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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科31巻5号

1977年05月発行

雑誌目次

図譜・415

全身皮膚色素沈着,剛毛,白い爪,浮腫ならびに多発ニューロパチーを呈する限局性骨硬化性骨髄腫

著者: 岩下宏 ,   金沢泰久 ,   黒岩義五郎

ページ範囲:P.342 - P.343

患者 64歳,男(九大神内731128)
主訴 四肢筋力低下,皮膚色素沈着,浮腫

綜説

生体防御としてのアレルギー炎症

著者: 高瀬吉雄

ページ範囲:P.345 - P.348

炎症と生体
 いわゆる生活反応またはvital signの一つに炎症がある.病理学者は炎症とはなにかとの定義を下すのは難かしいと言うが,臨床医はむしろ直観的に炎症であるか否かを判断する.炎症か非炎症かを判断しえても,またそうしなくては日常の診療が不可能であるが,臨床医が炎症とはなにかという掘り下げた考察をすることは殆んどなかつたと言つても過言でなかろう.
 炎症inflammationの語感は我々医師に,より早くより完全にこれを鎮圧すべきものという印象を与える.一部の炎症はヒトという生物にとつて危険なinvador,たとえばウイルス,細菌などによつて発生するので,早く完全に治癒されるべきかもしれない.しかし,こうした考えが強く臨床医を支配したことが,抗生物質,抗炎症剤,ステロイドホルモン,免疫抑制剤などの多用または乱用の因となり医学及び社会の大きな問題となつている.

原著

天疱瘡死亡例の検討と金製剤を使用した若干の症例について

著者: 段野貴一郎 ,   今村貞夫 ,   早川実

ページ範囲:P.349 - P.353

 天疱瘡はステロイド出現によりもはや不治の病ではなくなつたが,依然として死亡していく患者が後を断たない.その多くはステロイドの長期連用が原因といわれしている.我我は当科にて死亡した天疱瘡患者5名の死亡原因を検討したところ,やはりステロイドにより誘発された感染症や消化性潰瘍等で突如死亡しているものが多い.しかし現在なお天疱瘡治療においてはステロイドが必須であり,したがつてその副作用を如何に軽減するかということが今後の課題である.近年金製剤が治療の1つに用いられているが,我々も最近当科に入院した患者5例に使用したところ,ステロイド剤の早期離脱,寛解導入が容易であり,金製剤は天疱瘡において試みられてよい治療法と考える.

膀胱直腸障害を伴つた帯状疱疹

著者: 望月和子 ,   石川承子 ,   重本圭子

ページ範囲:P.355 - P.360

 膀胱直腸障害を伴う仙髄域帯状疱疹を3例報告した.第1例76歳女,第2例68歳女,第3例26歳男で,第1例は排尿障害を主とした群に属し,第2例は膀胱炎様症状および排尿障害の合併した群に属するが,この2例はともに副交感神経が障害され,膀胱直腸症状がおこつたものと理解される.
 また第3例は髄膜炎を合併しており,単に仙髄部の排尿中枢が障害されたのみでなく,横断性脊髄炎も加味しておこつたものと考えられた.

アロプリノールによる薬疹の2例

著者: 加茂美保 ,   中山秀夫 ,   山路武夫

ページ範囲:P.361 - P.365

要約 尿酸生成阻害による高尿酸血症治療剤であるアロプリノールによる薬疹と思われる2例を経験したので,従来の報告例をまとめるとともにその発症機序について若干の考察を試みた.副作用の表現型は多彩で,皮膚症状としては激しい瘙痒と同時もしくはやや遅れて出現する紅斑,丘疹さらにそれに続くexfoliative dermatitisである.また皮膚以外の症状としては,意識消失,眩暈等の中枢神経症状,腎,脾等の血管炎,糖尿,胃腸障害等がある.副作用の出現頻度は5〜6%であるが,重篤なものもあるので注意を要する.

片側性,帯状に生じた扁平苔癬—DermatomeおよびBlaschko's Lineとの関係について

著者: 羽田俊六 ,   浜松輝美

ページ範囲:P.367 - P.371

 43歳,男性の片側性,帯状に生じた扁平苔癬の1例を報告した.皮疹の分布から末梢神経走向またはBlaschko's lineとの関係が示唆されたため,扁平苔癬とこれらとの関連性を発病機転の面から考察した.

Nevoid Basal Cell Epithelioma Syndrome(第4報)—皮膚附属器および中胚葉系の所見

著者: 新井春枝

ページ範囲:P.373 - P.379

 中胚葉系病変として結合織母斑と脈管性母斑がみられ,かつ臨床上正常とみなされる部位にも,組織学的に結合織の異常,異所性石灰化および脈管等の変化がみられた.
 種々な外胚葉系皮膚病巣の形成に間葉系が関与していると思われる所見が得られた.
 病変部および正常部の病理組織学的所見から,本症を外胚葉—中胚葉系に系統的異常を有する母斑症とみなした.

血管脂肪腫18例の臨床病理学的検討

著者: 田中雅祐 ,   居村洋 ,   檜沢一夫

ページ範囲:P.381 - P.386

 18例23個の血管脂肪腫について,その臨床像および病理学的所見を比較し,一般の脂肪腫のそれと対比検討した.
 患者は男性に多く,初回摘出時の年齢は32〜76歳(平均52.2歳)であり,単発が3例,多発が15例であつた.腫瘤の数が最も多かつた1例では21個をかぞえ,7例で9〜16個を有した.
 腫瘍は上肢とくに前腕と躯幹に好発し,頭頸部,下肢にはみられなかつた.摘出腫瘤は1例をのぞき楕円形を呈し,大多数が母指頭大(長径2cm)以下(大豆大以下8,指頭大8,母指頭大5個)であり,2個のみがくるみ大であつた.
 腫瘍組織は脂肪腫の成分に加えて種々の割合に血管腫様成分を含むが,後者は量的には少なく,主に腫瘍の辺縁に存在した.全例にうっ血があり,また血栓が多数例でみられた.
 血管脂肪腫は脂肪腫と診断されたものの約10%をしめ,稀なものではない.本腫瘍は組織像だけでなく,発生年齢,性別,発生部位,多発傾向,腫瘤が小さいことなどの臨床的な所見からみても一般の脂肪腫とは別のものとみなしたい.

多発性Hemangiopericytoma(良性型)の家族内発生例—光顕的ならびに電顕的観察

著者: 中村絹代 ,   菅原信 ,   花岡宏和 ,   三方淳男

ページ範囲:P.387 - P.399

 27歳,32歳姉妹に生じた多発性Hemangiopericytoma,および後者の娘,7歳に単発した1例の計3症例について報告した.
 光顕的にStoutらの第1型に属するHemangiopericytomaと考えられ,良性型とした.
 電顕的に腫瘍細胞にはmyofibrilはなく,smooth muscle cellまたはグロームス細胞とは考え難く,pericyteと断定した.
 組織発生学的にHemangiopericytomaは毛細血管壁のpericyteを起源とするものと推論した.

角膜真菌症の1例

著者: 蜂須賀裕志 ,   名嘉真武男 ,   国吉光男

ページ範囲:P.401 - P.403

 沖繩県における第1例と思われる角膜真菌症を経験した.病巣より直接鏡検により菌要素を認め培養をおこなつた.サブロー・ブドー糖寒天培地によるスライドカルチャーではCephalosporium様の分生子形成がみられたが,1/10サブローに塩類を加えた高塩培地により,Fusariumに特有な分生子の形成がみられ,Fusarium sp.と同定した.1mg/mlのAmphotericin B点眼により2カ月で瘢痕治癒した.

肺癌を合併したと思われるケラトアカントーマの1例

著者: 秋葉弘 ,   山田憲一

ページ範囲:P.405 - P.409

 顔面の単発型ケラトアカントーマ発生1年以内に肺癌を合併したと思われる70歳男子例を経験した.両腫瘍は患者の細胞性免疫低下という背景のもとに発生したものと推察した.ケラトアカントーマに対して油性ブレオマイシンを局注して著効があつた.さらに有棘細胞癌とケラトアカントーマとの関係について文献的に考察した.

Steatocystoma Multiplexの1例

著者: 伊東紀子 ,   吉江治彦 ,   二条貞子 ,   上村敬一

ページ範囲:P.411 - P.414

 57歳女子のSteatocystoma multiplexの1例を報告する.組織学的に,嚢腫壁内に脂腺構造を認め,嚢腫壁近くには毛嚢様構造がみられる.嚢腫内容の脂質分析を行ない,既に報告されている,脂腺,付属器のない表皮,表皮様嚢腫の内容物の脂質成分と比較し,自験例のSteatocystomaの内容物は脂腺成分に最も類似しているという結論に達した.
 また本疾患の成因について,文献的考察を行なつた.

一頁講座

リンパ管腫についての再考按

著者: 大熊守也

ページ範囲:P.353 - P.353

 リンパ管腫は比較的まれな疾患なため報告例も少なく,皮膚科医の関心も少ないが故にこの疾患に対して間違つた考え方などが散見されるのでもう一度初めから考え直してみたいと思う.
 分類 Wegner (1877)は単純性,海綿状,嚢腫状の3つに分類しこれが一般に用いられているが,McCartly (1940)はこれにcellularor hypertrophicとdiffuse systemicの2つを加えている.Peachey(1970)は,65例を集めた結果,classical lymphangioma circumsc—riptum, localized lymphangiomacircumscriptum, spongy typeの3つに分類した.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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