原著
和歌山県下及びその近郊におけるSporotrichosis
著者:
広永正紀1
戸矢崎紀紘2
所属機関:
1和歌山県立医科大学皮膚科学教室
2神戸市環境保健研究所疫学部真菌室
ページ範囲:P.151 - P.157
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和歌山県下およびその近郊で発生せるsporotrichosisは,昭和40年,13カ月女児の顔面に生じた例を初めとし,昭和50年末までで計15例となつた,患者の性別は,男6例,女9例,年齢は13カ月(1例),5歳(1例),9歳(1例),40歳台(5例),50歳台(2例),60歳台(2例),70歳台(3例)で,病型は,皮膚リンパ管型が8例(顔面2例,上肢6例)皮膚局面型が5例,潰瘍腫瘤型が2例であつた.発症時期の明らかな例では,8月(3例),9月(1例),10月(1例),11月(3例)と,8〜11月に集中していた.分離株のうち14株はSDA上で黒色色素を産生したが,1株はいわゆる白色株であつた.分離菌株およびKurume−23株は全てCMA上で黒色色素を産生,BHIBA 37℃でyeast phaseとなつた.しかし,Ceratocystis stenoceras (3株)は,SDA, PDAおよびCMA上で共に色素の産生を欠き,BHIBA上37℃でyeast phaseとはならなかつた.生理試験では,starch分解能は,S.schenckii陽性,C.stenoceras, C.ulmi, C.minor, C.ipsは陰性で一線を画した.しかし,S.schenckiiとC.stenocerasは共にthiamineの要求性を示し,広塩度性も6〜7.5%と同じ程度であつた.