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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科32巻2号

1978年02月発行

雑誌目次

図譜・424

種々の分化の像を呈した脂腺腫瘍の多発例

著者: 村岡道徳 ,   西村善彦 ,   田上八朗

ページ範囲:P.94 - P.95

患者 25歳,男性
 家族歴・既往歴 特記することなし.

綜説

疣贅と免疫—特に扁平疣贅の炎症を伴う自然消褪現象を中心にして

著者: 田上八朗

ページ範囲:P.97 - P.102

 多発した疣贅が突然あるいはたつた1回の治療で,短期間のうちに完全に消失してしまう不思議な現象に大抵の皮膚科医は出会つている.疣贅はヒトイボウイルス,human wart virus, humanpapilloma virus (HPV)によりひき起こされるウイルス性の乳頭腫で,多発性腫瘍の一斉消褪という点で,この現象は劇的である.
 HPVはDNAウイルスでpapova virusに属し,電子顕微鏡により皮膚の尋常性疣贅,足底疣贅,扁平疣贅のほか,粘膜の尖圭コンジロームや喉頭乳頭腫にも見いだされている.腫瘍の免疫がクローズアップされ出されるとともに,動物の腫瘍ウイルスの研究母体となつたウサギのShopepapilloma virusやサルのSV 40が同じpapovavirusに属しているため,人間の疣贅も注目されるに至つた.しかも,疣贅には有名な自然消褪の現象があるため,疣贅に関する免疫学的研究が,特にその自然消褪機序に焦点を合わせて,過去10年来盛んになつた.

原著

Acute generalized pustular bacteridの3例

著者: 行木弘真佐 ,   石川英一

ページ範囲:P.103 - P.108

 1974年Tanは溶連菌による上気道感染症のあとに手背,前腕,下腿,躯幹に膿疱を生じ,抗生物質により皮疹の軽快をみ,急性の経過をとつた58歳の女子例を報告.leucocytoclastic vasculitisの非典型例と考えacute generalized pustular bacteridと命名した.我々は先の教室の吉田の症例に引続き,臨床的にTanの症例に近いと思われる3例(60歳男,42歳男および51歳女)を新たに経験した.本症の特徴として1)皮疹出現前の溶連菌による上気道感染症状,2)高ASLO値,3)全身とくに手背,足背,下腿などに好発する膿疱の集簇性ないし播種状発生,4)皮疹の比較的急速な軽快傾向および5)再発傾向のないことなどが挙げられる.組織学的には自験3例中1例にアレルギー性血管炎の像を認め,免疫組織学的検索では自験例全例に真皮上層小血管壁にIgM, C3の沈着を認めた.以上の特徴から本症は溶連菌感染症により誘発され,Arthus型の血管反応の上に発症した細菌疹であることが示唆される.

エバンスブルー疹の3例

著者: 川津友子 ,   晒千津子 ,   川津智是 ,   平松博子

ページ範囲:P.109 - P.113

 リンパ管造影の標識色素剤エバンスブルーによる薬疹の3例を報告した.リンパ管造影後皮疹の出現までの期間は10〜12日,1例を除き皮疹は広範囲に認められ,下肢ではエバンスブルーの青染部に一致した帯状分布を示した.皮疹の性状は,紅斑,小丘疹が主で,高齢者の2例は下腿に紫斑を混じていた.また1例では下肢の紅斑は遠心性に拡大し,中心治癒傾向が認められた.皮疹の発生から消褪までの期間は12〜17日で,消褪後にもなおエバンスブルーによる皮膚の青染を残していた.組織像では,真皮上〜中層に小血管の浮腫とその周囲に好酸球を混じた炎症性細胞浸潤と赤血球の漏出が認められた.0.5%エバンスブルー注射液による皮内テストは,全例48時間後陽性で,遅延型アレルギー反応によるものと考えられた.

Trichilemmomaの1例

著者: 藤沢龍一 ,   島本正宏

ページ範囲:P.115 - P.119

 症例.71歳,女,約1年前に発症した,左頬部の扁平隆起性腫瘍.直径1.5cm,淡紅褐色で弾性硬,表面はやや湿潤性で顆粒状ないし疣状を呈し,易出血性,一部に鱗屑・血痂が附着.時に掻痒あり.摘除後,再発なし.
 病理組織所見.分葉状〜粗大網状の構築を示す,境界明確な腫瘍塊であり,毛包との連絡像が認められた.腫瘍細胞の主体は,PAS陽性・ジアスターゼ消化性のグリコーゲン顆粒を多量に含有する澄明細胞(clear cell)で,辺縁に棚状構造がみられた.腫瘍内に所謂trichilemmal keratinizationと思われる像が認められ,また少数のsquamous eddiesが散見されたが,細胞の異型性はなかつた.
 以上の症例を報告し,本症の臨床的事項,組織像,組織学的鑑別診断,毛包腫瘍における位置,組織学的特異型について記述した.

塩酸エプラジノン(レスプレン)による日光性皮膚炎の1例

著者: 東禹彦 ,   平田攝子

ページ範囲:P.121 - P.125

要約 気管支喘息罹患中の38歳,男子患者に10カ月来生じていた日光性皮膚炎が塩酸エプラジノン(レスプレン)によるものであることを確認したので報告した.内服照射誘発試験の方法は薬剤を6日間連続投与し,Dermaray I型でFL20S・BLBを20cmの距離から20分間照射した.レスプレン1日60mgを投与した場合は陰性であつたが,1日120mgを投与したところ,照射部位には1時間後に瘙痒著明となり,2時間後には紅斑を生じた.
この紅斑は6日後にもわずかに認めることが出来た.自験例は大量投与ではじめて発症していること,比較的治癒しやすかつたことなどから,アレルギー性よりも光毒反応に基づいて生じた皮膚炎ではないかと推定した.

再燃疹に金製剤が奏効したと思われる水庖性類天庖瘡の1例

著者: 平井昭男 ,   木村俊次

ページ範囲:P.127 - P.131

要約 51歳,家婦.瘙痒感の強い浸潤性の紅斑を周囲に伴う,米粒大〜鶏卵大の緊満性水庖が顔面を除く略全身に多発したため来院した.臨床的,組織学的,および免疫学的に水疱性類天疱瘡と診断し,prednisolone(PSL)大量内服投与を開始したところ皮疹は色素沈着を残して漸次消褪した,しかしながらPSL漸減時に紅斑水疱性の皮疹が再燃したため,PSLを増量せずに,gold sodium thiomalate(シオゾール)併用したところまもなく皮疹は消褪した.このことからシオゾールが水疱性類天疱瘡の再燃に対して奏効したと考えられた.なおシオゾール中止後はPSLおよびsalicylazosulfapyridine(サラゾピリン)併用にて経過観察中であるが,現在まで皮疹の再燃を見ない.

Lymphadenosis benigna cutisの3例

著者: 富田靖 ,   舛真一 ,   野口知子

ページ範囲:P.133 - P.137

要約 皮膚良性リンパ腺腫症の3例を報告した.そのうち2例は62歳男性の左鼻翼部に発生した結節と,79歳男性の左前額部の腫瘤であり,後者の例の皮疹は生検後まもなく消失した.他の1例は左頬部の皮下硬結を示し,組織的に皮下のリンパ沪胞様構造が認められた例である.
さらに最近まで報告された本邦97例の臨床について統計的考察を加えた.欧米の報告と比べて,発症部位に若干の差はあるものの,発疹,発症年齢,性比において本邦報告例もほぼ同様の傾向を示している.

Microsporum canis感染症集団検診—Ⅰ.大阪地方における小・中学生の検診

著者: 笹川和信

ページ範囲:P.139 - P.144

 大阪地方(大阪市,大阪府東部地方)において,小,中学生を対象としたMicro—sporum canis感染症の集団検診を行つた.
 6,032名の検診により,3名の罹患者が発見され,うち1名について感染源動物を猫2匹,犬1頭と断定した.

抗けいれん剤起因性エリテマトーデス

著者: 新井春枝 ,   西山茂夫

ページ範囲:P.145 - P.153

 抗ミトコンドリア抗体陽性を示すethosuccimide-induced systemic lupus erythematosusにIgAグロブリンの著減を伴つた10歳女児例を報告する.免疫グロブリン異常としてIgM増加,β1E減少も伴い,ethosuccimideの内服によつて変動した.IgAの著減は経過よりphenobarbitalによると考えられ,約1年後に正常となつた.
 抗けいれん剤起因性エリテマトーデスの報告例を原因薬剤別に整理し,次のごとぎ特長がえられた.
 1.Hydantoinおよびbarbituric acid起因性SLEは20代に多く,oxazolizineおよびethosuccimide起因性SLEは小児に多い.
 2.腎病変は蛋白尿を含めると約40%,皮膚病変は60%以上にみられ,hydralazineおよびprocainamide起因性SLEと異なる結果をえた.
 3.Ethosuccimidc起因性SLEにはリンパ腺腫,肝脾腫が多く,Coombs testが80%以上に陽性であつた.
 4.約50%の症例に免疫グロブリン異常がみられた.

Histiocytosis-Xの1例—Letterer-Siwe病様皮疹を伴つたEosinophilic granuloma of bone

著者: 斉藤真理子 ,   山崎律子 ,   村田譲治 ,   末次敏之

ページ範囲:P.155 - P.160

 症例は皮膚科初診時,1歳6カ月の男児.生後11カ月,右上腕骨に典型的eosino—philic granuloma of boneが発症.1歳2カ月,整形外科における第1回目掻爬術施行時頃より脂漏性皮膚炎様皮疹が出現.次いで3カ月後の第2回目掻爬術施行後,脂漏性皮膚炎様皮疹に加えて,一過性にLetterer-Siwe病様の出血性皮疹が出現し,さらに貧血,肝腫大等が認められた.VEP, VEMP療法により皮膚症状は改善したが,骨X-Pの所見では頭蓋骨,肋骨に骨融解像の進展が持続している.現在,3歳6ヵ月であり,なお経過観察中である.
 以上の症例を報告し,若干の文献的考察を加えた.自験例は皮膚の臨床的・病理組織学的・電顕的所見,全身症状,年齢を考慮すると,eosinophilic granuloma of boneからLette—rer-Siwe病への移行型あるいは両者の中間型に位置すると考えられた.

Pityriasis lichenoides et varioliformis acuta(Mucha-Habermann)—Pityriasis lichenoides chronicaとの関係について

著者: 川名誠司 ,   斉藤隆三

ページ範囲:P.161 - P.165

 30歳の男性に生じたPityriasis lichenoides et varioliformis acuta経過中にPityriasis lichenoides chronicaの皮疹を混在した.本症とPityriasis lichenoides chronicaとの関係について主として2つの説がある.すなわち両疾患は全く関係のない独立した疾患であるとする説と,同一疾患に属するという説である.
 臨床的に相互に移行,あるいは併発することがしばしばみられること,病理組織学的にリンパ球性の細胞浸潤として基本的に同一の組織反応である点から,同一疾患単位に属するという説を支持する.
 なお治療はPUVA療法を施行し有効であつた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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