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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科32巻4号

1978年04月発行

雑誌目次

図譜・426

腋窩部Paget病

著者: 田中雅祐 ,   永井隆 ,   重見文雄

ページ範囲:P.256 - P.257

患者 73歳,男子
初診 1977年2月9日

綜説

亜鉛と皮膚疾患—腸性肢端皮膚炎を中心として

著者: 森嶋隆文 ,   八木茂 ,   遠藤幹夫

ページ範囲:P.259 - P.265

 亜鉛は古代エジプト時代から粉末泥膏として用いられ,今日でも酸化亜鉛は軟膏に添加されて種種の皮膚疾患の治療に欠かせないものであるにもかかわらず,著者は亜鉛という言葉を聞くと,カドミウム汚染などの公害あるいは中毒などを想起していたことは否めないところであつた.しかし,腸性肢端皮膚炎患者の亜鉛値を測定してみると,血中・尿中亜鉛値は定量限界以下であるが,赤血球中亜鉛は正常値範囲内にあり,また本症の特徴的症状とされる脱毛は亜鉛を要求する毛髪を犠牲にして生命を維持するための生体の防御反応の現われとも理解され,今更ながら亜鉛が必須微量金属であることを再認識させられた次第である.
 我々の体には地球上に存在するあらゆる種類の金属が存し,これらは生体にとつて必要である必須金属と必要としない汚染金属とに分かたれ,今日,高等動物で必須金属とされているものはFe,I,Cu,Mn,Zn,Co,Mo,Se,Snといわれている.必須金属の特徴としてはビタミンのように生合成が不可能のことと,供給源は地殻および海水で,供給がその生物の居住する自然環境に支配されていること,生体の許容濃度範囲はかなり狭く,欠乏も過剰も生体にとつて危険性が大であることなどが指摘されている1)

原著

いわゆるAuto-immune annular erythemaの1例

著者: 笹岡和夫 ,   阿南貞雄 ,   穐山富雄 ,   山浦英明 ,   高橋勇

ページ範囲:P.269 - P.274

 47歳,家婦.2年来主として躯幹,上肢に,多型滲出性紅斑様の小紅斑で初発して,漸次中心治癒性,遠心性に拡大するダリエ遠心性環状紅斑様皮疹を多発し慢性に経過する.
 最近,顔面と頸部にDLE (臨床的および組織学的に)を併発するとともに,口腔内潰瘍を形成し,軽度の全身症状が発現した.
 血沈亢進,γ—G1値上昇,IgG,IgE高値がみられ,LE細胞と抗DNA抗体は陰性であつたが,抗核抗体は陽性(IgG-ANA:128倍,speckled pattern)で.血清補体価,細胞性免疫能は正常であつた.また,環状紅斑の組織像は滲出型DLEに近似するが,螢光抗体直接法による検索では,LEに特徴的な所見をみとめなかつた.なお,本症例はステロイド剤内服によく反応した.
 以上のことから,自験例はRekantらのAuto-immune annular erythemaに該当する疾患と思われた.
 さらに文献的に同様の症例を詳細に検討した結果,本疾患はエリテマトーデスのDLEに近い特殊型ではないかと推察された.

天疱瘡にEosinophilic Spongiosisをみとめた3症例

著者: 内田幾代 ,   大西信悟 ,   伊東陽子 ,   浜口次生 ,   西川武二

ページ範囲:P.275 - P.282

 天疱瘡で組織学的にEosinophilic Sponiosis (E.S.)を認めた3例について報告した.症例1は70歳男子で臨床的にDuhring疱疹状皮膚炎を思わせたがDDSに反応せず組織学的に長皮内水疱,E.S.を認め棘融解は認めなかつた.症例2は53歳女子で臨床的にDuhring疱疹状皮膚炎,紅斑性天疱瘡を思わせたが,組織学的に表皮内水疱,E.S.を認め棘融解は著明でなかつた.症例3は70歳女子で臨床的,組織学的に定型的な尋常性天疱瘡であつたが経過中,Duhring症疹状皮膚炎を思わす皮疹を生じ,組織学的にE.S.を認め,棘融解を認めなかつた.3症例ともに間接螢光抗体法で表皮細胞間抗体陽性を示し,治療はステロイド内服にてコントロールされた.
 さらに文献的にE.S.を認めた報告例をまとめ,考按を加えて報告した.

妊娠性疱疹の1例

著者: 野口哲郎 ,   斉藤義雄

ページ範囲:P.283 - P.286

要約 27歳の家婦にみられた妊娠性疱疹の1例を報告した.皮疹は下腹部から始まり,紅斑とその上に集簇ないし環状に配列する小水疱からなり,瘙痒強く漸次四肢へ拡大した.組織像は表皮の浮腫と表皮直下の顕著な浮腫による水疱形成であつた.螢光抗体直接法でC3および免疫グロブリン(IgG,IgA,IgM,IgD)の沈着はみとめられなかつたが,間接法でHG因子の存在が確認された.ただし,抗基底膜抗体は陰性であつた.

月経異常を伴つた一過性の掌蹠紅斑角化症

著者: 伊勢信子 ,   斉藤隆三 ,   中野政男

ページ範囲:P.287 - P.291

 20歳,女,何等誘因なく突然掌蹠の潮紅と角化(角質増殖)をきたし,同時に月経停止し,内分泌異常との関連を疑わせる症例を報告する.

DLE皮疹にみられた組織学的elastosis perforans

著者: 小宮勉 ,   川田陽弘

ページ範囲:P.293 - P.298

 DLEにおいて,29例中8例という,かなりの頻度で,真皮の弾力線維の経上皮性排除現象がみられ,1例では表皮外への穿孔も認められた.同現象は,表皮ないし毛嚢開口部上皮の偽上皮腫性増殖部において認められることが多く,一部では表皮内汗管を伴なう上皮増殖もこれに関与していると思われたが,そのほか,萎縮した表皮,開大した毛嚢開口部上皮,および真皮中層の毛嚢上皮においても認められた.
 従来,DLEのverrucousないしhypertrophic typeといわれる表皮の増殖過程の多くは,この弾力線維の経上皮性排除現象に由来するものと思われる.

Microsporum gypseumによるKerion Celsiの1例

著者: 生冨公明 ,   多島新吾 ,   西川武二 ,   籏野倫 ,   原田敬之

ページ範囲:P.299 - P.302

 Microsporum gypseumによるKerion Celsiの4歳女子例を報告した.昭和49年より昭和52年8月迄に慶大皮膚科で経験した計7例の症例の原因菌と,同じ期間における本症の本邦報告例の原因菌を文献より集計し,原因菌の推移を観察した.その結果,以前の菌相と異なり,最近のKerion CelsiではMicrosporum属の増加が指摘された.同時に本症誘発の一因子として副腎皮質ホルモン含有軟膏の外用が推測された.また菌要素が膿汁中から螢光抗体法を応用して容易に検出されることを述べた.

翼状爪および爪扁平苔癬

著者: 岩本芳子 ,   三島豊

ページ範囲:P.303 - P.307

 Pterygium unguisは何らかの原因により爪母細胞の変性破壊をきたし,そのため爪形成の欠損,次いで爪床細胞のケラトヒアリン顆粒生成等の代償的表皮型角質形成機転の獲得をきたし,これと後爪廓表皮の融合をきたす疾患と考えられる.われわれは,かかる病的機序をきたした4症例を経験しその1例は扁平苔癬,他の1例は明らかな先行する外傷を原因として発症していることを認め得たが,残りの2例は局所のimpaired circulationを推測させる以外爪母細胞の変性破壊の直接原因をみい出し得なかつた.

Congenital Self-Healing Reticulohistiocytosisの1例

著者: 森下美知子 ,   猪股成美 ,   根本啓一

ページ範囲:P.309 - P.313

 生下時より紅褐色の結節が存在し,生後12日目にはそれぞれ消褪したcongenitalself-healing reticulohistiocytosisの本邦における第1例目を報告するとともに,小児良性histiocytosis Xとの類似性についても論及した.

放射線癌の22例

著者: 石原和之 ,   早坂健一

ページ範囲:P.317 - P.322

 放射線に由来すると思われる有棘細胞癌21例(内2例は基底細胞癌を重複),線維肉腫1例を報告した,放射線治療が行われた皮膚疾患,治療に利用された線源,照射による慢性皮膚障害とそれに伴う発癌の状態及び治療について記載した.たとえ超軟線といえども長期間の反覆照射はさけるべきで,放射線治療の適応の選択は慎重であるべきである.

印象記

メキシコかけある記—第15回国際皮膚科学会

著者: 新村真人

ページ範囲:P.323 - P.325

参加の多かつた西独,日本意外に少ない米国
 第15回国際皮膚科学会は,昨年の10月16日より21日までの6日間,メキシコ・シティーで行われた.東京からバンクーバー経由の直行便で15時間以上,時差が10数時間もあるうえに,当地は,海抜2,200mの高地にあり,はじめの数日間は,なかなか体調のととのわなかつた先生方も多かつたようである.季節は,昼間はやや暑いが,夜はうすいコートが必要といつた,ほどよい頃であつた.
 日本からの国際学会への参加者も,ワシントン,ミュンヘン,ベニスと回を重ねる毎に増え,今回は,同伴の御婦人方を含めて,300人を越えた,国別の参加者数からいえば,ドイツの方がわずかに多く,日本が第2位,米国は隣国であるにもかかわらず,約200名と少なかつた.学会プログラムの上で,アメリカが大きな役割を演じていたにもかかわらず,このように参加者が少なかつたのは,開業医などの参加があまりなかつたためではないかと考えられ,国際学会というもののあり方を考えさせられた.

トピックスあれこれ—第15回国際皮膚科学会

著者: 小川秀興

ページ範囲:P.326 - P.328

メキシコの新しい流れ
 5年毎に開かれる国際皮膚科学会は,過去5年間にある程度のまとまりを見せた学説とか,対立点の浮彫りにされれ見解,新しい学説とかを提示し,生の意見を交換し合うところに意義があるものと思われる.その意味で,Special lecture・Topicsof current interest・Symposia・Workshipだけでも60以上用意された第15回会議の企画は誠に適切であつたと思われる.項目上は多少総花的で,その全てに興味を持たれる向きには各会場をいくら右往左往してもその1/10の聴講も不可能であつた恨みはあるが,実際にその分野を研究されている人々には小グループでの意見交換上極めて有意義であつたと思われるからである.
 メキシコ国際学会は多分にアメリカ式様相の強いものと見受けられた.Topicsを報告せよとの過大な重責を担つた筆者は,学会のもうひとつの重大な目的である懇親と観光もそこそこに空気の薄いメキシコの階段を上下し,右往左往したのは,まさに最大の恨みであつた.

薬剤

デルポPDテープによる皮膚疾患の治療成績について

著者: 笹川正二 ,   中内洋一 ,   小幡宏子 ,   牛嶋津賀子 ,   伊藤裕喜 ,   田辺和子 ,   木下正子 ,   増田勉 ,   本田史朗

ページ範囲:P.329 - P.334

 各種皮膚疾患の治療にコルチコステロイド剤は,現在欠くことのできない薬剤であるが,いわゆる単純塗擦法は,角化,苔癬化を伴う慢性の病変に対しては薬剤の吸収が劣るため,充分な効果を期待することができなかつた.1960年,Garb1)が疣状母斑の治療にポドフィリン軟膏を用いた際,プラスチックフィルムで密封すると,薬物の吸収が促進しすぐれた効果が得られると報告した.またSulzbergerとWitten2)はコルチコステロイド外用剤にこの手法,即ち密封包帯療法(ODT療法)を用いて慢性皮膚炎の治療を行いすぐれた結果を得た.
 今般テルモ株式会社で開発したデルポPDテープはODT療法の原理に立脚したもので,コルチコステロイドとしてプレドニゾロンを二液性のアクリル系粘着剤に含有させ,非通気性,半透明のプラスチックフィルムに塗布したものである.このデルポPDテープの治療効果の治験は,6施設よりなる研究班をつくり,オープンスタディーを行ない,その効果を調査した.6施設の病院名と班員の氏名は表1に示す如くである.そして昭和50年4月25日班員が集まつて打合会を開き,図1,図2の如き調査表をつくり,同じ判定基準に基づいて皮膚所見,副作用,効果を記入し,なお治験中止の理由,併用療法,再発,医師ならびに患者の本剤使用後の感想についても記入することを決めて,昭和50年5月上旬より治験を開始した.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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