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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科31巻10号

1977年10月発行

文献概要

原著

亜鉛欠乏による腸性肢端皮膚炎様症状—胃剔除後,経静脈栄養中にみられた1例

著者: 佐藤寿之 石橋明1 中条知孝1 宇都宮潔2 斉藤昌三2 青柳利雄2 小野沢君夫3

所属機関: 1杏林大学医学部皮膚科教室 2杏林大学医学部第三内科教室 3杏林大学医学部第二外科教室

ページ範囲:P.847 - P.851

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 60歳女子,胃腫瘍のため胃亜全摘出術をうけた後,嘔気,食思不振が続き,貧血,低蛋白血症を来たして鼻腔栄養を行なつているうちに下痢が出現した.中心静脈栄養を開始したにもかかわらず,貧血等が漸増するため輸血を施行したところ,検査所見の改善と共に下痢も消失した.その後,消化管のX線検査のために上記栄養補給を減じた前行後から下痢が再発し,腸性肢端皮膚炎膜症状が急速に現れた.亜鉛値は8.4μg/dlと正常の約1/10であつた.混合感染に対する処置並びに鼻腔栄養の経口摂取への切換えと共に,皮膚症状はやや軽快し,亜鉛値も22μg/dlまで上つたが,改善の速度が遅いので亜鉛を投与したところ劇的に急速な改善をみた.
 腸性肢端皮膚炎の本態がまだ解明されていない現在,本例は亜鉛欠乏が腸性肢端皮膚炎症状を起こすことを裏付けるものと思われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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