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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科32巻11号

1978年11月発行

雑誌目次

図譜・433

Reticulohistiocytic Granuloma

著者: 石倉多美子 ,   大槻典男

ページ範囲:P.902 - P.903

患者 58歳,男
初診 昭和51年5月27日

原著

粘液腫2例

著者: 佐藤大治 ,   長卓徳 ,   中島雅典 ,   中村康寛 ,   浜崎章

ページ範囲:P.905 - P.908

 左母指(54歳,男性)及び右大腿(46歳,女性)の皮下に発症した良性粘液腫2例を報告した.左母指の例は小葉状構造をとり,小葉周囲の結合識における細胞は紡錘型で同心性に配列し,膠原線維が平行して見られ,神経周膜に類似していること,正常末梢神経からの移行像らしい部分が見られることより,稀な神経鞘起源の粘液腫と考えられた.また右大腿の例は大腿二頭筋筋膜に接していたことより,大腿二頭筋起源と思われた.これら2例は現在まで転移も再発も認められない.

著明な肺病変を伴った菌状息肉症

著者: 北村啓次郎 ,   籏野倫

ページ範囲:P.909 - P.916

 39歳男,淡紅色腫瘤で初発し,初診時乾癬様の浸潤性紅斑が多発,かかる皮疹が一進一退をくり返しつつリンパ節腫大,肺内腫瘤の併発へと進展し,全身症状も生じたため多剤併用化学療法(CVPP, MVPP療法)を用い一時軽快せしめた.しかしその後皮疹,リンパ節腫,肺内病変いずれも寛解増悪を繰り返し,約6.5年の経過で死亡した菌状息肉症の1例を記載した.本例の特徴はX-P上,左肺門影の腫大に始まり,肺内coin lesionさらに肺内腫瘤および縦隔リンパ節腫瘤影が,治療により皮疹,表在リンパ節腫と共に消長した点にあった.これら胸部異常影の本体は生検で確認しえなかったが.臨床的に本症に特異なものと考えた.菌状息肉症の肺病変は剖検で時にみられるが,生前に発見されるのは比較的稀である.また内臓病変を伴った本症の予後は悪いとされているが,早期発見に努力し,強力な治療(特に強化維持療法の工夫が大切)にふみ切れば望みなしとはいえぬと考えられた.

Actinic Reticuloidの1例

著者: 片山一朗 ,   西岡清

ページ範囲:P.917 - P.921

 56歳,男性.農薬によると考えられる接触皮膚炎罹患後光線過敏症出現し,露出部に自覚症状のない紅色小丘疹及び瀰漫性の潮紅を来たした.MEDの著明な短縮,BLB照射で紅斑出現し,モノクロメーターにより300〜400nmにわたる広範囲の光過敏を認めた.尿中ポルフィリン陰性.光貼布試験にて,農薬,石鹸,使用薬剤等全てに陰性.組織学的に細網症を思わせる所見を呈し,ポートリエの微小膿瘍に類似した所見を認めたため,Actinic re—ticuloid (ARと略す)と診断した.螢光抗体直接法にて,基底膜にC3の沈着を認めた.右前腕を1カ月間光遮断を行ったところ,皮疹の完全な消褪を見た.

Malignant angioendothelioma(wilson Jones)の剖検2症例

著者: 北村啓次郎

ページ範囲:P.923 - P.930

 83歳女,77歳男の頭部に生じ顔面頸部へと拡大,頸部リンパ節と肺へ転移.肺転移のため生じた血気胸,肺炎によって,全経過各々1年と10年で死亡したWilson Jones型のmalignant angioendotheliomaの剖検2症例を記述した.2症例とも転移は領域リンパ節と肺のみに限られ,肺では表面に近く腫瘍結節が生じたために気胸をきたしたこと,また転移腫瘍は皮疹同様,嚢腫性で易出血性であるため,肺では小さな転移巣であっても破れて血気胸を起こす可能性が大きかったものと考えた.

多発性Bowen病について

著者: 大山勝郎 ,   桑原宏始 ,   浜田尚徳

ページ範囲:P.931 - P.938

 職業性砒素中毒症が疑われる76歳男子に多発性Bowen病が生じ,恥骨部のBowen病病巣が4年後Bowen癌に進展した1例を報告した.本邦報告の多発性Bowen病を蒐集し,砒素との関係,悪性腫瘍の合併について検討したところ,砒素と関連するものが多く,また皮膚悪性腫瘍,内臓悪性腫瘍を単発性よりも高頻度に合併する.またBowen病より生じたBowen癌について検討した.

Clear Cell型汗管腫の1例

著者: 大槻典男 ,   佐野勉 ,   福田繁 ,   福代良一 ,   近小弥太 ,   竹田公彰

ページ範囲:P.939 - P.946

 汗管腫のclear cell型の1例を述べた.それは臨床的に普通の汗管腫と大差はなかったが,組織学的にはclear cellから成る胞巣の集まりから構成されており,clear cellの胞体内には多量のグリコーゲンが認められた.電顕的にはclear cellの細胞質内に々よ種々の大きさの空胞形成がみられ,内部にグリコーゲンと思われる細顆粒状または絮状物が認められた.clear cellは電顕的に真皮内汗管類似の所見を示した.

Eccrine Ductadenomaの1例—組織学的,組織化学的,酵素組織化学的考察

著者: 竹松英明 ,   加藤泰三

ページ範囲:P.947 - P.951

 60歳女子.約10年前より,人中右側に腫瘤あり,小指頭大に増大.
1)組織学的には,真皮全層にわたり上皮細胞が増殖し,管腔,索状構造を成す.
2)組織化学的には,腫瘍細胞はグリコーゲンを含有し,PAS陽性のクチクラを認める.
3)酵素組織化学的には,腫瘍細胞巣に一致してSDHが強陽性.
 この腫瘍をeccrine ductadenomaと診断した.

老人性角化症に生じたAcantholytic Squamous Cell Carcinoma

著者: 木村恭一 ,   藤田甫

ページ範囲:P.953 - P.958

 88歳男子の右手関節部に生じた老人性角化症の1例を報告した.これは組織学的に多彩な所見を呈したが,5—FU軟膏治療後に再発をきたし,既にAcantholytic squamous cell carcinomaに移行していた.

Apocrine Cystadenoma

著者: 武岡和仁 ,   中条知孝 ,   石橋明 ,   田中信

ページ範囲:P.959 - P.962

 32歳,女性.数年前より右耳前部に嚢腫様腫瘤発生.皮表よりわずかに隆起し,淡青色を呈し,自覚症状はない.組織学的にほぼ典型的であったが,腺腔様構造が一部表皮に接し毛嚢への開口を思わせる所見を得た.
 分泌上皮細胞中にはジアスターゼ抵抗性PAS陽性物質がみられたほか,ことにその先端部にはヒアルロニダーゼ抵抗性コロイド鉄陽性物質もみられた.これはニウラミニダーゼでほぼ消化されたのでシアロムチンと考えられた.なお,一部の分泌上皮細胞には黄褐色円形の色素顆粒を含むが,これはシュモール染色で暗青色を呈し,リポフスチンと推定された.

転移性皮膚癌—臨床統計及び病理組織学的検討

著者: 田村晋也 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.963 - P.970

 昭和40年以降13年間に慶大皮膚科教室で経験された転移性皮膚癌20例について臨床統計的及び病理組織学的に検討した.
 原発巣は乳癌5例,胃癌4例,子宮癌2例,大腸癌1例,直腸癌1例,上顎癌1例,腎癌1例,不明5例であった.皮膚転移巣の臨床所見は単発9例,多発11例であり,結節型14例,炎症型5例,硬化型1例であった.組織像は分化腺癌3例,未分化腺癌5例,扁平上皮癌4例,硬癌6例,未分化癌1例,特殊型(腎癌)1例であった.皮膚転移部位では,乳癌,子宮癌及び上顎癌等の扁平上皮癌は原発臓器に近接する皮膚に多く見られ,胃癌及び腸癌等の消化器癌は広く全身に散在する傾向があった.予後について調査し得た13例の皮膚転移巣出現後死亡までの平均生存期間は10.5カ月であった.
 さらに自験例中興味ある所見の認められた数例につき略述し,若干の考察を加えた.

強皮症および類縁疾患におけるIn-vivo bound immunoglobulinsと抗核抗体

著者: 西川武二 ,   多島新吾 ,   栗原誠一 ,   籏野倫

ページ範囲:P.973 - P.977

 強皮症(汎発性ならびに限局性強皮症)と確診された症例と,強皮症の変化を主徴とし他の結合織疾患を合併するMesenchymal Scleroderma (MS, Winkelmann)の症例,計16例について螢光抗体直接法により病変皮膚の免疫グロブリン沈着の有無と血中のRibo—nucleoprotein (RNP)抗体を中心とする抗核抗体(ANA)の関連について検討した.その結果,2/7例の汎発性強皮症の皮疹部にIgM沈着,5例のMSの全例に表皮細胞核または基底膜にIgG沈着を認めたが,限局性強皮症では4例全例に皮疹部に免疫グロブリンは認められなかった.ANAは12/15例に陽性でそのパターンはspeckledまたはhomogenousであった.抗RNP抗体はMSの全例に陽性であった.以上より,皮疹部におけるIgG沈着は汎発性強皮症とMSを鑑別する所見であることが確認され,また表皮細胞核のIgG沈着は血中抗RNP抗体とも密接に関連することが示された.若干の汎発性強皮症のANAはCF-ANAが明瞭にしかもANAに比し高値を示すことが明らかにされた.

経過中に汎発性鞏皮症を合併した全身性エリテマトーデス症例

著者: 斎藤義雄 ,   倉繁田鶴子 ,   石川英一

ページ範囲:P.979 - P.985

 42歳,男.初めdiscoid disseminated lupus erythematosusとして治療経過観察中,LE細胞陽性,高ANF値(2,048倍,speckled pattern),補体価低下および蛋白尿の出現とSLEの所見を呈し,さらに最近に至りレイノー現象,手,前腕,上腕,上胸,上背,下腿,足に浮腫性硬化が継発し,同時に舌小帯短縮,食道の蠕動低下を認め,臨床的にSLEと汎発性鞏皮症(SD)との合併と考えられるに至った.さらに最近認めた頬部紅斑の組織像ではLEの所見を,また前腕,上腕,背部の組織像ではSDの所見を認め,病理組織学的にも両疾患の合併が考えられた.しかし,免疫組織学的には頬部紅斑および前腕・背部の浮腫性硬化部にIgGないしC3を表皮細胞核および皮膚基底膜に認め,mixed connec—tive tissue disease (MCTD)の所見と類似していた.しかし現在までの測定で抗ENA抗体は陰性である.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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