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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科34巻7号

1980年07月発行

雑誌目次

図譜・453

Sporotrichosis

著者: 橋本紘 ,   池谷敏彦 ,   野崎憲久 ,   高田一雄

ページ範囲:P.544 - P.545

患者63歳,男性,農業
初診昭和53年4月20日

原著

Acute Generalized Pustular Bacteridの1例

著者: 林紀孝 ,   本山三生

ページ範囲:P.547 - P.550

 50歳,男子.初診の1週間前より上気道感染が先行し,38.5℃の発熱とともに紅暈をめぐらす小水疱・膿疱が両手・両足・両下腿に発生した.発疹は播種状または集籏性に配列し,とくに手背・足背に多く,手掌・足底には極めて少ない.その臨床経過は急性で抗生物質の投与によく反応し容易に治癒し,以後再発をみない.組織学的には角層直下に膿疱の形成を認め,真皮上層にはリンパ球を主とする血管周囲性の細胞浸潤を認め,赤血球の漏出も散見され,pustulosis palmaris et plantarisと同様の所見を呈する.
 以上の事柄よりacute generalized pustular bacteridと診断した.
 なお,本症の臨床および発症誘因についても若干の文献的考察を加え,自験例のごとく高ASLO値を示さない症例もみられることを示した.

膿皮症から分離されたブドウ球菌とその抗生物質感受性について

著者: 出来尾哲 ,   高垣謙二 ,   山崎玲子 ,   浜中和子 ,   池田早苗

ページ範囲:P.551 - P.556

要約 1975年から1978年までに広島鉄道病院皮膚科を受診した膿皮症患者のうち,癤,癰,毛包炎,伝染性膿痂疹,感染性粉瘤の患者,計510症例を対象として,病巣からの分離菌の菌種とその抗生物質感受性を決定した.
癤,癰,伝染性膿痂疹の病巣からの分離菌は大部分が黄色ブ菌で,毛包炎の病巣からの分離菌はその約2/3が黄色ブ菌,約1/3が表皮ブ菌である.また,感染性粉瘤では,約1/5が黄色ブ菌で,約2/3が表皮ブ菌である.
分離されたブ菌の抗生物質感受性の順序は,ブ菌全体ではCEX・GM>CP>TC>ABPC・AMPC>EMであり,黄色ブ菌ではCEX・GM>CP>TC>ABPC・AMPC>EMであり,表皮ブ菌ではCEX・GM>CP>ABPC・AMPC>EM・TCである.
分離されたブ菌の抗生物質感受性を1962年のものと比較すると,ABPCの感受性はある程度良くなり,EMの感受性は非常に悪くなっていたが,TCとCPの感受性にはあまり変化がないと思われた.

原発性皮膚アスペルギルス症の1例

著者: 梅沢明 ,   志村葉子 ,   鰺坂義之 ,   下田祥由

ページ範囲:P.557 - P.562

 慢性化膿性胆管炎の患者にみられた原発性皮膚アスペルギルス症の1例を報告した.症例は13歳の女児,慢性化膿性胆管炎にて入院加療中,5日間翼状針を固定,絆創膏貼布し持続点滴を行った左前腕伸側手関節部に小膿疱が散在,融合し,周囲に紅暈を有する局面を形成,初診時は癰と思われた.膿疱の直接検鏡で分岐性の菌糸がみられ,生検により真皮中層に楕円形の壊死層があり,放射状に発育せる二分岐性の太い菌糸よりなる菌塊が認められた.培養により,A. fumigatusを分離した.発症時の状態,臨床所見,組織所見より,福代らの「原発性膿皮症様皮膚アスペルギルス症」に一致するものと思われた.本症は本邦で自験例を含み17例を数えており,本疾患の発症には,局所的要因と全身的要因が大きく関与していると思われる.

骨,関節結核を伴った真性皮膚結核症(皮膚腺病,尋常性狼瘡)の1例

著者: 中野和子 ,   谷井司 ,   細井洋子 ,   濱田稔夫

ページ範囲:P.563 - P.567

 67歳,男,大阪市在住.右足に骨,関節結核を有し,皮膚には排膿,瘻孔形成を示す皮膚腺病と,ほぼ全身皮膚に尋常性狼瘡病変が30個も多発している症例について報告した.最近の医療水準の高くなった生活状況下において,1個体に2型の真性皮膚結核(皮膚腺病,尋常性狼瘡)が同時にみられ,さらに尋常性狼瘡も多発性に生じている重症型は非常に稀である.そして近年においてもなお医療機関への受診の遅れや,診断の誤りもみられるので,本症に対する対策をおろそかにすることは出来ないものと考えられた.

ブ菌に過敏反応を示した慢性膿皮症の1例

著者: 木村恭一 ,   吉原丘二子 ,   泉丸雅子 ,   武誠 ,   福代新治

ページ範囲:P.571 - P.578

 6歳男児,四肢に慢性膿皮症を有する患者に若干の免疫学的検討を加えた.その結果,好中球の貧食異常とブ菌に対する遅延型過敏反応を認め,これらの因子が皮疹の成立に関係するのではないかと推測した.

Recurrent Neutrophilic Dermatosis of the Faceの1例

著者: 井上多栄子 ,   島雄周平 ,   三原基之 ,   吉岡年春

ページ範囲:P.579 - P.582

 27歳,女子.右頬部,左頬部に有痛性浸潤性紅斑を生じ,組織学的に真皮に多核白血球,核塵を主とする密な細胞浸潤が認められた.末梢血白血球数8,700(68%好中球),抗核抗体20倍陽性specklcd pattern,R-A因子陽性であった.Whittleらの報告したSweet病のvariant formとしてベーダメサゾン3mg/day投与し著効した.しかし減量すると額部に再発を認めた.
Sweet病のvariant formの報告例8例について若干の文献的考察を行った.

Acute Febrile Neutrophilic Dermatosis(Sweet病)

著者: 湯本薫 ,   柴田東佑夫 ,   大塚秀人 ,   徳田安章

ページ範囲:P.583 - P.590

 64歳女子のacute febrile neutrophilic dermatosis(Sweet病)の1例を報告し,自験例を含め本邦症例64例につき若干の統計的考察を試みた.自験例では従来報告されていないリンパ球減少およびT,B細胞のsubpopulationの逆転が見られたか,その意味づけは不明である.またNBTテストおよびQuie法による好中球殺菌試験では,ともにやや低値を示し,感染抵抗の低下傾向をおもわせた.さらに皮疹組織のUnna-Pappenheim染色標本で,いわゆるstrange granuleがみられたが,その本態についての解明は困難である.

フルオレッセンによる日光疹型薬疹

著者: 東禹彦 ,   浦上紘三 ,   三木弘彦

ページ範囲:P.595 - P.598

 53歳,主婦.Eales病の診断で,フルオレッセン皮内テストを行って,陰性であることを確認してから,10%フルオレッセンを用い螢光眼底血管撮影を行った.その10日後に,皮内テスト部にspontaneous flare upを生じ,さらに4日後には両腕,上背部,胸部に浮腫性紅斑あるいは水疱を生じた.皮疹治癒後,10%フルオレッセン0.02mlずつ前腕の2ヵ所に皮内注射し,15分後に一方にのみUVAを照射したところ,24時間後にはUVA照射部にのみ紅斑を生じた.UVA照射部は48時間後には浮腫性の紅斑となり,144時間後には水疱を形成していた.以上の結果より本例をフルオレッセンによる光アレルギー性薬疹と診断した.

手湿疹診断におけるNitrazin Yellow Test

著者: 清水和子 ,   新井佳代 ,   田村多絵子 ,   石川英一

ページ範囲:P.599 - P.602

 Sandor&Jarishの記載に従い,いわゆる手湿疹の患者に,皮膚表面の水素イオン濃度を測る目的で,nitrazin yellow testを行った.主婦湿疹(指掌角皮症型)40名,接触皮膚炎8名,汗疱4名,正常人10名についてnitrazin yellowを塗って色調の変化をみたところ,正常人,汗疱患者では手掌全体にびまん性に橙色調を呈した.また,主婦湿疹患者では皮疹部から無疹部にかけて広範囲に亘って,びまん性に黄緑色ないし青紫色の色調変化を認めたのに対し,接触皮膚炎患者では皮疹部に限局し点状の青紫色の色調を呈した.これらの成績から,nitrazin yellow testは主婦湿疹と接触皮膚炎との鑑別に有用な1検査法であると考えられる.またこれらの色調の変化は皮疹の改善に伴い正常化することから,治療外用薬の判定にも応用できるかもしれない.

Hereditary papulotranslucent acrokeratodermaの家族例

著者: 古川徹 ,   長島正治

ページ範囲:P.605 - P.608

 Hereditary papulotranslucent acrokeratodermaの家族例(32歳女,9歳男,6歳男)を報告した.症例1では臨床的に両拇指球部及び小指球部から側縁,指関節背面,指側面にほぼ対称性に常色ないし黄白色半透明扁平丘疹が多発集簇してみられた.病理組織学的に病変の主体は角質層の限局性増殖で,真皮弾力線維の減少・断裂はみられなかった.症例2では軽度ながら同様丘疹が右示・中指PIP関節背面に,症例3では右拇指球部にみとめらねた.3症例とも足部には皮疹を欠いた.家系図より常染色体性優性遺伝疾患と考えられた.

苔癬状粃糠疹(Pityriasis Lichenoides)の免疫病理学的検討

著者: 林懋 ,   川田陽弘

ページ範囲:P.609 - P.612

1) Pityriasis lichenoides chronica (PLC)において血管壁並びに表皮真皮境界部(BMZ)にIgM,C3,一部にC1qの沈着をみとめた.一方PLC,pityriasis lichenoides etvarioliformis acuta (PLVA)の患者血清中に血管壁,BMZに対する抗体は証明されなかった.PLCとPLVAの螢光抗体法の所見は,本質的には同じであり,両者を同一病的過程とみる見解を支持する.
2)上記の螢光抗体法の所見から,本症の発症機序について論じた.

家族性高脂血症Ⅱ型ホモ接合体の1例

著者: 小林衣子 ,   小林仁 ,   土屋喜久夫 ,   三浦祐晶

ページ範囲:P.613 - P.618

 4歳男児.家族性高脂血症Fredrickson分類Ⅱ型(WHO分類Ⅱa型)ホモ接合体の1例を報告した.症例とその家族3世代計17人について,血清脂質の検査を行ったところ,そのうち多数に高脂血症をみた.Ⅱ型高脂血症について若干の文献的考察を行った.

Amelanotic Malignant Melanomaの1例

著者: 高橋邦明 ,   石井正光 ,   濱田稔夫 ,   金山良春

ページ範囲:P.621 - P.626

 61歳,男性の足底に原発したamelanotic malignant melanomaの1例を報告した.初診の約4ヵ月前に右踵部の小結節に気づき,近医で切除を受けたが創部が潰瘍化して治癒しにくいため当科受診し,再切除・植皮術を施行したが同時に右大腿リンパ節に転移を認めた.原発巣の組織像は,腫瘍巣の表皮が壊死化し,最上層より真皮中層に胞体の明るい,クロマチンに富む核をもつ腫瘍細胞が胞巣状をなし,これら腫瘍巣のごく一部と角質層の一部にpremelanin反応弱陽性を示すものの,dopa反応は陰性であった.その後,右下肢に転移性皮下腫瘤を数個生じ,そのうちの右大腿部腫瘤の電顕像では未熟なプレメラノゾームと考えられる顆粒を認めた.BCG-CWS,丸山ワクチン,クレスチン?,マイトマイシンC,βトロンなどで治療するも無効で,ムンプスウイルスワクチン投与を行ったところ,右大腿部腫瘤の軟化,増大停止など有効性を認めた.

有茎性悪性黒色腫—Pagetoid悪性黒色腫の組織構築を示し,辺縁には悪性黒子の組織所見もみられた症例

著者: 泉谷一裕 ,   濱田稔夫 ,   櫻根弘忠 ,   中尾仁子 ,   長濱萬蔵

ページ範囲:P.627 - P.633

 35歳,女の黒褐色色素斑上に生じた有茎性悪性黒色腫の症例を報告した.辺縁黒褐色浸潤性局面では表皮基底層にメラノサイト様異型細胞の著明な増殖を示すlentigo mali—gnaの部分と,表皮内にpagetoid腫瘍細胞の散在したpagetoid premalignant melanosisの部分がみられたが,腫瘤部では,表皮基底層に胞体の明るい大型の細胞が胞巣状に散在して存在し,表皮下より腫瘤茎部にかけて,ほぼ同様のクロマチンに富む大小異型性の核を持ち,細胞質の明るい腫瘍細胞が胞巣状に配列し,dopa陽性を示すpagetoid melanoma の組織像であり,全体としてpagetoid melanomaの組織構築を示すものと考えた.併せて悪性黒色腫の中で,有茎性の形態をとる臨床像の特徴を文献的に考察するとともに,鑑別診断などについても言及した.

T細胞リンパ腫の1例—腫瘍細胞のヘルパーT機能について

著者: 板見智 ,   橋本公二

ページ範囲:P.635 - P.640

 T細胞リンパ腫の1例において患者の皮疹部,リンパ節,及び白血病化した時期における末梢血より腫瘍細胞を分離し,その細胞機能の有無をmicroculture及びsolidphaseradioimmunoassay法を用いて検索した.その結果本患者の腫瘍細胞は,ヘルパーT機能を持たないことが明らかとなった.逆に詳しい検索は行えなかったが,サブレッサーT機能を有する可能性が示唆された.

Benign Mesenchymomaの1例

著者: 大塚藤男 ,   新村眞人 ,   立石昭夫 ,   竹山信成

ページ範囲:P.641 - P.646

 8歳,女子.生後4ヵ月目に右大腿伸側の大豆大の皮下硬結に気付く.その後次第に増大し,1歳で鶏卵大,4歳では大腿から臀部に拡大し,鼓行をきたすようになった.8歳で当科受診右大腿腫瘤の生検標本で線維組織の増殖とともに脂肪腫様の脂肪組織の増殖,平滑筋組織の混在,小血管の増生,組織球様細胞の集塊の存在などの所見を得て,benign mesenchymomaと診断した.

続発性リンパ浮腫—治療が効果を示した1例

著者: 大熊守也 ,   吉田威 ,   栗田孝

ページ範囲:P.649 - P.652

 54歳主婦,2年前子宮癌根治的子宮摘出術を行い,放射線照射を併用した.それより1年3ヵ月後,徐々に両下肢の腫脹がみられ,131RISA組織クリアランスは,著明な右側で左側(軽度)に比べて遅延がみられた.生検組織像は,細胞浸潤,リンパ管拡張などがみられた.メリロート草エキス製剤を内服したところ,9カ月の後,腫脹は消失,ほぼ完治の状態になった.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.550 - P.550

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committeeから出された「International list of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

薬剤

Diflucortolone valerate外用剤(ネリゾナユニバーサルクリーム)の治効比較成績—フルオシノニド,プロピオン酸クロベタゾールクリームとの比較

著者: 武田克之 ,   重見文雄 ,   野本正志 ,   山本忠利 ,   佐川禎昭 ,   斉藤一夫 ,   石塚秀実

ページ範囲:P.653 - P.659

 皮膚科領域の治療に,今なお外用療法の果たす役割は大であり,その主流はコルチコステロイド軟膏による外用療法といえよう.近年,局所専用で消炎効果のすぐれたコルチコステロイド(以下コルチコイドと略記)が相次いで開発され,新しい外用コルチコイド剤として提供されてきている.
 今回私らは,日本シエーリング株式会社から新しいコルチコイド外用剤ネリゾナユニバーサルクリーム(主成分:吉草酸ジフルコルトロン)を提供されたので,大学医学部附属病院および3公立病院の皮膚科においてその臨床応用を試みた.その際,本邦において局所抗炎症作用の最も強いことが実証されているプロピオン酸クロベタゾールクリームならびにフルオシノニドクリームとの治療効果をhalf side testで比較したのでその成績を報告する.

印象記

第79回日本皮膚科学会に参加して

著者: 地土井襄璽

ページ範囲:P.660 - P.662

 4月1日から日本で10番目の政令都市に移行した広島市て,4,5,6と3日間にわたり,第79回日本皮膚科学会学術大会が,矢村卓三広島大学教授の会頭のもとで開催された.
 2年前,次々回は矢村会頭でとの決定のあった際,早速,会場,期日の選択が問題になった次第である.広島市は意外に学会場となるような公共施設の貧弱な所であり,2〜3の候補はあるものの,いずれも帯に短かしたすきに長しの感があった.その中で結局は,広島の代名詞である原爆都市の特徴を生かして,爆心地に近い平和公園にある広島市公会堂が主会場として選ばれた.しかし,この際問題になるのは近くに第Ⅱ会場としての適当な施設が存在しないことであったが,これは,橋を渡って頂くようで多少不便ではあるけれども,対岸にある中国新聞社の7階講堂を利用することとした.幸いなことは,昭和30年に丹下健三氏設計で建築された公会堂がいささか古びてきたので,近々改築の予定になっているため,併設されていた新広島ホテルが数年前より営業を中止しており,その場所が展示会場のような小会場あるいは会議室に利用できることであった.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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