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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科32巻8号

1978年08月発行

雑誌目次

図譜・430

Prurigo Melanotica—a skin sign of hepatic disorders

著者: 楠俊雄 ,   原田誠一

ページ範囲:P.612 - P.613

症例 41歳,主婦
初診 昭和48年10月

原著

Prurigo Melanoticaについて—胆石症手術後,完全寛解せる1例を中心に

著者: 辻口喜明 ,   石川豊祥 ,   森嶋隆文 ,   荒川秀夫

ページ範囲:P.615 - P.620

要約 器質的肝障害に起因する1つの皮膚表現型としてPierini & BordaによってPrurigo melanotica(メラニン性痒疹)なる概念が提唱されたが,いまだ基礎疾患の治療によって皮膚症状が治癒したとの記載はない.最近,われわれは46歳,女性の体幹に主として痒疹小結節および均質性色素沈着を認めた本症の典型例を経験した.精査の結果,胆石症の合併を証明しえ,手術によって5年有余にわたって患者を悩まし続けた抗療性瘙痒性皮疹を数日にして完全寛解せしむることができた.本症はまさしく肝胆道系異常の1皮膚表現型であることを確認しえた次第である.

単発性肥満細胞症—とくに電顕像と本邦報告例について

著者: 清水美津子 ,   諸橋正昭

ページ範囲:P.621 - P.628

 8カ月,男児の右第3指の基節背面にみられた単発性肥満細胞症の1例を報告した.臨床的ならびに組織学的には典型で,電顕的に若干の興味ある所見が認められた.すなわら,マスト細胞の顆粒の内部構造は,微細顆粒状,層板状,渦巻状等種々の形態を示し,顆粒内にメラニン顆粒に似た顆粒もみられた.細胞内小器官の発育も良好で,細胞辺縁部で顆粒周囲の空隙形成,空胞形成とその癒合,顆粒の変性,消失など脱顆粒像が観察された.これらのマスト細胞とは別に,細胞質内に直径100〜180nmの高電子密度の小顆粒を多数有する真皮メルケル細胞に似た細胞が観察された.
 自験例を含めた本邦における報告例(42例)を集計し,臨床的特長について考察を加えた.

眼瞼弛緩症(Blepharochalasis)の1例

著者: 清水正之 ,   水谷仁 ,   浜口次生

ページ範囲:P.629 - P.634

 24歳,女子.15歳時外傷を契機として右上眼瞼部の無痛性皮疹をみとめるようになった.発症後3年間は時に浮腫性腫脹をみたが,現在は皮膚表面は萎縮性で紙幣状を呈し,皮下脂肪織を触知しない.組織学的に表皮液性変性,色素失調,血管周囲,附属器周囲の組織球,リンパ球浸潤をみとめ,弾力線維はほとんど消失していた.病理組織学的所見を本邦例より集計し,本症の成因についてふれた.

Hyperkeratosis Lenticularis Perstans

著者: 小池範子

ページ範囲:P.635 - P.639

 37歳,男子にみられたhyperkeratosis lenticularis perstansの1例を報告した.この症例は父に同症を認め,今まで述べられているごとく本症が遺伝性角化性疾患であることを示唆している.わが国では1975年石倉2)らが内外症例29例をまとめているがその後も数例の報告があり,自験例を合わせ,これらを総括した.

薬物による血小板減少も認められた紫斑病の1例

著者: 児浦純義 ,   橋口洋一 ,   寺崎健 ,   田代正昭

ページ範囲:P.641 - P.644

 患者は34歳の家婦.頭痛時にノーシンを常用していたが,紫斑が出現.出血素因,凝固線溶に関する各種の検査をおこない,あわせてノーシンを用いた血餅退縮抑制試験ならびに内服テストを施行した.これらの検査成績からノーシンの成分であるアミノアセトフェンを原因薬剤とする血小板減少性紫斑病であることが判明した.

重篤な蜂刺症の1例

著者: 吉江治彦 ,   松井猛

ページ範囲:P.645 - P.652

 重篤な局所反応と全身反応を呈した60歳男性の蜂刺症例を報告した.右手背をオオハキリバチに刺され,数時間後には右手が著明に腫脹して,水疱が多発,びまん性の皮下出血が出現した.その後右上肢全体に発赤,腫脹は波及した.10病日で右手は壊疽に陥り,16病日で右上肢に広範な皮下膿瘍を形成,22病日に右上肢切断術を施行した.全身反応も強く,受傷後約40時間目に高度のショック状態に陥り,回復後も腎障害,肝障害,嘔吐,多汗,高カリウム血症が一過性に出現した.その後約2カ月の長期にわたり,発熱,貧血,多尿,筋力低下,多発性口腔内潰瘍が続いた.蜂刺症では時として気道閉塞,アナフィラキシーショック,血管障害などの重症な全身反応を起こすことが知られている.しかし自験例のように強烈な局所反応と長期間持続する全身反応を呈した症例の報告は前例をみない.

鉤虫科の幼虫迷入症と考えられる皮膚爬行症の1例

著者: 千葉紀子 ,   下田祥由 ,   関建次郎 ,   神田錬蔵

ページ範囲:P.653 - P.658

1)川崎市多摩区在住の1患者に皮膚爬行症に一致する皮疹をみとめ,組織学的に虫体の断面を認め,鉤虫科の幼虫迷入症と診断された.
2)診断に最も大切なことは生きた虫体を完全な形でとり出すことにあり,病理組織標本では種の同定は不可能であった.
3)鉤虫科以外の病害動物による皮膚爬行症ないしは類似の皮疹の臨床的特徴をあげ,鑑別診断を行い,本例が臨床所見からみても鉤虫科の幼虫による皮膚爬行症に一致することを述べた.
4)組織学的変化は虫体を中心とし,好酸球と小円形細胞浸潤を基調とするが,表皮角層より皮下組織に及び,皮膚の組織構造に従って多彩,複雑な分布を示し,興味あるものであった.
5)末梢血には好酸球増多を認めなかった.

乳児に生じたスポロトリコーシスの1例—組織内菌要素の電顕的所見の検討

著者: 日野治子 ,   滝沢清宏

ページ範囲:P.659 - P.664

 本邦では最年少の発症例と思われる乳児のスポロトリコーシスの1例を報告した.
 病型は顔面に生じた限局型で,菌要素は痂皮および組織内に多数みとめられた.菌要素は,痂皮および角層内に一部菌糸型がみられたが,他はすべて胞子型であった.
 さらに皮膚組織内の菌要素の超微細構造について述べた.遊離胞子と貪食細胞内胞子の構造について若干の検討を行った.

紅色陰癬の3例

著者: 上出良一 ,   武田政雄

ページ範囲:P.665 - P.669

 紅色陰癬の3例を報告し,あわせて本邦報告例の集計および文献的考察を行なった.3例共陰股部に境界比較的鮮明な紅褐色粃糠面を有し,鱗屑の一部にウッド燈でサンゴ色螢光を認め,角質細胞内に無数のグラム陽性短桿菌,球菌を証明した.本症は頑癬,カンジダ症と類似し,またそれらと合併することも多く,見過されやすいが,ウッド燈によるサンゴ色螢光および両面粘着テープによる染色標本で比較的容易に診断できる.治療は抗菌剤の外用が有効であった.

金沢大学皮膚科における帯状疱疹の統計

著者: 佐野勉 ,   毛利紀子 ,   奥村忠

ページ範囲:P.671 - P.676

 金沢大学皮膚科において昭和35年1月から同50年12月までの16年間にみられた帯状疱疹例について統計的観察を行った.帯状疱疹患者は655例,同期間の新患総数(53,724人)の1.22%に相当した.男:女は1:1.09.年齢層別にして山は男では50〜69歳に,女では20歳代と40〜69歳にみられた.季節的に成人例は6〜8月に多かった.部位別では,単独皮節として三叉神経第1枝領域が最多であった.基礎疾患又は合併症ありが213例(37.6%),癌・膠原病・結核・糖尿病・悪性リンパ腫が目立った.汎発型帯状疱疹は37例,そのほぼ半数(19例)に基礎疾患として特に癌と白血病がみられた.2つ以上の皮節に同時多発が4例あった.再発は11例にみられ,うち9例は女性,その8例はSLEの患者であった.

晩発性皮膚ポルフィリン症の瀉血療法

著者: 三浦隆 ,   酉抜和喜夫 ,   只木大六

ページ範囲:P.677 - P.681

 アルコール中毒の既往歴がある52歳男子晩発性皮膚ポルフィリン症症例への治療として瀉血を試み,1ないし2週間隔で100または200mlの瀉血を反覆継続した.16回,総量2160mlの瀉血によって尿中ポルフィリン排泄が正常となり,本法は有効な治療法であった.症例につき検討した各種臨床材料中ポルフィリンの生化学的検索結果のうち,バイオプシー肝片から抽出したポルフィリンを分析したところ,pentacarboxylic porphyrin (56.8%)>coproporphyrin (32.4%)>uroporphyrin (9.5%)というパターンが得られた点が特筆された.

家族性良性慢性天疱瘡の2例—液体窒素療法を中心として

著者: 篠原恵美 ,   田村義龍 ,   田中栄 ,   三原一郎 ,   平尾弓 ,   桜井公子 ,   伊藤宏士

ページ範囲:P.683 - P.688

 家族性良性慢性天疱瘡の2例を報告するとともに,本症に関する知見をまとめ,また治療として施行した液体窒素療法の概念および著者等が経験した当疾患の凍結療法について述べ,文献的考察ならびに今後の課題を含めて,2〜3の検討を試みた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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