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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科33巻4号

1979年04月発行

雑誌目次

図譜・438

境界型癩

著者: 奥野博子 ,   橋本隆 ,   倉持正雄 ,   原田敬之 ,   左奈田精孝 ,   小関正倫

ページ範囲:P.278 - P.279

患者74歳,主婦,立川市在住
初診昭和52年4月12日

綜説

Herpes Gestationis (妊娠性疱疹) II.

著者: 矢尾板英夫

ページ範囲:P.281 - P.288

病因論
 HGの病因は未だ不明である.Virus説,心因説,Rh因子説,Vit B6欠乏説,腎機能障害説,代謝内分泌異常説,自己免疫説等が唱えられてきたが,次に主な説について紹介し考按する.

原著

Angio-Immunoblastic Lymphadenopathy(Frizzera)の1例

著者: 木村恭一 ,   大西泰憲 ,   白井求 ,   十川聖三 ,   泉丸雅子

ページ範囲:P.289 - P.296

 48歳男子,リンパ節の病理組織からAngio-immunoblastic lymphadenopathyと診断された1例を報告した.患者は中毒疹様皮疹,肝脾腫,貧血,リンパ球減少,多クローン性高ガンマグロブリン血症,PPD陰性,DNCB陰性,トキソプラズマ抗体高値等の所見を呈し,発症以来2年弱の経過で死亡した.

Trichophyton verrucosumによるagminate folliculitis型顔面白癬の1例

著者: 滝沢清宏 ,   日野治子 ,   関利仁

ページ範囲:P.299 - P.302

 4歳男児(茨城県筑波郡在住)のTrichophyton verrucosumによる顔面白癬の1例を報告した.右眉毛部ではagminate folliculitis型の,右頬部ではTinea circinata型の病像を示した.北海道から移入された罹患牛との接触機会を持ち,牛からの感染と推定した.
 ヒトのTrichophyton verrucosum感染症の本邦報告例について若干の文献的考察を加えた.

Trichophyton schoenleiniiによる原発性陰嚢黄癬の1例,ならびに本邦における生毛部黄癬の調査成績

著者: 高橋伸也 ,   小関史朗 ,   佐藤勇一

ページ範囲:P.303 - P.307

 20歳,男子の陰嚢に原発性に生じたTrichophyton schoenleiniiによる黄癬の1例を報告した.感染経路は不明.病変は陰嚢前面にのみみられ,ケシ粒大ないし米粒大,円形,多くは不整多角形,石灰状,固着性の痂皮の散在性あるいは集簇性形成よりなる.症例は高橋(吉)・高橋(伸)の分類のうちFavus pseudoscutularis型に該当するものと思われる.昭和年代に入って著しく減少し,一時消滅したかにみえた黄癬は,戦後昭和26〜27年頃より北陸地方を主とし,全国的に発生が認められ,計31例が観察されている.戦前,戦後を通じて,生毛部黄癬は25例が報告されているが,原発性は僅か8例に過ぎない.これまでに報告された原発性生毛部黄癬の原因菌はいずれもMicrosporum gypseumであって,T.schoenleiniiによる症例は自験例が本邦第1例と思われる.

爪白癬の治療成績

著者: 東禹彦

ページ範囲:P.309 - P.313

 微粒子グリセオフルビンによって治療した爪白癬218例についての治療成績を報告した.218例中治癒または略治まで経過を追跡し得た症例は67例にすぎなかった.従来,指爪白癬は大部分が6ヵ月以内に治癒するとされているが,6ヵ月以内に治癒した症例は60%にすぎず,1年以上を要したものが12.3%もあった.趾爪白癬では1年以内に治癒したものは52.6%にすぎなかった.治癒に要する日数と患者の年齢や罹病期間の関係を検討したが,有意の関係はなかった.治療中断例では,医師の誤りにより,充分治癒しないうちに治療を中断されている例があった.

遅発性皮膚ポルフィリン症の1例

著者: 大久保正己 ,   藤井光子 ,   若松勝雄 ,   清沢研道

ページ範囲:P.315 - P.319

 露光部に顕著な皮膚症状を示した遅発性皮膚ポルフィリン症を報告した.
1)皮膚の硬化,脆弱性を伴う光過敏性皮膚症があり,単色光(400nm)の照射により皮膚に浮腫性紅斑を生ずる.
2)尿中にウロポルフィリンの著しい上昇がある.
3)真皮上層に著しい均質化変性があり,同部と血管壁にPAS染色陽性物質の沈着がみられる.また,senile elastosis様変性が顕著である.
4)表皮真皮結合部および血管壁にIgGの沈着がある.
5)アルコール性肝硬変を認め,肝生検切片は紫外線の照射により赤色螢光を発する.
そのほか,遅発性皮膚ポルフィリン症の皮膚病変の発症機転について言及した.

Diabetic Scleredemaの2例

著者: 大熊登 ,   山本康生 ,   高岩堯 ,   荒田次郎 ,   野原望

ページ範囲:P.321 - P.325

 37歳,男性と44歳,女性の項部から上背部にかけて生じたscleredemaの2例を報告した.ともに肥満し,糖尿病に罹患し,先行感染の徴候はなくKrakowskiらのいうdiabetic scleredemaと診断した.組織化学的に酸性ムコ多糖類を証明し,生化学的には乾燥重量あたりの酸性ムコ多糖類は増加せず,二次元電気泳動による分画ではヒアルロン酸/デルマタン硫酸比は低下しているという結果を得た.

皮下型環状肉芽腫の1例

著者: 伊藤雅章 ,   諸橋正昭 ,   岡吉郎

ページ範囲:P.327 - P.334

 皮下型環状肉芽腫の3歳,女児例を報告した.初診時,両膝,臀部に4個の拇指頭大までの硬い皮下腫瘤を認めた.組織学的検索では,膠原線維の変性巣をとりまき,組織球,類上皮細胞および線維芽細胞が柵状に配列し,リンパ球を混じた肉芽腫病変が皮下組織中に認められた.電顕的には,変性巣中に膠原線維束の崩壊と考えられる像,組織球,代謝活性亢進を示す線維芽細胞と未熟な膠原線維,豊富な酸性粘液多糖類の沈着を認めた.また,肉芽腫組織の変性巣に近い部位に,リンパ球の分裂像,血管の閉塞像がみられた.

Cole-Engman症候群の兄弟例

著者: 高橋慶子 ,   多島新吾 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.335 - P.341

Cole-Engman症候群の兄弟例を報告した.兄19歳,生下時は正常であったが,生後次第に全身色素沈着が出現し,上胸部,上背部,耳介では黒褐色網状色素沈着に,円形の小脱色素斑を混ず.舌後半部には白板症様変化がみられ,趾爪はすべて縦溝を呈し,第Ⅴ趾爪は萎縮性,眼科的に色覚異常と眼球結膜の角化がみられた.
弟16歳,全身に兄と同様の色素沈着を認め,頬粘膜に白板症様変化,指趾爪に軽度の縦溝を認めた.
Cole-Engman症候群の我国における家族発生例はいまだ極めて数少なく,本邦における明らかな兄弟例としては,自験例が初めてと思われる.
またColeらは本症の組織像で,表皮細胞の異常角化を強調し,ために本症はDyskeratosis congenitaとも呼称されている.しかるにその後の報告では異常角化を認めたものはなく,自験症例1も異常角化を認めなかった.
さらに本症候群にはしばしば再生不良性貧血を伴うことが知られている.自験例でも2症例ともにpancytopeniaの傾向がみられ,今後厳重なるfollow upが必要と考えられる.

ミベリ汗孔角化症の6例

著者: 佐藤昭彦 ,   舛真一 ,   熊井則夫

ページ範囲:P.343 - P.349

互に関連のない2家系の親子例(単発型の母親とsegmental型の息子,汎発型の母親と息子)と非家族性の2例(汎発型と単発角質増殖型)のミベリ汗孔角化症を報告し,臨床型と遺伝について言及した.
病理組織学的検索を行った5例中2例に真皮乳頭層にアミロイド沈着があり,3例にhya line体が認められ,全例にincontinentia pigmenti histologicaが存在した.またcornoid lamella及びその下の表皮に異常角化細胞がみられたことより,異常細胞は上方に移動しcornoid lamellaを構成するが,その若干は貪食細胞により表皮より除かれhyaline体となり,メラノソームは貪食細胞に撰択的に摂取されると推測された.アミロイド沈着はhyaline体あるいは異常角化細胞がアミロイド生成に密接な関連を持つことを示唆するものである.

Kérato-acanthome pluri-kystique pseudo-sébacé(Degos)の1例

著者: 西本正賢 ,   多田広祠 ,   福代新治 ,   高岩堯

ページ範囲:P.351 - P.355

39歳,男性.上口唇皮膚の瘢痕部(単純性疱疹後の)に膿疱様丘疹を生じ集簇融合して小指頭大の腫瘤を形成するとともに,腫瘤周囲にも毛孔一致性でない同様の丘疹が散在性に多発した.生検組織では多数の角質嚢腫が主体で,壁の一部に有棘層の肥厚とPAS陽性顆粒がみられるほか,間質に単核球を主とする密な細胞浸潤を認めたが,異形細胞はみられなかった.ベータメサゾン1日量3mgの経口投与により1週間で腫瘤は脱落したが,周囲の膿疱様丘疹は軽快しないため稗粒腫に準じて内容を排出せしめた.
以下に詳述するごとく種々の観点より本症例をKeratoacanthomaと考えたが,同様の臨床像・組織像を呈した報告例は少なく,病像の特異性を強調するためにDegosらの使用した名称を用いて報告した.

Acquired Fibrokeratoma

著者: 佐藤みち子 ,   安野洋一

ページ範囲:P.357 - P.361

20歳男子の足背に生じたAcquired fibrokeratomaの1例を報告した.
1968年Bartらが命名したAcquired digital fibrokeratomaは現在までに多くの報告がなされている.自験例は足背にみられたもので,digitalという形容詞は付けることができないが,発生部位を除けば,臨床的,組織学的にもBartの典型例である.文献上,足背発生例は自験例が第1例目であり,その大要を報告すると共に,その病名,鑑別診断,治療,発生病理など,また本邦例19例について概括した.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.296 - P.296

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Comitteeから出された「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・4

皮膚結合織の病変(IV)—皮膚腫瘍とアミロイド

著者: 橋本健

ページ範囲:P.362 - P.366

皮膚腫瘍とアミロイド
 図11皮膚アミロイド症,特に一次性限局性アミロイド症,および皮膚腫瘍に随伴するアミロイド1,2)の起源に関するもう1つの仮説は表皮あるいは腫瘍細胞由来説である.これらの疾患ではアミロイドは表皮—真皮境界部(図7),または腫瘍塊の近傍に限局して沈着する.
 図Aは日光性角化症(actinic keratosis)で,角質真珠(horn pearl)が表皮の右下方にみえる.肥厚した表皮中にクリスタル紫で異染性(赤紫色)に染まるアミロイドが点在する.図Bでは,同様の染色性を有する小体が,表皮—真皮の境界部にみられる(異染性とはその色素本来の色と異なる色に染まる事をいう.即ち青紫色のクリスタル紫に赤く染まる物質は異染性を示すといえる).これらの異染性小体を電顕的に観察すると,図2,3で示したと同様なアミロイドの集塊が見出される1,2)(図11E参照).

これすぽんでんす

Black heelについて

著者: 設楽篤幸

ページ範囲:P.367 - P.367

 国本氏ら著「Black heelの統計的観察」(本誌,32(10);849,1978)の論文を読ませていただいたが,筆者は国本氏らが触れていないtransepithelial elimina—tion (経上皮性排除)という観点から本症をみる必要があるのではないかと考える.
 国本氏らの論文は本症の頻度,部位,性別,また本症とスポーツとの関係などを詳細に調べたものである.最近他誌にも同様な論文が報告されている.臨床的にこれらのことを詳細に調べることは本症の原因を理解する上で役立つことであり,臨床医にとっては欠かすことの出来ないことの1つである.しかし,Kirton & Price1)が本症の角質層内にある無構造物質が血液由来であることを組織化学的にすでに証明している現在では,本症をこのような観点からのみとらえるのではなく,Mehreganのいうtransepithelial eliminationという概念に基づいて本症をみる必要があると考える.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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