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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科33巻12号

1979年12月発行

雑誌目次

図譜・446

Chilblain-Lupus(Hutchinson)

著者: 木村恭一 ,   福代新治

ページ範囲:P.1044 - P.1045

患者14歳,女
初診昭和54年1月17日

綜説

免疫最近の進歩

著者: 野口義圀

ページ範囲:P.1047 - P.1058

 最近における免疫学の進歩は目覚しく,その前衛は分子生物学の理論と方法とを駆使し,未知の分野の開拓に貢献している.臨床医にとって,それらのデッサンを描くことすら容易なことではないが,将来の医学の背骨ともいうべき免疫学の最近における話題について触れてみたい.
 さて第3同国際免疫学会は1977年7月,濠州のSydneyで行われた1).そこでとり上げられたシンポジウムのテーマを見ると,リンパ球などの細胞膜,移植抗原,細菌性膜抗原,TおよびBリンパ球の個体発生と分化,免疫グロブリンの遺伝子表現,主要組織適合性抗原と免疫応答,免疫寛容と制御,腫瘍免疫などが主なものであった.もちろん同じ傾向は,本邦における免疫関係の3学会,日本臨床免疫学会(昭和53年6月,東京),日本アレルギー学会(同年11月,熊本),日木免疫学会(同年11月,京都)にもうかがわれた.ただし,macrophage (Mφ)を主とする貧食細胞の免疫応答における関与が新しい話題として注目された.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.1058 - P.1058

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してき生した.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました,御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

原著

外用剤による接触皮膚炎と貼布試験成績

著者: 東禹彦 ,   細川宏 ,   大久保美和子 ,   赤枝民世

ページ範囲:P.1059 - P.1063

 昭和47年から昭和52年までの6年間に,外用剤による接触皮膚炎を疑った患者のうち,患者が用いていた外用剤で貼布験試を行い得たのは107例であった.それらのうら,実際に外用剤が原因となっていた症例は36例にすぎず,他の接触原が貼布験試により見い出された例が29例もあった.原因外用剤としては抗真菌剤14件,コルチコイド含有外用剤7件,殺菌消毒剤6件などが頻度の高いものであった.コルチコイド含有外用剤の貼布験試では48時間で陰性で72時間目に陽性を示したものが4件,72時間以後に陽性を示したものが1件みられた.

SLE様患者にみられたChronic Urticaria-Like Lesions

著者: 石井則久 ,   池澤善郎 ,   亀田洋 ,   中嶋弘 ,   丸山光雄

ページ範囲:P.1067 - P.1073

 49歳,女性,顔面,上肢,躯幹に蕁麻疹様皮疹及びクインケ浮腫様皮疹が繰り返し出現.その他,経過中に発熱,腹痛,脱毛,関節痛,レイノー現象などもみられた.蕁麻疹様皮疹の病理組織学的所見は,主に真皮上層の核崩壊を伴う好中球浸潤であり,螢光抗体直接法によりIgGの沈着がbasement membrane zoneと真皮上層の血管壁に認められた.皮疹の増悪時には,白血球減少,低補体血症,抗核抗体高値(speckled pattern)を認めたが,ステロイド内服により症状の軽快と検査所見の改善をみた.自験例は,ARAのSLEcriteriaをかろうじて満たしたが,明瞭な多臓器病変が確認されず,definite SLEとするにはためらいがあった.自験例でみられた蕁麻疹様皮疹は,McDuffieらやMarderらの報告したhypocomplementemic vasculitis-urticarial syndrome (HVUS)の皮疹にも,O'Lou—ghlinらの言うSLEにおけるchronic urticaria-like lesionsにも,臨床的並びに病理学的にも一致することから,これらの症例と自験例との関連について若干の検討を加えた.

黄色204号(Y−204)にアレルギーを有するエリテマトーデスの2症例

著者: 稲本仲子 ,   中山秀夫 ,   平井昭男

ページ範囲:P.1075 - P.1082

 Drug-induced SLEが存在するように,日常使用されている香料,色素等のsimplechemicalによってSLEが誘発される可能性を考えて,多種類の香料,色素等についてのアレルギー検索をパッチテストで施行したところ,キノリン系色素の黄色204号(Y−204)にアレルギーを有する2例の男子エリテマトーデス例(SLE及びpossible SLE)を経験した.

いわゆるAuto-Immune Annular Erythemaの1例

著者: 藤生善一 ,   斎藤義雄 ,   石川英一

ページ範囲:P.1085 - P.1092

 52歳,家婦.3年来,紅色丘疹で始まり,漸次遠心性に拡大する滲出性環状紅斑が躯幹を中心に多発し,寛解と増悪を繰り返した.赤沈正常,腎障害なく,LE細胞陰性であったが,抗核抗体陽性(16倍ないし512倍speckled pattern),一過性に抗DNA抗体陽性(80倍),血清補体の低下を認めた.皮疹の組織像はLE様であったが,螢光抗体直接法陰性,電顕学的検索で,microtubular structureは見られなかった.治療はステロイド内服が有効であった.以上の所見から,自験例は,Rekantらのauto-immune annular erythemaに該当する症例と思われ,lupus erythematosusの亜型と老えられるが,新しい症候群の可能性も考慮される.

播種性好酸球性膠原病の2例

著者: 野口知子 ,   真家興隆 ,   高橋正昭 ,   舟生俊夫 ,   宇塚善郎

ページ範囲:P.1095 - P.1101

 37歳女子,20歳女子の播種性好酸球性膠原病と思われる2例を報告した.
第1例は,リューマチ熱やSLEでみられる関節変化によく似た手指関節の変化を示した.
ステロイド,アザチオプリンの併用療法を行い,現在その何れも投与を中止しているが,全身,皮膚症状,検査所見共におちついている.
第2例は,神経症状を伴って発症,抗核抗体陽性,血清補体価の低下がみられたものの,全身症状は比較的軽微に経過した.しかし,誘因なく急速に悪化,死亡した.

水疱病変を伴った菌状息肉症

著者: 伊東紀子 ,   大久保正己 ,   吉江治彦 ,   斉木実 ,   井上隆義 ,   若松勝雄 ,   黒田育子

ページ範囲:P.1105 - P.1112

 一般に菌状息肉症に水疱病変を伴りことは稀であるが,今回この1例と思われる症例を経験したので報告する.患者は77歳女子.入院時,水疱びらんが多発しており水疱性疾患を思わせたが,後に腫瘍が出現し,臨床経過,光顕所見,電顕所見,螢光抗体法などより,菌状息肉症と診断した.腫瘍細胞の膜性状は大部分がB-cellの性状を示した.死亡時まで白血化,骨髄像の異常,リンパ節の系統的腫大,肝脾腫大を認めなかった.

Oral Florid Papillomatosisの1例

著者: 小野敏 ,   吉井田美子 ,   保阪善昭 ,   戸田浄

ページ範囲:P.1113 - P.1116

 66歳,女.半年程前より左口角部から左頬粘膜にかけて,やや白色を帯びた疣状の腫瘤が多発し徐々に融合拡大した.初診時,左口角部に血性痂皮で被われた小指頭大の乳頭状腫瘤を認めた.組織はAcanthose, Papillomatoseの他に,核の大小不同,分裂像などが認められるが,基底層はよく保たれ破壊浸潤はない.Oral florid papillomatosisと診断したが,臨床的,組織学的に同一疾患と考えられるLeucoplakia verrucosaやverrucous car—cinomaとの関連についても若干の考察を加えた.なお,治療はメソトレキセート内服にて行い腫瘤は扁平化したため5Fu軟膏の外用にて現在経過観察中である.

講座

SLE (Ⅲ)—IV.SLEと日光過敏

著者: 大橋勝

ページ範囲:P.1118 - P.1123

 SLEと紫外線との関係は古くから知られており,蝶型紅斑は常に紫外線に当たる部位に生じた紅斑であるといわれている.アメリカリウマチ協会のSLEの診断基準(ARA)に蝶型紅斑とともに日光過敏がとり上げられている.日光過敏は日光または紫外線に被照射後に顔面に皮疹の新生をみるか,皮疹の拡大を生ずるかをさし,はなはだしい場合には臨床症状の増悪をみた症状の既往歴を指している.文献的にはDubois1)はSLEの34.7%に光線過敏の既往があると報告している.日本のSLEではどのくらいの頻度で日光過敏の既往が見出されるかを全国統計よりみるとSLE107例で35.9%2)あり,類似した百分率で認められている.自験例では21例中14例3)(67%)である.この自験例の数字が前2者の報告とかなりの差異があるのは,皮膚科医が扱うSLEと,主として内科医でのSLEとの差なのかもしれない.

これすぽんでんす

「皮膚腫瘍に伴う続発性皮膚アミロイド症」を読んで/「Angio-Immunoblastic Lymphadenopathy (Frizzera)の1例」を読んで

著者: 斎藤義雄

ページ範囲:P.1124 - P.1124

 岡田氏らが皮膚腫瘍のうちボーエン病,老人性疣贅および堪底細胞上皮腫を組織化学的に検索し,特にボーエン病で50例中19例(38%)の高率に局所型のアミロイドーシスを証明し,特徴的所見として腫瘍細胞巣に限局性に,また腫瘍の経過年数が長くかつ腫瘍が大きいほどアミロイドが証明し易いと報告している(本誌,33(5);387-390,1979).この論文で問題となるのはやはりアミロイドの生成機序,すなわち局所型続発性アミロイドーシスにおいて如何なる機序でアミロイド沈着が生じるかであろう.
 骨髄腫に伴った全身性アミロイドーシスに関して最近都留ら1)はベンスジョーンズ蛋白が結合織に溢出し,線維芽細胞に貧食され,細胞内酵素により蛋白分解を受けてアミロイド線維が作られると推定している.局所型原発性アミロイドーシスについては橋本2)はアミロイド線維は線維芽細胞で産生されるとしたが,Ebnerら3)は表皮細胞内均一性ないし線維性小体をアミロイドの前駆物質として注目している.さらに,皮膚腫瘍に伴うアミロイドーシスに関して橋本は腫瘍細胞の変性からアミロイドが生じる可能性を否定していない.しかし,この場合も線維芽細胞のアミロイド線維産生を重視している.

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臨床皮膚科 第33巻 総索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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