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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科31巻2号

1977年02月発行

雑誌目次

図譜・412

皮膚疣状結核

著者: 岡田芳子 ,   石崎宏 ,   佐野勉 ,   石倉多美子

ページ範囲:P.90 - P.91

患者 49歳,男
初診 昭和50年1月8日

原著

Papillon-Lefevre症候群—症例報告と本邦17例の集計

著者: 丹野憲二 ,   加賀美潔 ,   中安清 ,   妹尾美孝 ,   中川肇

ページ範囲:P.93 - P.97

 4歳女児のPapillon-Lefevre症候群を報告し,本邦報告例17症例を集計,主として皮膚科的見地から本症候群の臨床を概説した.本邦17例中,女子が男子の約2倍を示し,10例に家系内血族結婚を,また4家系に同胞例を見出した.皮膚症状の発症年齢はほとんどが1歳未満であり,生後10日目て足底に皮疹を認めた例もある.歯周症の発症時期は,乳歯萠出後から4歳までであるが,初診時の年齢は3歳から25歳までで,12歳以下が17例中12例であり,本症候群は小児の疾患であることを示している.皮疹は手掌または足底に始まつて徐々に拡大し,掌・足底だけでなく手足の背面,指趾の背面にいわゆるtransgrediensに及び,さらに肘頭や膝蓋にもprogrediensに生ずる.掌・足底角化の程度は高度であるがメレダ病ほど著しくなく,局所多汗を特に強調した例はない.歯周症はいかなる保存療法も無効であり,乳歯の早期脱落後に一度消褪して正常にもどるが,永久歯の萌出と共に再び出現する.

Sjogren症候群—口唇部小唾液腺(口唇腺)生検の組織学的検討

著者: 鈴木伸典 ,   浜田稔夫 ,   金山良春

ページ範囲:P.99 - P.104

 SLEやPSSあるいは関節リウマチを合併し,また膠原病の合併がなくても紫斑や関節痛など多彩な臨床症状を呈したSjogren症候群の8例について,下口唇の小唾液腺すなわち口唇腺の生検を行ない組織学的検索を施行した.その結果,特徴的組織所見は,腺組織特に小葉内に巣状のリンパ球浸潤とそれに伴なう腺房の破壊消失および小葉間導管周囲の稠密なリンパ球の浸潤とである.大唾液腺の腫脹を生じた例に強い変化が見られ,1例にepimyoepithelial islands様の所見を認めた.他疾患の2,3のものについても対照として口唇腺生検を行つたが,Sjogren症候群にみられる所見を呈するものはなかつた.したがつて口唇腺生検は,大唾液腺生検のような危険も少なく,大唾液腺の生検像と同質の所見を呈することより,Sjogren症候群における診断的意義の大きいことを強調した.

足趾に生じた粘液嚢腫

著者: 西林聰武 ,   田辺義次 ,   岡本昭二

ページ範囲:P.105 - P.108

 75歳男子の右第1趾に4年来生じていた粘液嚢腫の1例を報告した.連続切片標本による検索の結果,この嚢腫は仮性嚢腫であつて,周囲との連続は認められなかつた.嚢腫の基質はP. A. S. 染色で陰性,alcian blue染色で陽性,Haleコロイド鉄染色では陽性であつた.基質の陽性部位は細菌ヒアルロニダーゼで消化されているので,ヒアルロン酸が含まれていると推定した.文献から集めた症例に自験例を加えて臨床的事項を検討したのち,本症における嚢腫の発生機序について若干の文献的考察を加えた.嚢腫の発生機序については,関節滑液膜細胞に由来すると考える説と,真皮の線維芽細胞からヒアルロン酸が分泌されて嚢腫が発生すると考える説の2通りがあり,現在の段階では明確な結論に達していない.

Fisher-Evans症候群の免疫抑制療法中にみられた非定型的ヘルペスウイルス感染症の1例

著者: 桑原京介 ,   八木茂 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.109 - P.114

 Fisher-Evans症候群の診断のもとにImuranとPredonineで加療中,非定型的水痘ウイルス感染症とも診断すべぎ1例を経験した.臨床的特徴として,1)2月,4月,10月の計3度にわたり,発症したこと,2)罹患部位はおのおの異なり,両側性であり,分布は汎発性でなく,比較的限局性に集簇あるいは散在性に存し,粘膜疹を欠くこと,3)個疹はしばしば紅暈を有する小水疱あるいは硬く触れる血疱であり,中心臍窩はみとめがたかつたこと,4)皮疹は瘢痕をのこさず,消褪したこと,5)自覚症はないかあるいは神経痛様疼痛を訴えていたことなどがあげられる.病理組織学的にヘルペスウイルス感染症の定型像がえられ,水疱内容液の螢光抗体法による抗原の検出や分離,同定の結果,起因ウイルスはvaricella zoster virusであることが確認された.自験例における発症誘因として基礎疾患が自己免疫性疾患であるFisher-Evans症候群であること,副腎皮質ホルモンや免疫抑制剤を使用したこと,ステロイド糖尿の発現をみたことなどが指摘ざれ,細胞性免疫低下を思わす所見もえられた.

菌状息肉症における腫瘍細胞の免疫化学的細胞膜特異性及びその由来について

著者: 加藤光子 ,   杉山貞夫 ,   神保孝一 ,   石井良文 ,   小柴博文

ページ範囲:P.115 - P.120

 落屑性紅斑にて初発し,腫瘍形成をみるに至つた菌状息肉症(MF)の1症例につき,電顕的,免疫組織化学的検索を行ない,腫瘍細胞の性質,由来を調べた.電顕的には,腫瘍細胞中にはsmall cell variant Sezary cellがみられ,また免疫血清学的には,腫瘍細胞の大部分は,羊赤血球とE—ロゼットを形成し,かつ抗T細胞抗血清のうち,抗胸腺T細胞抗血清とは全く反応せず,抗リンパ節T細胞抗血清と強く反応した.これら所見より,MFの腫瘍細胞は異常リンパ球であつて,末梢T細胞由来であると考えた.

水疱性類天疱瘡のステロイド療法に関する2,3の考察

著者: 毛利忍 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.121 - P.125

 水疱性類天疱瘡をステロイドの1日最大投与量より検討すると,大量(プレドニゾロン換算80mg/日以上)を要する群と,それ程大量を要しない群があることを知つた.これを年齢,性,季節,病型などから検討すると,女性例のほとんどは前者の群で,男性例は後者の群であつた.年齢,病型も大切な因子と考えるが,性別が最も重要な因子と考えたい.ステロイドの使用にあたつては30mg/日以下で治療を開始した症例は増量を余儀なくされ,しかも1日最高投与量が高くなる傾向があつたことより,初回よりある程度の最を投与するのがよいと思われた.その量は女性では60〜80mg/日,男性では40〜60mg/日を推薦したい.ただし男性の高齢者例には限局性水疱性類天疱瘡と同様,外用(主としてODT)のみで十分コントロールし得る症例があつた.ステロイドの内用に際しては,特に低蛋白血症を伴う例では重篤な結核を併発する危険があり,INAHの併用が望ましい.

播種状黄色腫—2例の報告

著者: 北村啓次郎 ,   菅原信 ,   荘由紀子 ,   長島正治

ページ範囲:P.127 - P.133

 39歳および32歳男子会社員.共に数カ月前より全身諸所に小結節を生じ,生検の結果播種状黄色腫と診断し得た.いずれもnormolipemicで合併症なく,組織学的にxantho—granuloma〜histiocytosisといつた所見であつた.両例の組織像を通覧するに,皮疹の新旧によりproliferative→granulomatous→xanthomatousといつた流れが見られ,また症例1に試みた脂肪負荷試験およびその前後における病変部組織内脂質の微量分析の結果を加味して,本疾患を皮膚組織球(網内系組織球の一部)の機能異常により,一見正常でも食餌などにより変動する血清脂質の影響を病変局所の組織球が受け脂質を貧食,黄色腫を形成したものと考えた.

Nevoid Basal Cell Epithelioma Syndrome—角化過程の異常および表皮性の嚢腫のHistopathogenesis

著者: 新井春枝

ページ範囲:P.137 - P.143

 母斑性基底細胞上皮腫症候群の症例に多発した表皮性の嚢腫を病理組織学的に検討した.
 種々な嚢腫の中にはepidermoidおよびtrichilemmal keratinizationに基く表皮および毛嚢性嚢腫の他に,毛母近位のportion Bの内毛根鞘細胞の角化が関与すると考えられる嚢腫もあつた.また嚢腫壁の構成細胞が増殖し,病理組織学的に基底細胞上皮腫の所見を示すものがあつた.

Balloon Cell Nevusの1例

著者: 亀田忠孝 ,   花田勝美

ページ範囲:P.145 - P.149

 42歳女性の左下腿屈側部に生じたBalloon cell nevusについて,光顕的ならびに電顕的所見を中心に報告した.光顕的に母斑は表皮内にあり,大部分大型泡沫状のbal—loon cellより構成され,電顕的に異常なメラノゾームと思われる円い層状体が多数存在し,その一部は空胞化していた.本症の報告例の極めて少ないのは恐らく普通の細胞母斑として切除され,組織学的検査の行われる機会の少ないことも一因と考えられる.

和歌山県下及びその近郊におけるSporotrichosis

著者: 広永正紀 ,   戸矢崎紀紘

ページ範囲:P.151 - P.157

 和歌山県下およびその近郊で発生せるsporotrichosisは,昭和40年,13カ月女児の顔面に生じた例を初めとし,昭和50年末までで計15例となつた,患者の性別は,男6例,女9例,年齢は13カ月(1例),5歳(1例),9歳(1例),40歳台(5例),50歳台(2例),60歳台(2例),70歳台(3例)で,病型は,皮膚リンパ管型が8例(顔面2例,上肢6例)皮膚局面型が5例,潰瘍腫瘤型が2例であつた.発症時期の明らかな例では,8月(3例),9月(1例),10月(1例),11月(3例)と,8〜11月に集中していた.分離株のうち14株はSDA上で黒色色素を産生したが,1株はいわゆる白色株であつた.分離菌株およびKurume−23株は全てCMA上で黒色色素を産生,BHIBA 37℃でyeast phaseとなつた.しかし,Ceratocystis stenoceras (3株)は,SDA, PDAおよびCMA上で共に色素の産生を欠き,BHIBA上37℃でyeast phaseとはならなかつた.生理試験では,starch分解能は,S.schenckii陽性,C.stenoceras, C.ulmi, C.minor, C.ipsは陰性で一線を画した.しかし,S.schenckiiとC.stenocerasは共にthiamineの要求性を示し,広塩度性も6〜7.5%と同じ程度であつた.

ドライミルクによると思われる砒素性角化症の1例

著者: 田中雅祐 ,   重見文雄 ,   末広史恵

ページ範囲:P.159 - P.163

 患者は21歳の男.某社の砒素ミルク中毒認定患者であり,掌蹠などは毛孔性紅色粃糠疹様の病像を呈し,多数の角性丘疹を伴つている.足底の腫瘤を生検したが腫瘍様良性増殖性病変であり,躯幹に雨滴状の褐色色素斑を認めるため,慢性砒素中毒症の皮膚変化と診断した.砒素角化症の報告例は少なく,他の砒素ミルク中毒患者も追跡調査が必要であると思われたため報告した.

印象記

アメリカ各大学の皮膚科教室を訪ねて(その2)

著者: 山田瑞穂

ページ範囲:P.164 - P.165

 New York大学ではBaer教授は学会のため留守で,代りにだれかが案内するという手紙を貰つていた.Dr. Ackermanがbiopsyの標本を見てresidentsに組織学の指導をするのに同席した.3台の顕微鏡に教育用のヘッドをつけ8人で標本を見て,診断,意見を言わせて,教えていた.Senile keratosisがかなり多く,melanomaもあつたが,basalioma,seborrheic keratosis,nevusが多かつた.また,浅く削つただけの標本が多かつた.私がDarier病だと思つた標本はGrover病(transientacantholytic dermatosis)だと,古顔の女のresidentがその講義をしてくれた.ドイツから来ているDr.(神戸大の神畠氏,川崎大の植木氏をMunichでよく識つていると)が積極的に参加しているのでお前もどんどん発言してくれというが,こちらはとてもそんなにしやべれず,もつぱら聞き役に回つていた.日本では組織の勉強会は暗い部屋で投影してやるのだと言つたら,この連中は暗いと何をするかわからないと大笑いであつたが,なるほど,明るくても男女じやれ合つてにぎやかなことだつた.月に800,週(5日)に200の標本を見るのだそうで,Dr. Ackermanが標本を見ながらマイクに向かつて所見をしやべつているのを,テープに吹き込んでいるのかと聞くと,驚いたことに名刺の2倍位の大きさの黒い紙に録音され,隣室のセクレタリーのところで,セットされると,自動的にタイプされ,レポートとなるという能率のよさであつた.この勉強会は午後1時から6時まで続いた.
 途中でDr. Bystrynの研究室を見せて貰つたが,彼は臨床よりもresearch要員のようで(residentsが研究の鬼だといつていた),コーヒーをのみながら,彼の得意とする天疱瘡の表皮細胞間抗体を,上層と下層と染め分けたスライドを見せてくれた.ちようど話題が一致するので,私は胸腺腫,重症筋無力症,腎障害を伴つた落葉状天疱瘡で,食道の上皮細胞間に特異螢光の見られた症例のスライドを見せた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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