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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科34巻10号

1980年10月発行

雑誌目次

図譜・456

銀皮症

著者: 山本和子 ,   大熊憲崇 ,   岸山和敬 ,   水元俊裕

ページ範囲:P.902 - P.903

患者75歳,男
初診昭和52年12月20日

原著

Sjogren症候群の1例—扁平苔癬様皮疹を主訴とせる男性例

著者: 平井昭男 ,   加茂紘一郎

ページ範囲:P.905 - P.908

要約 症例,73歳男性.ほぼ全身の瘙痒性皮疹を主訴として来院.皮疹は,全身に散布性に存在する扁平苔癬様皮疹と四肢の紫斑とから成る.口腔粘膜疹も存在.四肢関節痛および口腔乾燥感を著明に訴えることからSjogren症候群を疑い精査,本症候群の存在を確認した,他の白己免疫疾患の合併はない.自験例のごとく皮膚症状として扁平苔癬様皮疹を伴うSjogren症候群はその例をみず,かつ男性例である点は注目に値する.かかる例を報告するとともに皮膚科学的な立場から若干の考察を試みた.

神経鞘腫—その2例と本邦皮膚科領域における報告例の総括

著者: 奥田長三郎 ,   竹内誠司 ,   佐藤信輔 ,   猪股成美 ,   岡吉郎

ページ範囲:P.909 - P.914

 多発性ならびに単発性神経鞘腫の各1例を報告し,本邦皮膚科領域で発表された神経鞘腫63例と併せて統計的観察を行った.自験多発例では皮膚以外の部に腫瘍の存在を疑わせる所見がなく,また頭部腫瘍の被覆皮膚の一部に上皮性奇形を伴った腫瘍が見られた.統計上では皮膚の多発性神経鞘腫は従来考えられていたほど稀ではなく,かつ圧倒的多数が男子であった.また多発型は単発型に比して発症年齢が低く,しかも他臓器の腫瘍を合併する例が多いことが注目される.これらの点から多発性神経鞘腫は一種の母斑症とすべきものではあるが,神経鞘腫以外に所見のない症例はRecklinghausen母斑症とは区別すべきであると考えた.

特異なHalo Nevus—特にその成立機序の想定

著者: 増澤幹男

ページ範囲:P.915 - P.919

 57歳の女性の右眉毛内下側に生じた白色のC型母斑細胞よりなるNevus nevocellu—laris partim lipomatodesを中心母斑とし,炎症性変化を伴わずSutton現象を示した特異なHalo Nevusを報告した.さらに右鼻唇溝下縁にA, B及びC型母斑細胞よりなるintrader—mal typcのNevus nevocellularis partim lipomatodesがあり,このことから白験例の成立機序として,Sutton現象を伴いつつA及びB型母斑細胞が消失してこの特異なhalo nevusが生じたと考えた.

Zosteriform Lentiginous Pigmented Nevusの1例

著者: 堀嘉昭 ,   高田温子

ページ範囲:P.921 - P.925

 10歳男子の左側胸部から上腹部にかけて,左上肢の肩から手に至る部分,および頸部から背,腰部に至る部分の左側に帯状に淡褐色斑をみとめ,その淡褐色斑内に直径約5mm,黒色円形,扁平ないし軽度隆起性の色素斑を散在性にみとめた.
組織学的に小黒色斑は境界型あるいは複合型の母斑細胞母斑であり,淡褐色斑で表皮突起の延長,表皮メラノサイトの増加,表皮基底層のメラニン色素の増加がみとめられた.
電顕的に淡褐色斑では表皮細胞内melanosome complexが増加し,包含するメラノソームの数も正常色部のそれに比して多い.
このような症例は稀であり,内部臓器の異常を伴う可能性が考えられたが,検索した限りでは自律神経の過緊張以外に異常をみとめなかった.

Plantar Fibromatosisの1例

著者: 清水宏 ,   栗原誠一 ,   木村俊次 ,   加茂紘一郎

ページ範囲:P.927 - P.931

 症例,52歳男子.初診,昭和54年6月7日.特別な誘因なく,数年前より両側足底に皮下腫瘤出現.組織学的にplantar fibromatosisと診断した.本症は組織学的には,線維芽細胞および膠原線維の増生を主体とする瘢痕組織様線維増殖で,手掌に生じるpalmarfibromatosisと基を一にする疾患である.一般に手掌に生じた例では,手指の屈曲拘縮を伴う場合が多く,これはDupuytren拘縮としてよく知られている.一方足底に生じた例では,かかる拘縮を伴うことが極めて稀とされ,医治をうける機会は決して多いものではない.
著者らは,電顕的にも検索した本症の1例を報告するとともに,その呼称をpalmar and/or plantar fibromatosisに統一すべきであるとの結論を得た.

側頸嚢胞の1例

著者: 福田金壽 ,   斉藤一義 ,   池田重雄

ページ範囲:P.935 - P.940

 46歳,主婦.12年前に左側頸部にクルミ大の皮下腫瘤出現し,近医にて結核性リンパ節炎と診断され半年間内服療法を受けたが腫瘤の縮小はみられなかった.その後某大学病院外科にて摘出術を施行された.最近,前回の手術創下に超鶏卵大の皮下腫瘤が再び出現したため,再度摘出術を施行された.腫瘤は胸鎖乳突筋前縁と顎二腹筋後腹との間に囲まれ下床では周囲結合組織,迷走神経,内頸静脈との癒着が高度で剥離は困難であった.腫瘤を1魂として完全摘出後腫瘤内容の一般細菌培養および結核菌培養検査を行ったが共に陰性であった.組織学的に嚢腫内腔は重層扁平上皮と円柱上皮と多列線毛上皮の3種類の上皮により被覆され,上皮下には,芽中心を有するリンバ小節が孤立性にあるいは集簇性に認められた.術後4ヵ月後経過観察中であるが腫瘤の再発はみられない.

興味ある組織像を呈した汗器官腫瘍の1例

著者: 村木良一 ,   栗原誠一

ページ範囲:P.941 - P.946

 78歳女子の下口唇に生じた直径9mm,中心部に潰瘍を伴う淡紅色,示指頭大の単発性腫瘤につき病理組織学的に検討した.腫瘍は大小の嚢腫状,管腔様構造および充実性巣状胞巣からなる実質と結合織の増殖した間質からなり,周囲の正常組織との境界は明瞭であった.また,実質の構成細胞としてclear cellと上皮様細胞の2種が認められた.以上のような組織像から組織学的にclear cell syringomaとしての特徴を多分に有した真皮内汗器官(とくにeccrine系)の良性腫瘍と考えられた.森岡・三島の分類ではeccrine ductadenomaの範疇に属するかと思われたが,eccrine duct epithcliomaとしての特徴も一部に認められた.かかるclear cutには分類困難な腫瘍について,その臨床および組織像の詳細を記録にとどめておくのも意義あることと思われる.

アポクリン汗腺癌—Apocrine Spirocarcinomaと考えられる1例

著者: 斎田俊明 ,   土屋真一

ページ範囲:P.947 - P.953

 66歳の女の左腋窩に生じた略鳩卵大の紅色隆起性腫瘤.組織学的には充実性胞巣が真皮浅層から深部にまで密に存在,腫瘍細胞は大型の多角形細胞で,エオジンに淡染する豊富な胞体と異型性の強い大型の核を有している.PAS染色とAlcian blueは,ごく一部の細胞にのみ陽性.酵素組織化学的には,ほぼ典型的なapocrine系のパターン.電顕的にはmicrovilli,分泌顆粒,細胞間分泌細管などが認められたが,tonofilamentはほとんどみられない.これらの諸所見を総合して,本腫瘍をapocrine汗腺の分泌腺細胞に由来する癌,即ち三島らの分類におけるapocrine spirocarcinomaであると診断した.apocrine汗腺癌の分類および乳房外Paget病との関係などにつき,若干の考察を加えた.

Eccrine Ductocarcinomaの1例

著者: 斎田俊明 ,   石原明徳

ページ範囲:P.955 - P.960

 66歳男の前頭部に生じた10数年の経過を有する略鳩卵大の結節.被覆表皮は略正常で,結節は皮内から皮下にかけて触知される.組織学的に腫瘍細胞は比較的小型の立方形状細胞で,はっきりとした異型性が認められる.真皮中層以下深部にまで,大小種々の胞巣をなして増殖している,胞巣の形状は多彩で,浸潤性増殖のみられる大型のものから小型索状で管腔形成傾向の顕著なものまで種々の所見を呈する.胞巣内外には線維化傾向が目立ち,一部には多量の粘液様物質も存在していた.これらの細胞形態学上,組織構築上の特徴から,本腫瘍をエックリン汗器官の真皮内汗管部に相当する癌,即ち三島らの分類におけるeccrine ductocarinomaであると診断した.エックリン系"汗腺癌"の本邦報告例をまとめ,また分類法その他について2,3の問題点を指摘した.

手指の爪甲下悪性黒色腫の手術例—指列切断術について

著者: 大原国章 ,   松川中 ,   余幸司

ページ範囲:P.961 - P.964

 手指の爪甲下悪性黒色腫の2例を報告し,その手術法—指列切断術—について述べた.本症に対する手術療法としては,metacarpo-phalangeal jointでの関節離断と,中手骨をも含めた指列切断術が推奨されており,両者の比較検討を行って筆者の考え方を示した.

Leser-Trelat Signの1例

著者: 黄十糸子 ,   犬井三紀代 ,   三重野寛治 ,   瀬戸輝一

ページ範囲:P.965 - P.968

要約 76歳,男性.痛風,狭心症様発作のため内服加療中に,瘙痒を伴う紅斑が出現した.薬剤変更,副腎皮質ホルモン内服にて軽快するもやがて再発を繰り返し,1ヵ月でほぼ全身に拡大したため当科受診,入院となった,皮疹は多形滲出性紅斑様で全身に及び,融合一致して鱗屑を伴っていた.これらの紅斑は再燃する際には,全身に多発する老人性疣贅の周囲より生ずる傾向がみられた.老人性疣贅は紅斑出現と時期を同じくして急に数,大きさとも増したという.この所見はLeser-Trélat徴候と一致するものと考え,精査したところ早期胃癌が発見された.胃部分摘除術を施行したが,術後経過が思わしくなく死亡した.剖検所見を記載し,若干の考察を行ったので報告する.

Sezary症候群の1例—E rosette形成能を失ったSezary細胞

著者: 西尾千恵子 ,   山家英子 ,   堀越貴志 ,   小笠原実 ,   陳博明

ページ範囲:P.969 - P.974

 多発性丘疹を伴ったほぼ全身の瀰漫性紅斑と末梢血中に異型リンパ球(22%)を認め,半年後に腫瘤形成と共に末梢血中の異型リンパ球の急激な増加をみたSezary症候群の1例を報告した.Sezary細胞はErosetteを形成せず,いわゆるnull cellであるが,抗ヒト末梢T細胞血清と特異的に反応し,T cellと考えられる.Sezary細胞のE rosette形成能の消失,および本症にみられる細胞性免疫の低下につき述べた.

Pagetoid Reticulosis(Woringer-Kolopp Disease)

著者: 丹野和穂 ,   高橋博 ,   長尾貞紀 ,   飯島進 ,   富樫良吉

ページ範囲:P.975 - P.982

 61歳,女.4年来躯幹,四肢に手拳大から小児頭大の軽度浸潤ある褐色局面を生じた.表在リンパ節・肝脾腫大なし.末梢血液像正常.組織は表皮内に限局して異型単核球の顕著な増殖あり.真皮は小円形細胞の非特異的浸潤のみで異型細胞なし.表皮内増殖細胞は電顕上cerebriformの核を有するSezary cell様細胞であり,膜性状はE rosette形成細胞が93%を占めT cellと思われた.本症は近年mycosis fungoidcsとの関係が注目されているが,自験例から本症はmycosis fungoides近似のT cell増殖症と考えた.

成人T細胞性白血病の1例

著者: 服部瑛 ,   斎藤義雄 ,   石川英一 ,   宮脇修一

ページ範囲:P.983 - P.989

 75歳,男性のT細胞性白血病の1例を報告した.自験例は群馬県生まれで74歳で発症し,発症後11ヵ月で死亡した.皮疹として多発性皮膚結節を認め,組織学的にリンパ球のびまん性浸潤と表皮内微細膿瘍形成をみた.さらに肝,脾,リンパ節腫大を伴い,骨髄への腫瘍細胞浸潤を認めた.腫瘍細胞と目される異型リンパ球は多形で,免疫細胞学的にT細胞の性格を示した.しかしながら他方,自験例は皮膚科的に従来の白血病性皮膚細胞肉腫症に合致する症例で,最近提唱されたcutaneous T-cell lymphomaとも類似点がある.

B細胞由来悪性リンパ腫の1例

著者: 内山安弘 ,   服部瑛 ,   前田秀文 ,   石川英一

ページ範囲:P.991 - P.996

 86歳,男子の右側胸部に皮膚腫瘤を認め,のちに胸水貯留を来たした悪性リンパ腫の1例を報告した.組織学的にいわゆるmixed cell typeの像を示した.皮膚組織より浮遊させた細胞および胸水浸潤細胞についての膜表面形質の検索では,EACロゼット形成および表面免疫グロブリン(IgM)陽性細胞が過半(52%ないし55%)を占め,それより少数のEロゼット形成細胞を認めた.この所見は凍結切片で抗ヒトT-cell抗体を用いた免疫組織学的検査でも確認された.光顕および電顕的に,EACロゼット形成細胞は大型,異型の核を有していたのに対し,Eロゼット形成細胞は小型で異型性を欠いていた.以上の所見より,本症例はB-cell由来の腫瘍細胞に,Tリンパ球の反応性増加が加わった悪性リンパ腫と考えた.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.982 - P.982

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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