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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科32巻4号

1978年04月発行

文献概要

綜説

亜鉛と皮膚疾患—腸性肢端皮膚炎を中心として

著者: 森嶋隆文1 八木茂1 遠藤幹夫1

所属機関: 1日本大学医学部皮膚科学教室

ページ範囲:P.259 - P.265

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 亜鉛は古代エジプト時代から粉末泥膏として用いられ,今日でも酸化亜鉛は軟膏に添加されて種種の皮膚疾患の治療に欠かせないものであるにもかかわらず,著者は亜鉛という言葉を聞くと,カドミウム汚染などの公害あるいは中毒などを想起していたことは否めないところであつた.しかし,腸性肢端皮膚炎患者の亜鉛値を測定してみると,血中・尿中亜鉛値は定量限界以下であるが,赤血球中亜鉛は正常値範囲内にあり,また本症の特徴的症状とされる脱毛は亜鉛を要求する毛髪を犠牲にして生命を維持するための生体の防御反応の現われとも理解され,今更ながら亜鉛が必須微量金属であることを再認識させられた次第である.
 我々の体には地球上に存在するあらゆる種類の金属が存し,これらは生体にとつて必要である必須金属と必要としない汚染金属とに分かたれ,今日,高等動物で必須金属とされているものはFe,I,Cu,Mn,Zn,Co,Mo,Se,Snといわれている.必須金属の特徴としてはビタミンのように生合成が不可能のことと,供給源は地殻および海水で,供給がその生物の居住する自然環境に支配されていること,生体の許容濃度範囲はかなり狭く,欠乏も過剰も生体にとつて危険性が大であることなどが指摘されている1)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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