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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科33巻5号

1979年05月発行

雑誌目次

図譜・439

Trichophyton violaceum感染症

著者: 浜坂幸吉 ,   大熊憲崇

ページ範囲:P.376 - P.377

 患者27歳,女性.北海道礼文島船泊在住.
初診昭和52年7月25日

綜説

毛嚢腫瘍について

著者: 石川謹也

ページ範囲:P.379 - P.386

 毛嚢腫瘍(hair follicle tumor)の分類はすでに1948年,Lever1)によって簡単になされているが,その後新しい病型が記載されるようになり,1960年以後,Kligman & Pinkus2),Headington & French3),Gartmann & Kiessling4),安原5),Grimmer6),Duperrat & Mascaro7),Mehregan8)により細分されるようになってきた.また,Pinkus & Mehrcgan9)の皮膚病理組織学の教科書にも記載されている.最近ではRahbariら10),森岡ら11),さらにHeadington12)のきわめて詳細な分類がある.毛嚢腫瘍を分類する際,毛嚢全体の分化度の程度に従って分ける方法と,それとは別個に毛嚢のいずれの部位より発生したかによって分ける方法との2つにすると理解しやすいと思考される.ところでPinkus9)も述べているように毛嚢を表現する適当なギリシャ語はなく,毛を意味するθρiξ(thrix)の属格であるτρiχos(trichos)(=of hair)によって表現されることが多い.この点,漢字の場合は毛と毛嚢と簡潔明確に区別して病名をつくることが出来るので便利である.その種類はきわめて多いが主なものについて以下の如く分類してみた.
 毛嚢全体として分化度のよいものより順に分類した場合

原著

皮膚腫瘍に伴う続発性皮膚アミロイド症

著者: 岡田奈津子 ,   喜多野征夫

ページ範囲:P.387 - P.390

 皮膚腫瘍に伴う続発性皮膚アミロイド症につき統計的に検索した.老人性疣贅96例,ボーエン病50例,基底細胞上皮腫67例計213例を対象として,病理組織につきアルカリコンゴーレッド染色とチオフラビンT染色でアミロイドの同定を行ったところ,そのうち44例にアミロイド沈着を認め,頻度は17.7%,38.0%,11.9%でとくにボーエン病において高かった.沈着部位は主に腫瘍部の真皮乳頭層と真皮上層に限局しており,沈着形態はいずれも無構造顆粒状であった.アミロイド沈着と炎症細胞の関係はみられなかった.沈着率は患者年齢の高いもの,腫瘍発生からの期間が長く,大きさの大きいものにやや高く認められる傾向があったが,発生部位として露光部と非露光部の間で差はみられず,また特定の全身疾患に伴う傾向も認められなかった.

小児にみられた粘液水腫性苔癬の1例

著者: 赤松徹 ,   田辺義次 ,   岡本昭二

ページ範囲:P.391 - P.395

 5歳6ヵ月女児に生じた粘液水腫性苔癬(lichen myxedematosus)の1例を報告した.螢光抗体直接法にて免疫グロブリンの組織内沈着がみられた.本症の発生病理,治療法につき若干の文献的考察を試みた.

皮膚サルコイドージスの臨床的観察およびサルコイドージスにおけるKveim反応

著者: 竹内誠司 ,   諸橋正昭 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.397 - P.403

 新潟大学皮膚科における10年間(昭和43年〜52年)の皮膚サルコイドージスの症例と,5年間(昭和48年〜52年)のクベイム反応の症例につき検討を行い,さらに最近の新しい知見について若干の考察を加えた.サルコイドージスの皮膚病変を有するものは10年間で15例であり皮膚サルコイド12例(結節型7例,局面型3例,結節型から局面型への移行1例,苔癬様型1例),結節性紅斑1例,瘢痕浸潤3例(皮膚サルコイドに合併した1例を含む)であった.性別では女性が男性の4倍であり,年齢では50歳台がもっとも多かった.最近5年間の新潟大学第2内科,眼科で診断された症例も含めたサルコイドージス66例中皮膚病変を有するものは10例(15%)で,このうち皮膚サルコイドを有するものは7例(11%)であった.クベイム反応は66例中21例(32%)に陽性であった.

腸性肢端皮膚炎の1例

著者: 岸山和敬 ,   大熊憲崇 ,   浜坂幸吉 ,   水元俊裕 ,   大河原章 ,   奥野晃正 ,   上原秀樹

ページ範囲:P.405 - P.410

 11ヵ月,女児.生後間もなく重症のentero-colitisに罹患した.その後慢性の下痢が続くうちに腸性肢端皮膚炎に典型的な皮疹が出現した.亜鉛療法と母乳で治療し著明な効果をみた.本症例は腸病変に続発した二次的亜鉛欠乏症候群と考えられる.

咬爪症

著者: 東禹彦

ページ範囲:P.411 - P.414

 咬爪症を主訴として皮膚科を受診する患者はなく,皮膚科を受診する場合には爪の異常を主訴として来院する.爪の異常を主訴として来院した患者中27名の咬爪症を見い出した.発症は小児期が大多数で,男女比はほぼ1:1であった.罹患爪甲数は27例中21例で全指爪甲に変形がみられ,2爪甲以下の罹患例はわずか3例にすぎなかった.臨床症状では爪甲の短縮が27例中25例に認められた.その他,横溝,爪廓炎,縦条,爪甲の破壊,爪甲白斑,爪甲剥離などを伴う例があった.発症の誘因としては社会環境,とくに対人関係における変化が重要と考えられた.爪の変形を主訴として受診するので,医師が臨床所見に基づいて,咬爪症であることを診断することが肝要であり,小児の場合には大抵治癒するので,そのためにも医師による発見が重要である.

北海道における最近のM. canis感染症について

著者: 浜坂幸吉 ,   川岸郁朗

ページ範囲:P.417 - P.421

 昭和47年5月から昭和51年12月まで,北大病院皮膚科およびその関連病院皮膚科を受診したMicrosporum canis感染症107例について調査した.その結果,頭部白癬の著明な減少と,体部白癬の増加が証明された.また足白癬が1例あった.
 従来,北海道におけるMicrosporum canis感染症は"流行"としてとらえられていた時期があった.その後局地的な集団発生はみられるが,約10年前からほぼコンスタントに症例の発生があり,少しずつではあるが,その数は増加の傾向にあるように考えられる.

胸骨骨髄に原発し皮下膿瘍を形成したクリプトコックス症の1例—本邦における皮膚クリプトコックス症の文献的考察

著者: 滝沢清宏 ,   中川秀巳 ,   大原国章 ,   貫名信行 ,   山口英世 ,   奥住捷子

ページ範囲:P.423 - P.431

要約 胸骨骨髄に原発し,連続的に胸骨皮質,胸筋,皮下脂肪織を侵し,有痛性皮下膿瘍の臨床像を呈したクリプトコックス症の1例を報告した.5-FC内服を主体に治療し,病巣部より菌が培養されなくなった後に,腐骨掻爬術・有茎弁植皮術を施行し治癒せしめ得た.皮疹が皮下膿瘍であった点を考慮し,本邦に於ける皮膚クリプトコックス症の報告例35例につき若干の文献的考察を行った.

マダニの人体皮膚寄生—紅暈を伴う膿疱を思わせた多数幼虫寄生の1例

著者: 藤原邦彦 ,   小野友道 ,   川島健治郎

ページ範囲:P.435 - P.437

 53歳男子に発症したタカサゴキララマダニAmblyomma testudinarium Koch,1844の幼虫の多数寄生例を報告した.幼虫の個体の周囲に紅斑を伴い,あたかも表在性毛嚢炎の如く見えた.マダニの幼虫の多数寄生例は皮膚科領域では最初の報告と思う.

講座

SSSSをとりまく諸問題(I)

著者: 平山芳

ページ範囲:P.440 - P.447

 1978年Ritter von Rittershain1)は297例の生後1ヵ月以内乳児にみられた剥脱性皮膚炎の症例を発表し,これに新産児剥脱性皮膚炎(Dermatitis exfoliativa neonatorum Ritter)(DEN)なる病名をつけて発表したが,その原因については不明であるとし,当時は必ずしもブ菌感染を考えていなかった(表1).
 ところが1898年になってWinternitz2)はこの疾患の原因がブ菌感染によるものであることを確認し発表した.

連載 皮膚病理の電顕・5

皮膚結合織の病変(V)—APOPTOSISとアミロイド

著者: 橋本健

ページ範囲:P.450 - P.455

APOPTOSISとアミロイド
図12A 表皮細胞の退行変性が表皮下層で起こると,これらの細胞が基底膜を越えて真皮へ落下する現象が最近注目されている.これは扁平紅色苔癬,円盤状エリテマトーデスなどにみられる.前者でCivatte body, colloid body, hyaline body,(最近はcytoid body)などと呼ばれているエオジン好性の表皮内または真皮上層の小体が,電顕的には張原線維の変性による多量の細線維の渦巻状の集塊を含む角化細胞(keratinocyte)であることが判明してきた1,2).このように実質臓器の細胞が変性脱落する現象を一括してapoptosisと呼んでいる3).すなわち,表皮基底細胞が正常の成熟過程を経て角化してゆく途中で炎症,紫外線,薬剤などによる障害を受け死亡する場合,これらの細胞は周囲の健全な角化細胞,または遊走してきた貪食細胞により処理されて消滅する.しかし,障害が軽度であるか,特殊な場合を考えると,角化細胞は半壊死の状態となって成熟を停止するか,或は張原線維の替りに特殊な線維を産生するようになるかもしれない.このように変化した細胞は,正常基底細胞の皮膚表面への上昇から取り残され,次第に圧下されて,遂に基底膜を破って真皮上層へ圧出されると考えられる.この現象がapoptosis (Gk:花弁の落下または落葉の意)である.表皮が不要な細胞を処理する1つの方法として真皮への投下を行うのは,真皮のゴミ収集—処理能力が表皮より優れているためであろうか?
 本図は扁平紅色苔癬の基底層であるが,基底膜(BL)に接する細胞には多数の変性に陥った張原線維(F)がみられ,これらは電子染色度の低下を示している.細胞の周囲には正常の張原線維の残存物(t)がみられる(図12B参照).この細胞の上には変性の更に進んだ細胞があり,細胞質はほぼ完全に変性した線維(*)によって満されている.これらの変性線維は60-80Åの太さを有し,正常の張原線維(t)の太さ(40-60Å)に比較するとやや太い.さらにこれらの線維は大小の渦巻を作っている(曲矢).細胞膜は破れて消失しているので,これらの細線維塊が細胞外物質である可能性も考えられるが,細胞小器官の残存物(矢尻)が諸所に散在することから,張原線維の変性,または変性細胞による異常な線維産生の可能性が考えられる.

これすぽんでんす

Angio-immunoblastic lymphadenopathy with dysproteinemiaの皮疹とその診断学的意義/篠原恵美氏らの「家族性良性慢性天疱瘡の2例—液体窒素療法を中心として—」を読んで

著者: 佐藤信輔

ページ範囲:P.456 - P.456

 Angio-immunoblastic lymphadenopathy with dys—proteinemiaの症例が最近多く発表されるようになってきたが,その皮疹については詳細な報告は少ない.筆者らは本症の3例の皮疹について報告したが(本誌,32(3);191,1978),最近,Lessana-Leibowitchらが1977年に本症の4例の皮疹についてまとめている論文をみたので,追加の意味で以下に紹介したい.
 本症の皮疹は種々の形態を示すが大きく2種類にわけられる.1つは結節状ないし腫瘤状で組織学的にはリンパ節の所見に似た変化が真皮深部におよんでいる.もう1つは多くは斑状丘疹状瀰漫性皮疹,麻疹様皮疹などと称され,また丘疹からなる局面,浸潤性紫斑,狼瘡様皮疹,落屑性紅皮症などと臨床的に多彩な皮疹があるが,中毒疹様皮疹とまとめられる皮疹であり,その組織像はリンパ節の所見に似ている.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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