icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科31巻12号

1977年12月発行

雑誌目次

図譜・422

ノルウェー疥癬

著者: 森下玲子

ページ範囲:P.938 - P.939

患者 61歳,男,農業,熊毛郡上尾久町在住
初診 昭和50年10月22日

原著

Juvenile Xanthogranuloma—Cafe au lait斑合併例と兄妹発症例

著者: 小玉肇 ,   藤田慎一

ページ範囲:P.941 - P.946

 多発性cafe au lait斑と多発性juvenile xanthogranuloma (JX)が合併した2例と,兄妹に単発性JXが出現した例を報告し,JXと他の黄色腫病変を示す疾患との関連およびJXの病態について考察した.
 黄色腫病変を示す疾患は,1)組織球の種瘍性増殖に伴うもの,2)組織球の肉芽腫様増殖に随伴するもの,3)高リポ蛋白血症に合併するものに分類される.JXは2)の範疇に属し,臨床像は,結節型,斑状型および扁平丘疹型の3型に大別される.組織所見はxan—thogranulomaの像を呈するが,臨床像や経過により多様性である.JXでは高リポ蛋白血症性黄色腫と異り,泡沫細胞内の脂質蓄積への血清リポ蛋白の関与は少ないと考えられる.レックリングハウゼン母斑症にJXが合併する頻度は高いが,JXを他の母斑性病変と同列には扱いがたい.しかしJXの組織反応は先天的な因子によつて規定されていると考えるならば母斑性としてよいと考えた.

接触蕁麻疹—軟膏中の配合剤ストレプトマイシンによる

著者: 望月正子

ページ範囲:P.947 - P.949

 2歳,女児.アトピー皮膚炎の治療に用いたステロイド軟膏に配合された抗生物質,ストレプトマイシンによる稀有なアレルギー性接触蕁麻疹を報告した.約半年使用後塗布部,続いて全身に膨疹を生ずるようになつた.0.5%ストレプトマイシン吸水軟膏塗布(open patch test)により15分後に即時型膨疹形成がみられ,また患者血清を用いた被働性転嫁試験(P-K反応)が陽性であつた.

血管肉腫の1例

著者: 岡田哲哉

ページ範囲:P.951 - P.957

 82歳,男性の頭部に発症した血管系悪性腫瘍の1例につき報告した.年齢,部位,臨床症状から川田の分類によるWilson-Jones型の悪性血管内皮細胞腫と考えた.組織学的には共に異形性,多形性を示す類円形細胞と紡錘形細胞からなり,両細胞が管腔形成を示す部位やspindle cell sarcoma様の部位も認められた.また両細胞の中間的な細胞もあり,後者は前者よりより未分化な細胞と考えた.またその起源に関しても成熟した既存の血管内皮とするよりもより未分化なangioblast由来と考えたい.

カルバニライド系殺菌剤に接触アレルギーを示す色素沈着型化粧品皮膚炎及び接触皮膚炎の17例

著者: 加茂美保 ,   中山秀夫

ページ範囲:P.959 - P.967

 カルバニライド系殺菌剤(TCC・TFC)が原因と考えられる色素沈着型化粧品皮膚炎11例及び接触皮膚炎6例を報告するとともに,当科における過去9年間のTCC・TFC貼布試験陽性例のうち主要例について若干の考察を試みた.本剤による皮膚炎発症機序は,諸検査の結果,接触アレルギーが推察される.ACS (Allergen Controlled System)による治療が有効であるが本剤による色素沈着型皮膚炎例では一般の香料・色素が原因の症例に比して難治である.

Epidermolysis Bullosa Acquisitaの1例

著者: 木村恭一 ,   福代新治 ,   多田広祠

ページ範囲:P.969 - P.974

 27歳女子,中学生の頃発症したと思われるEpidermolysis bullosa acquisitaの1例を報告すると共に,本症に関する若干の問題点を挙げ最近の知見をまとめた.自験例は,1)PAS陽性膜は水疱底に付着.2)基底膜部に免疫グロブリンの線状沈着は見られず,水疱底真皮内にIgG, IgMの球状沈着を認めた(直接法).3)真皮上層コラーゲンに酸性ムコ多糖の増加は明らかでなかつたが,弾力線維の著明な変性を見た.4)合併する全身疾患はなかつた.5)ビタミンEはある程度の効果を認めた.

子宮転移をみた前額部悪性黒色腫の1剖検例

著者: 田村義龍 ,   本田まり子 ,   小山啓一郎 ,   伊藤豪俊 ,   伊藤義彦 ,   伊藤宏士 ,   金谷敏雄 ,   水野哲郎 ,   桜井公子

ページ範囲:P.975 - P.979

 53歳女性の右前額部に発生したNodular Typeの悪性黒色腫(T2N0M0)を,広汎切除後,化学療法剤にて,経過観察中,術後3カ月で,理学的検査所見や,臨床的異常所見なくして,突然不正性器出血を呈し,子宮内膜の組織学的検索により,子宮(内膜)へ転移した症例を報告した.そこで子宮単純全摘出術を施行し,更に術後3カ月半で,全身の重要臓器に転移を認め,特に心転移により,多量の心嚢水貯留による心タンポナーゼにて死亡した.本症例を,剖検を中心として文献的考察をおこない,更に死因についても考察を試みた.

慢性皮膚粘膜カンジダ症—Transfer Factorによる治療

著者: 楠俊雄 ,   原田誠一 ,   薦田房子 ,   早川浩

ページ範囲:P.981 - P.986

 2例の慢性皮膚粘膜カンジダ症にTransfer Factor治療を試みた.13歳男子のPartial addison病を伴つた内分泌—カンジダ症候群では,種々の抗真菌剤の内服・外用に全く反応しなかつた合併白癬病巣(Epidermophyton floccosum感染症)の治癒をみた.しかしカンジダ病巣はカンジダ皮内反応の陽転とカンジダ血中抗体の上昇をみたが不変であつた.10歳女子例ではTransfer Factor投与によりSubpopulationが正常化し,PHAによるLymphoid transformationも陽性になり免疫学的改善がみられたが,最後まで臨床的軽快は認められなかつた.2例とも5—Fluorocytosine内服を併用した.慢性皮膚粘膜カンジダ症におけるTransfer Factorの効果については現在臨床的,免疫学的に広く検討されており,自験例は臨床的にはnegativeデーターであるがその経過について報告した.

手掌に発生したClear cell hidradenomaの1例—本邦報告例の集計を加えて

著者: 生冨公明 ,   植原八重子 ,   加茂紘一郎

ページ範囲:P.987 - P.992

 34歳,主婦の左手掌に単発したClear cell hidradenomaの1例を報告した.本腫瘍は他に種々の名称をもつ腫瘍で,その発生起源はおよそエックリン汗腺であろうとされている.本邦においては,1977年4月までに自験例を含めて34例の記載があるが,欧米では既に400例近い報告がある.一般に欧米例では躯幹発生例が多く約半数にこれがみられるのに対し,本邦例では,頭・頸部発生例が2/3を占める.また自験例は,本邦における手掌発生例の最初の報告と考えられるが,同部位発生例は欧米でも僅かに5例を数えるのみである.自験例が極めて稀な部位に発生した例であることを述べるとともに,本邦報告例をまとめ若干の考察を加えた.

最近6年間の梅毒の推移—姫路赤十字血液センターの梅毒スクリーニングの統計(1971〜1976)

著者: 小野公義 ,   河瀬正晴

ページ範囲:P.993 - P.997

 姫路赤十字血液センターの昭和46年から51年までの6年間の献血者総数176,637名を対象に,ガラス板法とTPHA法によつて行つた梅毒スクリーニングの統計を分析検討した.
 6年間の梅毒の流行状況は,なお休止期にあると考えた.梅毒抗体保有率は女性より男性に高く,また高年齢層ほど高率であつた.梅毒抗体保有率は6年間の総計では,1.32%であつた.その他,ガラス板法のBFPについても検討を加えた.

一頁講座

リンパ浮腫

著者: 大熊守也

ページ範囲:P.992 - P.992

 リンパ浮腫は今まで外科的治療が唯一の可能性であつた関係から皮膚科医がみる機会も少なく,認識も不足であつたが,立派な皮膚の疾患であり,皮膚科医が治療すべきものと考え,最近の新知識も含めて述べてみたい.
 定義 組織内に組織液が貯溜した状態を水腫edema,皮下組織のみに同様な変化がおこつたものを浮腫anasarcaと呼ぶが,リンパ浮腫の場合は,リンパ水腫の意味で使用していることが多い.浮腫をおこす原因として,リンパ性,うつ血性,補空性,神経性,化学性,腎性,脚気性,悪液症性などが考えられる.リンパ循環に障害があつておこるもののみをリンパ浮腫と定義していたが,どのような原因であれ,もしリンパ系が正常に機能をはたしていれば,その浮腫は,リンパ管の機能亢進により除去されるという考えから,長期に持続する浮腫はすべてリンパ浮腫だと考える人が最近は多くなつて来た.

--------------------

臨床皮膚科 第31巻 総索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?