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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科31巻11号

1977年11月発行

雑誌目次

図譜・421

尋常性狼瘡

著者: 森下玲子

ページ範囲:P.866 - P.867

患者 76歳,男
初診 昭和49年11月19日

綜説

皮疹を伴うT-リンパ球増殖性疾患—Sezary症候群とその周辺

著者: 笹岡和夫 ,   上平憲 ,   野中美紀 ,   松永マサ子 ,   高橋勇 ,   阿南貞雄 ,   山浦英明 ,   穐山富雄

ページ範囲:P.869 - P.876

 従来,リンパ細網系細胞の腫瘍性増殖疾患には,腫瘍細胞の細胞形態にもとづいた病理組織学的分類がなされ,これがそのまま臨床疾患名として使用されてきた.近年になり,リンパ球には,その起源,細胞膜抗原と表面形質および機能面から,T—リンパ球(胸腺由来リンパ球:T-cell)と,B—リンパ球(骨髄ないしBursa由来リンパ球:B-cell)の2つのpopulationが存在することが明らかになり,これらを同定する方法も開発されるようになつた1〜4)
 このT-cell, B-cellの概念は,ヒトの腫瘍,とりわけリンパ系細胞の増殖性疾患にも適応され,腫瘍細胞のsurface markerによる解析が行われるようになつた結果,従来組織学的所見からのみなされていたリンパ細網系腫瘍の分類についても,発生学的,機能的見地からの新しい分類(T—cell, B—cellによる分類)19)が試みられてきている.

原著

原発性膿皮症様アスペルギルス症

著者: 金原武司 ,   大槻典男 ,   佐藤憲次 ,   福代良一 ,   狩野哲自

ページ範囲:P.877 - P.882

 重症熱傷の患者にみられた原発性膿皮症様アスペルギルス症の1例を述べた.症例は40歳の男,生来の聾唖.昭和51年1月17日,重油ボイラーが爆発,重い熱傷を受け,直ちに入院した.熱傷の範囲は65%,部位は頭・顔・四肢が主で躯幹には少なく,熱傷の程度はⅡ〜Ⅲ度.患者は入院当初より意識なく,レスピレーター装着,輸血と輸液,留置カテーテルで導尿.熱傷局所はヒビテン清拭後コリマイホームを散布した.入院2週目頃から,熱傷とは別に新しく,背中から腰にかけて膿疱性皮疹が発生した.それらは密集・融合して中心部は壊死状となり,辺縁に紅暈を示した.膿疱の直接検鏡で,太い分岐性菌糸(+).小膿疱の組織像:角層内・角層下小膿瘍内・毛嚢性膿瘍内などに隔壁のある太い菌糸がみられ,真皮の壊死巣内には菌糸の放射状発育が認められた.培養:膿疱性皮疹からAspergillus fumi—gatus・A. flavus・A. terreusの3種を分離した.経過:受傷後24日目に呼吸不全で死亡.剖検:1)肺実質内と膀胱粘膜にアスペルギルス性病変あり,両者からA. fumigatugを分離した;2)膀胱粘膜にはカンジダの混合感染があつた;3)皮膚のアスペルギルス性病変の辺縁部の壊死巣の表面には菌苔がみられ,その処々に閉子器様のものが認められた(培養は行なわず,菌種不明の菌の腐生と思われる).

Oral Florid Papillomatosisの1例

著者: 石原紘 ,   出来尾哲 ,   森安昌治郎 ,   片山巌

ページ範囲:P.883 - P.886

 75歳男性の口腔粘膜にみられたoral florid papillomatosisを報告した.臨床的,病理組織学的に典型例であつたが,治療としてステロイド外用によく反応した.本例は総義歯の慢性刺激による上皮の反応性良性過形成と考えたが,文献的にみても本症の発生と総義歯の装着との間に深い関係があるように思われた.また,類症との異同について若干の考察をおこなつた.

Trichilemmal Cyst—光顕的ならびに電顕的観察

著者: 木村俊次 ,   中川恵美

ページ範囲:P.887 - P.892

 60歳男子,右側胸部に2年来認められた単発性腫瘤で1.5×1.0×0.5cm,ドーム状,弾力やや硬,被覆皮膚著変なし.自覚症状なし.組織学的に嚢腫壁の一部にkeratohyalinおよび核の遺残を認めるも,大部分は定型像を示す.壁を構成する細胞は電顕的にも外毛根鞘のそれに類似し,多数のdesmosome, tonofiramentの他,少数・円形・小形のkeratohyalinも有する.またMcGavranら1)の電顕所見とは異なつて,角化細胞直下の細胞のかなりのものにmembrane coating granuleが多数認められ,かつこれらが細胞間の小胞性ないし小球状の物質と近接している像もみられた.さらに角化した細胞とそれ以下の層との境界部の所見は,退行期ないし終毛期の棍毛と上皮嚢との関係に酷似しており,これらの点から本嚢腫は退行期ないし終毛期毛嚢の上皮嚢に由来すると考えられ,したがつて本嚢腫の名称としてtrichilemmal cystが最適であると結論した.

若年性黒色腫の1例

著者: 高垣謙二 ,   出来尾哲 ,   岩本俊之 ,   森安昌治郎

ページ範囲:P.893 - P.896

 7歳女児に発生し,臨床的および病理組織学的に典型像を呈した若年性黒色腫の1例を報告した.また文献的に,若年性黒色腫は母斑細胞母斑の1異型であることを確認し,さらに本症における特徴的な所見は,若年性黒色腫の母斑細胞内でメラノゾームの崩壊が亢進しているからであろうと考察した.

サルコイドーシス(結節型)の1例

著者: 山崎雄一郎 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.897 - P.900

 眼のブドウ膜炎を伴ない,表面に鱗屑を付着し,浸潤をふれる小豆大暗赤色丘疹を両側下腿に多数認めた69歳男子例を経験したので報告した,組織学的には真皮全層に境界明瞭な類上皮細胞肉芽腫を認め,BHL陽性・ツ反応弱陽性・Kveim反応陽性を示した.本例は福代・仁木の分類では結節型,Scaddingの分類ではsmall nodular infiltrationsに属する.本病型は一般に予後が良いとされているが,自験例もコルチコステロイド剤の内服を試みることなく,同剤の外用と点眼のみで,皮疹・ブドウ膜炎とも軽快した.

若年性糖尿病患者にみられた黄色腫

著者: 斉藤隆三 ,   輿水隆

ページ範囲:P.901 - P.905

 11歳女児,8歳の時偶然尿糖を指摘されるも放置していたところ,9歳になり外陰部のびらん,頻尿,口渇などを来し精査の結果糖尿病の診断となり,インシュリンによる治療を受ける.しかし,再三にわたり治療が中断され,その度に症状の悪化をみたが,その経過中に高脂血症を来し,肘頭,膝蓋部を中心に発疹性黄色腫の出現をみた.家族歴に糖尿病あるいは黄色腫はみられず.ほぼ正常範囲内にあつた血中の脂質が急激に増加しトリグリセライド5,000mg/dl,コレステロール1,410mg/dlと高値を示し,リポ蛋白分画にてカイロマイクロン27.4%,preβ+αリポ蛋白が59.5%であり,血清は上層のクリーム層と下層の白濁層の2層に分かれ高脂血症の分類でⅤ型に相当する.インシュリン投与により血糖,高脂血症共に軽減した.本例は若年性糖尿病患者にみられた定型的な糖尿病性黄色腫の症例である.

Necrobiosis Lipoidicaの1例

著者: 今井民 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.907 - P.910

 53歳女性に発症したnecrobiosis lipoidicaの1例を報告した.皮疹は下腿前面にあり,ほぼ定型的な像を呈し,組織学的には肉芽腫が真皮変性部をとり囲む所見とともに,毛細血管の肥厚が見られた.変性結合織線維間には脂肪滴も見られた.糖尿病の検索では空腹時血糖,尿糖また眼科的に異常を認めず,50g-GTT, 50g Steroid O-GTTでは境界型であつた.しかるにimmunoreactive insulin (以下IRI)は,50g O-GTTでΔIRI/ΔBG 0.4以下をなし,インスリンの分泌能低下を認め自験例が前糖尿病期にあることを示した.
 一般に前糖尿病期には臨床的に無症状,従来の検査所見に異常は見られないが,インスリン分泌能低下がすでに認められることが,最近強調されている.今回著者らは自験例と糖尿病との関連性を述べ,糖尿病と関連性の知られている皮膚疾患を見る際に,O-GTTに加え,IRIすなわちインスリン分泌能検査の必要性についても強調した.

関西医大アレルギー外来における香粧品による貼布試験成績

著者: 東禹彦 ,   潮田妙子

ページ範囲:P.911 - P.915

 昭和47年から昭和50年までの間に当科で香粧品皮膚炎を疑つた患者168名において,患者持参の香粧品による貼布試験を行つた結果を報告した.168名中香粧品による接触皮膚炎患者は115名で,他の53名では香粧品以外のものが原因であつた.原因となつた香粧品は210件で,そのうちファウンデーションが42件を占め最多であつた.製品貼布試験と成分貼布試験について,毛染皮膚炎で検討したが,いずれも重要であることを示す成績であつた.貼布試験と使用試験の相関は高くなかつたが,その理由は疑わしい製品についてのみ行つたためであり,貼布した製品全てについて使用試験を行なえば,両者の一致率は一層高くなる.貼布試験はあくまでもスクリーニングテストであつて,疑わしい結果を得た場合には使用試験によつて原因を決定するのがよいと考えられる.

色素失調症(Bloch-Sulzberger)の1例

著者: 植原八重子 ,   生冨公明 ,   加茂紘一郎 ,   前田次郎

ページ範囲:P.917 - P.921

 生後4日の新生児女児にみられた色素失調症の1例を報告した.色素失調症は自験例を含め現在(1976年末)まで180例の本邦報告例があり,自験例と対比させながら若干の文献的考察を試みた.自験例は臨床及び病理組織ともにほぼ典型的なものと思われ,いわゆる疣状苔癬期に相当する臨床像もごく短期間ながら認められた.本症の病因に関しては多くの説をみる.自験例では母の幼少時,不完全ながら患児と同様の皮疹を認めたといいその遺伝が示唆される.また患児を妊娠中,6カ月時に風疹に罹患しており,ウイルス学的にも興味ある例であるが,遺伝,ウイルスともにその病因としての性格は明らかにし得なかつた.

薬剤

痤瘡および2,3の角化症にたいするPolyester Fiber Web(Buf-Puf®)の応用

著者: 水野久美子 ,   安田利顕

ページ範囲:P.923 - P.925

 古来「ひと皮むけばきれいになる」とはよく言われてきた言葉である.麻疹,日焼けなどでは自然に落屑して,文字通り「ひと皮むけて」あとにきれいな皮膚を残すが,一方角化の強い痤瘡面皰,足蹠,肘頭,膝蓋などの角質肥厚,毛孔性苔癬などは放置していて自然にきれいになることは少ないので,人為的に「ひと皮むく」必要が出てくるのである.この「ひと皮むく」手段はかなり昔から考えられており,すでに1500B.C.にskinabrasionに関する記載が残されている1).以来多くの物質が無用の角層を除去することを目的に使われてきた.
 今回われわれは,スリーエム薬品株式会社より手軽なexfoliantとしてのスポンジ(polyester fiber web spon—ge)(商品名:Buf-puf)(図1)の提供を受け,主に痤瘡,一部角化症に試用したので,その結果についてここに報告する.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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