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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科33巻5号

1979年05月発行

連載 皮膚病理の電顕・5

皮膚結合織の病変(V)—APOPTOSISとアミロイド

著者: 橋本健1

所属機関: 1

ページ範囲:P.450 - P.455

文献概要

APOPTOSISとアミロイド
図12A 表皮細胞の退行変性が表皮下層で起こると,これらの細胞が基底膜を越えて真皮へ落下する現象が最近注目されている.これは扁平紅色苔癬,円盤状エリテマトーデスなどにみられる.前者でCivatte body, colloid body, hyaline body,(最近はcytoid body)などと呼ばれているエオジン好性の表皮内または真皮上層の小体が,電顕的には張原線維の変性による多量の細線維の渦巻状の集塊を含む角化細胞(keratinocyte)であることが判明してきた1,2).このように実質臓器の細胞が変性脱落する現象を一括してapoptosisと呼んでいる3).すなわち,表皮基底細胞が正常の成熟過程を経て角化してゆく途中で炎症,紫外線,薬剤などによる障害を受け死亡する場合,これらの細胞は周囲の健全な角化細胞,または遊走してきた貪食細胞により処理されて消滅する.しかし,障害が軽度であるか,特殊な場合を考えると,角化細胞は半壊死の状態となって成熟を停止するか,或は張原線維の替りに特殊な線維を産生するようになるかもしれない.このように変化した細胞は,正常基底細胞の皮膚表面への上昇から取り残され,次第に圧下されて,遂に基底膜を破って真皮上層へ圧出されると考えられる.この現象がapoptosis (Gk:花弁の落下または落葉の意)である.表皮が不要な細胞を処理する1つの方法として真皮への投下を行うのは,真皮のゴミ収集—処理能力が表皮より優れているためであろうか?
 本図は扁平紅色苔癬の基底層であるが,基底膜(BL)に接する細胞には多数の変性に陥った張原線維(F)がみられ,これらは電子染色度の低下を示している.細胞の周囲には正常の張原線維の残存物(t)がみられる(図12B参照).この細胞の上には変性の更に進んだ細胞があり,細胞質はほぼ完全に変性した線維(*)によって満されている.これらの変性線維は60-80Åの太さを有し,正常の張原線維(t)の太さ(40-60Å)に比較するとやや太い.さらにこれらの線維は大小の渦巻を作っている(曲矢).細胞膜は破れて消失しているので,これらの細線維塊が細胞外物質である可能性も考えられるが,細胞小器官の残存物(矢尻)が諸所に散在することから,張原線維の変性,または変性細胞による異常な線維産生の可能性が考えられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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