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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科33巻1号

1979年01月発行

雑誌目次

図譜・435

Peutz-Jeghers Syndrome

著者: 田中雅祐 ,   町田健一 ,   近藤慶二 ,   岩田克美

ページ範囲:P.6 - P.7

患者11歳,女子
 家族歴・既往歴特記すべきことはない.

綜説

接触過敏症における抗原分布について

著者: 中川昌次郎 ,   谷奥喜平

ページ範囲:P.9 - P.17

 免疫機構に関する研究は,近年目醒しい進歩を遂げ,それに伴って接触過敏症の成立機転も次第に明らかになってきた.しかしながら,いくつかの基本的な問題は,なお充分に解明されたとはいえない.その1つに抗原の問題がある.接触皮膚炎の原因物質の多くは比較的分子量が低く,化学構造が簡単な単純化学物質であるが,これが生体に入って抗体を産生する能力(抗原性)を獲得するには,蛋白質のような高分子の物質と化学的に結合(共有結合)することが必要である1).免疫学では,このような性格の物質を不完全抗原(ハプテン)といい,ハプテンと結合した高分子物質を担体,両者が結合して抗原性を獲得したものを完全抗原と呼んでいる.接触過敏症における抗原の問題は,ハプテンが生体内で如何なる担体と結合して完全抗原となり,そしてそれがどのような機序で接触過敏症を成立させ(感作過程の機構),感作が成立した後では接触皮膚炎を発現させるか(誘発過程の機構)ということである.この問題を解明するために古くから,単純化学物質を動物に投与した際の体内での分布が研究されてきた.体内に分布する単純化学物質は全てそのまま抗原としての役割をもつことにはならないが,その分布を詳細に観察することにより抗原の形成及び接触過敏症発現の機序を解明する有力な手がかりを得ることが出来る.ここでは,単純化学物質の体内分布を中心に述べ,それに他の研究成果を併せ検討することによって,上述した抗原の問題について考察したい.

原著

類天疱瘡剖検例—抗基底膜抗体の臓器別結合能(in vivo & vitro)について

著者: 種田明生 ,   増谷衛 ,   小川秀興 ,   宮崎寛明

ページ範囲:P.19 - P.23

 89歳男子の典型的類天疱瘡例で急激な死の転帰をとった症例につき病理解剖を行い,皮膚以外の内臓諸器官へのin vivo bound免疫グロブリン及び補体を検索した.口腔粘膜,喉頭粘膜,食道粘膜に沈着が証明されたが,肉眼的,組織学的に変化は見られなかった.同時に本患者血清を用い他の剖検例より得た各種臓器につき抗体結合能をin vitroで測定した.結果は重層扁平上皮下の基底膜部に結合性が示されたが,ハッサル小体等にも結合能がみられた.免疫電顕所見とも考え併せ,類天疱瘡抗原の由来につき若干の考察を試みた.

水疱性類天疱瘡

著者: 菅原信 ,   荘由紀子 ,   籏野倫

ページ範囲:P.25 - P.31

 17歳,男子.初診時,発疹学的に紅斑性天疱瘡,多形日光疹などを疑ったが,その後皮疹が全身に拡大したこと,組織学的に表皮下水疱形成,DDS無効,粘膜疹の存在,および螢光抗体法所見などから水疱性類天疱瘡と診断した1例を報告した.内臓悪性腫瘍(−).副腎皮質ホルモン製剤大量内服にて改善す.ヨードカリパッチテスト陰性であったがヨード系薬剤の投与により皮疹の再燃をみた.病状と抗基底膜抗体価は平行せず,抗体価陰性血清において補体結合性抗体(HG因子様現象)陽性を示した.

Herpetiform Pemphigusの1例

著者: 笹岡和夫 ,   阿南貞雄 ,   穐山富雄 ,   山浦英明 ,   高橋勇 ,   江上和也

ページ範囲:P.33 - P.38

 56歳,男.全身各所に浮腫性小紅斑を散生し,次第に多発,融合して,浮腫性紅斑局面上に大小の水疱,糜爛とジューリング疱疹状皮膚炎様の環状配列を示す小水疱を混在し,激痒あり.軽度の発熱あるも粘膜疹はみられず,ニコルスキー現象は陰性.白血球数,8,900,好酸球12%,ヨードカリ(30%)テスト陽性,Tzanck test陽性.
 水疱はsuprabasalに形成されたacantholysisを伴った表皮内水疱で,水疱辺縁にはeosi—nophilic spongiosisがみられた.螢光抗体直接法で,表皮細胞間とacantholytic cellの細胞膜にIgGの沈着をみとめ,間接法では,初期未治療時血清のみ抗表皮細胞間物質抗体弱陽性(10倍)を示した.ステロイド剤とイムランの併用にて,約3ヵ月で治癒し,以後再発をみない.
 自験例は臨床的にジューリング疱疹状皮膚炎を思わせるが,本態はむしろ天疱瘡と考えられた.しかし,本例が天疱瘡の単なる非定型例か新しい特異型かは,まだ不明である.

D-ペニシラミン服用中の慢性関節リウマチ患者に生じた天疱瘡様皮膚病変

著者: 荻野篤彦 ,   今村貞夫 ,   若井淑人

ページ範囲:P.39 - P.43

要約 患者は55歳の女性で,6年前より慢性関節リウマチに罹患し,6ヵ月前よりD-ペニシラミン600mg/日を内服していたところ,初診の10日前より四肢と腹部に瘙痒性の多形紅斑様の皮疹が多発し,その上に直径5mmまでの小水疱および小指頭大のびらん面を生じた.副腎皮質ホルモン剤内服と外用を試みたが紅斑,小水疱の新生は約1ヵ月くらい続き,D-ペニシラミンを中止して1週間後に皮疹の新生は止った.小水疱は組織学的に表皮内水疱であるが,棘融解は認められない.螢光抗体法直接法で病変部の表皮細胞間にIgGの沈着をみたが,間接法では血清中の抗表皮細胞間物質抗体は陰性であった.D-ペニシラミン服用中の患者に天疱瘡様皮膚病変を生じた症例はまだ本邦において報告をみない.D-ペニシラミンは抗表皮細胞間物質抗体のみならず,抗核抗体など自家抗体を産生しやすい薬剤の1つに挙げられている.

ペニシラミン服用中に生じた蛇行性穿孔性弾力線維症について

著者: 森嶋隆文 ,   八木茂 ,   遠藤幹夫

ページ範囲:P.47 - P.52

 Wilson病のために,1日2gのペニシラミン服用7年後に肘頭,膝蓋,腎部に栄養障害型表皮水疱症様病変を,さらに1日1.0gに減量5年後に頸部に蛇行性穿孔性弾力線維症の発現をみた23歳の男子例を報告した.本例における蛇行性穿孔性弾力線維症は臨床的には典型的であるが,病理組織学的には真皮全層の弾力線維にぶどうの房状の変性像を証しうる点特異であった.ペニシラミン減量後,表皮水疱症様病変の軽快をみたことから,同病変の程度はペニシラミンの服用量と相関し,またある程度可逆性であることを示唆する.以上の皮膚病変の病態はペニシラミン長期連用によって惹起された局所的銅欠乏症に基づくコラーゲンおよびエラスチンの成熟化の障害による皮膚の脆弱性であると推測された.なお,銅欠乏による血管系病変出現の可能性についても論じた.

顔面半側萎縮症,剣傷状鞏皮症を伴う多発性モルフェア

著者: 西川武二 ,   塩原哲夫 ,   今井民 ,   北村啓次郎 ,   籏野倫

ページ範囲:P.55 - P.59

 14歳,女子にみられた,顔面半側萎縮症,剣傷状鞏皮症を合併した多発性モルフェア症例を報告した.皮膚病変の一部には白点状硬化斑が融合しモルフェアへと進行する部が観察された.同部の病理組織所見は,膠原線維の膨化,増生に加え,汗腺附属器用囲に集簇したリンパ球浸潤が著明であった.免疫血清学的に抗核抗体陽性,RAテスト陽性,RAHA高値などの異常を示したが,Acrosclerosis,舌小帯短縮はみられず,肺・食道所見に異常なかった.以上より本例は,多発性モルフェアが汎発性強皮症と同様に発症の共通の基盤として,免疫異常が関与することを示唆する症例と考えられた.種々の治療に抵抗し,なお発疹は一部で軽快,一部で進行性である.

幼児に見られたGeneralized Morpheaの1例

著者: 石橋康正 ,   都留紀子 ,   中林康青

ページ範囲:P.61 - P.66

 3歳4ヵ月の女児に見られた,典型的generalized morphea (GM)の1例を報告するとともに,GMについての概略,殊にその色素脱失性変化を中心に述べ,GMの発生機転について言及した.

扁桃病巣感染性皮膚疾患に関する全国大学皮膚科学教室アンケート調査報告

著者: 野田寛 ,   栗田建一 ,   新垣義孝 ,   又吉重光 ,   都川紀正 ,   名嘉眞武男 ,   国吉光雄 ,   国吉雅子

ページ範囲:P.67 - P.71

 扁桃病巣感染性皮膚疾患の診断・治療に当り,イニシアチーブをとっている皮膚科医が,現在当疾患にどのような考えを持ち,どのように対処されているかを知るため,全国72大学皮膚科学教室について,1)病巣感染症の可能性のある皮膚疾患,2)1)の患者の来院時の取り扱い状況,3)過去1年間の病巣除去例の実態,4)扁摘後1年以上の症例の遠隔成績,5)病巣感染症に対する意見・感想,など,アンケート調査を行い,44大学(61.1%)より興味ある回答を得,とくに設問1)に対しては掌蹠膿疱症,多型滲出性紅斑,結節性紅斑,アレルギー性血管炎など計40疾患が可能性ありとされ,それらを整理するとほぼ全ての疾患群にわたっていることは驚異に値するところで,以下順次その回答内容を報告するとともに,術前診断の早期確立ならびに皮膚科医・耳鼻咽喉科医双方の当疾患に対する充分なる関心を持っての連繋の必要性を強調した.

Relapsing Polychondritis—とくにその免疫病理学的所見について

著者: 田村晋也 ,   木村俊次 ,   多島新吾 ,   長島正治

ページ範囲:P.73 - P.77

 Relapsing polychondritisの71歳女子例を報告した,検査所見で血沈亢進,γ—グロブリン高値,抗核抗体64倍陽性及び尿中酸性ムコ多糖総量増加を認めた.組織学的に軟骨組織の変性破壊および周囲に形質細胞を混える細胞浸潤を示した.粘液多糖類染色にて病変部軟骨にムコ多糖類の減少を認めた.螢光抗体直接法にて変性しつつある軟骨細胞の核周囲の空隙にIgG,C3陽性.間接法では全て陰性であった.治療としてDDS 100mg/日より始めたが無効のため,プレドニゾロン20mg/日投与したところ著明に軽快.漸減中止するも現在再燃を認めない.本症における従来の螢光抗体法的所見を総括し,本症の病因に自己免疫機転が関与するとする説を支持した.

EBウィルス抗粒子抗原抗体価の著明な上昇を認めた有棘細胞癌の1例

著者: 原田玲子 ,   中山秀夫 ,   谷口貞子

ページ範囲:P.79 - P.86

 下顎部の2.0×1.6cm・隆起性,中心陥凹し,壊死物質を入れる腫瘤で,急速な増大傾向が認められ,臨床的にKeratoacanthomaが考えられたが組織学的には異型性の著明な未分化な細胞より成り,リンパ管内に腫瘍細胞の塞栓形成と思われる所見もあり,有棘細胞癌と診断した88歳,家婦例を記載した.外科的に全摘出し,約2年経過するも再発なし.本例について,腫瘍ウィルスといわれるEBウィルス・アデノウィルス・単純性疱疹ウィルスなどの抗体価の変動を検索したところ,EBウィルス抗Virus Capsid Antigenに対する抗体価が初診時160倍から16日後には2,560倍と著明に上昇しているのが見出された.EBウィルスは現在ヒトの腫瘍ウィルスの最有力候補の1つとされており,自験例は血清学的にEBウィルスの感染が示唆され,病因論的に興味深く思われた.また,腫瘍ウィルスについて文献的に考察を加えた.

編集室だより

雑誌名の省略について フリーアクセス

ページ範囲:P.38 - P.38

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Comitteeから出された「International List of Periodical Title Word Abbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・1【新連載】

皮膚結合織の病変(I)—一次性全身性アミロイド症(1)〜(3)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.88 - P.93

はじめに
 「臨床皮膚科」編集委員よりの依頼により,本号より約2年間の予定で皮膚疾患の病因の理解と組織診断に役立つ電顕と組織化学の連載を始めることになりました.このシリーズは「皮膚科の臨床」に掲載した「電顕のみかた」と対をなすもので,今回は病的材料を主とする予定です.病変の理解には正常組織の理解が前提となるので,必要に応じて補足していく予定ですが,正常構造に関しては近く刊行予定の「電顕のみかた」が参考になると考えます
 皮膚疾患の病因解明に光顕の果してきた役割を考えるならば,電顕の重要性は論をまたないが,その取付き難さの故に敬遠されてきた.電顕は多くの皮膚疾患において,診断に欠くことのできない有用なデータを提供するにもかかわらず,必ずしも十分に活用されていない.すべての学問に共通していえることであるが,ごく初歩的な事項を十分に理解し,その後,継続的な努力をすれば,その分野をマスターすることができる.滞米40年,50年になる1世で英語の全然できない人々の居る事実や,留学生で「アメリカへ行けばなんとかなる」と考えて来た人が2〜3年後にさっぱり上手にならなかった英語を歎きながら帰国する例は我々が日常観察しているところであって,基礎的学習の重要性を示唆している.勿論,人には得手,不得手があるが,皮膚科学が極めて視覚的な学問であり,電顕が形態学の一部であることを考えれば,電顕—組織学系の学問が皮膚科医向きであるといえる.事実,名のある多くの皮膚科学者が,同時に優れた組織学者である例を挙げることができる.

これすぽんでんす

いわゆる悪性関節リウマチの1例にみられた表皮細胞核IgG沈着/菌状息肉症と光線感受性

著者: 西川武二

ページ範囲:P.94 - P.94

 最近,螢光抗体法の普及により水疱症,エリテマトーデスをはじめとする多くの疾患の生検皮膚へ螢光抗体直接法が施行されるようになり,種々の興味ある知見が得られてきた.行木らの「悪性関節リウマチの1例」においても前腕の結節性紅斑様の発疹部の螢光抗体直接法では従来あまり注目されなかった表皮細胞核のIgG沈着が認められている.また,同時に血清中には640倍の抗核抗体と抗ENA抗体(赤血球凝集法で8,192倍の高値)が見られている.著者らはこれらについては,症例報告の主旨とは直接関係していないため,とくに言及していないが,極めて興味深い知見である.
 すなわち,最近,諸施設から表皮細胞核のIgG沈着が,膠原病,とくにSLE1),MCTD2,3),PSS4)にみられたとの報告が相次いでいる.筆者らも同様の知見を,Mesenchymal scleroderma (PSSの症状を主徴とするが,他の結合織疾患を合併する症候群)症例に見い出し報告した5)

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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