原著
原発性膿皮症様アスペルギルス症
著者:
金原武司1
大槻典男1
佐藤憲次1
福代良一1
狩野哲自2
所属機関:
1金沢大学医学部皮膚科学教室
2金沢大学医学部病理教室第2講座
ページ範囲:P.877 - P.882
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重症熱傷の患者にみられた原発性膿皮症様アスペルギルス症の1例を述べた.症例は40歳の男,生来の聾唖.昭和51年1月17日,重油ボイラーが爆発,重い熱傷を受け,直ちに入院した.熱傷の範囲は65%,部位は頭・顔・四肢が主で躯幹には少なく,熱傷の程度はⅡ〜Ⅲ度.患者は入院当初より意識なく,レスピレーター装着,輸血と輸液,留置カテーテルで導尿.熱傷局所はヒビテン清拭後コリマイホームを散布した.入院2週目頃から,熱傷とは別に新しく,背中から腰にかけて膿疱性皮疹が発生した.それらは密集・融合して中心部は壊死状となり,辺縁に紅暈を示した.膿疱の直接検鏡で,太い分岐性菌糸(+).小膿疱の組織像:角層内・角層下小膿瘍内・毛嚢性膿瘍内などに隔壁のある太い菌糸がみられ,真皮の壊死巣内には菌糸の放射状発育が認められた.培養:膿疱性皮疹からAspergillus fumi—gatus・A. flavus・A. terreusの3種を分離した.経過:受傷後24日目に呼吸不全で死亡.剖検:1)肺実質内と膀胱粘膜にアスペルギルス性病変あり,両者からA. fumigatugを分離した;2)膀胱粘膜にはカンジダの混合感染があつた;3)皮膚のアスペルギルス性病変の辺縁部の壊死巣の表面には菌苔がみられ,その処々に閉子器様のものが認められた(培養は行なわず,菌種不明の菌の腐生と思われる).