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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科31巻7号

1977年07月発行

雑誌目次

図譜・417

酒皶様皮膚炎

著者: 和田啓子 ,   石橋明 ,   中条知孝

ページ範囲:P.510 - P.511

患者 37歳,女性
初診 1975年7月

原著

白斑を伴つた皮膚アミロイド症

著者: 石垣優 ,   藤井隆 ,   大橋勝

ページ範囲:P.513 - P.518

 背部と上肢にpapulo-macular amyloidosisがみられた67歳の女性において,肘部に臨床的に尋常性白斑とみなしうる皮疹が存在した.同皮疹の生検で,組織化学的および電顕的にアミロイドの存在が確認された.

テトラクロルエチレンによる全身性中毒疹

著者: 荻野篤彦 ,   若井淑人 ,   今村貞夫 ,   小菅七三

ページ範囲:P.519 - P.524

 紳士服縫製工場内のドライクリーニングおよび整糸工程に従事する女子工員に洗浄剤テトラクロルエチレンによると思われる全身性中毒疹の発症をみた.テトラクロルエチレンの液体あるいは高濃度の蒸気が直接,皮膚に接触したために生じた刺激性皮膚炎は知られているが,長期間にわたる蒸気の吸入または経皮吸収によるとおもわれる全身性中毒疹は,類似の化学構造および性状を有するトリクロルエチレンによる数例の中毒疹が欧米で報告されているだけで,いまだその記載をみない.

エクリン汗器官癌の2例

著者: 安田耕一郎 ,   佐々木孝雄

ページ範囲:P.525 - P.528

 表皮内にいわゆるPaget現象を示したエクリン汗器官癌の2例を報告した.2例とも,腫瘍細胞は表皮細胞にsymbioticに接し,細胞質にはglycogen顆粒が豊富で,neutral mucopolysaccharideを認めない.症例1では,腫瘍細胞は基底細胞様で,充実性の腫瘍塊を形成し,表皮より真皮深層まで浸潤し,柵状配列を認めず,eccrine porocarci—nomaと診断した.症例2では,はつきりとした管腔構造やクチクラは認められないが,真皮内で腺腫様の構築を示し,表皮内へ侵入して,管腔様ないし腺様の増殖を示し,一方筋上皮細胞を認めないことから,eccrine ductocarcinomaと考えた.

全身性紅斑性狼瘡(SLE)に生じたRheumatoid Nodule様病変

著者: 森川孝雄 ,   末次敏之 ,   杉崎徹三 ,   菊池祥治 ,   根岸雅夫

ページ範囲:P.529 - P.533

要約 症例,19歳,女.手足のレイノ一症状で発症,関節痛を来たし,最初,慢性関節リウマチが疑われたが,精査の結果SLEと診断され,両手背,指背に合計10コ,rheumatoid nodule様の結節を合併していた.主な異常所見は,次の通り.白血球減少,高グロブリン血症,IgG増加,LE細胞(+),LEテスト(+),補体価低下,抗核抗体(+),CRP(⧺),RA(±),足趾紅斑部皮膚及び躯幹背部,正常皮膚のLBT(+).小結節の組織学的所見は,rheumatoid noduleに類似する所見であつた.以上の症例を報告し,若干の文献的考察を行なつた.SLEに合併したrheumatoid noduleは稀で,その発生機序も未だ決定されていないが,血管の損傷,変性を基盤とした肉芽腫形成と考えられる.

前腕に生じたApocrine Cystadenomaの1例

著者: 菊池禮子

ページ範囲:P.535 - P.538

 42歳,女.約3年前に,右前腕伸側の小指頭大腫瘤に気付く.表面の色調は徐々に濃くなり,初診時は黒青色,大きさは12×10mm,弾性軟の皮下腫瘤となつた.
 組織学的には,真皮内嚢腫で,その壁は一層の背の高い円柱状細胞よりなり,一部は乳頭状をなして突出,一部は蕾状増殖や小嚢胞形成がある.内腔面はcuticulaを有するようにみえるところがあり,PAS陽性,diastase抵抗性,mucicarminおよびBerlin青で特に強染する.以上よりapocrine cystadenomaと診断した.
 報告文献を検討したところ,本邦では6例が経験され,女子としては2例目である.部位的にはapocrine分布部位以外で発生した例は他にみとめられず,特異的である.加えて組織発生について考察した.

特異疹を主訴として来院した急性骨髄性白血病の1例

著者: 桑原京介 ,   長嶋典安 ,   辻口喜明 ,   森嶋隆文 ,   太田雍徳

ページ範囲:P.539 - P.544

 47歳,男子.頭頂部にクルミ大の半球状腫瘤,顔面,頸部,体幹,四肢に大豆大までの多発性の丘疹〜結節,左大腿に鶏卵大の皮下腫瘤を主訴として来院した.表在リンパ節腫大,歯肉肥厚,末梢血液像および皮疹の病理組織学的所見から皮膚科で白血病が疑われ,内科での精査の結果,急性骨髄性白血病と診断された.抗白血病剤の使用によつて皮疹は消褪傾向を示したが,血液や骨髄像に改善の徴なく,入院第116日目に死亡した.皮疹が白血病発見の端緒となることが少なくないことを知るとともに白血病の特異疹につき文献的考察を試みた.

Black Heel

著者: 富田靖 ,   五十嵐稔 ,   斉藤信也

ページ範囲:P.545 - P.549

 12歳15歳,22歳男子の踵に発症したblack heelの3例と,34歳の男性の趾先に発症した本症類似の1例について報告した.踵例と趾例とで,年齢,誘因,発生部位,組織所見において明らかな差異があつた.角層内沈着物の由来は踵例では不明であるが,趾例では主に血液由来であつた.Black heelの名称は踵に発生する本態不明の点状斑にのみ限定し,いわゆる異所性black heelは本症類似の症状を呈する単なる点状出血であると考える.

マンソン裂頭条虫症

著者: 向井秀樹 ,   山手哲明 ,   斉藤隆三 ,   伊藤洋一

ページ範囲:P.551 - P.555

 蛇生食後,移動する皮下結節を皮膚症状とし,末梢血中に好酸球増多をみとめ生検の結果,マンソン裂頭条虫症と診断した2症例を報告するとともに,その診断法として,HAテスト,皮内反応の有効性を記載した.
 さらに最近5年間の本邦報告例をまとめ,年齢・性・感染原因を集計し,感染原因として蛇の生食の多いことより公衆衛生上の問題を提示した.

Eccrine Poroepithelioma—とくにその電顕像について

著者: 堀真 ,   西本勝太郎 ,   里見行義 ,   前島和樹

ページ範囲:P.557 - P.563

 64歳,女性の腰臀部に発生したeccrine poroepitheliomaについて電顕的に検索した.その汗管様構造の形成過程は,最初に,腫瘍細胞の細胞質内にlysosomeと思われるmultivesicular dense bodyが出現し,ミトコンドリア,グリコーゲン顆粒の動員のもとに細胞質の自己融解がおこり,細胞質の空胞が形成され,次第に増大し,microvilliの形成がなされ,隣接する細胞内空洞と一緒になり,細胞外に管腔構造を形成し,次第に汗管様構造を形成してくると思われた.これらの過程は,胎児の表皮内汗管の形成過程と一致するものであつた.

5FC治療により完治したPhialophora Gougerotiiによる黒色真菌症の1例

著者: 笹川征雄 ,   山田瑞穂

ページ範囲:P.567 - P.572

 77歳,女子の下腿に生じた黒色真菌症例で,顔面に有棘細胞癌を合併していた.原因菌はPhialophora gougerotiiであつたが,この菌は比較的分離されることが少ない.治療には5FCを使用した.従来この薬物は,その治療効果はやや劣るが,副作用のない点で優れているといわれていた.しかし,本症においては良好な結果が得られ,5FCのみで完全に治癒せしめ得た.

腎細胞癌の皮膚転移例

著者: 滝野長平 ,   有田里加 ,   吉田正巳 ,   宮崎竜之輔 ,   広瀬康二

ページ範囲:P.573 - P.579

 52歳,男性.全経過1年11カ月,皮膚転移巣出現より7カ月で死亡した.皮膚転移巣は経過中頭部および指尖に4コを数えたが,いずれも紅色で柔らかく血管腫を思わせた.
 本邦皮膚科領域からの報告は自験例を含め14例で,これらから一般像を推測すると,姓別では男性が圧倒的で,年齢は50歳台ついで40歳台に多く,数では少なく単発例が過半数を占めた.部位としては相対的に頭部が多く,また真皮内に位置することが皮下組織内のものより多かつた.発疹としては小型・紅色調・硬ないし弾性硬の結節であることが多かつた.原疾患の発病より皮膚転移巣出現までの期間ならびに皮膚転移巣出現よりの生存期間は種々で一定の傾向は推定しえなかつた.皮膚科領城においては皮疹を通じてのいわゆる潜在性副腎腫に遭遇する頻度がかなり高い成績をえたことから,本症に対する皮膚科医の果たす役割の少なくないことと稀れなものとはいえ留意すべき疾患であることを強調した.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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