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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科33巻9号

1979年09月発行

雑誌目次

図譜・443

Hydroa Vacciniforme(Bazin)

著者: 木村恭一 ,   福代新治 ,   窪美規子

ページ範囲:P.786 - P.787

患者13歳,女
初診昭和53年3月18日

綜説

顆粒変性を示す皮膚疾患

著者: 広根孝衛

ページ範囲:P.789 - P.799

 最近皮膚科領域において,既知疾患の病態の解明と新疾患の発見がそれらを含む1群の疾患の概念の修正にまで及んだところがある.そのよい事例が組織学的に表皮細胞の顆粒変性を示す1群の皮膚疾患である.この綜説では,この種の疾患の性質を説明するための症例をあげ,それらの組織像および電顕像の特徴を示し,また自験例および文献例に基づいて疾患の概念の変遷について述べる.さらに,この種の疾患を分類し,予測される新疾患についても言及する.

原著

Duhring疱疹状皮膚炎様水疱形成をみた膠原病の1例

著者: 折原俊夫 ,   倉繁田鶴子 ,   行木弘真佐 ,   石川英一

ページ範囲:P.801 - P.807

要約 Duhring疱疹状皮膚炎様皮疹をみた膠原病の1例を経験した.患者は31歳女性で,レイノー現象と眼瞼・下腿の浮腫で発症し,その後,時に発熱,全身倦怠感を伴った,上記症状の初発から約半年後に,ほぼ全身に瘙痒を伴うDuhring疱疹状皮膚炎様皮疹が出現した.組織学的に表皮下水疱を主とし,真皮に好中球,好酸球浸潤をみた,ヨードカリパッチテスト陽性.しかし螢光抗体直接法では,皮疹部・無疹部とも基底膜部に一致して帯状のIgG,IgA,IgM,C3の沈着があり,表皮核に顆粒状のIgG沈着もみられ,免疫組織学的にmixed connective tissue disease類似の所見を呈した.臨床検査では,貧血,白血球減少,高γ—グロブリン血症,尿蛋白1〜5g/日の他,ANF 640倍(speckled pattern),抗ENA抗体30,000倍(RNase抵抗性)であった.LE細胞,天疱瘡抗体,抗基底膜抗体は,いずれも証明できなかった.

全身性エリテマトーデス—Evans症候群からwide spread DLEを経てSLEへ移行した症例

著者: 風間敏英 ,   萩原民郎 ,   末次敏之 ,   野津立秋 ,   鶴岡延熹

ページ範囲:P.809 - P.814

 29歳,男性.昭和44年(皮膚科初診の7年前),鼻出血に始まり,47年,特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の診断にて摘脾術施行.50年,下痢等の消化器症状と赤血球抗体が出現し,自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の併発と考えられ,Evans症候群と診断.51年10月,汎発性にdiscoid型皮疹が出現し,11月,皮膚科を受診.組織学的に典型的DLEの像,螢光抗体直接法では,皮疹部lupus band test(LBT)陽性,無疹部LBTは,陰性を示し,臨床,組織,螢光抗体所見からwide spread DLE(W-DLlのと診断.さらに3ヵ月後の52年3月,顔面の蝶形紅斑,精神障害が出現し,抗核抗体は陽性化(shaggy patten),ARA基準に従ってSLEと診断.組織学的にも典型的SLEの所見,LBTも皮疹部,無疹部ともに陽性.SLE発症1ヵ月後,急激に死の転帰をとった.本例は,ITPで発症し摘脾後,AIHAが出現.さらにW-DLEを経て急激にSLEに移行し,臨床的に多彩な病態を呈した点,興味ある症例と思われる.

Hallopeau型増殖性天疱瘡の1例

著者: 森口道子 ,   田上八朗 ,   青島忠恕 ,   大井正俊 ,   山田瑞穂

ページ範囲:P.815 - P.819

 症例は34歳,女.皮疹は口腔粘膜,頭部,腋窩,臀部に限局し,その主体は紅暈を伴う小膿疱であった.組織学的には,増殖性天疱瘡の像を示した.螢光抗体直接法で,表皮細胞間にIgG,C3の沈着を見,間接法で,天疱瘡抗体を証明した.この抗体価は,表皮細胞間にくらべ毛嚢上皮細胞間で高く,皮疹部位との関連性から興味が持たれた.
またHallopeau型増殖性天疱瘡に対して,この疾患は膿皮症であるという説も多く,本例で天疱瘡抗体を証明したことは,この疾患の病態を論議する際に重要な論点になると思われる.
治療は,副腎皮質ホルモン剤と金製剤を併用し,非常に良好な経過をとった.しかしその経過中に,白血球数増加,好中球核左方移動,異型単核球の出現を見,治療との関係が考えられた.

尋常性乾癬と類天疱瘡の合併例

著者: 木村恭一 ,   福代新治 ,   益田俊樹

ページ範囲:P.821 - P.825

 65歳女子,尋常性乾癬を有する患者に類天疱瘡を合併した1例を報告し,両者の合併例を文献から紹介した.ただし,自験例における合併の持つ意味については未だ不明である.

早死産後,脳症状を併発したヘルペス性歯肉口内炎

著者: 加賀美潔 ,   上田恵一 ,   西村彰文 ,   宮本宣博

ページ範囲:P.827 - P.832

 妊娠9ヵ月で早死産した35歳女子が産褥中に,歯肉口内炎に脳障害を併発し意識に混濁をきたしていたが,高熱に続いて全身の強直性痙攣発作を起こした.PSR,ASRの亢進など病的反射のほか,髄液の細胞数増多,糖の増加,EEGの異常を認め,口唇血痂からニワトリ漿尿膜上にpockを培養し,電顕でHSVであることを確かめた,対血清ではHSVに対するCF抗体が8倍から64倍に上昇していた.病極期にBUN,血中クレアチニン値の著明な上昇を来し,腎障害による脳症状も合併したと考えられた.
治療はVIG(Vaccinia Immune Globulin)を大量に筋注したが,何ら精神・神経学的後遺症を残すことなく治癒した.

橋本病を合併せる特発性Addison病(schmidt症候群)

著者: 吉村邦彦 ,   濱田稔夫 ,   森井浩世

ページ範囲:P.833 - P.838

 44歳,女.28歳頃より無月経となり,子宮萎縮を指摘された.約3年前より易疲労感があり,腋毛,陰毛の脱落も認められた.約3ヵ月前より顔面,頸部,乳暈,歯齦,手指及び上下肢の)関節部等に瀰漫性の黒褐色色素沈着が出現し,次第に増強して来た.上腕外側及び指掌皺壁の皮膚生検では基底層にメラニン顆粒が著明で,有棘層,角質層にわたっても瀰漫性に認められる.尿中17-OHCSは正常ないしやや低下する程度であったが,rapid ACTH test,ACTH-Z testともにほとんど反応がみられず,また副腎部石灰化像の所見もなく,特発性Addison病と考えられ,また甲状腺は瀰漫性に腫大し,抗microsome抗体が著明に上昇,抗thyroglobulin抗体も経時的に上昇し,またTSHも時に上昇をみることがあり,橋本病に相当するものと思われ,結局,本症例は橋本病を合併した特発性Addison病,すなわちSchmidt症候群に相当するものと考えられる.
治療としてhydrocortisone 1日20mgの連日投与で,易疲労感は間もなく改善され,治療開始5ヵ月目で全身の色素沈着もかなり消失している.併せて自己免疫の関与した多腺性内分泌失調の観点からも考察を加えた.

Maffucci症候群の1例

著者: 佐伯武彦 ,   堀真 ,   柳沢一明 ,   天本祐 ,   林田邦昭

ページ範囲:P.839 - P.843

 43歳,女性のMaffucci症候群の1例について報告した.この例では,左右前腕部から手指にかけての海綿状血管腫と手指骨の内軟骨腫がみとめられ,他に,左右舌縁部,肝,腎の血管腫および左下腿から足趾にかけてのリンパ管腫などの合併も認められた.
全身的な検索を施行したが,現在のところ悪性腫瘍の合併はみとめられていない.

講座

SSSSをとりまく諸問題(V)—治療,発症機序,細菌学領域におけるSSSSおよびexfoliatinに関する報告

著者: 平山芳

ページ範囲:P.844 - P.850

SSSSの治療
 SSSSは症状が著明で重症感があるわりに経過は短かし,予後が良いので治療には一般に苦労しない.われわれの症例のなかにはただ外用剤のみで早期に軽快した例もあり,報告では抗ヒスタミン剤内服と外用剤のみで容易に軽快したものもある.しかしSSSSがexfoliation産生黄色ブ菌の感染によって発症すると考えられていることから先ず抗生物質を第一選択に全身投与するのが最も適当な治療法であることは勿論であろう.
 外用剤は対症療法で良く,抗生物質や殺菌剤含有外用剤(ゲンタシン軟膏,バラマイシン軟膏,0.5%ピオクタニン亜鉛華硼酸軟膏など)を使用すれば良い.

連載 皮膚病理の電顕・9

皮膚結合織の病変(Ⅸ)—光線性弾力線維症(3)皮膚粘膜ヒアリノーシス(1)(2)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.852 - P.856

光線性弾力線維症(3)
 図22 変性した弾力線維様物質は最後にどうなるのであろうか? 本図と挿入図で示す如く電子密な部分が減少し,全体として中等度電子密な物質が主要な部分を占めるようになる.本図では中等度電子密な部分が依然として線維としての輪廓(*)を保持している.しかしその周囲から極く細い細線維がほつれ出している.これらの細線維は正常皮膚で弾力線維の出来始めにみられる微小細線維(microfibril)1)に類似するものもあるが(F),大部分は極めて細い(f),多くの極細線維はむしろコロイド物質中に少量混在する線維成分に類似する(図17,18参照).膠原線維が図の左側にみえているが全く正常で,塩基性変性に寄与している可能性は全く除外できる.したがって電顕像より判断すれば,膠原の好塩基性変性(basop—hilic degeneration of collagen)なる呼称は妥当ではない.図の右端に石灰沈着(C)が見える.電子密度が非常に高いほかに周囲鮮明で中心部にヒビ割れを生じ,hydoxyapatiteが抜けた跡がみえるので弾力線維の電子密部分と区別できる.
 一般に弾力線維は幼若なものほど微小細線維の量が多く,成熟するにつれて電子密な部分が増加し,老化すると線維全体として不整形を示し,骨格線維がバラバラになり,石灰沈着が起こるようになる2).これらの変化は病的な弾力線維の崩壊,例えば弾力線維性仮性黄色腫にもみられる所見である3,4)

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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