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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科31巻10号

1977年10月発行

雑誌目次

図譜・420

巨大な細胞青色母斑

著者: 北村弥 ,   吉岡順子

ページ範囲:P.770 - P.771

患者 3カ月,女児
初診 昭和46年11月15日

綜説

サルコイドーシスにおける2,3の問題

著者: 福代良一

ページ範囲:P.773 - P.783

 われわれが金沢大学皮膚科において最近15年間に観察したサルコイドーシスの患者は約120名である.それらの患者の診療に際して問題になつた事項の若干を下に述べる.

原著

爪甲における横溝形成の機序

著者: 東禹彦

ページ範囲:P.785 - P.790

 爪甲における横溝形成の機序を解明する目的で,各種爪疾患に出現した横溝を臨床的に観察するとともに,組織学的に検討した.臨床的には原因の如何を問わず,横溝を生じている場合には後爪廓部が後退しているのが共通した所見である.組織学的には,爪甲は矢状断面で波形を示し,凸部で厚く,凹部で薄くなつていて,横溝は爪甲表面に限局した変化でなく,爪甲全層にわたる変化により形成されることがわかる.一般に爪母に炎症が波及すれば,爪甲角質には角化異常部や浸潤細胞が取り込まれた部が認められるが,横溝を形成した爪甲にこれらの所見は必発ではない.したがつて,横溝形成に爪母の炎症はかならずしも関与する必要はない.
 以上の臨床所見,組織所見および爪甲の発育方向に関する理論から,横溝は後爪廓遊離縁の位置の変動によつても形成されるという仮説が成立する.

Eccrine Poromaの1例—特にその電顕的検索を中心に

著者: 里見行義 ,   堀真 ,   西本勝太郎

ページ範囲:P.791 - P.798

 65歳家婦の右乳房下部の扁平な褐色調の腫瘤を切除し光顕,電顕的検索を試みた.光顕的には表皮内に腫瘍巣の増殖があり,その中に大小の管腔がみられた,中にジアスターゼ抵抗性PAS陽性物質が存在し,eccrine poromaと診断した.電顕的には細胞質内空隙形成,腫瘍細胞内のメラニンの存在,さらに管腔壁の膜様構造など興味ある所見がえられた.

Monoclonal IgG増加を伴う多形皮膚萎縮症兼後天性表皮水疱症

著者: 小林陽太郎 ,   水野信行

ページ範囲:P.801 - P.805

 40歳,男性.6〜7年前から全身性の多形皮膚萎縮症があり,その経過中後天性表皮水疱症を併発した.血清IgAおよびIgEが高値を示し,とくにIgGは単クローン性増加を示した.しかし,多発性骨髄腫などの認めるべき基礎疾患はなかつた.組織像では表皮下水疱および真皮上層から中層にかけての酸性ムコ多糖類の沈着を認め,発生病理として結合織成分,とくにムコ多糖類の代謝異常が考えられた.ただし,これと血清免疫グロブリンの増加との関係については充分説明ができなかつた.

小児サルコイドージス—苔癬様角化性皮疹を示した2例

著者: 木下正子 ,   川田陽弘

ページ範囲:P.807 - P.811

 小児のサルコイドージスは学童の集団X線検査によりその発見される頻度は高くなりつつあるが,学齢期以下の幼小児の本症は,比較的自覚症の少ない疾患であり,発見も困難である.しかし年少児のサ症は,諸家の報告(Jasper, Bautista及びNorthら)にみられるように,特異かつ多彩な症状を示し,進行性であり,成人の本症とはその病像が異るように思われる.即ち関節症状,皮膚所見,眼症状が殆んど必発の症状であり,肝腎及び唾液腺は殆んど侵されることなく,肺及び肺門部リンパ腺腫脹も稀である.また全身症状も少ない.我々は上記報告にほぼ該当し,生後1年未満に発病したと思われる2例を経験したので報告する.本邦における報告例はまだない.

Disseminated Granuloma Pyogenicum

著者: 木村恭一 ,   藤田甫

ページ範囲:P.813 - P.817

 50歳,女子,躯幹に汎発したGranuloma pyogenicumの1例を報告するとともに,本症の発生病理に関して,最近の興味ある知見を若干の文献から紹介した.

口腔粘膜に限局する尋常性天疱瘡の1例

著者: 中川恵美 ,   西川武二 ,   籏野倫

ページ範囲:P.819 - P.822

 発疹初発以来2年余を経過するも発疹が口腔内にのみ限局し,DDS内服にて良好な経過を示している尋常性天疱瘡の1例を報告した.症例は77歳,男子.口唇粘膜疹の組織所見は基底層直上の棘融解性水疱.螢光抗体直接法で表皮細胞間にIgG,一部にC3,IgMの沈着を認めた.血中天疱瘡抗体は640〜160倍陽性.DDS 75mg/日内服により発疹は軽快し,現在25mg/日内服を継続中であるが,口内に軽度のびらんをみるのみで経過良好である.発疹が1年以上口腔に限局する本邦報告例をまとめ,同時に本症例における螢光抗体法の知見等について考察した.

眼病変を伴つた色素失調症(Bloch-Sulzberger症候群)について

著者: 辻口喜明 ,   花輪滋 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.823 - P.828

 色素失調症の典型的皮膚病変を主訴として来院した生後12日目の女児例を経験した.合併症の有無につき精査したところ,究極的には水晶体後線維症へ進展することが考えられる初期の眼病変を見い出し,早期に眼科的に加療しえた貴重な症例である.本症の眼病変の約1/3は後水晶体線維症あるいは仮性網膜膠腫と呼ばれ,その多くは失明しているとの事実を知り,今更ながら眼病変の早期発見,早期治療の必要性を再確認させられると共に,眼病変に十分留意すべきであることを強調したい.

口腔に限局した尋常性天疱瘡の1例

著者: 藤田真知子 ,   中村雅明 ,   亀山忠光 ,   朱雀直道 ,   中野正三 ,   丸田宏幸

ページ範囲:P.829 - P.833

 尋常性天疱瘡が長期にわたつて口腔粘膜に限局して発症している報告例は少ない.最近,私たちは,35歳の女性で,6年間のあいだ口腔粘膜にのみ限局し,いまだ皮膚症状を認めない経過観察中の尋常性天疱瘡の1例を経験しているので,その概要を報告した.
 また,軽症のもの,あるいは初期症例では血中の抗表皮細胞間抗体は証明されないとされているが,本症では,初診時の初回検査にて抗体価は10倍値と低かつたが,抗表皮細胞間抗体が認められている.
 今後なお病変の推移と,抗表皮細胞間抗体検査の変化等につき観察を続けて行きたい.

乾癬患者における慢性砒素中毒症—有棘細胞癌,Bowen癌およびBowen病を多発した1例

著者: 細川みゑ子 ,   設楽篤幸

ページ範囲:P.835 - P.839

 45歳,男子.尋常性乾癬治療の目的でアジア丸を約5年間にわたり(亜砒酸で総量約10.8g)服用し,慢性砒素中毒症をきたした.その後,約14年後に有棘細胞癌,Bowen癌およびBowen病を多発してきた.組織学的に検索した10個の皮疹中,有棘細胞癌2個,Bowen癌2個,Bowen病3個,砒素角化症3個が認められた.また有棘細胞癌の転移病巣が左鼠径部に認められた.有棘細胞癌,および転移病巣部の組織には,いずれも組織学的にBowen病を思わせる組織学的特徴は認められなかつた.外科的療法,放射線療法および抗癌剤投与により経過良好で,約1年6カ月後の現在,悪性皮膚病変の再発,新生は認められない.しかし,多数の砒素角化症がなお存在していることから,今後の注意深い観察が必要である.

爪甲下黒色腫の2例—螢光法(Falck & Hillarp)による観察所見を中心として

著者: 森嶋隆文 ,   花輪滋 ,   石川豊祥 ,   遠藤幹夫 ,   辻口喜明

ページ範囲:P.841 - P.846

 50歳,女の右第1趾および34歳,男の右第1指に生じた爪甲下黒色腫の2例を経験し,病理組織学的ならびに螢光法(Falck & Hillarp)を用いて検討し,興味ある若干の知見を得た.50歳の女性例は悪性黒子型黒色腫あるいは肢端黒子様黒色腫(acral lentiginousmelanoma),34歳男性例は結節性悪性黒色腫に一致するものと考えられた.これら症例に,さきに報告した左第3趾に発症したPagctoid悪性黒色腫の53歳の女性例を加えて,指あるいは趾の悪性黒色腫の3病型を主として螢光法的観点から比較考察したところ,形態学的にも特異螢光の性状に関してもそれぞれ病型によつて特徴があることを知つた.これら病型間における螢光法上の差違はそれぞれ異なつたメラニン代謝系を反映しているものとも推測される.

亜鉛欠乏による腸性肢端皮膚炎様症状—胃剔除後,経静脈栄養中にみられた1例

著者: 佐藤寿之 ,   石橋明 ,   中条知孝 ,   宇都宮潔 ,   斉藤昌三 ,   青柳利雄 ,   小野沢君夫

ページ範囲:P.847 - P.851

 60歳女子,胃腫瘍のため胃亜全摘出術をうけた後,嘔気,食思不振が続き,貧血,低蛋白血症を来たして鼻腔栄養を行なつているうちに下痢が出現した.中心静脈栄養を開始したにもかかわらず,貧血等が漸増するため輸血を施行したところ,検査所見の改善と共に下痢も消失した.その後,消化管のX線検査のために上記栄養補給を減じた前行後から下痢が再発し,腸性肢端皮膚炎膜症状が急速に現れた.亜鉛値は8.4μg/dlと正常の約1/10であつた.混合感染に対する処置並びに鼻腔栄養の経口摂取への切換えと共に,皮膚症状はやや軽快し,亜鉛値も22μg/dlまで上つたが,改善の速度が遅いので亜鉛を投与したところ劇的に急速な改善をみた.
 腸性肢端皮膚炎の本態がまだ解明されていない現在,本例は亜鉛欠乏が腸性肢端皮膚炎症状を起こすことを裏付けるものと思われる.

先天性皮膚カンジダ症の1例—ピマリシン軟膏塗布時におけるピマリシンの血中濃度について

著者: 中嶋弘 ,   丸山光雄 ,   佐藤卓三

ページ範囲:P.853 - P.856

 先天性皮膚カンジダ症の1例に2%ピマリシン軟膏と1%クロトリマゾールクリームを全身の半面ずつに1日1回単純塗布し,14日間で完治させ得た.最も心配されたこれら薬剤による全身的影響については,対象が新生児であることから十分な検討をなし得なかつたが,臨床症状,発育などに関する限り全く異常を認めなかつた.そして2%ピマリシン軟膏外用中に採血し測定したピマリシンの血中濃度は今回試みた実験方法では全く検出不能であつた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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