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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科31巻2号

1977年02月発行

文献概要

印象記

アメリカ各大学の皮膚科教室を訪ねて(その2)

著者: 山田瑞穂1

所属機関: 1大阪赤十字病院皮膚科

ページ範囲:P.164 - P.165

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 New York大学ではBaer教授は学会のため留守で,代りにだれかが案内するという手紙を貰つていた.Dr. Ackermanがbiopsyの標本を見てresidentsに組織学の指導をするのに同席した.3台の顕微鏡に教育用のヘッドをつけ8人で標本を見て,診断,意見を言わせて,教えていた.Senile keratosisがかなり多く,melanomaもあつたが,basalioma,seborrheic keratosis,nevusが多かつた.また,浅く削つただけの標本が多かつた.私がDarier病だと思つた標本はGrover病(transientacantholytic dermatosis)だと,古顔の女のresidentがその講義をしてくれた.ドイツから来ているDr.(神戸大の神畠氏,川崎大の植木氏をMunichでよく識つていると)が積極的に参加しているのでお前もどんどん発言してくれというが,こちらはとてもそんなにしやべれず,もつぱら聞き役に回つていた.日本では組織の勉強会は暗い部屋で投影してやるのだと言つたら,この連中は暗いと何をするかわからないと大笑いであつたが,なるほど,明るくても男女じやれ合つてにぎやかなことだつた.月に800,週(5日)に200の標本を見るのだそうで,Dr. Ackermanが標本を見ながらマイクに向かつて所見をしやべつているのを,テープに吹き込んでいるのかと聞くと,驚いたことに名刺の2倍位の大きさの黒い紙に録音され,隣室のセクレタリーのところで,セットされると,自動的にタイプされ,レポートとなるという能率のよさであつた.この勉強会は午後1時から6時まで続いた.
 途中でDr. Bystrynの研究室を見せて貰つたが,彼は臨床よりもresearch要員のようで(residentsが研究の鬼だといつていた),コーヒーをのみながら,彼の得意とする天疱瘡の表皮細胞間抗体を,上層と下層と染め分けたスライドを見せてくれた.ちようど話題が一致するので,私は胸腺腫,重症筋無力症,腎障害を伴つた落葉状天疱瘡で,食道の上皮細胞間に特異螢光の見られた症例のスライドを見せた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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