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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科33巻7号

1979年07月発行

雑誌目次

図譜・441

爪下外骨腫

著者: 境繁雄 ,   一柳一朗 ,   大竹進 ,   薄場真

ページ範囲:P.564 - P.565

患者18歳,女性
 家族歴・既往歴特記すべきことはない.

綜説

蕁麻疹

著者: 矢村卓三

ページ範囲:P.567 - P.572

 蕁麻疹はいろいろな原因によっておこってくるが,その診断は一般に容易である.それは内,外の多くの原因に対しおこる皮膚の血管反応で,何れもその局所血管の,一過性透過性亢進により,血漿が真皮内に流出しておこる現象である.

原著

日光過敏性を伴う皮膚粘膜ヒアリノージスの1例

著者: 佐藤寿之 ,   石橋明 ,   谷川久彦

ページ範囲:P.575 - P.585

 日光過敏性を伴いβ-カロチンが著効を示したがポルフィリン体は検出されなかった22歳男子例を報告した.幼時には特徴的な眼瞼縁の数珠状丘疹がなく,外傷後の肥大瘢痕を思わせる皮疹が主であって,先天性表皮水疱症と診断されたこともある.
生検組織の脂肪染色,嗜銀染色,電顕所見から,本症は線維芽細胞全般の異常ではなく,平滑筋細胞およびそれに近縁の細胞(周波細胞,汗腺筋上皮細胞,一部の線維芽細胞(myofi—broblast?)),血管内皮細胞,神経周膜細胞,シュワン細胞など,基底膜をめぐらす一連の細胞の代謝異常により,基底膜物質(ⅢないしⅣ型コラーゲンを含む糖蛋白?)が蓄積して正常膠原線維に浸潤し漸次置換されてゆく現象が本症のヒアリン化で,そのための環境条件の異常ないし通過障害によって2次的に石灰の析出,脂質の沈着を来たす一種の遺伝性結合織代謝異常症と考えられる.

特発性陰のう石灰沈着症

著者: 宮地良樹 ,   青島敏行

ページ範囲:P.587 - P.589

 23歳の男子にみられた特発性陰のう石灰沈着症の1例を報告した.沈着物質のX線微量回析では,燐酸カルシウムが主成分と判明した.本邦で報告された陰のう石灰沈着症の多くは,特発性陰のう石灰沈着症の範ちゅうに入るのではないかと推察した.本症の特徴として,1)血中Ca, Pが正常であること,2)のう腫壁を有しないで直接結合織と接すること,3)異物反応が少ないこと,を挙げた.

Cutaneous Calculusの7例と皮疹の成立機序について

著者: 手塚正 ,   大熊守也 ,   山崎紘之 ,   平井玲子 ,   小宮久尚 ,   米原勝久 ,   宮本博泰

ページ範囲:P.591 - P.602

 Cutaneous calculusの7例,単発6例,多発1例,計12個の皮疹を皮疹の時期別に組織化学的検索を行い更に極く初期の皮疹を電顕的に検討した.乳頭下層にヘパリチン硫酸を多量に含む微細顆粒状物質塊がみとめられ,電顕的にこの物質塊中およびその周囲に脱顆粒したマスト細胞が沢山存在した.Ca++の結晶状物質が間質およびマスト細胞の脱顆粒した顆粒上に沈着しているのがみとめられた.これはSelyeのいうmastocalcergyの機序によって石灰化が生じたものと思われる.マスト細胞のdepleterとして,蚊のエキスに対する皮内反応が陽性であったので蚊の刺螫によって生じたアレルギー反応が考えられた.

最近経験したDiabetic Dermadromesの3例—特にlatentおよびchemical diabetesとしての考え方

著者: 北村啓次郎 ,   橋本隆 ,   栗原誠一 ,   真海文雄

ページ範囲:P.603 - P.612

 第1例,46歳女.項部〜肩部の持続型浮腫性硬化症.尿糖(−),FBS 77mg/dl,50g-OGTTは境界型,30'ΔIRI/ΔBS 0.42なるもsteroid-GTTでは糖尿病型で30'ΔIRI/ΔBS 0.098.第2例,42歳男.両手腕,頸項部,顔面,胸部に多発する播種状環状肉芽腫.尿糖(−),FBS 105mg/dlなるも100g-GTTで糖尿病型,30'ΔIRI/ΔBS 0.19.第3例,72歳男.頭頂〜側後頭部の膿瘍性穿掘性頭部毛嚢周囲炎.尿糖(+++)74g/day, FBS 258mg/dl, 100g-GTTで30'ΔIRI/ΔBS 0.11.インスリン注によりそれまで極めて難治性であった化膿巣は速かに消褪治癒した.
 以上3症例は各々latent chemical diabetes, chemical diabetes, overt diabetesに合併した皮膚病変と考えることができ,いずれも皮膚病変から糖尿病を発見しえたものである.糖尿病早期発見のためには尿糖(−),FBS正常でも100g-GTT, Steroid-GTTさらに30'ΔIRI/ΔBS値を検索すべきことを強調し,持続型浮腫性硬化症および播種状環状肉芽腫と糖尿病の合併につき考察し,前者におけるムチン沈着は常に認められるとは限らぬことを述べた.

Dupuytren病—高齢女子糖尿病患者に発生した1例

著者: 影下登志郎 ,   阿部重夫 ,   小野友道

ページ範囲:P.613 - P.617

 糖尿病を伴う70歳女性に発生したDupuytren病,Palmar fibromatosisの1例を報告,本症が糖尿病のdermadromeの1つと考えられることを述べた.

血管平滑筋腫—血管腔に富む1例の報告と最近18年間の教室例の検討

著者: 木村俊次 ,   甲原資秀 ,   籏野倫

ページ範囲:P.619 - P.625

1)56歳家婦右前腕に生じた本症の1例を光顕的および電顕的に観察した.腫瘍は下部で静脈と思われる中等大の血管と連続性を示した.腫瘍本体は多数の管腔を有し,1層の内皮細胞がこれをとり囲み,さらにその外側に類円形〜長円形の核を有する腫瘍細胞が密に増殖して索状をなす.腫瘍細胞は組織化学的に平滑筋細胞に一致する所見を呈し,また電顕的に紡錘形〜不整形で,平滑筋細胞の超微構造を示した.内皮細胞は一般に腫大し,大小の空胞形成を示した.
2)昭和35年から52年までの18年間に慶大皮膚科で経験された14例の本症について検討したところ,従来と同様の傾向が見出された.
3)類似した組織構築を示す血管平滑筋腫,グロムス種瘍および血管外皮細胞腫の3瞳瘍について,相互の関連性を確認した.

下腿の有棘細胞癌に水疱性皮疹を合併した1例

著者: 佐藤幸子 ,   笠井達也

ページ範囲:P.627 - P.631

 下腿の巨大な有棘細胞癌に起因したと考えられる非特異的水疱性皮疹を呈した1例を報告した.患者は63歳男子で,ほぼ全身に激痒を伴った環状に配列する小水疱性皮疹が認められた.この皮疹は臨床的にはジューリング疱疹状皮膚炎に最も近似していたが,組織学的には棘融解を伴わない表皮内水疱で,eosinophilic spongioseを伴い,螢光抗体法による免疫組織学的所見も非特異的なものであった.皮疹はDDSにきわめてよく反応したが,完全消退にはいたらず,左下腿の巨大な有棘細胞癌の治療の目的で行った患側下腿の切断後に,完全に消褪した.

癌性変化をきたしたOral florid papillomatosis

著者: 田村晋也 ,   北村啓次郎 ,   籏野倫

ページ範囲:P.633 - P.637

 58歳男性の口腔内に多発性の疣状腫瘤が見られ,臨床及び組織像よりOral floridpapillomatosis (OFP)と診断した.しかるに病巣部の一部(左上顎歯齦部)に扁平上皮癌の組織像を認め,入院後の検査にて左上顎洞にX-P上腫瘍の浸潤像が発見された.扁平上皮癌が歯齦粘膜より生じたのか,あるいは上顎洞粘膜より生じたのか,組織学的には確認できなかったが,手術時の所見よりOFPの一部が癌性変化をきたし上顎洞へと浸潤したものと考えられた.治療としてブレオマイシン総量300mg静注を行うとともに扁平上皮癌のみられた左上顎部は左上顎部分切除術を施行し以後経過良好である.本症の悪性変化と類症について若干の文献的考察を行うとともに,OFPは良性の乳頭腫症あるいは偽癌症とするより前癌状態として取り扱うべきものと考えた.

興味ある組織像を示した陰茎癌の1例

著者: 北村啓次郎 ,   田村晋也 ,   木村俊次 ,   籏野倫 ,   杉浦丹 ,   中村絹代

ページ範囲:P.639 - P.645

 61歳男子の陰茎亀頭尖端,外尿道口を含む部位に誘因なく3〜4年前から紅色肥厚症様紅斑を認め,約1年前からびらん形成,さらに病巣内に結節を生じるとともに急激に鼠径部リンパ節へ転移し,遂には全身転移のため死亡したと思われる例を報告した.
本例はその現病歴および初診時臨床像に注目して紅色肥厚症が浸潤癌となり全身に転移したものと考えられた.しかるに組織学的に紅色肥厚症としての所見に乏しく,腫瘍細胞の主体は脂肪染色弱陽性の澄明細胞であったため診断が容易でなかったが,電顕的に腫瘍細胞内にトノフィブリル,デスモゾーム様構造が認められたこと,主腫瘍に連続した辺縁部表皮が肥厚し,そこにdyskeratosis, abortive squamous pearl-like formationを伴う表皮内癌の所見が見られたことより,本例は陰茎の未分化扁平上皮癌と診断された.また確証は困難であり,当初から陰茎癌であったとする考えも否定し得ないが,上記所見を根拠に本例を紅色肥厚症より進展したものと推論することもできる.紅色肥厚症が全身転移して死亡した例は極めて稀と思われる.

講座

SSSSをとりまく諸問題(Ⅲ)—宿主側についての検討

著者: 平山芳

ページ範囲:P.646 - P.655

 前回はSSSSから分離された細菌についていろいろな検索をおこなったが,今回はSSSSの症例について宿主側の臨床的検討をおこなった結果について述べてみたい.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.655 - P.655

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Comitteeから出された「International List or Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・7

皮膚病理の電顕・皮膚結合織の病変(Ⅶ)—コロイド変性(1)〜(3)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.656 - P.660

コロイド変性(1)
 図15 膠様稗粒腫.皮膚のコロイド変性には膠様稗粒腫(colloid milium)と局面型コロイド変性(colloid plaque)の2型を区別している.後者は稀であり,結節型(nodular)あるいは腫脹型(tume-factive)のアミロイド症と混同されている可能性もある1,2),前者は顔面,耳,手背などの日光照射部位に好発し,特に米国南部の老人(白人)に稀でない.臨床像は半透明,アメ色の集簇した丘疹が局面を作る.メスを入れると"コロイド"状の半透明な物質を圧出することができる.図15Cにみられる如く,コロイド圧出後の皮膚は萎縮を示す.自覚症状は全くないが,時に皮下出血斑を示す.これは血管周囲の支持組織が破壊され,軽度の打撲などにより血管の破綻が容易に起こるためである.鑑別診断には日光性弾力線維症(actinicelastosis),ザルコイド,L型癩などを考慮する必要がある.
 本症が長期にわたる紫外線の照射により起こることは間違いない.おそらく真皮に到達し,結合織の変性を惹起する3)UV-A (320〜400nm)のためであろう.紫外線が病因の重要な因子であると考えられる理由は,本症がi)日光照射部位に限定して起こること,ii)メラニンによる防御の少ない白人に多いこと,iii)屋外労働者で中年以後に好発すること,などが挙げられる.筆者が報告した症例4)の1人は白人のタクシー運転手であったが,左ハンドルの米国車で左顔,左手甲が長年月,紫外線に曝露され,これらの部位が右顔,右手甲に比較してより広範な,高度の病変を示していた.

印象記

第1回国際毛髪研究会議印象記

著者: 佐藤信輔 ,   橋本謙

ページ範囲:P.662 - P.665

 今冬のヨーロッパ大陸は暖冬の日本とは反対に寒波に見舞われており,西ドイツのハンブルグ市でも3月とはいえようやく残雪が消えかかっているが,ときおり吹雪が舞い,市中心に位置するアルスター湖では一部凍結しているという厳しい気候です.
 さてこのドイツ北部の古くからの港町ハンブルグ市において3月13日より16日までの4日間にわたり第1回毛髪研究会議が開催され,日本からも22名ほどの参加者がありました.この学会の正式の名称は"1stInternational Congress of HairResearch—Status and Future Asp-ects—Hamburg"です.

第78回日本皮膚科学会に参加して

著者: 矢村卓三

ページ範囲:P.666 - P.668

 第78回日本皮膚科学会総会および学術大会が快晴に恵まれた4月11日〜13日の3日間,久木田淳会頭(東京大学)のもとに,東京プリンスホテルで開催された.
 総会は初日の劈頭におこなわれ,定刻の午前8時30分,25名の会員出席者のもとに,委任状2,022名を加えて成立し,開かれた.皮膚科学会会員も今や4,000人を越え,最近は毎年200名前後の増加があり,次第にマンモス化の現象を呈してきた.総会は皮膚科学会の議決機関で,学術大会も重要であるが,少ない出席者で,盛り上がりの不足を感じた.いろいろな報告,議案が提出されたが,56年度会頭に水野信行教授(名古屋市大),皆見賞に小沢明氏(東海大)が選ばれた.提出された議案もそれそれ承認され,とくに第6号議案すなわち3年後に東京で開催される第16回国際皮膚科学会の組織,募金状況などが清寺事務総長より説明され,承認された.大変なことであるが,その努力が十分うかがわれた.何しろ総予算5億750万円で,2,000名の参加が予定される.とくに強調されたことは,日本皮膚科学会会員のため,日本語でも発表できるよう,そのため通訳費を余分に計上していると述べられたことである.国際皮膚科学会が日本で開かれるのははじめてのことであり,成功させたいものである.

薬剤

実験的皮膚炎症と抗プラスミン剤の効果

著者: 石原紘 ,   矢村卓三 ,   出来尾哲

ページ範囲:P.671 - P.677

 炎症という一連の現象は物理的,化学的因子,微生物の侵襲などの生体に有害な因子によって惹起される普遍的で複雑な個体の防御反応である.その発現機序は必ずしも同一ではないが,Celsusは炎症の症状は,発赤,腫脹,熱感,疼痛の4主徴よりなると定義しているが,この概念は現在でも広く用いられている.Aschoff1)らは炎症を病理学的に観察し,Materielle Affektionenは生体の間葉系における防衛反応であると考えた.またFlorey2)によって炎症は過程であって1つの状態ではないということが述べられ,現在も炎症は一連の連続した過程であると既に一般的に広く考えられている.
 1970年青木3)らは炎症過程を3期に分類し,第Ⅰ期は血管拡張と血管透過性亢進,第Ⅱ期は白血球遊走と細胞浸潤,第Ⅲ期は結合織増殖・血管新生・肉芽形成および再生修復によって特徴づけられるとした(図1).第1期にみられる現象の1つである血管透過性亢進の発現機序については1920年代になってDale4),Lewis5)らによって最初に研究され,ヒスタミンの関与に注目した.それ以後Van Menkin6)(1937年),Rocha e Silva7)(1949年),Miles & Wilhelm8)(1955年),Inderbitzen9)(1961年),Willoughby & Spector10)(1962年),Ratnoff11)(1965年),林12)ら(1966年),Chung13)(1971年)らによって生体にはヒスタミン以外にいくつかの血管透過性亢進物質が存在することが明らかにされた.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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