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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科31巻9号

1977年09月発行

雑誌目次

図譜・419

Anetodermia Erythematosa〔Jadassohn〕—Atrophia cutis idiopathica maculosa

著者: 平野京子 ,   安田和正

ページ範囲:P.682 - P.683

患者 25歳,女子
初診 昭和51年2月10日

原著

Phialophora gougerotii感染症の1例—1症例と本邦報告例について

著者: 北浦弘幸 ,   前田元道 ,   妹尾浩一 ,   小田咲子

ページ範囲:P.685 - P.690

 32歳,女子.昭和37年SLEの診断をうけ,以後ステロイドホルモンの内服を続けている.その間,時期は不明だがステロイド糖尿病を併発していた.昭和48年8月頃左肘部を蚊に刺され,その後同部位に多発性の皮下腫瘤(囊腫様)および皮下膿瘍を形成し,各種の治療に抵抗性を示した.培養により黒色真菌をえ,スライドカルチャーなどにより,本分離菌をPh. gougerotiiと同定した.治療としては,最近クロモミコーシスにたいして,5—Fluorocytosine(5—FC)の有効性が報告されており,われわれは外科的に切除するとともに,5—FC(9.5〜7.5g/日),アンホテリシンB(300mg/日)の内服を併用して良好な結果をえたのでここに報告した.術後約10カ月を経過した現在迄再発はみられていない.なお,5—FCの本分離菌にたいする最小発育阻止濃度(MIC)は1.56μg/mlであつた.

局所持続温熱療法で治癒したクロモミコーシスの1例

著者: 梁瀬恵子 ,   山田瑞穂 ,   笹川和信

ページ範囲:P.691 - P.694

 53歳男子の左前腕外側に生じたクロモミコーシスに対して温熱療法を試みたところ著明な改善をみた.すなわち,「白金カイロ」を患部に貼布し,終日9週間にわたり持続したところ,他の療法を併用することなく完治し,11カ月を経過しているが再発はみられない.著効に導いた理由として,一定の高温が得られる「カイロ」を24時間貼布しつづけたことがあげられる.クロモミコーシスの治療法がいまだ確立されていない現在,「カイロ」による持続温熱療法は試みてみる方法の1つであると思われる.

毛孔性紅色粃糠疹(Devergie)の1例—特に異常角化部の超微構造について

著者: 堀嘉昭 ,   宮沢七郎

ページ範囲:P.695 - P.700

 33歳女性にみられた典型的毛孔性紅色粃糠疹(Devergie)の1例を報告し,その病理所見,特に透過型および走査型電子顕微鏡所見について述べ,角化不全,角層細胞の配列の乱れ,角層間物質の不規則性,顆粒細胞内ケラトピアリン顆粒の異常を指摘した.

汎発性特発性毛細血管拡張症—原発性毛細血管拡張症の分類について

著者: 三並順子 ,   中島静香 ,   肥田野信

ページ範囲:P.701 - P.705

 顔面,右上肢,前胸部に毛細血管拡張性紅斑を有する11歳女子の1例を報告した.
 鼻出血なく,遺伝関係もなかつたので,これをGeneralized essential telangicctasiaと診断した.本症は毛細血管拡張を呈する原発性疾患のうち代表的なものとみなされ,その周辺疾患との関連と,あわせて原発性毛細血管拡張症の分類について論じた.

多発性ボーエン病の1例—ボーエン癌およびリンパ節転移を伴つた典型例

著者: 舛真一 ,   真家興隆

ページ範囲:P.707 - P.712

 52歳男子のボーエン病の多発した1例につぎ,臨床的・電顕を含む組織学的検索を行ない,あわせて尿・頭髪・爪につき砒素の定量を行なつた.主な所見として,1)被覆部位を中心として,病巣が全身播種状に認められた.2)その病巣は,粟粒大の褐色色素斑として認められるものから,貨幣大の不整形紅斑局面および過角化性結節など種々の様相を呈していた.3)足蹠には限局性の異常角化局面を認めた.4)組織学的には,臨床上褐色の色素斑としか認められないものも細胞構築の乱れや細胞の空胞化などの所見を認め,ボーエン病への移行像と考えた.さらに,臨床的には脂漏性角化症を疑わせる疣贅状結節も組織学的にはボーエン病であり,組織診断の重要性を再認識させられた—左側胸部にはボーエン癌および所属リンパ節(左腋窩)転移を認めた.5)砒素の含有量は,尿・頭髪・爪いずれも正常範囲であつた.6)内臓癌の併発は現時点では認め得なかつた.
 その発症因子としては,臨床所見および文献的考察より最も砒素が考えられた.

Chromomycosisの2例

著者: 木村恭一 ,   吉原丘二子 ,   中北隆

ページ範囲:P.713 - P.717

 香川県在住の55歳男子,52歳男子のいずれも臀部に生じたChromomycosisの2例を報告した.2例共にアンホテリシンB局注によつて治ゆせしめたが,1例に試みた5—FC内服療法(1日8g,4ヵ月半は無効であつた.

Lupus Erythematosus Profundus(Kaposi-Irgang)の1例

著者: 三原基之 ,   井上多栄子

ページ範囲:P.719 - P.724

 52歳,男性のLupus erythematosus profundus(Kaposi-Irgang)の1例を報告した.病巣は顔面,躯幹,両上腕に散在性にみられ,紅斑性隆起性腫瘤状を示した.特に顔面の病巣は,治療経過中にDLE様表皮変化をきたした.クロロキン投与により各病巣とも著明な改善を認め,背部などの病巣は軽い陥凹を残して治癒状態となつた.病理組織学的所見からLupus erythernatosus profundusの病変は,真皮皮下境界部に始まり,漸次真皮上層ならびに皮下組織に拡大し,ついには表皮まで侵され,DLE様表皮変化を示すに至ると推論された.そのほか,鑑別診断について文献的考察を加えた.

指趾末節部の嚢胞様結節について—特にMucous CystとDorsal DIP Joint Ganglionとの鑑別診断

著者: 山田榮一 ,   佐藤忠敏 ,   小堀辰治 ,   吉野信二

ページ範囲:P.725 - P.729

 右示,中,環指末節指骨関節背部にみられたganglion (65歳,女),および右第2趾爪根部にみられた所謂mucous cyst (43歳,男)の各1例を報告した.文献上両疾患の概念に混乱がみられ,しばしば同じ名称で報告されているので,両疾患の病因,臨床的ならびに病理組織学的特徴を述べるとともに特にその鑑別診断について検討した.すなわちいわゆるmucous cystがdorsal distal interphalangeal joint ganglionと異る点は嚢胞が爪根部近旁にあり,多くは単発性で,真皮内に進展し,水疱状で時に自潰して潰瘍や疣贅形成をみることがあり,また関節嚢との交通はなく,骨棘を伴わないなどの点から鑑別し得る.

爪を侵襲した疥癬

著者: 猿田隆夫 ,   木村秀人 ,   大隈貞夫 ,   中溝慶生

ページ範囲:P.731 - P.735

 疥癬は元来,皮膚の軟かなところに発生するものであり,疥癬虫が爪を侵襲することはきわめて稀と思われる.著者らは疥癬虫の寄生によつて生じたと思われる爪の疥癬症例を経験した.
 患者は51歳女子.既往歴に糖尿病,貧血症などがある.昭和51年1月に当科を初診した際は,躯幹,手背,足背などに疥癬による皮疹があつた.51年8月の再来時には左第1趾爪に爪白癬様の肥厚混濁を認めた.このとき同時に躯幹には通常疥癬が存在していた.爪の混濁部から無数の疥癬虫および卵を検出し,同部の鱗屑の組織標本でも明らかに疥癬虫と卵が認められた.オイラックス軟膏の外用により約3カ月後,爪の肥厚は消失した.白癬菌は陰性であり治療経過からも疥癬虫が爪を侵襲したものと思われた.ノルウェー疥癬においては爪に疥癬の寄生する例は少数ながら報告されているが自験例のように通常疥癬があつて爪に疥癬の生じた報告は他にないようである.

爪下外骨腫

著者: 西林聰武 ,   岡本昭二 ,   近藤省三

ページ範囲:P.737 - P.741

 17歳女子の左第2足趾にみられた爪下外骨腫の1例を報告した.病理組織学的に検索すると,真皮膠原線維と骨梁間には,連続的に移行がみられ,線維性の骨梁形成が認められた.さらにトルイジン青染色で検索した結果,骨梁内には異染性はみとめられず,骨梁の形成は,真皮内の線維芽細胞様細胞が集まり形成されたものと考えた.骨梁内には,骨細胞を散在性に認め,Kossa染色での検索の結果では骨梁および真皮内にカルシュウム塩の沈着が認められた.以上の所見から自験例の骨化機序を結合織性骨化にもとづく化生機序によるものと考えた.

Papillon-Lefevre症候群の手術例

著者: 古賀雄二 ,   石倉一夫 ,   橋本功 ,   菅原光雄 ,   北進一

ページ範囲:P.743 - P.747

 8歳男子に発生したPapillon-Lefevre症候群の1例を報告し,角化病巣の電顕的観察を行つた.治療は,掌,足底の角化巣を腱膜レベルまで切除し,分層植皮術を行つて修復し,ほぼ満足すべき結果を得た.本症候群に対する格別の治療法がない現在,上記の手術療法も有力な手段と考えられる.

浮腫性硬化を伴う一種の皮下組織炎—Dermo-hypodermite Chronique Diffuse Scléro-oedémateuseか—と思われる1例

著者: 山田瑞穂 ,   浦上紘二 ,   青島忠恕

ページ範囲:P.749 - P.753

 68歳男子,両下腿の発赤を伴うびまん性の浮腫性硬化で,組織学的に真皮最下層〜皮下組織の帯状〜層状の膠原線維の変性,壊死,線維間の浮腫,細胞浸潤,皮下組織の線維化,細胞浸潤を認め,赤沈中等度促進(1時間60mm),CRP(3+),RA(+),血清IgG低値(565mg/dl),ツベルクリン反応陰性などがあり,バイシリン,コルチコイド,グリセオフルビンの投与により徐々に軽快し,3年後ほぼ治癒した.
 Scleredema(Bushke),morpheaなども考えられるが,フランス学派のいう下腿のhypodermiteあるいはdermo-hypodermitesのnodulairesでない型,すなわち(dermo-)hypodermites en plaques et diffusesのforme chronique diffuse,そのformc scléro-oedémateusという概念に属するものかと思われる.

北海道におけるスポロトリコージスの1例

著者: 高塚紀子 ,   神保孝一 ,   小野塚仡

ページ範囲:P.755 - P.759

 北海道におけるスポロトリコージスの第1例目を報告した.症例は72歳女,右手背の静注部に1週間後潰瘍を生じたもので植皮後典型的なリンパ管型となつた.なお発症の10日前まで神奈川県に旅行している.
 発症要因,誘因などにつき文献的考察を行つた.

コメント

著者: 福代良一

ページ範囲:P.759 - P.760

 高塚紀子氏ほか「北海道におけるスポロトリコージスの1例」を読んで感じたことを下に述べる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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