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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科34巻3号

1980年03月発行

雑誌目次

図譜・449

指関節瘤

著者: 面高信平 ,   吉江治彦

ページ範囲:P.174 - P.175

患者12歳,女子
初診昭和52年12月6日

綜説

Immune Complexと皮膚疾患(Ⅰ)

著者: 益田俊樹 ,   植木宏明

ページ範囲:P.177 - P.185

 抗原が生体内に入ると体液性あるいは細胞性の抗体が産生され,同じ抗原が再び生体に侵入したときに特異的に抗原抗体反応がおこる.この反応は抗原をすみやかに処理し,外界からの異物の侵入から生体を守る機構の1つと理解され,免疫反応と呼ばれている,ところが中には抗原抗体反応に引き続いて炎症など,生体にとって不利な反応が惹起されることがあり,これを特にアレルギーと呼んでいる.このうちimmune complex病は抗原と体液性抗体(免疫グロブリン)との結合物(免疫複合体,immune complex,以下ICと略す)が組織に沈着し,そこで惹起する障害をいい,この概念はすでにCoombsとGell1)によってなされたアレルギー反応の分類の第Ⅲ型に入れられているが,一方,膠原病あるいは自己免疫疾患をはじめとして多くの疾患の発現にこのICが関与していることが注目され,これらの疾患は新しくimmune complex病(以下IC病と略す)という観点から研究が進められている,本稿では次の順にIC病の基礎と臨床について述べてみたい.

原著

血管腫様変化を伴ったProliferating Trichilemmal Cystの1例

著者: 井上邦雄 ,   森口隆彦

ページ範囲:P.187 - P.190

 64歳女性の頭頂部に発生したproliferating trichilemmal cystの1例を報告した.本腫瘍は外毛根鞘由来の比較的稀な良性腫瘍であり,自験例は臨床的・組織学的にその典型例と考えられるが,一方でいまだ報告されたことのない血管腫様変化を伴っていた.過去の報告例を中心に文献的考察を加え,特に本腫瘍の間質における変化について言及した.

前頸部の軟骨母斑

著者: 木花光 ,   菅原信

ページ範囲:P.191 - P.196

 前頸部両側にみられた軟骨母斑の11歳男子例を報告した.組織学的に軟骨組織塊を1個認め,Elastica van Gieson染色にて弾力軟骨と同定した,また真皮に毛包の多発,軟骨組織近傍にパシーニ小体,横紋筋組織を認めた.組織学的に軟骨の存在を確認しえた前頸部軟骨母斑の本邦報告例は18例で,軟骨はほとんどの例で弾力軟骨であり,毛包の多発,パシーニ小体,横紋筋組織が認められた例もあった.臨床的鑑別診断としては,正中頸嚢胞,側頸嚢胞などがあげられるが,生下時より存在し軟骨様硬に触れるという特徴のため診断は困難ではない.本症の発生については,未だ定説がなく,病名も副耳,副耳珠など種々ある,Brownstein et al.は第1鰓弓由来であるとしたが,著者らは第2以下の鰓弓由来であると文献的に推測した.

悪性黒色腫を疑われた真皮内母斑と青色母斑

著者: 井上勝平 ,   成田博実 ,   緒方克己 ,   菊池一郎

ページ範囲:P.197 - P.202

 44歳男子(症例1)の顔面に生じた毛包破壊性肉芽腫を伴った真皮内母斑細胞母斑と15歳女子(症例2)の頭頂部に発症した毛包破壊性肉芽腫を併発した細胞増殖性青色母斑を報告した.
真皮内母斑や青色母斑において,病巣内の毛包脂腺系が嚢腫状拡大,複合毛包,trichostasisなどを生じ,ひいては毛包の破壊による異物肉芽腫を併発し,臨床的に腫瘤の増大,自発痛,圧痛などが出現し,悪性黒色腫との鑑別を要する症例があることを指摘した.

脂腺増生症および脂腺腺腫を合併した脂腺上皮腫の2例

著者: 細井洋子 ,   辻卓夫 ,   下峠雅史 ,   高宮正

ページ範囲:P.203 - P.208

 脂腺上皮腫の2症例について報告した.症例1は27歳,男性で,左上眼瞼に生じた初診時の結節は脂腺上皮腫の組織所見を示し,切除をうけて約2年後ほぼ同一部位に脂腺腺腫を,同時に前胸部に脂腺増生症を合併した.症例2は79歳,女性で,右側頭部に約指頭大腫瘤を生じ,組織学的に脂腺上皮腫と脂腺腺腫が混在する所見を呈した.
脂腺上皮腫の発生起源に関して,症例1では同一個体に比較的短期間に多種類の脂腺系腫瘍が発生したことより,脂腺上皮腫の発生には母斑症的な因子が関与している可能性が示唆され,また,脂腺上皮腫および脂腺腺腫の関係について,症例2では腫瘍中心部は脂腺腺腫の所見を呈し,腫瘍辺縁部では脂腺上皮腫の所見を呈したことより,両者間の移行ないし連続性の存在することを強く示唆するようである.

Adamantinoid Basal Cell Epitheliomaの1例

著者: 石川謹也 ,   荘山紀子 ,   杉浦丹

ページ範囲:P.209 - P.213

 52歳男子の左肩に生じたエナメル上皮腫様の組織像(adamantinoid pattern)を呈する基底細胞上皮腫(adamantinoid basal cell epithelioma)の1例を報告した.あわせてエナメル上皮腫と本病型の基底細胞上皮腫との組織学的類似性について説明し,さらに口腔内に発生した基底細胞上皮腫とエナメル上皮腫との鑑別の問題,また,最近注目をあびているbasal cell nevus syndromeの際にみられる下顎骨嚢腫及び頭蓋咽頭腫について文献的考察を加えた.

尖圭コンジロームの黒色調丘疹といわゆるMulticentric Pigmented Bowen's Diseaseとの関係について

著者: 木村俊次

ページ範囲:P.215 - P.221

 尖圭コンジロームに伴う黒色調丘疹(CAPP)およびいわゆるmulticentric pig—mented Bowen's disease (MPBD)に臨床的に酷似し,組織学的には両者の中間に位置すると思われる2症例を報告した.症例1は27歳男子で陰茎根部に黒色丘疹が多発し,症例2は33歳女子で後交連付近に黒褐色小結節が多発した.組織学的にいずねも軽度の配列の乱れ・大小不同を伴う表皮増殖を示し,電顕的にも表皮増殖性の変化およびトノフィラメントの集合傾向を示した.症例2では核周囲の空胞化も一部にみられた,ウイルス様粒子は2例とも見出せなかった.この2例と共通点を有するCAPPおよびMPBDについてそれぞれの病像を比較したところ,両者の間にはボーエン病様組織変化の有無という違いのみが存在すること,MPBDには組織像の変動がありうること,そして多核表皮細胞は良性・非腫瘍性の疾患にもみられること,などからMPBDはCAPPに多核表皮細胞をつくるような刺激が加わって生じるものと考えられた.

いわゆるMulticentric Pigmented Bowen's Disease—2例の報告と本症の位置づけ

著者: 木村俊次 ,   仲弥 ,   佐藤則子

ページ範囲:P.223 - P.228

 最近新たに本症の2例を経験した.症例1は33歳女子で,左大陰唇下半部,両大陰唇下端部,および右小陰唇に黒褐色丘疹多発し,これに右大陰唇の尖圭コンジロームを合併.症例2は24歳女子で,後交連部から会陰部にかけて黒褐色丘疹を混じる黒褐色示指頭大の局面状皮疹が単発,2例の黒褐色皮疹の組織像はともにボーエン病のそれに一致し,尖圭コンジロームも定型的な組織像を示した,電顕的には尖圭コンジロームのみならず,2例の黒褐色皮疹にも,表皮上層のケラチノサイト核内に直径30〜40nmの電子密な円形粒子が見出された.この粒子はヒト乳頭腫ウイルスに形態学的に類似しており,これに種々の臨床的事項を考え併せると,本症は尖圭コンジロームと近縁の疾患であって,広く疣贅の範疇に含められるものといわざるをえない.

皮膚転移巣にDesmoplastic Melanomaの所見がみられた悪性黒色腫の1例

著者: 小林陽太郎 ,   宮里肇 ,   田嶋公子 ,   池田重雄

ページ範囲:P.229 - P.235

 38歳,男性.右外顆下後部にepithelioid cell typeのnodular melanomaの原発巣があり,全身に播種状に多数の皮膚転移巣をみたが,原発巣付近の2〜3cm大の硬いamelanoticな2個の転移巣が組織学的にdesmoplastic malignant melanomaを示した症例を報告した.組織は紡錘形細胞の増殖と膠原線維の増生で一見線維腫ないし線維肉腫を思わせたが,メラニン染色でメラニン顆粒陽性,Dopa反応でもごく一部の細胞にDopa反応弱陽性を示すものがあった.
また,この症例はPepleomycin,VCR,m-CCNUとBestatinとの4剤併用療法が皮膚および皮下転移巣に対し有効であった.
なお,desmoplastic malignant melanomaについて若干の文献的考察を加えた.

Eccrine Porocarcinomaの1例

著者: 御子柴甫 ,   久保田康暉

ページ範囲:P.239 - P.245

 85歳女性の左下腿に6年前に原発し,その後左大腿,陰部,下腹部などの皮膚に広範囲な転移巣を生じた症例に各種検索を実施した.表皮および真皮内に,小型のクロマチンに富む細胞が腫瘍巣を形成し,腫瘍細胞はジアスターゼ消化性PAS陽性,コハク酸脱水素酵素陽性,フォスフォリラーゼ陽性,アルカリフォスファターゼ陰性である.一部に好酸性に染まる物質を入れる管腔構造を多数示す.管腔内物質はジアスターゼ抵抗性PAS陽性,コロイド鉄陽性,アルシアン青陽性である.電顕的に細胞内管腔形成を認めた.転移巣では,同様の腫瘍細胞が表皮内および真皮上層に胞巣を形成し,表皮内ではPaget現象を呈している.以上の点より表皮内汗管より発生したeccrine porocarcinomaが表皮向性に広範囲に転移した症例と考えられる1例を報告した.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.245 - P.245

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

連載 皮膚病理の電顕・13

付属器腫瘍(II)

著者: 橋本健

ページ範囲:P.248 - P.250

 図34 エクリン汗腺や汗管腫内で証明される糖原は大きな分子である.腫瘍構造が基底膜を被り,且つ構成細胞に貪食活動がみられないことから糖原を外部より摂取する可能性は考えにくい.したがって細胞膜を通過する葡萄糖より細胞質内での糖原合成が考えられる.このglucose→gly—cogen合成の初期反応に関与する酵素がuridinediphosphate glucose (UDPG) pyrophosphorylaseで一般にphosphorylaseと呼ばれているものである.この酵素は糖原合成の過程でglucose−1—pho—sphateとuridine triphosphateの反応を司る.
 図34Aは腋窩のアポクリン腺とエクリン腺の分泌部を同時に染めたものである.Phosphorylase反応はエクリン腺に強陽性で,大きな腺腔を示すアポクリン腺に陰性である.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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