18例について概観した.

先天性魚鱗癬の1剖検例

著者: 伊東宏 ,   竹峰久雄 ,   児嶋喜八郎 ,   桂伸雄

ページ範囲:P.49 - P.53

 生下時より両眼瞼外反,Collodion skinを呈し,その後全身の高度角化,鱗屑形成を示し77日目にSudden deathをきたした症例を報告する.表皮の組織学的特徴は高度角化と,棘細胞が上部でも垂直に配列し顆粒細胞の扁平化が少ないことにある.さらに,顆粒細胞における粗大Keratohyalin顆粒の増加,Tonofibrilの減少,Desmosomeの増加などが見られた.剖検所見として全般に内分泌器の萎縮が見られたが胸腺はむしろ肥大し従来の報告例と異なる.

Nevoid Basal Cell Epithelioma Syndrome(続報)—Nevoid Basal Cell Epitheliomaを中心として

著者: 新井春枝

ページ範囲:P.55 - P.63

 70歳男子のNevoid Basal Cell Epithelioma Syndrome(NBCES)の症例に多発する母斑性基底細胞上皮腫について検討し以下の結果を得た.
1)臨床像と組織像は必ずしも対比し得るものではない.
2)組織像はtiny NBCE,表在型,表在型と充実型,充実型,特殊な充実型,腺様型および線維上皮腫型と多様である.
3)組織像と基質のあり方には若干の対比があつた.
4)組織学的に種々の表皮性嚢腫が存在した.

しいたけによる中毒疹

著者: 中村雄彦

ページ範囲:P.65 - P.68

 しいたけによる中毒疹の23例を報告した.男性19例,女性4例.年齢では最低が19歳,最高が71歳.年代別では20歳台3例,30歳台6例,40歳台4例,50歳台6例,60歳以上3例であつた.皮疹は躯幹を中心に全身におよぶ紅斑で,一部滲出性となりKobner現象を有する特徴的なものである.

Ear PiercingによるGranulomaの2例—Earringの目的で耳朶に小孔を開け,肉芽腫を形成した2症例

著者: 志賀剛 ,   加藤安彦

ページ範囲:P.69 - P.72

 イヤリングを装着するため,耳朶に小孔を開ける手術は一般にピアスと呼ばれ最近わが国でも広く行なわれているが,術後長期にわたり肉芽腫形成を示した2症例を報告する.今後同様の症例が増加するものと考えられる.

印象記

アメリカ各大学の皮膚科教室を訪ねて(その1)

著者: 山田瑞穂

ページ範囲:P.74 - P.76

 PhiladelphiaにあるPennsylva—nia大学のKligman教授の研究室は,大学構内から少し離れたところに,2つの建物にわかれている.1つは大学とは無関係の彼個人の財団の研究室で,研究は器械でするのではない,頭でするものだとの彼の持論を裏付ける如く,特別な研究設備,器械などはなく,近代的絵画がかかつている,展示場かオフィスのような部屋で,簡単な装置を使つて経皮吸収や皮膚の生理の実験が行なわれているようだつた.その一室でドイツから来ているあるDrが,プロピレングリコール単独のパッチテストは陽性で,スコッチテープのストリッピング後は陰性であるとのデーターを話してくれた.私が数年前に行なつた実験とは全く逆で大分議論をした.この後で訪れた他の研究室でもそうであるが,向うの連中は必ず,お前は何に興味があるかと聞ぎ,自分はこういうことをやつていて,こういうデーターを持つている,とスライドや標本なども見せて,とうとうとしやべり出す.お互いが噛みあわないときはどうにもならないが,こちらもスライドなどを用意して,得意なところを少し見せておかないと,聞かされつぱなしで馬鹿みたいである.ここには,有能な黒人の事務長がいて,2つの研究室の事務的なこと,人事問題,対外折衝など一切を切りもりしているとのこと,アメリカの能率のよさの一端でもあろう.
 もう1つの研究室は通りをへだてた向かいにあり,初代教授の名を冠してDuhring Laboratoriesと呼ばれ,せまい廊下には古い皮膚病図譜,全員シルクハット姿の古い学会の記念写真,またKligman教授のはだかの油絵(前の夫人が描いたという)などがたくさんかかつていた.それでもこちらの研究室の方は動物室や,細菌培養室などがあつて,かなり実験室らしいふん囲気であつた.オーダーを出すと数時間のうちに,希望通りの性別,人種,年齢,部位のヒトの皮膚の乾燥保存したものが届けられるとのこと,大したものである.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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