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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科31巻6号

1977年06月発行

雑誌目次

図譜・416

Chromomycosis

著者: 山辺靖夫

ページ範囲:P.422 - P.423

患者 46歳,男子
初診 昭和50年5月28日

綜説

膿疱性乾癬—乾癬における膿疱化の問題

著者: 安田利顕

ページ範囲:P.425 - P.432

 今日,乾癬の発症には,1つの先天的素因があつて,こういつた人々の皮膚に種々の刺激が働いたとき,本症に特有の紅斑落屑性局面からなる皮疹が発症してくるものと考えられている.この事実は,既に乾癬を有する個体においても,その健康皮膚部に同様な刺激を加えると,同一形態の皮疹の発生をみることを示すもので(isomorphic irr—itant),これが皮疹の増殖,新生の原因にあげられていることは,衆知の通りである.そうして,この現象は臨床的にKobner現象と呼ばれている.
 このKobner現象の誘発因子としては,多くの場合,器械的,化学,温熱,日光刺激などの外的刺激が重視されている.また,ほかの皮膚疾患の皮疹のあとに発生してくることが少なくないが,これも同じ現象である.一方,Lomholt(1963)1)は体内因子もまた,乾癬の発症,誘発の因子となりうるとしてこれによつて皮疹の発生をみる現象をinternal Kobner phenomenonとした.この因子としては,1)細菌感染,2)精神的因子3)内分泌,4)環境因子(気候的および地理的),5)アルコール6)食事7)薬剤などがあげられている.

原著

自己免疫性溶血性貧血,血小板減少を合併したProgressive Systemic Sclerosis

著者: 北村啓次郎 ,   菅原信 ,   生富公明 ,   籏野倫

ページ範囲:P.433 - P.439

 約9カ月の経過で急激に発症,死亡した定型的全身性強皮症(PSS)で,経過中著明な貧血と血小板減少を合併したが,これら血液学的異常はプレドニゾロン(以下PSL)と6—メルカプトプリン(以下6MP)投与により寛解せしめた1例を記載した.貧血は溶血性貧血でクームス直接法陽性により自己免疫性溶血性貧血と診断した.
 血液学的には経過良好であつたが,強皮症は進行性で肺機能障害,腎機能障害も加わり,末期には感染症(GNB)に出血(食道潰瘍より)が加わり死亡した.剖検ではほぼ全身に強皮症性変化が認められ,間質性肺炎,食道粘膜潰瘍よりの出血が直接死因と考えられた.
 強皮症に自己免疫性溶血性貧血および血小板減少症の合併した例すなわちEvans症候群1)を合併したPSSは極めて稀であり,強皮症の患者を扱うことの多い皮膚科医にとつて,かかる稀有例の存在を知る必要があると考えた.

Ehlers-Danlos症候群の1例

著者: 諸橋正昭 ,   永井茂雄 ,   関根輝夫 ,   伊勢村護 ,   大石正夫

ページ範囲:P.441 - P.445

 先天性結合織代謝異常症の代表的な疾患の1つである本症は,現在では,臨床症状,遺伝,生化学的所見などから7型にまで分類されている.臨床的には第Ⅵ型と考えられる,angioid streaksの眼病変をともなつた26歳,男子の症例を報告した.真皮およびコラーゲン画分のアミノ酸分析の結果ではlysyl hydroxylaseの活性低下は認められなかつた.

Pagetoid悪性黒色腫—螢光法(Falck & Hillarp)による観察所見を中心として

著者: 森嶋隆文 ,   桑原京介 ,   石川豊祥 ,   遠藤幹夫 ,   荒川秀夫

ページ範囲:P.447 - P.453

 53歳,主婦の左第3趾に,約1年前に発症したと思われるPagetoid(Superficialspreading)malignant melanoma in situの1例を螢光法(Falck & Hillarp)による観察所見を中心として考察した.臨床的には約20×10mm,厚い鱗屑で被われた扁平台状に隆起した黒色の腫瘤で,病理組織学的には微細顆粒状のメラニンを含み,卵円形の核と明るい細胞質とを有する黒色腫細胞が表皮内部の側方あるいは上方に向つて増殖し,その像は一見Paget病を思わす.黒色腫細胞の真皮内への浸潤像は認め難く,基底膜もよく保持され,真皮の炎症性細胞浸潤も軽度であつた.螢光法では黒色腫細胞が表皮内部に大小の胞巣をなして,ときにケラチノサイト間に弧立性に増殖している像が明瞭に認められた.悪性黒子型黒色腫の螢光法による所見と比べると,Pagetoid黒色腫細胞は樹枝状突起を欠き,卵円形で,黄色特異螢光を発し,母斑細胞由来を思わせた.なお,全身処々にみられた黒色小色素斑に悪性変化は証しえなかつた.

Eosinophilic Pustular Folliculitisと思われる2症例

著者: 青島忠恕 ,   山田瑞穂

ページ範囲:P.455 - P.458

 第1例は61歳男子,前額〜右眉毛部に環状に小膿疱を,左耳後〜後頭部に集族性に小膿疱を有する紅斑を生じ,第2例は31歳男子,前額,左右頬部など7カ所に浸潤性紅斑を生じ,いずれも組織学的に毛嚢壁,毛嚢内,毛嚢周囲,脂腺内に多数の好酸球を認めた.第2例では初診時コルチコステロイドが投与されており,その効力が失なわれたと考えられる4日後以降,紅斑の上に多数の小膿疱を集簇性に生じた.末梢血中好酸球増多はなかつた.

Pseudopyogenic Granulomaの3例

著者: 藤田益子 ,   青木敏之 ,   田中卓

ページ範囲:P.459 - P.463

要約 26歳女性の後頭部,26歳男性の外耳道前庭部,耳甲介部,49歳女性の後頭部に瘙痒を伴う暗赤色〜赤色小結節,丘疹が多発した.組織学的に血管の増生,血管内皮細胞の増殖,間質へのリンパ球,組織球,好酸球などの浸潤がみられpseudopyogenic granuloma(Wilson Jones & Bleehen,1969)と考えられた.2例は原因不明,1例は外傷後に発生している.ステロイド局注は無効で,外科的に完全切除するか,深く電気乾固した場合にのみ治癒した.

ステロイドホルモン外用剤使用中に発症した毛嚢虫性皮膚症

著者: 大滝倫子 ,   入交敏勝

ページ範囲:P.465 - P.469

 ステロイドホルモン外用剤の長期使用中に毛嚢虫による皮膚炎を発症した12歳と13歳の女子2例を報告した.
 治療はフェニトロチオン吸水軟膏を用い,数日間で軽快ないし治癒した.

単発型 陰部平滑筋腫

著者: 石倉多美子 ,   江口和夫

ページ範囲:P.471 - P.474

 44歳の男の陰嚢に6年前より生じた単発型陰部平滑筋腫について報告した.本例はわが国で報告された単発型陰部平滑筋腫の6例目に当るが,それらの中で陰嚢に生じたもののうちでは最も大きいものであつた.なお,腫瘍の実質内に慢性炎症性細胞浸潤が見られたことも特異な所見であつた.本腫瘍の臨床像と組織像について若干の文献的考察も加えた.

Epidermolysis Bullosa Simplexの2例

著者: 細見靖子 ,   市橋正光 ,   神畠茂

ページ範囲:P.475 - P.480

 単純性表皮水疱症の男子2例を報告し,一連の表皮水疱症の鑑別診断基準をあげて検討した.また,自験例2例とも,基底細胞の崩壊解離の電顕所見では,個々の原形質内小器管は比較的よく保たれ,lysosomeも殆んど見当らず,水疱発生機序の一次性変化がlyso—somal enzymic cytolysisであることを考えさせる所見はえられなかつた.Mechanicalcytolysisを来し易くするcytopathogenesisは未だ不明であるが,一種の構造欠損ないしは形成不全も考えられる.

腎移植後にみられた深在性真菌症(Fonsecaea pedrosoiとPaecilomyces lilacinus)の1例

著者: 新井春枝 ,   遠藤忠雄

ページ範囲:P.481 - P.487

 28歳,家婦.約2年前腎移植後ステロイド糖尿病併発.体液性および細胞性免疫能の低下を認める.後にインスリン注射部である大腿部にFonsecaea pedrosoiによる深在性黒色分芽菌症およひ前腕部にPaecilomyces lilacinusを起因菌とする深在性真菌症が発症.両病変部とも真皮皮下脂肪層に中心部壊死性の肉芽腫を形成したもので,組織内菌要素として多数の菌糸形が認められた.

Incontinentia Pigmenti(Bloch-sulzberger)

著者: 濱田稔夫 ,   石井正光

ページ範囲:P.489 - P.495

 Incontinentia pigmenti(Bloch-Sulzberger)の母娘例(30歳および1歳8カ月)および別家系の女児例(11カ月)の3症例を報告した.娘例(症例1および3)はともに生下時,すでに小水疱などの皮疹が出現しており,生後1カ月目では躯幹部,四肢に列序性ないし網目状の褐色色素沈着と,特に下肢では所々に小水疱が集族して痂皮を附着した局面がみられ,それらの組織所見では表皮内水疱と好酸球浸潤が主で,基底層の液状変性,真皮内のmelanophageもすでに認められた.生後各5カ月目,3カ月目頃より下肢の先の皮疹部にほぼ一致して暗赤色扁平苔癬様局が列序性に出現し,組織像は過角化,有棘層肥厚,乳頭腫様増殖とともに有棘層上層より顆粒層内に渦巻様を呈した角質様物質が連続性ないし集族性に存在するが,表皮内汗管との関係は認められなかつた.症例2の母親例では左腋窩部,左鼠径部に褐色色素斑が僅か残存する程度で,組織像はincontinentia pigmentiを示し,現在は色素沈着消腿期に相当する.併せて本症の成因,遺伝関係についても考察を加えた.

印象記

第76回日本皮膚科学会に参加して

著者: 三浦隆

ページ範囲:P.496 - P.497

 第76回日本皮膚科学会総会および学術大会は,昭和52年4月8日から3日間にわたり,慶応義塾大学籏野倫教授を会頭として,すでに桜も散つた東京都新宿区,京王プラザホテルにおいて盛大に開催された.
 今回のように同一建物のなかで大会がすべて運営されると,各会場への移動が極めて容易となり,参加会員にとつて何かと好都合であった.大会は,主として3会場にわかれて同時進行されたが,各会場は良く装備されており,加えて音響効果が良かつたので,広い会場の隅々まで演者の声がよく通つた,と一般に好評であつた.籏野会頭の斬新な御意図は本大会の運営上随所に生かされていた.学術大会は学問の場であると同時に親睦の場でもある,とのお考えから,昼の休憩時間が充分にとつてあつたことは,会員相互間の交流に役立つたものと思う.また,若手会員が気楽に話し合える場をもつという目的から,Luncheon discus—sionが企画実行された.これは,定められた講師と昼食を共にしながら自由に話合うもので,その話題としては,接触皮膚炎と抗体(谷奥喜平),深在性真菌症(福代良一),皮膚腫瘍の治療,外科,理学療法(池田重雄),蕁麻疹の治療(三浦修),皮膚腫瘍の治療,免疫,化学療法(石原和之),および光と皮膚(小堀辰治)など,興味深いテーマばかりで,おのおの斯界の第一人者が講師を担当しておられた.今後ともこのような試みが広く普及することが望まれる.本大会最大のトピックは,臨床病理カンファレンスが開催されたことである.CPC標本供覧室内には,呈示全20症例の組織標本と顕微鏡とがそれぞれ設置されてあり,また全症例の臨床像,組織像,およびコメントは一冊の印刷物としてすでにまとめてあり,さらにCPC (司会Graham,J.H.,三木吉治,セクレタリー 中村絹代)会場では,カラースライドによる投影および討論がおこなわれるなど,極めて懇切丁寧かつ有意義なものであつた.本大会においては,医学教育に関する問題もとりあげられた.すなわち,交見演題として,医学教育と皮膚科(司会牛場大蔵,安田利顕)というテーマの下に,医学教育カリキュラム改善に関する諸問題が論議されたが,本会場には聴衆も多く,有益な演題であつた.また,稀有例や典型的の再呈示という目的の下に開催された教育示説(司会福代良一,野北通夫)は,これら疾患を再認識させた点で好評であつた.招請講演

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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