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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科32巻5号

1978年05月発行

雑誌目次

図譜・427

劣性遺伝性栄養障害型表皮水疱症

著者: 平松博子 ,   川津友子 ,   野呂崇 ,   藤原隆

ページ範囲:P.344 - P.345

患者 13歳,女性
初診 昭和51年11月1日

原著

リール黒皮症の電顕的研究—特にdegeneration cellの存在と組織学的色素失調との関連について

著者: 舛真一 ,   佐藤昭彦 ,   清寺真

ページ範囲:P.347 - P.353

要約 典型的なリール黒皮症の患者2例につき,特に基底層や有棘層の一部および真皮上層に認めたdegeneration cell(body)に着目し,その電顕的観察を行った.その初期のものは,細胞質は比較的高電子密度のトノフィラメントの大きな凝集により占められ,更に核残渣や空胞およびメラノソームなどを混じたもので,更に進んだ段階と思われるものは,核残渣や他の細胞内小器官が全く消失してしまい,緩く結合した比較的低電子密度の線維塊となると推測された.これらは,基底層や基底層直下の真皮内に多く散見され,マクロファージに嗿食されているもの,細胞突起によりとり囲まれているもの,あるいは間質中に遊離状態で存在するもの等が認められた.メラノソームは,初期のdegeneration cellでは細胞内に認められたが,それより進んだ段階では近接するマクロファージ中に認められ,表皮細胞間および真皮の間質中に遊離状態で存在するメラノソームはほとんど認められず,またメラノサイトからマクロファージへの直接的なメラノソームの移行を疑わせる所見も認め得なかった.以上のことより,リール黒皮症における組織学的色素失調は,先ずメラノソームを含むケラチノサイト(特に基底細胞)にトノフィラメントの凝集を基調とした変性がおこり,次いで表皮へ遊走してきたマクロファージによる喰食の結果起こるものと推測される.

悪性黒色腫を合併したOculocutaneous Albinismの1例

著者: 吉岡順子 ,   北村弥

ページ範囲:P.355 - P.364

 生来Oculocutaneous albinismを有する32歳の女性に悪性黒色腫を併発した1例を報告した.約2年前より右鼠径部に皮下腫瘤が発生し,これが2回の妊娠,出産を期に増大した.病理組織所見は,所々にメラニンを含む腫瘍細胞の集塊であった.原発巣と思われる右下腿後面の黒青色色素斑は,組織学的には青色母斑でわずかに悪性像を呈していた.放射線療法,BCG療法を行ったが効果がなく,入院3ヵ月後に死亡した.剖検で,肺,肝,腎,小腸,腸間膜,脊椎骨,脳軟膜への転移をみた.
 Albinismと悪性黒色腫の合併例は非常に稀であり,本邦では自験例が第1例である.過去9例の報告のまとめとともに,これらと自験例との比較検討,また妊娠,出産と悪性黒色腫との関係などにつき論述した.

急激な視力消失を来した全身性エリテマトーデスの1例

著者: 福原俊子 ,   石井敏直

ページ範囲:P.365 - P.369

 17歳,女子の高度の視力障害を併発して失明に至ったSLEの1例を報告した.本症は皮膚科領域においても診療する機会が多いが,失明のごとき重篤な障害をさけるためにも,SLEの治療にあたっては皮疹,全身症状,検査成績などとともに眼症状にも十分な考慮が必要であると痛感したので,自験例および現在までのおもな本邦報告例について検討した.

脊麻後紅斑

著者: 山口孝之 ,   林一彦

ページ範囲:P.371 - P.372

 脊麻後紅斑は脊麻後障害の1つとして,全脊麻症例の約1%に認められると報告されている.本症は,従来,主に婦人科領域で腰麻後急性褥創としての難治性潰瘍の発生等として報告されたものと同一範囲に属するものと思われる.著者らは最近数年間の脊麻症例約1500例中2例(0.13%)に本症を認めた.共に虫垂切除例で,使用薬はPercamin-Sばかりで,量は1.3〜1.5cc (0.025cc/kg)である.手術時間は20〜25分,麻酔時間は約3〜4時間である.紅斑の発現部位はすべて仙骨部で,発現時間は術後30時間以内であったが,約1週間後には消失した.発生原因は不明であるが,薬剤の過敏性の個人差,局所の血管運動障害,局所の圧迫等が互いに組み合わさって起こるものと思われる.

Mucinosis Follicularisの1例—本邦報告例の統計的観察

著者: 萩原民郎 ,   斉藤真理子 ,   風間敏英 ,   末次敏之

ページ範囲:P.373 - P.378

 14歳女子の下顎部に発生したMucinosis follicularisの1例を報告した.発疹は毛孔性丘疹,枇糠様落屑,脱毛を伴う浸潤性紅斑性局面で,組織学的に,毛嚢中央部に細胞の変性があり,この部はアルシアンブルー(pH 2.5)陽性,トルイジンブルー(pH 6.8)で異染性,ムチカルミン染色陽性を示した.
 本邦例40例(自験例を含む)について,H.Plotnickの統計例と比較し,統計的観察を行った.

消化器病変を合併した先天性表皮水疱症の1例

著者: 池村郁男 ,   小川勝人 ,   平井玲子 ,   中野朝益 ,   岸本武 ,   大熊守也 ,   手塚正

ページ範囲:P.379 - P.384

 66歳女子の,7〜8歳頃から発症したRecessive-dystrophic epidermolysis bul—losaの1例を報告し,併せて,興味あることとして,自験例が,口腔粘膜病変,食道狭窄,胃ポリープ,肝硬変などの消化器病変を伴っていたことから,本症の消化器病変につき考按を加えた.

表皮下石灰化結節と弾力線維性仮性黄色腫における石灰化物質のElimination現象

著者: 松尾茂 ,   佐藤良夫 ,   設楽篤幸 ,   小川力

ページ範囲:P.385 - P.389

 51歳,女子の右拇指のDIP関節背面に単発した表皮下石灰化結節の1例,および33歳,男子の弾力線維性仮性黄色腫の症例において,頭部に石灰沈着が多発した例を報告した.2例とも組織学的に,表皮下の石灰化物質が表皮を通じて排除される所見,すなわちelimination現象の所見が認められた.自験例における石灰化物質のelimination現象の機序について,とくにその際の表皮の反応態度について考察した.

プレドニゾロンによる薬疹の1例

著者: 田中雅祐 ,   大塚俊夫 ,   重見文雄

ページ範囲:P.391 - P.393

 29歳,女性のプレドニゾロンによる薬疹を報告した.患者はプレドニン内服により全身の紅斑を生じ,プレドニゾロン原末でのパッチテスト,誘発試験でともに陽性を示した.種々の副腎ステロイド剤のうちメチルプレドニゾロンに交叉反応を示した.

最近10年間における扁平苔癬の統計について

著者: 宮本由美子 ,   前田基彰 ,   西野健一 ,   安野洋一

ページ範囲:P.395 - P.399

 昭和42年から昭和51年までの10年間に京都府立医科大学皮膚科外来を訪れ,臨床的ならびに組織学的に扁平苔癬と診断された43例について集計した.
1)発症頻度は0.10%で,近年増加の傾向がみられるが,特に薬剤によると思われる症例の増加傾向が認められた.
2)初発年齢は中年層にピークがあり,薬剤による扁平苔癬を含めると高年者に頻度の増加があり,40歳以下には薬剤との関連はみられなかった.
3)合併症,既往症として胃十二指腸症状のあるものが26%にみられ,消化性潰瘍の合併を4例に認め,うち1例は胃癌に進展していた.

ステロイド剤に誘発された皮膚結核の2例

著者: 松井恒雄 ,   伊藤一成 ,   永島敬士 ,   渡辺靖

ページ範囲:P.401 - P.405

 初診時あるいは入院時,結核を推測させる症状もなく,胸部X-P上にも異常を認めなかった症例に原疾患治療のためステロイド剤を系統的に使用したところ結核を誘発した2例.第1例:47歳,男,ベーチェット病から頸部結核性リンパ節炎.第2例:42歳,女.いわゆる膠原病が疑われる慢性糸球体腎炎からバザン氏硬結性紅斑型皮疹を発症し,その皮疹より人型結核菌が証明された皮膚結核の誘発例を報告し,若干の検討をおこなった.なお第2例の病名に関しては考按に述べた如く,バザン氏硬結性紅斑という病名は適当ではなく,別の病名を考えた方がよいように思われた.

鼠径リンパ肉芽腫症と思われる夫婦例

著者: 馬場恵美 ,   植原八重子 ,   加茂紘一郎

ページ範囲:P.407 - P.411

 夫が台湾旅行中に感染し,帰国後妻に伝染せしめたと思われる鼠径リンパ肉芽腫症の夫婦例を報告した.本邦では本症例に遭遇する機会は極めて稀れとなりつつあり,かつ最近報告されている例も外国人例である.本症の診断や治療は比較的容易であり,現在では病原体の同定も可能になっている.海外旅行の普及に伴い,かかる症例を今後経験する機会も増える可能性があると思われ,再び注意を喚起したい.

Hodgkin病に伴った毛包性ムチン症

著者: 奥野富起子 ,   須貝哲郎 ,   高木喬 ,   高橋洋子

ページ範囲:P.413 - P.417

要約 59歳,男子.8年来,右頬部の瘙痒性丘疹に悩み,4カ月来,同側上鎖骨窩リンパ節の無痛性腫大をきたす.初診時,右頬部に3×2cm大紅色結節を有し,その表面に毛孔性丘疹が密集していた.皮疹の生検により,毛包性ムチン症と診断,ついでリンパ節生検により,Hodgkin病と診断した.生検2カ月後より,右頸部リンパ節数コ腫大,入院の上VEMP療法およびレ線照射により寛解.職場に復帰し,現在まで再発をみていない.40歳以上の毛包性ムチン症にはmalignant reticulosisの合併例がしばしばみられ,mycosis fungoidesの報告が多いが,Hodgkin病の合併は本例が初めてのようである.

印象記

第36回American Academy of Dermatology年度総会印象記

著者: 中山秀夫

ページ範囲:P.418 - P.419

 American Academy of Derma—tology (AAD)の1977年度総会は,昨年12月3日から8日まで,5日間にわたって米国Texas州Dallas市のConvention Centerで開催された.12月のTcxasは大陸性気候を反映して,学会の昼休みには暖い小春日よりの陽光がふり注ぐが,夜間や早朝には時として凍てつくような烈風が吹き,スキー場の稜線のような寒さであった.
 学会場のDallas Convention Ce—nterは巨大な会議場で,大会場の他に地下,1階,2階に分かれた多数の中,小会議場があり,おびただしい数のsessionがおこなわれていた.大会場のsymposiumやCPCは無料であるが,ほとんどのeduc—ational lectureや研究的なsymposi—umは有料で,その値段はかねて知られている通り相当に高い.同じ時刻に多くの会場で種々なテーマの発表や講義がある点は,日本のME学会に似ており,sessionによってはかなり時間のゆとりがあって,じっくり発表や討論ができる利点がある反面,プログラムが列車時刻表位の厚さがありながら,全期間滞在しても,聞くことができるのはそのおびただしい演題の中のごく一部に限られる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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