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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科34巻11号

1980年11月発行

雑誌目次

図譜・457

尋常性狼瘡

著者: 江竜喜史 ,   山下紘一

ページ範囲:P.1006 - P.1007

患者71歳,男
初診昭和53年3月3日

原著

Pyo-(Rhino)-Blepharo-Stomatitis Vegetans McCarthy-Hornsteinの1例

著者: 工藤忍 ,   永島敬士

ページ範囲:P.1009 - P.1014

 22歳,男子,12歳の時に発症した上下口唇紅の結痂性びらん,出血,両鼻側眼球結膜の充血と翼状片を認め,翼状片手術後に両側上下眼瞼部皮膚に潰瘍を伴う肉芽種様病変を生じ齲歯の根治治療とDDS,硫酸亜鉛内服,ステロイド剤外用によりほぼ完治したPyo-(Rhino)-Blepharo-Stomatitis Vegetans McCarthy-Hornsteinの1例を報告した.本症は増殖性天疱瘡Hallopeau型の口腔病変とも考えられているが,流血中抗天疱瘡抗体陰性,表皮細胞間抗体1陰性であり,棘融解像を欠き,末梢血および組織のエオジノフィリー,DNCB感作不成立,ステロイド有効等の事実と文献的にも潰瘍性大腸炎,他部の膿疲症の合併頻度が高いことから,感染アレルギーないし免疫機能の不全が発症に関与すると推測され,本症が壊疽性膿皮症に近縁な膿皮症の1型と考えた.

尖圭コンジローム—有茎性乳頭腫の形で単発した1例の報告と教室例の臨床的・光顕的・電顕的観察

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.1015 - P.1020

 78歳男,右陰嚢前面に有茎性乳頭腫の形で単発した尖圭コンジロームの臨床・組織・電顕所見を報告し,併せて最近20年間に慶大皮膚科で臨床的・組織学的に尖圭コンジロームと診断された本症例を除く19例についても臨床・病理学的および電顕的に観察・検討を行った.78歳男例の組織像は定型的で,電顕的にもヒト乳頭腫ウィルスに一致する構造を認めた,教室例19例中有茎性乳頭腫で単発したのは僅か1例で,しかもその症例は付近にいわゆるmulticentric pigmented Bowen's diseaseを合併していた.組織学的には定型疹の他,アカントームとしかいえない初期の小皮疹も認められた.電顕的観察は4例について行ったが,表皮上層ケラチノサイトの核・細胞質の浮腫・膨化と核周囲の空胞化とが特徴的であった.表皮基底板の連続性はいずれも保たれていた.

Trichophyton violaceumによる小水疱斑状白癬の1例—自験例を含む本邦報告例の文献的考察

著者: 庄司昭伸 ,   古川雅祥 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.1021 - P.1025

要約 小児の顔面に発生したTrichophyton(T. と略)violaceumによる小水疱斑状白癬単独例の1例を報告するとともに,T. violaceum感染症について統計学的に考察した.患者は3歳,女児で左眉部から左鼻部にかけて数個の瘙痒性皮疹が存在するのみで他の部位に皮疹はみられなかった.培養の結果,集落は表面湿潤性で紫色を呈し,顕微鏡所見からもT. violaceumと同定した.また,T. violaceum感染症を文献的に検討したところ,昭和28年までは頭部浅在性白癬が大部分であったが,それ以後は減少の傾向を認めた.一方,昭和44年以後におけるT. violaceum感染症の調べ得た計54例中,小水疱斑状白癬単独例の報告は6例,そのうち感染部位が顔面であった症例は4例で,小水疱斑状白癬単独例の好発部位として顔面が考えられる.年齢的には12歳以下40歳以上に多いという2峰性を示し,この傾向はMicrosporum canis感染症と酷似している.

Black dot Ringwormの1例—本邦25症例の統計的考察

著者: 笹川和信

ページ範囲:P.1027 - P.1032

 関西地方で第1例目の,black dot ringwormの病型を示す4歳男子の症例を経験し,病毛よりTrichophyton glabrumを分離した.頭部病変部のblack dotは,毛内寄生菌により破壊された毛髪が頭皮表面で切断された結果だけではなく,病毛がカール状になっているのがより特異的であった.現在まで本邦で報告された25症例の文献的考察では,罹患年齢の分布が若年層と高年層の2峰性を示すこと,性別で男子(20%)より女子(80%)が優位を示すことなどが特異的であった.

Arthroderma vanbreuseghemiiによるケルスス禿瘡の1例

著者: 渡辺晋一 ,   滝沢清宏 ,   飯島正文 ,   関利仁 ,   西本勝太郎

ページ範囲:P.1033 - P.1039

 Arthroderma vanbreuseghemiiは1973年高塩によってTrichophyton mentagro—phytes complexの完全形(perfect state)として報告されたものだが,本邦ではA.van—breuseghcmiiによるケルスス禿瘡を臨床的に詳細に報告したものはない.我々はSLEの経過中生じたケルスス禿瘡より得た分離菌がA.vanbreuseghemii"+"株だったので,その詳細を報告した.症例は29歳の女性.11年前発症したSLEのためステロイドの内服及び外用療法をうけていたところ,ケルスス禿瘡,両手背に小水疱性斑状白癬が生じた.分離菌はいずれもT.mentagrophytes (asteroides)で,A.vanbreuseghemiiのtestcr株との間で交配試験を行った結果,A.vanbreuseghemii"+"株と同定された.あわせてA.vanb—reuseghemii感染症の本邦報告例について若干の文献的考察を加えた.

頭毛に寄生したPhthirus pubis(ケジラミ)の2症例

著者: 頓宮廉正 ,   安治敏樹 ,   原田正和 ,   頼俊雄 ,   村主節雄 ,   稲臣成一

ページ範囲:P.1041 - P.1043

 Phthirus pubisの寄生が近年特に幼児に於いて散見されるようになった.これの感染経路としては従来からいわれている海外より輸入したものが子供に感染する他,集団生活の中での感染あるいはペットからの感染が考えられる.今回の2例はめずらしく乾燥した環境である頭毛に寄生し,症例2からは卵骸のみであったが症例1からは虫体6匹を認めた.治療は卵と虫体の除去に加え25%Benzyl-benzoateを毎日洗髪後,1週間連続塗付して駆除した.

リウマチ結節—当教室経験10症例の検討

著者: 荒木由紀夫 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.1045 - P.1052

 昭和41年以後14年間に当教室で経験したリウマチ結節10症例14検体について,臨床及び病理組織学的に検討した.結果の概略は成書の記載に一致したが,1)慢性関節リウマチ(RAと略)以外の膠原病(SLE,MCTD,CRST症候群)においてもRAの際と同様の「リウマチ結節」が発生すること,2)環状肉芽腫様の臨床・組織像を呈する「皮内型リウマチ結節」が存在することの2点を強調した.

尋常性乾癬にゲッカーマン療法施行中に生じた"Follicular Eczema"に類似した毛孔性角化性丘疹

著者: 江川政昭 ,   石原紘 ,   稲田修一

ページ範囲:P.1053 - P.1056

 30歳,男性の尋常性乾癬の患者にゲッカーマン療法を施行中,躯幹,頸部,上肢に,頂点に面皰様の黒褐色の点をもつ粟粒大の赤褐色の毛孔性丘疹が播種状に生じた.組織学的には毛孔内の過角化と角栓形成,毛嚢周囲の浮腫と炎症性細胞浸潤が認められた.原因として,コールタールと紫外線による皮膚傷害が考えられ,その臨床像はFollicular ec—zemaの類型と非常に類似していた.

膿疱性乾癬として発症し乾癬性関節炎を継発した1例

著者: 竹松英明 ,   五十嵐稔 ,   舛眞一 ,   富田靖

ページ範囲:P.1057 - P.1061

 35歳,女性.14年前副腎皮質ホルモン剤内服による汎発性膿疱性乾癬発症,以後発熱とともに四肢関節の発赤,腫脹,疼痛を繰返している.手および足の諸関節では慢性関節リウマチに酷似した変化,脊椎ではL4-5に強直性脊椎炎でみられるmarginal syn—desmophyte以外にnon-marginal syndesmophyteがみられる.乾癬における関節症状の発症に若干の考察を加えて報告した.

全身性鞏皮症における色素沈着及び脱失について—表皮メラノサイトの態度

著者: 堀嘉昭 ,   中林康青 ,   飯島正文 ,   土田哲也 ,   久木田淳

ページ範囲:P.1063 - P.1068

 全身性鞏皮症の色素沈着(増強)部及び色素脱失部の組織化学的,電子顕微鏡的観察によって,色素沈着部では表皮メラノサイトの胞体は大きく,樹枝状突起はよく発達し,ゴルジ体もよく発達しており,メラノソームの産生は極めて活発である.一方,色素脱失部ではドーパ反応陽性の表皮メラノサイトは極度に減少ないし完全に消失し,電顕的に観察すると,僅かに残存する表皮メラノサイトのメラノソームの産生は減少し,表皮ケラチノサイト内melanosome complexは全く消失しているか,あってもごく少数であった.

限局性強皮症—教室例の臨床的ならびに免疫病理学的検討

著者: 村木良一 ,   栗原誠一 ,   西川武二 ,   籏野倫

ページ範囲:P.1069 - P.1073

 最近約11年間に当教室で経験した限局性強皮症49例の臨床的検討を行い,若干の病型分類上の問題点を指摘し,また,一部の症例では臨床像と免疫学的検索から病因についても言及した.自験例49例は臨床像から斑状−17例,帯状−10例,線状—(剣傷状—)11例,滴状強皮症3例および多発性モルフェア8例に分類された.その際標準的な教科書の分類を比較すると,帯状—,線状—および剣傷状強皮症の解釈,多発性モルフェアの解釈に相違がみられた.多発性モルフェアでは3/8例にリウマチ反応陽性,3/6例に抗核抗体陽性を認め,臨床的に小白色硬化斑を有する症例に陽性傾向が大であった.螢光抗体直接法による皮疹部免疫グロブリン沈着の有無を検索したところ,線状強皮症2/2例,多発性モルフェア1/3例に皮膚基底膜部にIgM沈着が陽性であった.限局性強皮症では多発性モルフェアのみならず,線状強皮症においても免疫異常の可能性が示唆された.

Warty Dyskeratomaの1例

著者: 村田英俊 ,   松尾忍 ,   水元俊裕 ,   大河原章

ページ範囲:P.1075 - P.1078

 29歳,男性の前額部に出現したwarty dyskeratomaの1例を報告した.家族には,Darier病やHailey-Hailey病はない、初診の約10ヵ月前に,中心の陥凹した自覚症状のない小結節が出現し,放置していたところ,次第に増大した.組織像は,cup shapedinvaginationが見られ,基底層直上部に裂隙を生じ,この裂隙には絨毛の突出を見,grainsおよび,corps ronds様のacantholytic Clyskeratotic cellが多数存在する.本邦における報告例を集計し,文献的な考察を加えた.

成人型Xanthogranuloma—Xanthogranuloma教室例のまとめ

著者: 禾紀子 ,   山崎雄一郎

ページ範囲:P.1079 - P.1083

 18歳女子に発生した単発性Xanthogranuloma (XG)の1例を報告した.1〜2年前より右腋窩部に発生したもので,直径5mm,半球状に隆起した弾性硬の帯黄色腫瘤で,血清脂質値は正常範囲内であった.組織所見では,表皮直下より真皮中層にかけて組織球,泡沫細胞,リンパ球様細胞からなる稠密な細胞浸潤にTouton型巨細胞もみられ典型的な像を呈した.あわせて,当教室において過去10年間に経験されたXG 26例について検討したところ,成人例が5例認められた.さらに調べ得た本邦・海外の成人型XGの報告例15例と合わせて20例について,Juvenile xanthogranuloma (JXG)と比較した.その結果,基本的には両者に大差はなかったが,成人型XGでは内外で男女を問わず単発が多い点,またRecklinghausen母斑症,Cafe-au-lait spot等の合併皮膚疾患が少ない点でJXGと異なった.

粘液水腫性苔癬

著者: 細井洋子 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.1085 - P.1090

要約 43歳男.約2年前より後頭部,項部に自覚症状のない黄褐色蠟様光沢を有する丘疹が集簇して生じ,臀部では散在性に生じている.一般臨床検査成績では軽度肝機能障害を示す以外に特に異常なく,甲状腺機能を含め内分泌学的検査にも異常を認めない.皮疹の組織学的検査で真皮上層に著明な浮腫および膠原線維の断裂,離開を認め,その部分にムチン物質の沈着がみられ,粘液水腫性苔癬と診断した.なお,本症例は手指関節背面にknuckle pads様皮疹を多数みとめたが,組織学的検査では真皮下層に限局して幼若膠原線維の増殖のみでムチン沈着はみられなかった.あわせて,本症例の臨床像,組織像および病因等について若干の文献的考察を行った.

Hyperkeratosis Lenticularis Perstansの2例—特にその異常角質形成について

著者: 手塚正 ,   山崎紘之

ページ範囲:P.1091 - P.1099

 53歳,および51歳女性の両手背足背踵部にみとめられたHyperkeratosis lenticula—ris perstansの2例を報告した.組織学的にOrthokeratotic Hypcrkcratosisを主とし一部Parakeratosisを伴っていた.HE染色で角層は異常な染色態度を示した.表皮はテント状に挙上し,真皮にリンパ球を主とした細胞浸潤をみとめた.電顕的にケラトヒアリン顆粒の減少,層板顆粒の消失,Marginal Bandの一部消失がみられた.尿素軟膏処置後新生した皮疹で層状構造の消失した小空胞が産生され細胞膜と融合している所見をみとめた.本症に特有の硬い棘状の皮疹は,1)デスモソームの解離が生じないこと,2) Glycocalyxによる細胞壁の結合,3)角層水分保持能の低下,4)脂質膜未形成のために水分に対するBarrierの欠損一水分透過の尤亢進,のために過角化した角層が過度に乾燥するために生じると考えられた.

Gronblad-Strandberg症候群にみられたPerforating Pseudoxanthoma Elasticum

著者: 大熊憲崇 ,   岸山和敬 ,   大河原章 ,   酒井忠一 ,   矢崎康幸

ページ範囲:P.1101 - P.1105

 典型的な弾力線維性仮性黄色腫pseudoxanthoma elasticumに血管様線条angioidstreaks,狭心症,心肥大,高血圧,脈拍の微弱,毛嚢炎様丘疹を伴った43歳の女性例を報告した.本例はPopeの分類によると常染色体優性遺伝1型に属すると考えられた,毛嚢炎様丘疹は,真皮中層から下層がコッサ染色で陽性を示し,H-E染色で好塩基性に染まることからLundらのいうperforating pseudoxanthoma elasticumと考えた. elastosis per—forans serpiginosa, pseudoxanthoma elasticum, perforating pseudoxanthoma elasticumについて若干の文献的考察を加えた.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.1061 - P.1061

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committceから出された「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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