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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科33巻8号

1979年08月発行

雑誌目次

図譜・442

皮膚腺病

著者: 江竜喜史 ,   小菅一彦 ,   若松健一

ページ範囲:P.684 - P.685

患者58歳,女
初診昭和52年12月7日

綜説

皮膚メラニン機構について

著者: 清寺真

ページ範囲:P.687 - P.696

 1961年,我々はメラノサイト内でのメラニン生成機構について,メラノソーム(Melanosome con—cept)1)という仮説を提案した.一方共同研究者であったDrs. Pathak, Szaboなどと日光照射後の皮膚色素の増強機構について仕事をしている間に,ヒトの皮膚の色がいろいろと変化する際には,単にメラノサイトでのメラニン生成のみでなく,皮膚全体のメラニン代謝機構について考慮しなければならないことに気がついた.すなわち日光照射により皮膚の色が濃くなった時,皮膚には樹枝状突起のよく発達したメラノサイトの出現,活性メラノサイトの増加,表皮基底並びに有棘細胞のメラニン含有量の増加などの変化が起こっている.特に日焼けによる褐色の色素沈着ではその濃淡は表皮細胞に含まれるメラニンの量に左右されることが明らかとなった.
 1963年Fitzpatrickはこの表皮内メラニン代謝の機構をepidermal melanin unit2)とよんだ.近年私は,皮膚におけるメラニンの代謝には病的状態に見られる色素失調状態に出現するスレート色の色素沈着の機序:メラニンの真皮への移行,消失,を加え皮膚メラニン機構(skin melaninunit)3)と一括するのがよいと考えている.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.696 - P.696

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Comitteeから出された「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

原著

遺伝性対側性色素異常症と色素性乾皮症の異同について

著者: 佐藤吉昭 ,   吉田正己

ページ範囲:P.699 - P.702

 小児dyschromatosis symmetrica herediataria 3例の臨床像,光線テストおよびDNA修復能を含む諸検査成績を,同年齢層のいおゆるdefective typeの色素性乾皮症患者18例のそれと比較検討した.その結果,両疾患の間には色素異常を除き,共通する所見は全くみられなかった.とくにdyschromatosisでは光線過敏と,それによる特有の皮疹がみられないこと,また眼症状,難聴,心身発育の遅延ないし障害などもみられず,加えて不定期DNA合成能からみた修復異常も認められなかったことから,両症は本質的に全く異なる疾患であろうと考えた.

薬剤により発症したImmunoblastic Lymphadenopathyの1例

著者: 玉置昭治 ,   楢原朝博

ページ範囲:P.703 - P.709

 再発する全身性紅斑ないしは紅斑性丘疹,発熱,リンパ節腫大,肝脾腫,高γ—グロブリン血症をきたしリンパ節生検像にてimmunoblastの増生,内膜の肥厚した毛細血管の増生及び酸性無構造物質の沈着を示したImmunoblastic lymphadenopathyの1例を報告した.
再発する皮疹のうち3度は薬剤使用との関係が明らかであり,薬剤の使用期間及び臨床経過より皮疹は薬疹と診断し,本症例の誘因を薬剤過敏によるものと推定した.
免疫学的検索より高γ—グロブリン血症,Ig-G, Ig-M高値,Coombs' tset直接法陽性,DNCB感作未成立,PPD, PHA皮内テスト陰性,PHA-blastformation低直,Ig-E高値と単なるB-cell系のhyperimmuneというよりT-cell系の異常を伴うB-cellに対する抑制機構の低下した状態と理解したい.

持久性隆起性紅斑—症例報告ならびに免疫病理学的考察

著者: 末次敏之 ,   風間敏英 ,   石橋芳男

ページ範囲:P.711 - P.714

 症例は41歳,女性.約1年半前から左肘頭部に紅色小結節が出現し,次第に中央部が自潰,瘢痕治癒した.以後,両肘頭部に同様の丘疹が出没した.4〜5年来,関節痛があり,現在う歯多数.紅織像は,壊死性血管炎と著明な線維化を示した.検査上,異常所見なし.螢光抗体法で血管壁にIgG, IgA, IgM, C1q,フィブリンの沈着を観察.本症は,その発生にアルサス型アレルギー反応の関与が考えられ,発生機序に於て皮膚アレルギー性血管炎と軌を一にし,傷害因子に対する個体の感受性,組織のprocess等の差異により,特有な臨床像を呈する一疾患と考えられた.そしてHutchinson型に於ける個体の感受性,組織processは,Bury型に比して皮膚アレルギー性血管炎により接近しているため,両者の移行・重複の可能性があり得ると推察された.

最近7年間の伝染性膿痂疹の統計的観察

著者: 馬場えつ子 ,   安江隆

ページ範囲:P.715 - P.719

 最近7年間における伝染性膿痂疹の実態を統計的に観察し検討した.
1)伝染性膿痂疹は,暑い時期に多発し,7〜9月に最も多かったが,年間を通じて発生がみられた.
2)伝染性膿痂疹は,幼児期(1〜4歳)に多発し,3歳児に最も多かった.
3) S.S.S.S.は夏から秋にかけて発生のピークがあり,伝染性膿痂疹に比較して,より若年者に好発する傾向があり,0歳児に最も多かった.
4)原因菌の86.6%が黄色ブ菌で,しかも年間を通じて黄色ブ菌が主原因菌であり,レンサ球菌は,ほとんど分離されなかった.
5)分離された黄色ブ菌が最も高い感受性を示した抗生物質は,CEX, DOTC, MNCであった.一方,EMやCERに対する耐性菌は増加の傾向にあり,通常のPC剤に対しては,80〜90%が耐性であった.

手掌・指腹の角質増殖型皮膚カンジダ症の2例

著者: 滝沢清宏 ,   日野治子 ,   関利仁 ,   小川喜美子 ,   溝口昌子

ページ範囲:P.721 - P.728

 表在性皮膚カンジダ症の中で稀な病型である手掌・指腹の角質増殖型カンジダ症の2例を報告した.
自験2例とこれ迄の本邦報告例について検討した結果,この病型は手指爪甲カンジダ症を合併する型と合併しない型に,更に前者は慢性粘膜皮膚カンジダ症の一部分症状として生ずる場合としからざる場合に分類できるものと考えられる.

巨大潰瘍を形成したスポロトリコーシスの1例—自験例を含む本邦報告例の文献的考察

著者: 谷井司 ,   泉谷一裕 ,   庄司昭伸

ページ範囲:P.729 - P.735

 68歳,女性の左前腕に5.9×4.6cmの巨大な潰瘍を形成したスポロトリコーシスの1例を報告した.径の積4以上の潰瘍を形成したスポロトリコーシスは本邦においては昭和40年から昭和52年までに計44例の報告があり,それらを統計的に考察した結果,50歳以上が44例中28例と高齢者に多く,初発部位は44例中26例と前腕に多く,潰瘍形成部位も44例中32例と前腕に多く,皮疹発生から初診までの期間が7ヵ月以上のものが38例中19例と長いものが多い,などの特徴がみられた.

Elephantiasis Nostras

著者: 大熊守也 ,   岸本武 ,   中野朝益 ,   平井玲子 ,   山崎紘之 ,   手塚正

ページ範囲:P.737 - P.740

 75歳主婦,13年前子宮頸癌根治手術放射療法をうけ,続発性リンパ浮腫より生じた象皮病(国内性)の患者で両下肢に著明な線維性増殖がみられ,時々急性結合組織炎をおこす.乳び尿はない.blue dyeテスト,RISAクリアランスはいずれも異常を示し,IgG,IgAの高値がみられ,CRP+4であった.組織学的には真皮の肥厚,線維化,リンパ管炎,膠原線維のヒアリン化が認められた.電顕的には,膠原線維の走行がまちまちになっていた.治療は,波動型マッサージにて試みたが,自覚症状の改善以外,下肢の太さや皮膚表面温度に変化はなかった.

電紋を認めた頭部電撃傷の1例

著者: 工藤昌一郎 ,   宮本裕 ,   小野友道 ,   門脇義博 ,   花宮秀明 ,   勝屋弘忠

ページ範囲:P.741 - P.745

 著明な電紋を認めた2歳11ヵ月男児の頭部電撃傷症例を経験したので,その臨床経過及び治療について報告する.電紋は一般に雷撃傷ではよく見られるが電撃傷ではきわめてまれで,本邦では過去10年間に3例4,7,12)の報告があるが頭部におけるものは本症例のみであった.また,幼児の電撃傷はほとんどが電気のプラグを喰わえることにより発生したもので,本症例の如く変電所内にもぐり込み遊んでいるうちに高圧電流に触れ,しかも救命しえた例はきわめてまれである.以下過去10年間の5歳以下の小児電撃傷,成人をも含めた頭部電撃傷およびその治療そして電紋について若干の文献的考察を行った.

採皮部に対するLyophilized Porcine Skinの使用

著者: 滝内石夫 ,   樋口道生 ,   清佳浩

ページ範囲:P.747 - P.751

 熱傷患者に41名のallogeneic skin graftを施行するにさいし,全てのdonorの採皮部にlyophilized porcine skin (L.P.S.)を使用し全経過を追いえた34名について記載した.通常の経過は2週間目より3週間目の2度目の来院時にL.P.S.は極めて簡単に剥れるか,痂皮が取れるが如く剥れ表皮はすでに再生されていた.疼痛は12例が訴えたが,強い痛みを訴えL.P.S.の除去により疼痛の消失した2例以外は,10例ともL.P.S.のズレによるものとか,軽微なものであり,L.P.S.は疼痛に対して極めて有効であった.また広範囲に融解を来たした例は4例みられた.L.P.S.の適応部位には採皮部が最適と思われる.

講座

SSSSをとりまく諸問題(Ⅳ)—SSSSとDrug TENの鑑別

著者: 平山芳

ページ範囲:P.752 - P.762

 1956年Lyell3),Lang and Walker4)らがTENおよびその類症とおもわれる疾患を初めて発表し,特にLyellはこの疾患の原因を表1のごとく考えでいた.
 ところが1966年Tyson10),Holzel9)らがこの疾患の病巣からstaphylococcusを分離したことから原因の一部にstaphylococcalなものがあるのではないかと考えはじめた.

連載 皮膚病理の電顕・8

皮膚結合織の病変(Ⅷ)—膠様稗粒腫(1)(2)光線性弾力線維症(1)(2)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.766 - P.772

膠様稗粒腫(1)
 図17 コロイドをやや強拡大で観察していこう.本図は図4, 10より拡大が大きいが,線維成分を探すのに苦労する.コロイドの主な成分が無構造物質であることが明瞭であり,アミロイド様線維は皆無か,極く稀である上図では多数の膠原線維が変性に陥っている像(矢印)も観察できる.コロイドの膠原線維由来が考えられる理由である.一方,別の見方も可能である.すなわち,増加してくるコロイドに浸潤されて,以前から存在した正常な膠原線維が変性に陥りコロイドの一部となっていく像とも解釈できる.しかし,病巣より圧出したコロイドを蛋白分析にかけると膠原に特異的なhydroxyprolineは0で(同時に分析した真皮には117/1,000 residue)1),少なくとも膠原の直接分解物がコロイドの主成分ではないことがわかる.さらにdisc electrophoresisではαトロポコラゲンより分子量の小さいと考えられる分離帯がコロイドに特異的にみられる.この物質の分子量は15,000 daltonでいわゆるstructural gly—coproteinと呼ばれる結合織成分1)のそれに一致し,アミノ酸分析の結果もこの糖蛋白の組成に非常に類似している1).電顕像でみる無定型物質がそれなのか,或は固定脱水操作中に流出し,我々はその残滓を眺めているのかは不明であるが,コロイドが主として膠原線維の崩解物でないことは確かであろう.糖質の分析でもグルコースは0.1%しか含まれておらず,膠原の0.4%に比較して少ない1).また上図挿入図と下図で更に拡大を上げると,無定型物質の中に少数ではあるが細線維が混在している.しかしこれらの線維(矢尻)は太さこそ6〜10nmの間にありアミロイド線維と一致するが,直線的で剛直な感じを与えない(図6参照).
 上図で崩壊しつつある膠原線維の混在を観察したが,下図では細胞突起,あるいは細胞小器官の崩壊物(*)もみられる.下図左上端の崩壊物は膜で限界され(m),内部にも膜様構造がみられるので,恐らく糸粒体の変性物であろう.下図右上端の構造には限界膜(m)しかみられず,糸粒体の更に変性したものか,あるいは細胞突起の膜だけ遺残したものとも考えられる.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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