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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科32巻6号

1978年06月発行

雑誌目次

図譜・428

熱傷瘢痕癌患者に続発したKeratoacanthoma

著者: 境繁雄 ,   大沢一郎 ,   及川恒

ページ範囲:P.430 - P.431

患者 87歳,男子
 既往歴 4歳頃頭部に熱傷,瘢痕治癒,10年前バイクで頭部に打撲,1週間治療.

原著

悪性絨毛上皮腫を合併し多彩な皮疹を示した水疱性類天疱瘡の1例

著者: 仲弥 ,   栗原誠一 ,   西川武二 ,   北村啓次郎 ,   籏野倫

ページ範囲:P.433 - P.438

 34歳女性.ほぼ全身に水疱を伴う紅斑を認め,副腎皮質ホルモン剤内服にて完治せず,経過中発見された悪性絨毛上皮腫の治療により皮疹の著しい寛解をみた1例を報告した.本例は多彩な皮疹を呈し,その形態からは多形滲出性紅斑,ジューリング疱疹状皮膚炎,病歴からは妊娠性疱疹なども考慮されたが,免疫病理学的所見を重視し,しかも悪性絨毛上皮腫の除去により皮疹が改善したことから,悪性絨毛上皮腫に併発した水疱性類天疱瘡と診断したものである.またジューリング疱疹状皮膚炎,水疱性類天疱瘡,妊娠性疱疹の3疾患の異同及び悪性腫瘍に伴った表皮下水疱症について文献的に考察した.

リウマチ様関節炎患者にみられたReactive Perforating Collagenosisの1例

著者: 三和敏夫 ,   山田晃司 ,   森俊二

ページ範囲:P.439 - P.444

 24年来リウマチ様関節炎に罹患している70歳,彫刻業の男性の両手,左肘頭及び臀部に生じたreactive perforating collagenosisの1例を報告した.本症は1967年Mehreganらによって初めて記載されたが,今回の自験例の皮膚所見はその典型像と思われる.本症は穿孔性皮膚疾患(perforating dermatoses)のうちでは稀な疾患で,また他の類似疾患との鑑別が難しく本邦ではわずか1例しか報告されていない.外国例を含め文献学的には,本症は主として小児期に好発し,先天性素因が関係しているとさねるが,高年齢で発症した自験例の場合は長年のリウマチ様関節炎に高齢による老化も関係して結合組織の病的変化を起こし易い状態になっている所に外傷が加わって本症の発生へと繋がったものと考えられる.

Herpetiform Pemphigusの1例

著者: 坂本邦樹 ,   北村弥

ページ範囲:P.445 - P.449

 我々は疱疹状皮膚炎に似た病像を示す落葉状天疱瘡の1例を経験し,臨床像,病理組織像,免疫学所見について同様症例の記載を集計検討し,その本態は天疱瘡であり,疱疹状皮膚炎とは単なる類似に過ぎないと結論し,このような症例をherpetiform pemphigusと略称することが妥当と考えた.念のためにこれは新しい病型ではないことを附加しておく.

金療法が奏効した尋常性天疱瘡の1例

著者: 斎藤隆 ,   野口房子 ,   朝田康夫

ページ範囲:P.451 - P.456

 54歳,主婦,7年前より尋常性天疱瘡の診断のもとにステロイドで治療を受けていたが,初診の約2カ月前に感冒に罹患し,その後,カゼ薬を内服したところ,皮疹が増悪したため来院した.当時,両口角部には疣贅状の病変部もあり,この部は組織学的に増殖性天疱瘡と診断した.入院4日目より金療法を開始したところ,症状は徐々に改善し,水疱も全く出現しなくなった.金療法中止後約5カ月の現在も皮疹の発生は全くみらねていないが,なお経過を観察中である.

Franceschetti-Jadassohn Syndromeと思われる1例

著者: 下山時生 ,   野中薫雄 ,   阿南貞雄

ページ範囲:P.457 - P.463

 Franceschettiらが1954年にIncontinentia pigmentiの1異型として報告したdermatose pigmentaire reticuleeに該当すると思われる症例を報告した.
 症例は16歳,男子.15歳頃より躯幹になんら先行する炎症性変化のない,褐色網状配列を示す色素沈着斑の出現に気づいた.その部の組織学的検査ではIncontinentia pigmenti histolo—gicaが認められ,合併した異常所見としては歯のエナメル質形成不全(黄色歯),歯牙形態異常,発汗異常,ブロンド様頭髪,手掌足蹠の角化などが認められた.また家系内に黄色歯,ブロンド様頭髪,雀卵斑様色素斑を有する者を認めた.

ブドウ球菌性Toxic Epidermal Necrolysisについて

著者: 二木昇平 ,   二木昇人 ,   二木昇瑞 ,   平山芳 ,   細谷律子 ,   辻和男 ,   細川良三 ,   皿井靖長 ,   ピサヌボンジンヨン

ページ範囲:P.465 - P.470

 Staphylococcal toxic epidermal necrolysis (STEN)の原因がexfoliatin (Ex)を産生する黄色ブドウ球菌であることは広く知られている.著者らはまずSTENの1自験例を記載し,これまで報告した研究結果を中心に文献的考察を加え次の如き結果を得た.
1)まずSTENの発症にある程度以上のEx産生黄色ブドウ球菌の増殖が必要であり,その為の環境(温度,湿度)および皮膚の状態に重要な要因がある.
2) STENになるかImpetigoになるかはExの産出量や種類ではなく生体側の特に細胞性免疫をも含めた要因が重要である.

頭部に発生した表在型基底細胞上皮腫の1例

著者: 田代直介 ,   池野美恵子 ,   安木良博 ,   島本正宏 ,   藤沢竜一

ページ範囲:P.471 - P.475

 表在型基底細胞上皮腫としては,極めて稀な発生部位である頭部に生じた52歳の女性例を報告した.昭和42年から51年(1967〜76年)までの10年間に,本邦において,表在型基底細胞上皮腫として報告された症例に,自験例を加えた35例について統計的観察を行なった.単発型28例,多発型7例で単発型が圧倒的に多く外国の報告と異なっていた.やや男性に多く,壮年以後が好発年齢であり,躯幹に圧倒的に多く発生していた.自覚症状に乏しい腫瘍のため,発症後,受診するまでが長期間となる傾向がみられ,また,単発型では相当な大きさになってから受診する傾向もうかがわれた.

肺癌を合併せるBowen病の1例—本邦合併例40例の集計

著者: 中村絹代

ページ範囲:P.477 - P.482

 肺癌にて内科入院中の80歳男子の左大腿後面に,10年来存在したBowen病を見出したので,本邦報告例と合せて報告する.肺癌は放射線および抗癌剤治療にて,またBowen病は5FU軟膏ODTにて改善され,2年半後の現在も経過良好である.砒素に接触の既往はない.本邦におけるBowen病(癌)および内臓悪性腫瘍の合併例は40例に及び,これらのBowen病に対する頻度は10%前後と考えられる.合併内臓悪性腫瘍の内訳は,子宮の悪性腫瘍(37.5%)が最も多く,次いで胃癌(25%),肺癌(17.5%)であり,子宮悪性腫瘍の放射線治療後に発症した外陰部Bowen病の多いことも注目させられる.一般には,Bowen病は内臓悪性腫瘍の見出される平均6.26年前に発症していることが多いと推測されるため,Bowen病患者に対する長期間のfollow upが必要である旨を述べた.

Bowen病様組織変化を伴ったEccrine Poroma—本邦報告44例を含めて

著者: 奥野博子 ,   原田敬之 ,   中村絹代

ページ範囲:P.483 - P.488

 61歳女子左前腕伸側に10年来存在したeccrine poromaの症例を報告した.臨床的に,表面は大部分糜爛となり,光沢のある鮮紅色を呈する,大きさ20×15mm,鳥打ち帽状に扁平隆起した弾性硬の腫瘤.病理組織学的に,典型的なeccrine poromaの像を呈するが,腫瘍中層のところどころにBowen病様組織変化を呈する部分がみられたことが特徴的である.本例を含め本邦報告45例に臨床的および病理組織学的検討を加えた結果,2,3の症例に,同様のBowen病様組織変化がみられ,その意義について考察を加えた.

火傷瘢痕癌の重複例

著者: 安田耕一郎 ,   佐々木孝雄

ページ範囲:P.489 - P.491

 52歳,男子,28年前,両臀部および両下肢後面に火傷を負い,瘢痕治癒に1年以上を要した.右大腿後面の火傷潰瘍は治癒しないまま,19年後癌化した.28年後には,左大腿後面に瘢痕癌が出現した.本症例はWarrenらの重複癌の定義にあてはまる.重複癌の発生には,全身的素因が重要視されているが,本症例では局所的要因がより重要と考えられた.

基底細胞上皮腫とBowen病の合併例について

著者: 石川謹也 ,   荘由紀子 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.493 - P.497

 非色素性基底細胞上皮腫と色素性Bowen病が合併した92歳女の1例を報告した.
 あわせて基底細胞上皮腫をDegosの分類に従って説明し,且つ本邦人の本症は白人のと異なり殆んどが色素性であることを強調した.さらに色素性Bowen病について言及した.

慢性円盤状紅斑性狼瘡を発生母地とする有棘細胞癌の2例

著者: 藤田優 ,   千見寺ひろみ ,   岡本昭二

ページ範囲:P.499 - P.504

 慢性円盤状紅斑性狼瘡を発生母地とする有棘細胞癌の2例を報告した.症例1,55歳女,症例2,50歳男でいずれも下口唇に腫瘤をみ,螢光抗体直接法で腫瘤辺縁DLE部にIgGの沈着をみた.本邦報告例を集計するとともにその発生機序につき若干の考察を加えた.

一頁講座

Mixed Connective Tissue Disease

著者: 田村多絵子

ページ範囲:P.450 - P.450

 Mixed connective tissue disease(MCTD)は1972年,Sharpら1)が25例の症例をもとにまとめた症候群で,これらの症例では,全身性エリテマトーデス,強皮症,皮膚筋炎(または多発性筋炎)の臨床症状をあわせもち,しかも特異な免疫学的特徴として,高値の抗核抗体および抗extractable nuclear antigen(ENA)抗体を認め,ステロイド治療によく反応することがその特徴であった.従来,overlap症候群は2つあるいは2つ以上の膠原病が時を同じくして,またはある期間をおいて重複してみられる疾患を指して用いられ,今日まで統一した考え方はなかったといってもよい.この中でMCTDは共通した臨床症状と特異な免疫学的所見を有することからSharpらはこれを1つのclinicalentityと考えた.以下,Sharpらの記載1,2)にもとづいてその特徴について述べる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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