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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科33巻3号

1979年03月発行

雑誌目次

図譜・437

表在型悪性黒色腫

著者: 笠井達也 ,   佐藤幸子 ,   国井康男

ページ範囲:P.194 - P.195

患者43歳,男子
初診昭和52年11月7日

綜説

Herpes Gestationis (妊娠性疱疹) I.

著者: 矢尾板英夫

ページ範囲:P.197 - P.207

 Herpes gestationis(HG)は妊娠中あるいは産褥期に起こる反復性の瘙痒の激烈で稀有な水疱性疾患である.ただし同様の症状が胞状奇胎あるいは悪性絨毛上皮腫に併発したという報告1〜3)もあるが,現時点ではHGかbullous pemphigoid(BP)か議論の分かれる所でもあり決定するには資料不足なので,本稿ではHG様の皮疹として扱うこととする.
 本疾患は1811年のBunel4)による報告が最初とされ,以来pemphigus gravidarum5),pemphiguspruriginosus6),herpes circinatus bullosus7),pemphigus hystericus8),dermatitis multiformis gestationis9),dermatite polymorphe bouloureuse recidivante de la grossesse10),dermatitis herpetiformis of pregnancy11)等として報告されてきた.Herpes gestationisは1872年Milton12)によって提唱された病名であり,Bulkley13)が症例を集めて,この病名のもとに1つのclinical entityとしたが,現在これが一般的である.前述の報告例に見る如く,pemphigusあるいはherpes等との関連を考えた時期もあったが,近くは妊娠と関連して起こったdermatitis herpetiformis DH)と考えるのが主流であった.Fox14),Montgomery15),Greenbaum16),Honeycutt et al. 11),Graham17)らはHGの皮疹および組織がDHのそれらと極めて類似しているとして,またDowning & Jillson18),Lewis19)らはSulfapyridine,Sulfathiasolが効果的であったとしてDH説を支持した.これに対し,SulfapyridineおよびDiaminodiphenylsulfone(DDS)が無効であるという報告も多く20〜22),HGとDHの異同に関しては臨床,組織以外の新しい研究結果が期待されていた.

原著

小児Poikilodermatomyositisの1例

著者: 徳永信三 ,   稲本伸子

ページ範囲:P.209 - P.217

 小児皮膚筋炎では往々筋症状,一般に膠原病に見られる臨床症状,それに相当する臨床検査所見に乏しい事が経験される.そしてそれがpoikiloderma型皮疹である場合poi—kilodermaを呈する他の皮膚疾患との鑑別が必要となるので著者はこの論文でpoikilodermaの鑑別診断をのべ,併せてpoikilodermia atrophicans vascularisについて本邦報告に基づき文献的考察を行い,現時点では一応本症の独立性を認める方がよいとする考えを述べた.

Oculodentodigital dysplasia syndromeの1例

著者: 斎藤義雄 ,   内山安弘

ページ範囲:P.219 - P.225

 家系に血族結婚のある3歳女児に眼症状として小眼球症,虹彩異常,歯症状として歯のエナメル質低形成,四肢症状として両側第4,第5指の合指症,両側第4指の屈指症を認め,特有な小鼻翼を呈する顔貌を有する本症の1例を報告した.皮膚症状としては頭髪および眉毛の稀毛症,指趾爪に軽度の匙状爪を認めた.また,臨床的無疹部である前腕皮膚の生検組織像で主たる変化として膠原線維が細く,弾力線維が軽度断片化を示して,電顕所見では膠原線維束の配列不整,同細線維(400〜600Å)の増加,弾力線維の細小化およびmatrix内の小孔の出現,microfibrilsの増加が特徴的であった.

Bromodermaの1例

著者: 奥村睦子 ,   志賀暁子 ,   穀内純江 ,   小塚雄民

ページ範囲:P.229 - P.233

要約 40歳,主婦.10年来神経症で治療を受けている.約2ヵ月間ブロムカリ1.5g/日の内服投与を受けたが,内服開始して約2週間後,外傷に一致して左下腿前面に癤様皮疹が出現した.漸次増大増悪し,表面疣贅状の境界明瞭な有痛性腫瘤を形成する.同時に頭部背部などに痤瘡様発疹が多発した.下腿腫瘤はブロムカリ内服中止後約1ヵ月で赤紫色斑となって消褪し,痤瘡様発疹も同様経過を経て消失したが,約1年半後ブロム剤を再び投与されたことにより,項部背部などに痤瘡様発疹の再発をみた.

金製剤による紅皮症型薬疹

著者: 細井洋子 ,   鈴木伸典

ページ範囲:P.235 - P.239

 47歳,女性,約2年前より膝関節痛および腰痛を訴えていたが,初診の約1ヵ月前より増強し,慢性関節リウマチとして金チオリンゴ酸ナトリウム総量85mgの筋注治療をうけた.注射終了後,熱発,口腔内のびらん,舌のきれつおよび全身に紅皮症様の皮疹を生じた.入院時の組織検査ではsubacute dermatitisの像であった.胃潰瘍の併発があり,治療としてステロイドクリームによるO.D.T.を行ない約4ヵ月の経過で略治した.現病歴,臨床症状および末梢血好酸球増加などより金チオリンゴ酸ナトリウムによる薬疹が疑われ,金チオリンゴ酸ナトリウムを添加した患者末梢血リンパ球培養にてリンパ球幼若化反応は陽性を示した.金製剤による薬疹は種々の形態をとり,発症時期および経過も異なることより,その発生機序は複雑で種々の要因が関与しているものと思われるが,自験例のようにその一部分のものについてはアレルギー性機序の関与も示唆される.

多発性毛嚢嚢腫症の家族発生例

著者: 松村治和 ,   石川英一

ページ範囲:P.241 - P.245

 家族性,汎発性に発症した多発性毛嚢嚢腫症の母,娘例(71歳,41歳)を報告した.組織学的に検索した母親例において,嚢腫壁の一部に毛嚢,脂腺細胞の付着を認め,さらに嚢腫内に毛髪の断面を認め,また嚢腫壁の一部では外毛根鞘類似の変化を認めた.以上の点および家族内に発生していることより本症例は毛嚢ないし脂腺への分化傾向の強い奇形腫ないし母斑性の疾患であることが示唆される.

転移性皮膚癌について—20症例の検討

著者: 川岸郁朗 ,   三浦祐晶

ページ範囲:P.247 - P.254

 昭和41年から昭和51年まで11年間の北大附属病院皮膚科における転移性皮膚癌20例を集計し,原発巣,皮膚転位部位,臨床像,転移形式,予後などについて考察した.

胃癌に併発したAcanthosis nigricansの1例

著者: 池谷田鶴子 ,   岩原邦夫 ,   根木信 ,   須田耕一 ,   鎌野俊紀

ページ範囲:P.255 - P.260

 30歳,男子.好銀反応細胞陽性胃癌に併発したAcanthosis nigricansの1例を報告した.陰部,臀部に典型的皮疹のほか,掌蹠の角化,疣贅を合併する.胃癌の病理組織学的診断はadenocarcinoma mucocellulareであったが,Masson-Fontana銀染色(嗜銀反応)では陰性,Glimerius銀染色(好銀反応)で腫瘍細胞の一部が陽性を呈し,更に電顕的にも腫瘍細胞に内分泌顆粒を認め,癌細胞の一部が内分泌性細胞であることが判明した.この結果は本症の発症病理と関係あるものと考え,我々の見解を述べた.

Leser-Trelatの徴候より早期胃癌が発見された1例

著者: 鈴木弓 ,   松尾聿朗 ,   小栗昭 ,   原沢茂

ページ範囲:P.261 - P.265

要約 69歳男性で,約3週の期間内に,激しい皮膚瘙痒症と,体幹のみでも1,000個以上に及ぶ老人性疣贅が多発したため,Leser-Trelatの徴候を老え入院精査したところ,微小早期胃癌(6.0×2.5mm)を発見した,胃部分摘除術施行後,瘙痒軽減し,直径2mm以下の老人性疣贅が消褪しつつある.
また,皮膚症状と胃癌との相関関係につき細胞レベルでの老化の可能性を考えて,線維芽細胞の継代培養を試みたところ,19代迄継代可能で正常人と変わらなかった.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.239 - P.239

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Comitteeから出された「International List or Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・3

皮膚結合織の病変・III—一次性限局性アミロイド症(1)〜(4)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.266 - P.271

一次性限局性アミロイド症(1)
 図7 苔癬様アミロイド症(Lichen amyloidosus)は皮膚に原発し皮膚に止る疾患で,多くの症例では下肢の伸側が侵される.血液性疾患や内臓の侵襲を伴わない点で非常に興味ある疾患である.通常,激しい瘙痒を伴い掻破による血痂がみられる.慢性の経過をたどるに従い,皮膚は肥厚,浸潤を示し,苔癬状を呈するのが本図Aでみられる,最近,皮膚に原発し,皮膚に限局するアミロイド症の他の型として,斑状アミロイド症(ma—cular amyloidosis)が認識されるようになった1)1.斑状型は躯幹に斑状の色素沈着を起こし,軽度の瘙痒を伴う.色素沈着は一様でなく波紋状(rip—pling)をなす1).苔癬型と合併することがあり,互に移行することもあるので同症の異型と老えられる2).原因については慢性皮膚炎がその基礎にあるのか,原発性のものなのか議論の分れるところであるが,興味ある点は両型ともに白人に少なく,黄色人種に多いことであろう.東洋人,プエルトリコ人などに発症することが多い2).この事実はニューヨークなど雑多な人種が混合している社会で明瞭に観察されている.日本においても多数の症例があってもよいはずであるが,"慢性湿疹"または"リール黒皮症"などとして看過されている例があるかもしれない.
 図Bは生検組織のパラフィン切片にPAS染色を行ったものである.アミロイドは赤く染まり,ヂアスターゼ消化によっても消失しないから中性ムコ多糖類を含むことが解る.PAS陽性のアミロイドは表皮稜(rete ridge)の間,すなわち真皮乳頭に局在し,それより深部には沈着していない.一次性全身性アミロイド症(図1参照)と異なり,血管周囲には同様の物質が見当らない.図Cは同様の組織を固定することなく凍結し,切片をPAS染色したものである.図Bと比較して染色が良好なことに気付く.この事実はアミロイドを染める凡ての特殊染色に当てはまる.すなわちクリスタルヴァイオレット(図D),コンゴレッド(図E)などの染色も,凍結切片を染色した場合により良好な結果が得られる.図D,Eはフォルマリン固定,パラフィン包埋後に作製した切片の染色なので,染色度が薄い.しかし図C,DでPASに染まった部位にアミロイドが染まっている.真皮上層の小血管が全く染まらない点もPAS染色と同様である.図Eの標本を偏光の下で観察すると橙色にみえたコンゴレッド陽性のアミロイドが緑色を呈して複屈折するのがわかる.表皮の張原線維束,表皮最表層のケラチン,および真皮の膠原線維は複屈折はするが緑色は呈しない(図F).

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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