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文献詳細

雑誌文献

臨床皮膚科33巻8号

1979年08月発行

連載 皮膚病理の電顕・8

皮膚結合織の病変(Ⅷ)—膠様稗粒腫(1)(2)光線性弾力線維症(1)(2)

著者: 橋本健1

所属機関: 1

ページ範囲:P.766 - P.772

文献概要

膠様稗粒腫(1)
 図17 コロイドをやや強拡大で観察していこう.本図は図4, 10より拡大が大きいが,線維成分を探すのに苦労する.コロイドの主な成分が無構造物質であることが明瞭であり,アミロイド様線維は皆無か,極く稀である上図では多数の膠原線維が変性に陥っている像(矢印)も観察できる.コロイドの膠原線維由来が考えられる理由である.一方,別の見方も可能である.すなわち,増加してくるコロイドに浸潤されて,以前から存在した正常な膠原線維が変性に陥りコロイドの一部となっていく像とも解釈できる.しかし,病巣より圧出したコロイドを蛋白分析にかけると膠原に特異的なhydroxyprolineは0で(同時に分析した真皮には117/1,000 residue)1),少なくとも膠原の直接分解物がコロイドの主成分ではないことがわかる.さらにdisc electrophoresisではαトロポコラゲンより分子量の小さいと考えられる分離帯がコロイドに特異的にみられる.この物質の分子量は15,000 daltonでいわゆるstructural gly—coproteinと呼ばれる結合織成分1)のそれに一致し,アミノ酸分析の結果もこの糖蛋白の組成に非常に類似している1).電顕像でみる無定型物質がそれなのか,或は固定脱水操作中に流出し,我々はその残滓を眺めているのかは不明であるが,コロイドが主として膠原線維の崩解物でないことは確かであろう.糖質の分析でもグルコースは0.1%しか含まれておらず,膠原の0.4%に比較して少ない1).また上図挿入図と下図で更に拡大を上げると,無定型物質の中に少数ではあるが細線維が混在している.しかしこれらの線維(矢尻)は太さこそ6〜10nmの間にありアミロイド線維と一致するが,直線的で剛直な感じを与えない(図6参照).
 上図で崩壊しつつある膠原線維の混在を観察したが,下図では細胞突起,あるいは細胞小器官の崩壊物(*)もみられる.下図左上端の崩壊物は膜で限界され(m),内部にも膜様構造がみられるので,恐らく糸粒体の変性物であろう.下図右上端の構造には限界膜(m)しかみられず,糸粒体の更に変性したものか,あるいは細胞突起の膜だけ遺残したものとも考えられる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1324

印刷版ISSN:0021-4973

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