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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科33巻6号

1979年06月発行

雑誌目次

図譜・440

Benign Juvenile Melanomaの2例

著者: 境繁雄 ,   薄場真 ,   土井三乙

ページ範囲:P.464 - P.465

〔症例1〕
患者5歳,男児
 家族歴・既往歴特記すべぎことはない.

綜説

薬剤アレルギーの発症機構

著者: 村中正治

ページ範囲:P.467 - P.477

 ウサギ,モルモットなどの実験用小動物に薬剤たとえばスルピリンあるいはペニシリンをくりかえし注射しても,ヒトにおいてみられるような薬剤アレルギーが誘発される可能性はゼロに近いと考えられてきた.この‘いいつたえ’の背景に,これらの薬剤を根気よく動物に注射してもアナフィラキシーショックなどの薬剤アレルギーを誘発しえなかった多くの実験成績があったことはいうまでもない.しかし,それ以外に,Landsteiner,Eisen, Benacerrafらにより確立されたパプテン・担体系(hapten-carrier系)の抗原性に関する基本的な原則を,薬剤はDNP化合物などと同じく純粋な化学物質で免疫学的にはハプテンであるはずという理由から,薬品のもつ抗原性についても無条件に拡大解釈していた事実を否定することはできない.
 図1,図2はハプテン・担体系の抗原性に関する法則を図示したものである.ハプテンにはそのもの単独では動物に抗体を産生させる能力(免疫原性,immunogenicity)も,アレルギー症状を誘発させる能力(アレルギー原性,eliciting allergenicity)もない.蛋白質のような高分子化合物(担体,carrier)と化学的に共有結合のような強固な結合をしたときはじめて免疫原性もアレルギー原性ももつに至る.

原著

水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症の1例—とくに尿素軟膏治療前後の電顕的観察について

著者: 伊藤雅章 ,   高橋省三 ,   諸橋正昭 ,   佐藤良夫

ページ範囲:P.479 - P.488

 水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症の14歳,女子例を報告した.治療として10%尿素軟膏による外用療法を約2ヵ月間施行した.この治療前後の皮膚病変部の生検材料を採取し,これらを光顕的,電顕的に観察し,尿素の角化機構に及ぼす影響を微細構造的に比較検討した.治療前では,定型的な本症の所見を示したが,治療後では,治療前に比し,光顕的にケラトヒアリン顆粒の減少と微細化,電顕的に張原線維凝集塊の減少と萎縮像,ケラトヒアリン顆粒の減少と縮小を認めた.尿素の角層のみならず,有棘層,顆粒層への影響が推察された.

高齢男子におけるSLEの1例

著者: 内田博子 ,   福原俊子 ,   志村葉子 ,   千葉紀子 ,   星賢二 ,   染谷一彦

ページ範囲:P.489 - P.493

 症例は71歳男子,入院約1ヵ月前頃より,全身倦怠感,左手背の皮疹が出現し,全身へ拡大したため当科へ入院した.臨床症状,および検査所見よりSLEと診断し,Predniso—lone 40mg/日の投与を開始した.治療により改善傾向がみられたが,減量に伴い発熱,間質性肺炎を生じ,入院後2ヵ月で死亡した.老齢者におけるSLEの特異的な臨床症状,発症,予後について,および老化と免疫現象との関連を含めて文献的に考察し,報告した.

Herpetiform Pemphigus Vulgarisの1例

著者: 甲原資秀 ,   西川武二

ページ範囲:P.495 - P.498

要約 60歳,女性.2年前歯科治療後口腔に限局したびらんが出現し,治癒傾向なく,初診の約半月前から全身に瘙痒と遠心性に拡大する紅斑が出現した.同時に環状配列を示す水疱の出現をみた.胸部の水疱,背部の紅斑の生検において共に基底層直上の水疱形成をみ,背部の紅斑には軽度ながらeosinophilic spongiosisが認められた.螢光抗体直接法では表皮細胞間にIgG,C3の沈着が認められ,血中天疱瘡抗体は10倍陽性であった.DDS 75mg/日の治療を開始したところ皮疹は著明に改善し,天疱瘡抗体はまもなく陰性化した.DDS内服により一時血清GOT値,GPT値の上昇を認めたため,少量のプレドニソロン内服に変更.経過は順調で治療開始後約1ヵ月で粘膜疹を除いて軽快した.初診より約10ヵ月後の現在,口内に軽度のびらんをみるのみで寛解状態にある.尋常性天疱瘡ではあるが,発疹が多彩な点,DDSに反応した点からherpetiform pemphigus vulgarisとした.

DDSが有効であったBullous Pemphigoidと考えられる1例

著者: 浪花志郎 ,   原紀正 ,   岡崎泰典

ページ範囲:P.499 - P.503

 臨床,病理組織学的ならびに免疫組織学的所見から,水疱性類天疱瘡と考えられた1例で,DDSが有効であった例を報告した.本症に対するDDSの作用機序について文献的に若干の考察を加えた.

多発性皮膚平滑筋腫—4例の報告と本邦例の集計

著者: 仲弥 ,   木村俊次

ページ範囲:P.507 - P.513

 多発性皮膚平滑筋腫の4例を報告した.第1例は37歳家婦,5年来左側上肢・前胸部に米粒大までの丘疹多発.自発痛,圧痛なし.子宮筋腫の合併あり.第2例は41歳女,10年来左前胸部,背部に淡紅色の小豆大までの丘疹多発.自発痛,圧痛なし.第3例は65歳男,25年来左肩に,10年来左顔面,左前腕に碗豆大までの丘疹多発.寒冷時疼痛,圧痛あり.第4例は39歳女,15年来左前胸部に丘疹多発.自発痛,圧痛なし.4例とも組織所見にて平滑筋線維束の増殖を認めた.以上の4例を含めた本邦例29例につき若干の文献的考察を試み,女子例では子宮筋腫の合併率が高いことを指摘した.

爪甲下黒色腫の8例—本邦報告例の統計的検討

著者: 小幡正明 ,   加藤泰三 ,   清寺真

ページ範囲:P.515 - P.521

 爪甲下黒色腫の自験例,8例を報告し,これに本邦報告例39例を加え,統計的検討をおこなった.悪性黒色腫全体に占める頻度は2.9%であるが,1969年以降では,その5.1%を占め,増加の傾向にある.受診時平均年齢は54.0歳.第1指・趾発生例が37例,80%であった.爪に色素沈着が先行した例が21例あり,これらでは平均13.0年,例外的に長い2例を除くと平均8.3年で黒色腫の発症をみている.抜爪を含め,28例,60%に外傷の既往があった.以上の統計的観察に,自験例の臨床的,組織学的所見を加え,PSM melanomaの1つとして報告した.

足底の悪性黒色腫—自験16例を中心として

著者: 細川倫子 ,   加藤泰三 ,   清寺真 ,   阿部力哉

ページ範囲:P.523 - P.528

 1966年から1978年10月までに当教室で経験した悪性黒色腫のうち,足底に出現したもの16例を中心として,主に統計的に検討した.これら16例の初診時平均年齢は63歳,男女比は11:5と男に多かった.発生部位は踵9例,趾基部および趾腹5例,土ふまず付近2例であり,14例が右足に出現していた,また11例に外傷や小範囲切除の既往が認められ,部位的特異性が腫瘍の進展に影響を及ぼすことがうかがわれた.
さらに組織学的所見も含めて,足底の悪性黒色腫の臨床的特徴について述べた.

悪性黒色腫27例の臨床的,組織学的および免疫学的検討

著者: 土屋喜久夫 ,   深谷徹 ,   小林仁 ,   青柳俊 ,   金子史男 ,   三浦祐晶 ,   杉原平樹 ,   大浦武彦

ページ範囲:P.529 - P.537

 27例の悪性黒色腫をUICC (1968年)のTNM分類に従って分類し,病態の程度により3段階に分け,段階ごとに臨床的組織学的特徴,免疫学的動向を検討した,TNM分類(1968年)は,死亡例についてみるかぎり予後との相関関係を示したが,原発病巣の型,侵襲レベル,リンパ球の浸潤程度などの臨床的組織学的特徴の検討は,予後の判定をより正確にすることから,1978年のTNM分類はより実用的である.また原発巣除去例の分類は,1968年のTNM分類では不充分であり,さらに検討を要する.また部位別にみると,頸部より上方部に発生した場合に予後が悪い.経時的免疫状態を検討したところ,死亡例では種種の免疫療法にもかかわらず免疫状態の経時的低下をみた.

講座

SSSSをとりまく諸問題(Ⅱ)

著者: 平山芳

ページ範囲:P.538 - P.546

診断名について
 現在SSSSとかSTENとかいわれているDENと同一性状の疾患であろうと考えられるこの剥脱性皮膚炎については必ずしも統一された診断名はない.
 特にその原因が黄色ブ菌の感染によるものであるということが明らかでなかった1966年〜1967年までは報告者によっていろいろな診断名が使用されていた.その主なものを列記すると次のごとくである.

連載 皮膚病理の電顕・6

皮膚結合織の病変(VI)—PUVAとCYTOID BODYアミロイドのまとめ

著者: 橋本健

ページ範囲:P.548 - P.551

PUVAとCYTOID BODY
 図13A Psoralenを投与した患者に長波長(320−400nm)の紫外線(UVA)を照射して乾癬を治療する方法,すなわちPUVA療法を施すと,表皮基底細胞の細線維性変性(filamentous degenera—tion)が起こり,光顕的には扁平紅色苔癬のそれと区別できないcytoid body (矢尻)が表皮下層—真皮上層にかけて出現する.本図ではPAS染色を示した.この染色性はヂアスターゼ消化によって消失しない.すなわちcytoid bodyは中性ムコ多糖類を含む.クリスタル紫で弱い異染性を示し,アルカリ性コンゴ赤に淡染するものがある.すなわちアミロイドの組織化学的特性も示す.
 本図ではcytoid bodyの集塊が表皮基底層から真皮上層にかけてみられるが,PASに染まる基底膜(BL)がこの附近で破壊されているので,これらの小体が表皮内にあるのか,或は既に真皮に落下しているのかは不明である.小体1コ1コの大きさは附近の基底細胞の大きさとほぼ同一で,前者が後者の変性によって生じたと考えても無理がない.P:真皮乳頭

これすぽんでんす

「Sezary症候群への移行の考えられた菌状息肉症の1例」を読んで/りぷらい

著者: 服部瑛

ページ範囲:P.552 - P.552

 セザリー症候群と菌状息肉症との関連性については,以前より多くの議論がなされている.従来より菌状息肉症は,その経過の中には紅皮症型と呼ばれる臨床像が認められており,Reedら1)は,そういったタイプに異型細胞の出現を報告している.Clendenningら2)は,文献学的および自己症例について検討し,セザリー症候群は皮膚の形態,症候,組織学的にも菌状息肉症と区別することは困難であり,セザリー症候群というclinical entityに疑問を投げかけている.さらに最近ではmycosis細胞およびセザリー細胞がともにT細胞由来であることが明らかになるにつれ,両疾患がcutaneous T cell lymphomaとして包括されようとしている3).こうした経緯から,両疾患の類縁性ないし同一性が示唆され,さらにlymphomaというカテゴリーの中で再検討されるべき時期にあると思われる.
 井村氏は,「Sezary症候群への移行の考えられた菌状息肉症の1例」(本誌,33;141,1979)の中で,当初菌状息肉症の臨床,組織像を呈し,経過中に紅皮症皮膚症状と皮膚および末梢血中にセザリー細胞様の細胞の出現をみた事実から,セザリー症候群へ移行したと考えた貴重な症例について述べておられる.ところで,上述のごとく菌状息肉症のある病像とセザリー症候群との区別が,臨床,組織あるいは電顕学的にも明確にされていない現在,菌状息肉症がセザリー症候群へ移行したとする根拠に多少不明な点があるように思われる.たとえば,菌状息肉症が紅皮症の臨床を呈し,皮膚,末梢血中にセザリー細胞の出現をみた場合をセザリー症候群と考えるとしても,それはあくまでも菌状息肉症の白血化した1つの病像として考えた方が理解しやすいように思われる.著者の御意見をお聞かせ下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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