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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科34巻1号

1980年01月発行

雑誌目次

図譜・447

女子外陰部硬化性萎縮性苔癬

著者: 滝野長平 ,   所祥子 ,   御藤良裕

ページ範囲:P.6 - P.7

患者51歳,主婦
初診昭和51年2月17日

綜説

乾癬

著者: 戸田浄

ページ範囲:P.9 - P.15

 乾癬の発症機序とその確定的な治療法については定説はないが,ここ数年来新しい治療法が試みられ,その中で特にpsoralenと長波長紫外線UVAを使った治療法,いわゆるPUVA療法がその作川機序は不明のままに臨床治療効果が著しいということから米国,ヨーロッバで広く行われるようになった結果,その理論づけと,あわせて問題になっている発癌性にたいする検討も手伝って,発症機序にたいする研究が盛んになった.
 PUVA療法の問題は去る1975年のスタンフォードで開かれた国際乾癬学会で取上げられ,1978年のイスラエルの国際乾癬学会でも大きな問題として取上げられ,1977年ローマで開かれた国際光生物学会でもテーマの1つに取上げられた.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.15 - P.15

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「lnternational List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

原著

Cronkhite-Canada症候群の1例

著者: 原田玲子 ,   中山秀夫 ,   稲本伸子 ,   大久保忠成

ページ範囲:P.17 - P.23

 57歳,男子に見られたCronkhite-Canada症候群の1例.昭和50年夏,味覚障害,爪甲の萎縮・脱落,全身の色素沈着,頻回の軟便,脱毛が出現.精査の結果,貧血および胃から直腸にかけて多発性ポリープが見出された.51年10月胃亜全摘施行,蛋白同化ホルモン投与にて経過を観察していたところ,52年秋より低蛋白血症出現.一方,皮疹,軟便,味覚異常は53年春より軽快傾向を示す.
自験例では低蛋白血症出現前に皮疹が認められており,本症における爪,皮膚,毛髪の変化は低蛋白血症による二次的変化とはいい難い.
本邦における報告例を集計し,文献的な考察を加えた.

Livedo Reticularis with Summer Ulcerations

著者: 中林康青 ,   新村眞人 ,   堀嘉昭

ページ範囲:P.27 - P.32

 31歳,主婦にみられた典型的なLivedo reticularis with summer ulcerationsの1例を報告した.本症例は2年前より両下肢にlivedoと潰瘍が出現し,潰瘍は夏季に増悪,秋〜冬季になると軽快をみた.病理組織学的には真皮小血管壁の肥厚,内腔の狭小化,閉塞,硝子血栓および血管周囲に軽度のリンパ球を主とする細胞浸潤を呈し,血管壁にはIgM,β1Cの沈着をみた.一般検査では血沈値の亢進以外に異常所見はなかった.そこでFeldakerの記載した12例と自験例を含めた本邦定型例10例とを比較検討し.また本症とLivedo vasculitisとの異同について考えを述べた.

ライター病の1例

著者: 関利仁 ,   滝沢清宏 ,   石橋康正

ページ範囲:P.33 - P.37

 27歳,男.初診の4ヵ月前より,尿路症状を初発症状として発症する.眼症状は欠くものの,典型的な皮疹を認めるためライター病と診断した.HL-A B−27は陽性であった.
診断にいたる経過とライター病の病因について,若干の考察を加えて報告した.

D-ペニシラミンにより惹起されたHerpetiform Pemphigus様皮膚病変

著者: 小川秀興 ,   森岡真治

ページ範囲:P.39 - P.44

 63歳女性,慢性関節リウマチ治療中D-ペニシラミン長期内服により天疱瘡様皮膚病変を生じたので報告した.臨床像は初診時ジューリング疱疹状皮膚炎様ないし多形滲出性紅斑様を呈したが,免疫・組織学的には尋常性天疱瘡の所見と一致した.その臨床像からMarsdenらにならいherpetiform pemphigus様皮膚病変として記載しておきたい.水疱は,組織学的に棘融解像を伴った表皮内水疱で,螢光抗体法直接法で病変部表皮細胞膜(間)にIgG,C3の沈着を認めた.流血中の抗表皮細胞膜(間)抗体は5〜10倍と低値ながら陽性であった.自験例では,螢光抗体法自家間接法にて初めて抗核抗体(抗体価40倍)を検出し得たことと,天疱瘡様抗体価160倍以上の高値を示したことは極めて興味深い.D-ペニシラミンの化学構造,特性および表皮における-SH基,-S-S-結合の挙動分布,更には天疱瘡抗原の性状等を考え併せ,本剤による天疱瘡様皮膚病変の発症機序についての考察を行った.

胃癌と尋常性天疱瘡の合併した2症例

著者: 榛沢信子 ,   池谷田鶴子 ,   小川秀興

ページ範囲:P.45 - P.50

 尋常性天疱瘡と胃の腺癌が合併した2症例を報告した.1965年以降の本邦における同様な報告例を整理し,また国内外におけるこれら2疾患の因果関係を論ずる諸説を紹介した.これら想定される機序に基づいて,自験例についての検索を行ったが,2疾患の因果関係を積極的に証明する結果は得られなかった.なお,1例については交換輸血を行ったのでその効果についても述べた.

乳頭部微細膿瘍を示した水疱性類天疱瘡

著者: 久保俊子 ,   橋本公二 ,   西岡清

ページ範囲:P.51 - P.54

 59歳女性,全身にわたる永疱形成がみられ,皮膚生検にて表皮下水疱の形成,並びに好中球による乳頭部微細膿瘍の形成を認めた.しかるに螢光抗体直接法にて,基底膜部にIgG及びC3の沈着があり,螢光抗体間接法により抗基底膜抗体が証明されたので,組織学的にDuhring疱疹状皮膚炎様所見を示す水疱性類天疱瘡として興味ある症例と考えられる.治療はステロイド剤内服を行い,小康状態を得ている.

興味ある経過をたどった類天疱瘡の1例

著者: 木村恭一 ,   福代新治 ,   益田俊樹

ページ範囲:P.55 - P.60

 85歳,女子.約8年前,典型的類天疱瘡として発病したが,これが治癒した後は,皮疹が頭,頸部,臍窩等の5ヵ所に限局し,約6年間は症状が固定している.皮疹辺縁部で基底膜部にIgGとC3の線状沈着を認めたが,血中抗基底膜抗体は陰性であった.

ブドウ球菌性敗血疹の1例

著者: 武岡和仁 ,   長島正治 ,   柳沢厚生 ,   松井敬治

ページ範囲:P.61 - P.64

 34歳,男.虫刺による皮下膿瘍が敗血症にまで発展し,皮膚転移巣として腹部・両下肢に紫斑・膿疱が多発したプドウ球菌性敗血疹の1例を報告した.原発巣・流血中・骨髄・膿疱より黄色ブドウ球菌が培養され,いずれもコアグラーゼIV型であった.膿疱内には組織学的にもグラム陽性球菌が見出された.
CEC, CBPC, GM, CEXによる化学療法で皮膚転移巣は第4病日には消失,第35病日には全身状態・臨床検査成績も改善し退院した.

M.gypseumとT.rubrumによる重複感染の1例と,M.gypseumによる汗疱状白癬の統計

著者: 岩重毅

ページ範囲:P.65 - P.67

 著者は,今度22歳男子の右陰股部頑癬より,T.rubrum,左第IV趾間の汗疱状白癬よりM.gypseumが分離された重複感染の1例を経験した.
M.gypseumとT.rubrumとの重複感染(同時感染)は極めて稀であり,またM.gypseumによる汗疱状白癬も比較的少なく,文献によれば本邦においても現在までに僅か10例に過ぎないので併せて報告した.

講座

SLE (IV)—V.SLEの血管病変(1)

著者: 大橋勝

ページ範囲:P.68 - P.72

 SLEにみられる皮膚病変は紅斑であり,この皮疹は抗原抗体複合物(immune complex)によって生ずる皮膚の血管炎の結果であると一般的には考えられている.この考えに従えば,皮膚の血管でどのような病変が生じているかを知ることは,SLEでみられる血管障害に基づく多臓器障害を理解するためには必要であり,また皮膚科医がSLEの病態へアプローチする1つの方法と考えられる.多くの動物実験でのimmunc complexによる腎病変はSLEの腎障害との類似な病変が認められているが,皮膚病変を動物に作ることは困難である.したがって,皮膚病変を理解するためには人の正常皮膚の末梢血管系,特に微小循環系の正常な状態を知ることがまず必要であり,SLEの病変の解釈はこの上に立って行われる必要があると考えられる.これに加えて観察可能な他臓器での微小循環系の障害もまた参考となるであろう.ここでは光顕レベルの血管変化について述べ,次剛に電顕レベルでの血管病変を述べる.

連載 皮膚病理の電顕・12

付属器腫瘍(I)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.74 - P.77

 光顕による組織診断において,病理学者が確信をもって診断できる病変は限られている.たとえば血管炎などは臨床像の多様性にもかかわらず,血管周囲の白血球浸潤といった特異性の少ない,且つ共通な組織像しか与えない.
 これに反し,付属器腫瘍,特にその分化の進んだものでは,正常付属器官との類似,或は特異な紅織像により確定診断が容易である.しかし,未分化なものになると組織化学,電顕が必要となるし,組織発生の究明には皮膚における各種付属器の胎生発生に関する知識が不可欠となってくる.以下,数回にわたってこれらの興味ある問題を解説したい.

これすぽんでんす

三和氏らのReactive perforating collagenosisを読んで/Solitary trichoepitheliomaとtrichoblastic fibromaとについて

著者: 山崎雙次

ページ範囲:P.78 - P.78

 本症はperforating dermatosesの1つで極めて稀有な疾患であり,私自身このような症例の経験はないが三和氏らの著「リウマチ様関節炎患者にみられたReactiveperforating collagenosisの1例」(本誌,32;439-444,1978)を大変興味深く拝読させて頂いた.著者らはこれまで29例の報告がみられ,本邦では設楽らの報告がみられるのみとしているが,最近第77回日本皮膚科学会総会において町野ら1)の26歳男性例で幼児期より発症しているという報告がなされている.
 本症に関して問題となる点は病因である.Mehregan2)は小児に好発し家族内発生をみることから先天性基因を考えた.また寒冷の関与3),糖尿病4)などとの関連性を考えた報告とともに三和氏らはリウマチ様関節炎の結合組織病変に外力が加わり結合組織の変性をきたし経皮的排泄機構が働いた結果と推論している.さらに氏らの症例で注目されることは副腎皮質ホルモン剤を長期内服しており,そのための表皮の萎縮も本症の発症に関与している可能性もあり,さらにリウマチ様関節炎,糖尿病ではともに血管病変が知られておりnccrobiosisをおこす誘因として血管病変も無関係とはいえない点であろう.きらにまた本症を含むperlbrating dermatoses,湿疹,菌状息肉症,アミロイド苔癬,black heelなど種々の疾患にtransepithclial eliminationの現象が観察されている.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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