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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科34巻2号

1980年02月発行

雑誌目次

図譜・448

肘頭部に発生した若年性黒色腫

著者: 城良子 ,   西岡清 ,   佐野栄春

ページ範囲:P.92 - P.93

患者5歳,男児
初診昭和54年1月10日

原著

PSM Melanomaの1例

著者: 田代直介 ,   安木良博 ,   里見至 ,   末次敏之 ,   藤沢竜一 ,   橋本謙 ,   赤川徹也

ページ範囲:P.95 - P.98

 53歳男性,右足底の悪性黒色腫(level IV, stage I)を報告した.近年,清寺らの提唱しているPSM (palmo-plantar subungal mucosal) melanomaに属するものと思われた.手術後,14ヵ月後の現在,再発や転移はみられず,術後の経過は良好であるが,なお,経過観察中である.

汎発性白斑を伴った悪性黒色腫の1例

著者: 土屋喜久夫 ,   小林仁 ,   具志堅初男 ,   青柳俊 ,   三浦祐晶

ページ範囲:P.101 - P.106

1)悪性黒色腫と汎発性白斑がほぼ同時期に発現した39歳,男性例を報告した.
2)白斑正常皮膚移行部に一致して,基底層へのリンパ球様細胞の浸潤をみ,また同部のdermoepidermal junctionに一致してlinearのIgGの沈着をみた.
3)腫瘍部分の一部amelanotic化,およびリンパ球様細胞の多数の浸潤およびその経時的減少をみた.
4)患者血清中に他症例のmelanoma cellの膜に対する抗体と思われるものが螢光抗体間接法で初期に認められた.
5)悪性黒色腫と白斑形成に関し,免疫学的に文献的考察を行った.

Superficial Spreading Melanomaの1例

著者: 橋本隆 ,   植原八重子 ,   倉持正雄 ,   原田敬之

ページ範囲:P.107 - P.111

 30歳,男子.右大腿部伸側に発生したsuperficial spreading melanomaの1例を報告した.小児期より存在する黒色斑が約半年前より拡大し色調変化,小結節が出現した.組織学的に腫瘍細胞の表皮内へのpagetoid型増殖と一部真皮内侵入が認められ本症の典型例と考えた.治療は5cmの健常皮膚を含めて切除,植皮,及びリンパ節廓清術を施行し,その後,BCG接種,PSK(Krestin®)内服,OK−432(Picibanil®)筋注を行った.1年5ヵ月後の現在,再発の徴はない.自験例の報告と合わせ,本邦におけるsuperficial sp—reading melanomaの報告例を集計し,若干の考察を加えた.

Superficial Spreading Melanoma

著者: 大槻典男 ,   広根孝衛 ,   山本正樹 ,   福代良一

ページ範囲:P.113 - P.120

 27歳の主婦の右足内側に生じたsuperficial spreading melanomaの1例について述べた.腫瘍は光顕的には,表皮内に大小の特徴的なPaget病様胞巣を示し,腫瘍の中心部では真皮内胞巣を形成していた.電顕的には,腫瘍細胞は樹枝状突起に乏しく,細胞質内に紡錘形で格子状構造を示すプレメラノソームやメラノソームのほか,類円形・三日月形・ラグビーボール形で大小不同が顕著なプレメラノソームやメラノソームが多数みられた.本腫瘍と掌蹠や粘膜の「いわゆるlentigo maligna melanoma」とは電顕的に鑑別可能であると考えられた.

男子乳癌の1例およびその電顕所見についで

著者: 増澤幹男 ,   斉藤隆三

ページ範囲:P.121 - P.124

 63歳の男子の右乳房に生じた,まれな男子乳癌の1例を報告した.
病悩期間は3年間で,TNM分類ではstage I, T2N0M0であり,男子乳癌としては進行が遅かつた.
病理組織診断は浸潤性乳頭腺管癌であり,電顕的にはしばしば乳癌細胞質中にvilli状突起を有するintracytoplasmic lumenがあり,その周囲に暗調穎粒が集合した像がみられた.

Mucinous(Adenocystic)Carcinoma of the Skinの1例

著者: 北村和子 ,   亀田洋 ,   内山光明 ,   中嶋弘

ページ範囲:P.125 - P.130

 45歳,女性,mucinous(adenocystic)carcinoma of the skin(以下MCSと略)の1例を報告した.本例は他に内臓悪性腫瘍の合併はなく,広範囲切除およびリンパ節廓清術を施行し,発症より約9年,術後1年3ヵ月後の現在も健在である.組織像では腫瘍は線維性の梁で多胞性に分室され,異型性のある腫瘍細胞の小さな集団が各々の嚢胞内に貯溜した粘液物質に取り囲まれて存在した.組織化学では,粘液物質はPAS陽性(ジアスターゼ消化抵抗性),コロイド鉄陽性(ヒアルロニダーゼ消化抵抗性),アルシアンブルーpH2.5で陽性(シァリダーゼ消化性)pH 1以下で陰性,ムチカルミン陽性で,シアロムチンの存在が推察された.組織像およひ組織化学所見はMendozaらの提唱した汗腺癌の異型であるMCSに該当した.電顕像では腫瘍はデスモゾーム,張原線維を有し,微細線維,グリコーゲン顆粒が豊富に存在し,分泌顆粒が認められ分泌上皮を示唆する所見が得られた.酵素組織化学的所見は,汗腺分泌上皮部に矛盾しなかった.

巨大局面を呈したBowen病の1例

著者: 荘由紀子 ,   加茂紘一郎

ページ範囲:P.131 - P.135

要約 73歳,男子.3年来,背部に瘙痒性皮疹が存在するも放置,漸次増大す.初診時,大小種々の疣状角化物の混在せる紅斑性局面を呈し,大きさは11×8.5cmに達する.病理組織学的に典型的Bowen病の像を呈した.既往歴からは砒素剤の摂取は不明であり,毛髪等の砒素定最でも正常値を示した.また内臓悪性腫瘍の検索では著患を見出し得ない.
本邦においては,過去5年間に21例の巨大局面を呈する単発性Bowen病もしくは癌の報告をみる.自験例はこれら過去の症例に照らし合わせても,Bowen病としては最も大きいものに属すると思われる.

Bowen病の1例—子宮上皮内癌と陰部疱疹を合併し,HSV−2感染の考えられる1例

著者: 戸田道子 ,   中山秀夫 ,   谷口貞子 ,   西迫平雄 ,   原田玲子

ページ範囲:P.139 - P.143

 大腿部のBowen病に,子宮頸部上皮内癌を合併していた86歳女子に対して,皮疹切除術ついで子宮頸部に60Co照射治療を行った.放射線照射中に陰部疱疹が出現し,血清ヘルペス補体結合抗体価が高値を示し,PN差は中間型を示した.ヘルペスと子宮癌の関連,Bowen病と内臓悪性腫瘍の関連は別個に注目されているが,3者の合併はきわめて稀であり,ヘルペスと癌の関連を検討する上で興味深い症例と思われる.

真性皮膚神経腫の1例

著者: 田中信 ,   長島正治

ページ範囲:P.145 - P.148

 44歳男性の右下背部に単発した有痛性,紅褐色の柔かい半球状の腫瘤を経験した.臨床的には黒子が疑われたが,組織学的には真皮内に神経線維を多数含んだ末梢神経構造を認めた.Bodian染色では円形および楕円形の核を有するSchwann細胞巣内に多数の軸索を認めた.さらにLuxo last blue染色では少数ながら髄鞘を認めた.なお全ての切片においてMeissner小体はみられなかった.以上臨床的には黒子が疑われ,病理組織学的にLeverらのいう真性皮膚神経腫,Dupreらのいら純皮膚神経腫と確診された症例を報告した.

皮膚線維腫—臨床統計および病理組織学的検討

著者: 仲弥 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.151 - P.156

 昭和42年から昭和53年にいたる12年間に慶応大学皮膚科教室で経験された皮膚線維腫87例,103検体について臨床統計的及び病理組織学的に検討した.87例の性別は男30例,女57例で年齢は20歳代,30歳代に多く,単発69例,多発18例であった.単発例は四肢に多く,多発例は下肢,臀部に多い傾向を示した.組織像については線維成分の多いもの69例,細胞成分の多いもの13例,両成分が同程度にみられるもの21例であった.中には組織球腫と確認できたものが6例あり,いわゆる硬化性血管腫とみなしうるものは3例あった.またstori—form pattern, curlicue patternを各々6例に認めた.表皮変化については大多数が角質肥厚,表皮肥厚,基底層色素沈着等を示した.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.98 - P.98

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました、皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

講座

SLE (V)—SLEの血管病変(2)

著者: 大橋勝 ,   星野久美子

ページ範囲:P.158 - P.165

1.皮膚の微小循環系の電顕所見
 1950年代に入ると電子顕微鏡が組織の微細構造の研究に革命をもたらし,毛細血管構造についての新知見を提供した.これらの研究によると1〜3),毛細血管は1つまたは2〜3個の内被細胞により形成されている.人皮膚毛細血管では内被細胞の厚さは約400nmで,核のある部分で横断すると内腔に突出していて腔を狭めている.この内被細胞の基賀側には厚さが約30〜50nmの基底膜があり内被細胞と伴細胞を連続して取り巻いている.伴細胞は内被細胞および基底膜の外側にあり,その細胞突起は扁平となって血管の外周にのび,内被細胞を包むように存在する.がしかし内被細胞のように連続してはいない.以上のように内被細胞と基底膜と伴細胞の3つが毛細血管を構成する要素となっている.
 毛細血管は物質交換の場であるので,それぞれの臓器によって電顕的な超微構造でもそれぞれ異なっている.ここではSLEで重要な臓器の血管構造について述べる.電顕的構造の臓器による主な変化は内被細胞にある.皮膚の毛細血管では隣り合った血管内被細胞同上はその端部では巾90Åのtight junctionでつながるのみで隣り合った細胞膜のすべてにわたっていないので,水や低分子物質は通過し得る.細胞膜同士の癒着が内被細胞の接着面すべてにわたってみられる場合,即ち全部がtight junctionで結ばれていてベルト状になっているのは中枢神経系の血管であり,血液成分の細胞通過は完全に阻止され,血液脳関門を作っている.また,腎糸球体の血管では内被細胞は連続して存在するが,細胞質内を貫く小孔のある構造をとっている.細胞質内を貫く小孔はfenestrationと呼ぼれている.このfenestrationは直経約70nmあり,これを通って70nm以下の物質は血管腔より外部へと輸送される,以上3つの臓器の毛細血管の形態を図示したのが図1である.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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