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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科34巻6号

1980年06月発行

雑誌目次

図譜・452

重症糖尿病性壊疽

著者: 岩原邦夫 ,   小川秀興

ページ範囲:P.434 - P.435

 患者48歳,女性.東京在住.
 家族歴同胞に高血圧,糖尿病なし.

原著

糖尿病患者にみられたPigmented Pretibial Patchesの1例

著者: 酒井康弘 ,   吉江治彦 ,   二条貞子 ,   小宮一郎

ページ範囲:P.437 - P.441

 52歳女性の糖尿病に合併したpigmentcd pretibial patchesを報告した.表皮の萎縮,真皮の膠原線維化,毛細血管壁の肥厚および管腔狭小化,血管周囲性の円形細胞浸潤やヘモジデリン沈着など組織学的にはpigmented pretibial patchesの典型像に加え,膠原線維の変性,脂肪浸潤,脂肪変性およびfoam cell化,真皮深層から皮下組織における小動脈閉塞など多彩な組織像が混在していた.本例は通常多く認めるdiabetic microangiopathyによる皮膚の修復反応ではあるが,同時に小動脈閉塞による一種のinfarct scarの像が加わって種々の組織変化を呈したものと推測され,興味が深い.

Necrobiosis Lipoidicaの1例

著者: 細井洋子 ,   鈴木伸典 ,   濱田稔夫 ,   長濱萬蔵

ページ範囲:P.443 - P.446

 39歳,女性.約2年前より右下腿前脛骨部に自覚症状のない紅斑性浸潤性皮疹を生じ,徐々に拡大し,約1年前より左下腿にも同様の皮疹を生じ,初診時には栂指頭大から手掌大の暗赤色浸潤性局面を認める.一般臨床検査成績では軽度の肝機能障害がみられる以外は異常所見はなく,空腹時血糖は100mg/dlである.組織学的には類壊死の所見とそれを取り巻くpalisading granulomaが著明にみられた.本症例では糖尿病に対する更に詳しい検索を行い得なかったが,現在までの本邦報告例42例とともに統計的考察を行い,最近の糖尿病診断法の進歩から,今後,更に糖尿病合併率の上昇が予想され,本症例も糖尿病に対する十分な検査および経過観察の必要性が痛感された.

Necrobiosis Lipoidicaの1例

著者: 鈴木和幸 ,   水野信行

ページ範囲:P.447 - P.450

 40歳,女.父などに糖尿病(DM)がある.1年前から発生した両下腿伸側の径4cmまでの浸潤性紅斑,尿糖は陰性で,ブドウ糖経口負荷試験でも血糖およびインシュリン値に異常はなかった.組織学的には,真皮網状層に膠原線維の変性と巨細胞を伴った類上皮細胞性肉芽腫と細胞浸潤巣が散在した.血管壁の変化はなかった.変性部にズダンⅢ陽性の脂肪滴をみた.以上のように臨床的には典型的であったが,DMはなかった.本邦NLの33例のうち70%がDMに関連があった.NL発症後DMを発病した群は大部分8年以内であった.それに比べてDMの発病のない症例は観察期間の短かい例が多い.典型的な本症で本人にDMがなく,家族にDMがあったのはわれわれの例が最初である.組織像からDMの有無を区別することはできなかった.

Androgenic Acne

著者: 水野久美子 ,   安田利顕

ページ範囲:P.451 - P.454

 Androgen過剰産生,および多量のanabolic steroid投与により発生したacne(androgenic acne)の3例を経験した.皮疹は他の男性化徴候に先がけて発生.部位は顔面,頸部,躯幹で,一例は上腕伸側にもみられた.皮疹の性状は角化の強い面皰が主体で,1例はその後の抗癌剤治療中に炎症症状を惹起してきた.
 Androgenはacne発生の重要な因子であるが,これが大量,持続的に産生,あるいは投与された結果生じたacne (androgenic acne)は臨床的にacne vulgaris,あるいはいわゆるsteroid acneとは相違がみられた.

先天性皮膚弛緩症

著者: 木村俊次 ,   籏野倫 ,   辻敦敏 ,   三浦琢磨

ページ範囲:P.457 - P.464

 定型的な先天性皮膚弛緩症を呈した6ヵ月女児例について皮膚を光顕的・電顕的に観察するとともに全身諸臓器の検索を行った.その結果,光顕的には弾力線維の減少・繊細化・断裂・顆粒状変化および酸性粘液多糖類の増加を認め,電顕的には膠原線維間および小動脈壁の弾力線維のエラスチン沈着減少と線維芽細胞粗面小胞体の増加・拡張とを認めた.膠原線維は若干の染色性の変化と太さの不揃いとを示したが,著しい異常は見出せなかった,内臓の検索では血管造影で上行大動脈拡張,下行大動脈の延長と蛇行,頸・腕・冠動脈の蛇行,末梢肺動脈の狭窄など大血管系の異常を認めた他は著変なかった.本症の内外報告例を集め,本邦例について検討を加えるとともに,光顕像・電顕像・分類などについてまとめた.また病因についてはエラスチン合成障害説を支持した.

陰嚢の丘疹とDyschromatosis様皮疹を伴ったPringle病の1例

著者: 余幸司 ,   飯島正文 ,   中内洋一 ,   堀嘉昭

ページ範囲:P.465 - P.470

 32歳男子の結節性硬化症患者にangiofibroma・shagreen patch・Koencn tumorなどの典型疹の他,陰股部を中心とする色素沈着斑と脱失斑の混在及び陰のう部の小丘疹が認められ,これらの皮疹と従来本症に伴う葉形白斑及びangiofibromaとの異同を論じた.
1) TSの1症例に典型疹の他に,陰股部を中心とした色素沈着と脱失斑の混在及び陰のう部の特異な小丘疹を認めた.
2)色素沈着部の表皮メラノサイトはメラノソームの増加の他に異常はないが,白斑部の表皮ドーパ陽性メラノサイト数は減少し,電顕的にはメラノサイトの変性像が認められた.3)陰のう部小丘疹では表皮直下から乳頭下層に,eosin濃染,PAS陽性,ジアスターゼ抵抗性,トルイジンブルーで青く染まる物質の存在を認めた.
4)自験例における陰股部を中心とする色素異常及び陰のう部小丘疹と従来報告されたTSの病変の異同を考察した.

骨病変を伴ったJuvenile Xanthogranulomaの2例—von Recklinghausen病との関連

著者: 井上佳子 ,   高安進

ページ範囲:P.471 - P.473

 2歳3ヵ月女児と2歳2ヵ月男児の骨病変を伴ったjuvenile xanthogranulomaの2例を報告した.ともに,右脛骨の偽関節症(整形外科領域ではvon Recklinghausen病に高率にみられる病変として知られる)と,多数のCafe au lait斑を伴う.なお,第1例では母にvon Recklinghausen病,第2例では兄にjuvenile xanthogranuloma, Cafe au lait斑,貧血性母斑,父にCafe au lait斑と貧血性母斑,父方祖母にCafe au lait斑を認め,いずれも,遺伝的関係が濃厚であった.

Mesenchymal scleroderma

著者: 栗原誠一 ,   多島新吾 ,   西川武二 ,   籏野倫

ページ範囲:P.475 - P.479

 強皮症のうちに,浮腫性の硬化を主徴として,いわゆるacrosclerosisの像を呈さず,加えて免疫異常を強く示す1群のあることはWinkelmannにより示され,Mesenchy—mal sclerodermaなる疾患名で報告されている.今回我々は,sausagc-like fingerと呼ばれる手指の浮腫性硬化を主徴として,Sjogren's syndrome,橋本病あるいは皮膚筋炎を合例した8例のMesenchymal sclerodermaと考えられる強皮症を経験したので,その臨床的所見および検査所見を詳述した.さらに,Mixed connective tissue disease (Sharpら,1971年)は本症と極めて類似した疾病像を示すことが知られているが,これらを含めた強皮症において,自験例の位置づけを考察した.

尋常性乾癬を合併した汎発性鞏皮症の1例

著者: 甲原資秀 ,   西川武二 ,   籏野倫

ページ範囲:P.481 - P.485

 尋常性乾癬を合併した汎発性鞏皮症の1例を経験した.臨床像,組織像共に各々の疾患に特徴的であるが,どちらの疾患が先行したかは不明であった.諸検査にて血中IgG,IgAの高値,抗核抗体は320倍陽性,Mixed connective tissue diseaseに特徴的といわれる抗RNP抗体が陽性であった.皮疹および無疹部の螢光抗体直接法にて,表皮細胞核に一致した螢光を認めた.近年尋常性乾癬をも免疫学的な機序で説明する動きもあるが,この意味において自己免疫疾患と考えられる汎発性鞏皮症と合併したことは興味深い.

Sjogren症候群—紅斑の意義について

著者: 加茂紘一郎

ページ範囲:P.487 - P.494

 従来Sjogren症候群では特異的な皮疹を欠くために,皮膚科的な認識はうすく僅かにsicca syndromeとして知られているにすぎない.著者は臨床的にまた組織学的に多くの共通点を有するい"浮腫性紅斑"を主症状とし,諸検査の結果Sjogren症候群と診断した3症例を経験したのでまとめて報告するとともに,本邦皮膚科領域における紅斑を有するSjogren症候群例5例と併せて検討を加えた.
これらSjogren症候群に伴う紅斑の共通した性状は,貨幣大まての境界明瞭な浮腫性紅斑で,自覚的に殆ど症状を認めない,発生部位は顔面に最も多く,上肢,躯幹に認める例もある.性別は全例女子,平均年齢39.7歳と本邦皮膚科領域におけるSjogren症候群26例の平均(44.5才)に比し低いがS.L.E.の初発年齢に比べるとかなり高年齢である.
以上の特徴を有する原因不明の"浮腫性紅斑"を検索する場合,Sjogren症候群も考慮にいれる必要のあることを強調したい.

小児皮膚筋炎の5例

著者: 木村鉄宣 ,   土屋喜久夫 ,   具志堅初男 ,   三浦祐晶

ページ範囲:P.495 - P.501

 小児皮膚筋炎5例について,診断と予後を中心に検討した.厚生省調査研究班の診断基準では2例が確実例,2例が疑い例であるが,残る1例も主として皮疹の性状から皮膚筋炎と診断した.また予後からみると,5例のうち1例はWinkelmannの報告したBanker型,4例はBrunsting型と考えられた.その他臨床症状,検査成績について文献と照応して検討し,また治療に関連して,コルチコステロイド内服療法を行うときは腹部症状に常に注意を払う必要があることを結論した.

皮膚筋炎症例の統計的観察—特に本症の予後および悪性腫瘍の合併頻度に関する考察

著者: 竹松英明

ページ範囲:P.503 - P.507

 昭和44年から53年にいたる10年間に,東北大皮膚科において経験した皮膚筋炎症例11例について,特に本症の予後および悪性腫瘍合併頻度の2点を主として,統計的観察を行った.
予後は不良で,11例中7例が死亡している.20歳未満の症例は全例軽快しているが,20歳以上では,1例以外全例死亡している.死因別では,悪性腫瘍3例,尿毒症3例,肺膿瘍1例である.悪性腫瘍を伴った症例はいずれも40歳以上で,胃癌,直腸癌,膵癌である.

妊娠中,右乳房にdiscoid皮疹を生じた全身性エリテマトーデス(SLE)の1例

著者: 谷口芳記 ,   伊東陽子 ,   浜口次生

ページ範囲:P.509 - P.513

 24歳,女性,妊娠6ヵ月より右乳房にdiscoid皮疹を生じ,さらに分娩後顔面紅斑等皮疹の増悪をみた.白血球数と血小板数の減少があり,抗DNA抗体陽性(640倍),抗核抗体陽性(80倍 homogeneous type),血清補体値の低下がみられ,DNCB皮膚感作は不成立,ツ反は陰性であった.Discoid皮疹を初発疹とし,妊娠を誘因とするSLEの1例と考えられ,文献的に本症と妊娠の関連,およびdiscoid皮疹の発生について若干の考察を試みた.

Livedo Vasculitisの2例

著者: 栗原誠一 ,   高橋慶子 ,   西川武二 ,   中村絹代

ページ範囲:P.517 - P.522

 51歳,27歳女子の下肢にみられたLivedo vasculitisの2例を報告した.臨床的にLivedoが不完全である点,および組織像でリンパ性浸潤,fibrinoid変性,内腔閉塞を示す小血管炎を真皮全層に認めたこと,螢光抗体直接法によりIgM,fibrinogenを真皮ほぼ全層の小血管壁に証明したこと等に関し,またLivedo reticularis with summer ulcerationとの異同について若干の考察を加えた.またこの種の血管炎は慢性,再発性の経過と多彩な臨床像を呈するものであり,長期の経過観察と種々な部位よりの病理組織学的検索,特に連続切片標本作成による詳細な検討が必要である旨を述べた.

結節性紅斑様皮疹を主訴としたサルコイドージス—教室経験例の集計を含めて

著者: 高橋慶子 ,   北村啓次郎

ページ範囲:P.523 - P.530

 21歳男子.両下腿に生じた小豆大ないし索状の硬結を伴う紅斑を主訴として来院し,組織検査にて真皮および皮下脂肪織中に類上皮細胞よりなる肉芽腫を多数認め,肉芽腫性ブドウ膜炎,および胸部X-P上BHLあり.右鎖骨上窩リンパ節生検にても多数の類上皮細胞肉芽腫を認めた.以上より結節性紅斑様皮疹を呈したサルコイドージスと診断した1例を報告した.欧米では本症に合併する結節性紅斑には類上皮細胞肉芽腫は稀というが,本邦例ではむしろかかる肉芽腫を合併するとする報告が多いようである.さらに昭和37年より53年までの17年間に,当教室に皮疹を主訴として来院し,組織学的にサルコイドージスと確診せられた13症例について,臨床および病理組織学的に検討し,その結果をまとめ記録した.

結節性紅斑様皮疹を呈したサルコイドージスの1例について

著者: 桑原京介 ,   石川豊祥 ,   辻口喜明 ,   森嶋隆文

ページ範囲:P.533 - P.536

 今回,我々は結節性紅斑様皮疹を呈したサルコイドージスの22歳,男子例を経験したので報告し,我が国における同様症例につき文献的に考察を加えた.本病変の特徴は次のように要約された.すなわち若年者の女性に多く生じ下腿伸側に拇指頭大までの類円形,軽度の浮腫特浸潤をもつ淡紅色の紅斑が多発,一部融合してみられ,病理組織学的には真皮下層から皮下脂肪織にかけて,類上皮細胞の結節で小集団あるいは散在性にみとめられる.換言すればサルコイドージスにみられる結節性紅斑は我が国においては非特異疹というよりはむしろ特異疹と考えられる例が多いとの印象を受けた.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.485 - P.485

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出さねた「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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