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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科32巻3号

1978年03月発行

雑誌目次

図譜・425

いわゆる後天性リンパ管腫

著者: 橋本隆 ,   菅原信

ページ範囲:P.176 - P.177

患者 56歳,女子
初診 昭和51年7月15日

原著

環状紅斑を伴つた尋常天疱瘡

著者: 木村恭一 ,   福代新治 ,   窪美規子

ページ範囲:P.179 - P.184

 64歳女子.組織学的に典型的な粘膜疹を有する天疱瘡患者に,多数の環状紅斑を認めた.この紅斑は,1)組織学的にacantholysisが明らかでなく,eosinophilic spongiosis,角層下膿疱症類似の所見を呈し,2)螢光抗体直接法で表皮細胞間にIgGを認め,3)同間接法でも血中に抗表皮細胞間物質抗体陽性(64倍),4) DDSに反応せずステロイド内服が有効であつた.

Histiocytosis X—Letterer-Siwe病として発症し,Eosinophilic granulomaへと病型移行して寛解した症例について

著者: 鈴木伸典 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.185 - P.190

 症例:10カ月,男児.生後1カ月頃より,熱発や肝脾腫を伴なつてほぼ全身に丘疹性皮疹を生じ,Letterer-Siwe病と診断された.しかし生後8カ月頃より左上腕に結節を生じ,以後増大し腫瘤状となるとともに,臀部などにも同様の結節を生じた.治療としてsteroidとvinblastinを少量使用したのみで,腫瘤などのすべての症状が消褪した.生検像は,丘疹では真皮上層に,結節では真皮上層から皮下に組織球の浸潤が著明であり,1歳10ヵ月時に施行した結節の生検像では,好酸球の浸潤が顕著にみられた.その時期に一致して口蓋部に過剰歯や永久歯の早期萠出が認められ,組織学的に歯根部のEosinophilic granulomaが確認された.本症例は,Histiocytosis XのLetterer-Siwc病として発症しEosinophilicgranulomaへと病型が移行し,寛解し得たと考えられる.

Angio-Immunoblastic Lymphadenopathy with Dysproteinemiaの3例,とくにその皮疹について

著者: 佐藤信輔 ,   高橋省三 ,   林良一 ,   森下美知子 ,   小川力 ,   池田和夫 ,   猪股成美

ページ範囲:P.191 - P.196

 angio-immunoblastic lymphadcnopathy with dysproteinemiaの3例について皮疹を主に報告した.1)小豆大の境界明瞭な少しもり上つた浸潤性紅斑,2)皮下結節状浸潤性紅斑,3)軽度浸潤性融合性網状ないし不定型紅斑,4)痂皮性紅斑などの皮疹を認めた.皮疹の真皮上層より下層にかけて血管周囲性の形質細胞,リンパ球,組織球,好酸球,免疫芽細胞よりなる細胞浸潤を認めた.遅延型皮膚反応陰性,白血球遊走試験での機能低下より,細胞性免疫機能低下の所見が得られた.

全身性エリテマトーデスの合併が想定されるSenear-Usher症候群の1例

著者: 折原俊夫 ,   倉繁田鶴子 ,   石川英一

ページ範囲:P.197 - P.202

 Senear-Usher症候群は,今日天疱瘡の1型とされているが,皮膚症状についても,また検査所見に関してもエリテマトーデスとの関係が指摘されている.今回我々は全身性エリテマトーデスとSenear-Usher症候群との合併が考えられる1例を経験した.患者は41歳女性で,初め顔面に軽い発赤と腫脹があり,2〜3カ月後から四肢関節痛,頸部筋肉痛,それに躯幹に軽度湿潤傾向のある落屑性紅斑と頭部に脱毛斑が出現した.当科入院後胸部に新生した小水疱は,表皮内顆粒層に生じた棘融解性水疱であつた.また患者血清中には天疱瘡抗体とともに抗核抗体が検出され,同時にLE細胞も陽性であつた.生検皮膚では皮疹部・無疹部ともに表皮細胞間にIgG,また表皮真皮境界部にIgGとC3の沈着がみられた.以上のことからこの患者を全身性エリテマトーデスとScnear-Usher症候群の合併と考えた.

小児の汎発性膿疱性乾癬(zumbusch type)の1例

著者: 森下玲子

ページ範囲:P.203 - P.208

 汎発性膿疱性乾癬は,比較的稀な疾患とされているが,なかでも小児の本症は極めてめずらしい.15歳以下に発症した本症は,自験例を含めて,本邦では21例,Zumbuschtype 13例,Schuppener type 5例,全身症状の有無について記載のないもの3例である.
 自験例は,10歳女児,激しい局所療法により誘発されたと思われる.ステロイド,抗生物質,DDS,methotrexate,ノイトロピンで治療を試みたが,期待した効果はえられず,多価アンチゲン混合物(パスパート)の皮内注射により,約10カ月間の完全寛解期をえた.現在なお,皮疹および発熱などの全身症状の再発をみていない.

嚢腫様構造を呈したDermal duct tumorの1例

著者: 植原八重子 ,   加茂紘一郎

ページ範囲:P.209 - P.212

 26歳女子,事務員.右下腿屈側の嚢腫様,豌豆大腫瘤を2年来認める.
 組織学的に,大きな嚢腫様構造の中に腫瘍塊が浮遊したような形をとり,また腫瘍塊の中にも小さな嚢腫様構造を多数認める.腫瘍は真皮中央に位置し表皮との連絡はない.腫瘍形態,細胞構成等からdermal duct tumorと診断した.
 本邦におけるdermal duct tumorの報告は自験例も含め8例を数えるが,自験例のごとく臨床的,組織学的に著明な嚢腫様構造を伴つたものはみとめられなかつた.

疣贅様表皮発育異常症

著者: 大熊登 ,   武誠 ,   荒田次郎 ,   野原望

ページ範囲:P.213 - P.218

 有棘細胞癌を発生した46歳男子,疣贅様表皮発育異常症の1例を報告する.典型疹から腫瘍病変に至るまでの種々の段階にある組織学的所見を綜合的に検討した結果,本症の発症機序と腫瘍性変化機序は密接に関係すると考えられた.また,eccrine poroma, clearcell hidradenomaの像も認められ,本症の原病変が,表皮細胞のみならず,他方ではエクリン汗腺系などの付属器成分の腫瘍性変化も招来することが認められた.

Intestinal Behcet Syndrome—血液凝固・線溶系に興味ある所見を呈した1例

著者: 細井洋子 ,   鈴木伸典 ,   濱田稔夫 ,   山本繁 ,   長山正義 ,   曾和融生

ページ範囲:P.219 - P.224

 22歳,女性.約2年前より口腔内アフタの再発をみていたが,初診の約1カ月前より口腔内アフタが増悪し,毛嚢炎様および結節性紅斑様皮疹ならびに外陰部潰瘍をも生じた.入院後,回盲部痛および腹膜炎様症状をきたし,胃腸透視の結果,回盲部多発性潰瘍および食道潰瘍が認められ,のちに穿孔を来した.intestinal Behcet syndromeにおいては,上部消化管の病変の発見されることが稀なことを報告し,腸管潰瘍発生の病因は現在不明ではあるが,本症例において,血液凝固・線溶系の検査にて,活動期にplasma fibrinogenの上昇,euglobulin lysis timeの延長,plasminogenおよびantithrombin IIIの低下のみられたことより,fibrinogen血症および低線溶能状態などの凝固系および線溶系の異常が血栓形成ひいては腸管潰瘍の発生ないし進展に何らかの影響を及ぼしていると考えた.

I-cell病の1例

著者: 服部瑛 ,   北畠雅人 ,   石川英一 ,   志村稔美

ページ範囲:P.225 - P.230

 1歳9カ月女児のI-cell病と考えられる1症例を経験した.本症例は臨床的に,1)特徴的な顔貌,2)軽度の角膜混濁,3)歯齦の腫脹,歯の形成不全,4)肝の軽度腫大,5)指の軽度屈曲拘縮,6)関節の運動制限,7)皮膚の硬さの増強,8)精神,運動の発達遅延等を認め,さらに特徴ある多発性骨形成不全があり,本症以外にHurler症候群とも類似していた.しかしながらムコ多糖症と異なり,尿中排泄ムコ多糖の増加はみられず,培養皮膚線維芽細胞内に多数の顆粒状封入体を認め,同封入体は,組織化学によりglycolipidの反応を示した.

コメント

笹岡氏等の綜説:"皮疹を伴うT-リンパ球増殖性疾患—Sézary症候群とその周辺—"を読んで,官野氏の論文:"菌状息肉症ト胸腺淋巴性体質"を回想する

著者: 北村包彦

ページ範囲:P.231 - P.232

 最近の発表に係わる笹岡氏等の綜説:"皮疹を伴うT-リンパ球増殖性疾患――Sézary症候群とその周辺――"を読んで,往年の官野氏論文:"菌状息肉症ト胸腺淋巴性体質"を回想した.官野氏は本症患者の剖検に胸腺の残存を認め,リンパ質又は胸腺リンパ性体質の者に或る未知の原因の作用する時菌状息肉症を発生すると推論している.しかし今や笹岡氏等謂うところのcutaneous T-cell lymphomaとしての菌状息肉症に於けるT-cellの胸腺被支配性,そして皮膚親和性に照して,官野氏の菌状息肉腫症例を胸腺リンパ性体質の胸腺の残存に結びつける.同時に胸腺の残存,腫大が皮膚細網症乃至リンパ網内系腫瘍の免疫異常に対して持つ意義を考えてよいのではないだろうか.これは笹岡氏等の綜説から官野氏の論文を顧みての感想である.

講座

紅皮症について

著者: 川田陽弘

ページ範囲:P.233 - P.237

 紅皮症は各種の皮膚疾患のうちでも,全身との関係の深い疾患の1つである.本症は昭和47年西日本連合地方会のシンポジウム1)にとり上げられ,また最近でもいろいろの綜説ないし論著2〜5)が刊行されている.筆者も依頼に応じて何度か本症に触れているので,今回は出来るだけ旧論文6)との重複を避けつつ,本症の最近の動向につき述べることにする.
 紅皮症はBrocq以来原発性紅皮症と続発性紅皮症とに大別整理されてきたが,本症についての知見が深まるにつれ,最近では本症を1つのreaction cutanee即ち各種の原因で生じる1つの皮膚症候と看る傾向にある.それにしても最近の教科書とか論著からも分るように紅皮症の分類にはなお統一されたものがないようである.筆者は本症を原因,更に診断,治療の面をも考慮して表のように整理している.この分類法については既に"皮膚科の臨床"誌(1964)で比較的詳しく触れたことがあるので,ここではその後の知見の進歩にふれ乍ら,補足を加えることにしたい.なお乳幼児の紅皮症状態については今回はふれないことにする.

印象記

第41回日本皮膚科学会東日本連合地方会に参加して

著者: 西川武二

ページ範囲:P.238 - P.239

 第41回日本皮膚科学会東部連合地方会は昭和52年9月24日(土),25日(日)の両日,日本大学森岡貞雄教授を会長として,東京都千代田区平河町の日本都市センターにおいて盛大に開催された.学会はプレジデンシャル・アドレス,招待講演,シンポジウム2題,一般演題(スライド供覧・研究・症例・シンポジウム関連演題を含む)135題と盛り沢山な企画で第1日目は3会場,2日目は2会場に分れて演題が発表され活発な討論がなされた.さらに学会前日には,同会場にて東部・東京支部企画皮膚科講習会(皮膚病の遺伝:西田尚史博士)ならびに日本皮膚科学会教育臨床病理講習会(腫瘍:池田重雄博士)が行われ,学会第2日目のシンポジウムの一部(光化学療法剤)は日本皮膚科学会東部支部生涯教育講演会を兼ねて水野信行,戸田浄両博士の講演が行われ,従来の研究発表の場としての学会が,会員相互の親睦の場であると同時に生涯教育の場であることの認識が更に深められた.
 さて,今回の連合地方会は皮膚腫瘍を永らく研究のメインテーマとされている森岡教授がプレジデンシャル・アドレスとして毛包性腫瘍研究の動向と題し,また我国には既にその著書で知られるPincus H.教授が「Epithelial mesodermal intcra—ctions in normal hair growth, alo—pecia and neoplasia」と題する講演を行なつた.両教授の講演は皮膚科学の旧くて新しい領域である皮膚腫瘍のオーソドックスな形態学的な成果を着実に示すものとして高く評価されよう.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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