文献詳細
文献概要
原著
多発性ボーエン病の1例—ボーエン癌およびリンパ節転移を伴つた典型例
著者: 舛真一1 真家興隆1
所属機関: 1東北大学医学部皮膚科学教室
ページ範囲:P.707 - P.712
文献購入ページに移動 52歳男子のボーエン病の多発した1例につぎ,臨床的・電顕を含む組織学的検索を行ない,あわせて尿・頭髪・爪につき砒素の定量を行なつた.主な所見として,1)被覆部位を中心として,病巣が全身播種状に認められた.2)その病巣は,粟粒大の褐色色素斑として認められるものから,貨幣大の不整形紅斑局面および過角化性結節など種々の様相を呈していた.3)足蹠には限局性の異常角化局面を認めた.4)組織学的には,臨床上褐色の色素斑としか認められないものも細胞構築の乱れや細胞の空胞化などの所見を認め,ボーエン病への移行像と考えた.さらに,臨床的には脂漏性角化症を疑わせる疣贅状結節も組織学的にはボーエン病であり,組織診断の重要性を再認識させられた—左側胸部にはボーエン癌および所属リンパ節(左腋窩)転移を認めた.5)砒素の含有量は,尿・頭髪・爪いずれも正常範囲であつた.6)内臓癌の併発は現時点では認め得なかつた.
その発症因子としては,臨床所見および文献的考察より最も砒素が考えられた.
その発症因子としては,臨床所見および文献的考察より最も砒素が考えられた.
掲載誌情報