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雑誌目次

雑誌文献

臨床皮膚科34巻8号

1980年08月発行

雑誌目次

図譜・454

Borderline Tuberculoid Leprosy

著者: 木村恭一 ,   藤田甫 ,   白井求 ,   松本淑子 ,   和泉真蔵

ページ範囲:P.670 - P.671

患者59歳,男
初診昭和53年7月29日

原著

IgE高値を示し白癬を合併した反復性癤腫症3例の免疫学的検討

著者: 永井透 ,   設楽篤幸 ,   林良一 ,   小川力 ,   猪股成美

ページ範囲:P.673 - P.677

 数年来反復する癤腫症に難治性の白癬を合併した成年男子の3例(うち2例は尋常性疣贅をも合併)について,白血球遊走能試験・NBT試験・遅延型皮膚反応・リンパ球subpopulation・リンパ球幼若化反応などの免疫学的検索を行った.Phagocyte系にわずかではあるが異常を認めたほか,IgG・IgEの高値,リンパ球のCon A応答低下,T細胞の数または%の低下がみられ,各免疫系の異常の集積が発症に関与するものと考えた.

Pityrosporum Folliculitisと思われる2例

著者: 佐藤静生 ,   川口陽子 ,   門馬節子 ,   羽田知子

ページ範囲:P.679 - P.684

 25歳と23歳男子の頸部から上肢にかけて,毛孔一致性の紅色丘疹,膿疱性丘疹が,夏期に多発し,ともに毛嚢病巣内に酵母型胞子を多数認め,培養ではPityrosporumのみが得られた.クロトリマゾールの外用とナイスタチンの内服が奏効したこととあわせて,PotterらのいうPityrosporum folliculitisと診断した.
 Pityrosporumが病原性を発揮しうるとするには,その発症機序および菌学的な面で問題があるが,難治の毛嚢炎型皮疹に対してPityrosporumとの関連を念頭におくことは,臨床上,有益であろうと考えた.

Microsporum canis感染症の集団発生についで

著者: 滝沢清宏 ,   中川秀己 ,   関利仁 ,   渡辺晋一 ,   長谷川篤彦 ,   俵勝也

ページ範囲:P.685 - P.691

 昭和53年9月から54年2月迄に都内中野区立某小学校児童9名およびその家族2名にM.canis感染症の発生をみた.感染源は不明であったが,発端は昭和53年9月頃より頭部浅在性白癬からケルスス禿瘡へ進行した7歳男児であると推察される.

Trichophyton violaceum(glabrum)感染症—自験4例と本邦報告例の統計的観察

著者: 渡辺晋一 ,   滝沢清宏 ,   関利仁

ページ範囲:P.693 - P.699

 本邦では比較的分離頻度の低いTrichophyton violaceum(glabrum)感染症を4例報告した.症例1は38歳女,尼僧.幼少時頭部白癬の治療歴あり,頭部の‘black dot’ringwormとケルスス禿瘡,顔面,上肢,手指背の小水疱性斑状白癬.症例2は2ヵ月,男児,両頬,頤部の頑癬.症例3は31歳,女.SLEの治療中.右耳介前方の頑癬.症例4は47歳,女.頭部浅在性白癬と顔面,頸部,両上肢の頑癬,症例1と4よりT. violaceum,症例2と3よりT. glabrumを分離し,症例4では動物接種および逆培養に成功した.あわせてT. violaceum(glabrum)感染症の本邦報告例について若干の文献的考察を加えた.

放線菌症を疑った慢性化膿性副鼻腔炎

著者: 木村恭一 ,   金滝憲次郎 ,   大西泰憲 ,   吉原丘二子 ,   藤田甫 ,   白井求

ページ範囲:P.703 - P.707

 71歳,女子.歯肉部に初発し副鼻腔全体,皮膚にも拡大した慢性化膿性病変を報告した.患者は化膿性髄膜炎,肺膿瘍を合併し,全経過約2年で死亡した.臨床的には放線菌症を疑ったが,剖検によっても確証は得られなかった.病変部からグラム陰性桿菌と共に分離された嫌気性菌の意義について言及した.

Unilateral Nevoid Telangiectasia—その1例と文献的考察

著者: 須藤成章 ,   佐藤信輔

ページ範囲:P.709 - P.714

 Unilateral nevoid telangiectasia (片側性母斑様毛細血管拡張症)は稀れな疾患で現在までに27例の報告があるが,本邦では1例のみである.今回われおれは本症の1例を経験したので報告するとともに内外の文献より27例を集計し,本症の臨床的諸事項について総括した.自験例は52歳のアルコール性肝障害が疑われる男性で,17歳より飲酒歴がある.30歳頃より左上半身に限局するvascular spider様の毛細血管拡張が認められている.

種々の臨床像を呈した多発性毛嚢嚢腫症の4例—電顕所見も含めて

著者: 木村俊次 ,   生冨公明 ,   籏野倫

ページ範囲:P.715 - P.720

 大型腫瘤を多発した46歳男例,一部の皮疹が連珠状配列を示した20歳男例,黄色調皮疹を主体とした18歳女および23歳男例の計4例について報告した.うち2例は電顕的にも観察した.また過去18年間の教室例12例について主に臨床的側面から検討を加えた.その結果,黄色調皮疹はいずれも浅在性であること,また電顕的に嚢腫壁は毛嚢漏斗部下半から皮脂導管,脂腺を含めて,生長期毛の外毛根鞘に至る部分の構造に類似していることが見出された.本邦における本症の電顕的観察は今回が初めてである.本症の成因として毛嚢奇形説を支持した.

Subepidermal Calcified Nodule—頻回に続発した1例ならびに本邦報告例の集計結果

著者: 緒方明詔 ,   友田哲郎 ,   菊池一郎

ページ範囲:P.721 - P.726

1)11歳女児の典型的subepidermal calcified noduleを報告した.
2)本例は左膝蓋のみに16回も続発をくり返していることが特徴であった.
3)組織学的にtransepidermal eliminationの像が著明であり,佐藤32)のいうelimination dermatosisの1つといえる.
4) Transepidermal elimination現象を利用した針での表皮のはねのけ治療が著効を示した.
5)本邦48例を集計し,その特徴を述べた.

エックリン汗器官癌の2例—本邦報告例の統計的考察

著者: 荒川謙三 ,   小玉肇

ページ範囲:P.727 - P.733

 73歳男性の腹部に生じた潰瘍面を呈するeccrine porocarcinoma(EPC)の1例と,67歳男性の上背部に生じた広基有茎性の腫瘤を形成したeccrine ductocarcinoma(EDC)の例を報告した,今までに本邦で報告されたエックリン汗器官癌のうち表皮内汗管または真皮内汗管由来であることがほぼ明らかにされている21例に,自験例を加えた計23例について発生起源の違いによる相違点を考察した.その結果,性別,腫瘍発生年齢,転移面において差が認められた.すなわちEPCは性差なく比較的高齢になってより発生するが,EDCは男性に多く,比較的若年のときから腫瘍発生を見る.所属リンパ節への転移は両者ともに高率に認められるが,EDCはそれ以上の拡大が比較的進行しにくいという所見を得た.

蠅症を伴った皮膚平滑筋肉腫の1例

著者: 古川隆 ,   角田孝彦 ,   井隼彰夫 ,   高田伸弘

ページ範囲:P.735 - P.741

 66歳,男子.右大腿伸側の15×16cmの潰瘍を伴う腫瘤,潰瘍面より蛆を採取.光顕的に両端が鈍な紡錘形の核をもつ細胞が束状に増殖,異型性が強く核分裂像多数.電顕的に核は切れ込みが多く,比較的分化していると思われる細胞ではmyofilamentが豊富に認められた,右股関節離断術を施行したが,術後4ヵ月で肺などへの多発性の転移を起こし死亡した.なお,前述の蛆はヒロズキンバエと同定された.本邦における外傷性蝿症の報告としては第4例目である.

いわゆるVerwildertes Basaliomの1例

著者: 新井佳代 ,   斎藤義雄 ,   石川英一

ページ範囲:P.743 - P.747

 72歳,男性の左鼠径部に生じた基底細胞腫の1例を報告した.臨床的には結節潰瘍型で,初診時の組織像は充実型の定型的基底細胞腫であった.総量9,000Rの放射線治療後,約2ヵ月で腫瘍は瘢痕性治癒したが,約1年4ヵ月後に再発した.再発時の組織は,角化傾向を示し,いわゆるverwildertes Basaliomに相当する所見であった.

Epidermolysis Bullosa Simplex of the Hands and Feet(weber-Cockayne)の1例

著者: 村田譲治 ,   末次敏之 ,   藤沢龍一 ,   橋本謙

ページ範囲:P.749 - P.755

 4歳9ヵ月の女児に発生したepidermolysis bullosa simplex of the hands andfeet(Weber-Cockayne)の1例を報告した.高温多湿の夏季に両足底に小指頭大までの水疱が出没したが,冬季には水疱の発生がなかった.父方の家系内に3世代にわたって同症を認め,優性遺伝型式が認められた.組織学的には表皮内水疱が形成され,その水疱底は基底膜直上にあった.電顕的には基底細胞間とsuprabasals paceに裂隙が存在し,裂隙周囲の基底細胞にはtonofilamentの凝集が認められた.
 本症の本邦における報告はいまだ極めて数少なく,本邦において,明らかに常染色体優性遺伝型式をとっている家系内発生例としては,自験例が初めてと思われる.
 また本邦例4例について概括し,自験例の臨床的,病理組織学的,電顕的所見により,本症を手足のみに限局するepidermolysis bullosa simplexの1亜型と考えた.

免疫学的異常を伴ったWeber-Christian病の1例—螢光抗体法所見について

著者: 岩月啓氏 ,   田上八朗 ,   山田瑞穂

ページ範囲:P.757 - P.762

遅延型免疫反応低下と螢光抗体法により病変部に補体の沈着が検出されたWeber-Christian病の1例を経験した.PPD,カンジダ抗原,SK/SD,PHAの皮内反応は陰性または弱反応を呈し,DNCB皮膚感作試験は一旦成立したが陰転した期間もあり変動を示した.末梢リンパ球減少とEロゼット形成細胞の低率が認められた.螢光抗体法では,病変部血管壁,毛嚢周囲,真皮表皮境界部にC1q,C3の沈着を認め,ヒスタミン注射部には,血管壁にIgM,C1qの沈着がみられた.間接法では,患者血清中の流血抗体の存在を疑わせる所見を得た.
本症の病因として,細胞性免疫低下と並んで液性免疫の異常が関与している可能性がある.また,relapsing polychondritisとの病因的類似性もあると思われる.

Post-steroid Panniculitis

著者: 辻卓夫 ,   鈴木伸典 ,   金正義 ,   上田享

ページ範囲:P.763 - P.769

 2歳と3歳の男児に出現したpost-steroid panniculitisにつきのべた.両者共,ネフローゼ症候群で長期間(それぞれ約6ヵ月と12ヵ月),steroidを服用(プレドニゾロンに換算してそれぞれ3,000mgと1,720mg)した後,これを中止した時に全身各所に有痛性の皮下硬結が出現した.これらはsteroid再投与で消失した.組織所見では皮下組織に限局するリンパ球,組織球および異物型巨細胞の浸潤で,放射状裂隙様構造をもつ変性脂肪細胞またはこれを貧食する巨細胞もみられた,臨床検査成績では副腎皮質機能低下を示す所見以外に特に異常を認めなかった.電顕所見で,新生児脂肪壊死症と類似する所見がみられ,両者の類似性が示唆された.

Ear-Lobe Crease

著者: 中村雄彦

ページ範囲:P.771 - P.773

 耳介の耳垂の部位にしわのある人はない人に比較して心臓血管系の障害を高率に合併するという報告が近年欧米でみられる.著者は200人の皮膚科外来患者について耳垂のしわと高血圧との関係を検討した.その結果50歳台と70歳台で高血圧の人の耳垂のしわの合併率が高血圧のない人よりも高い結果を得た,欧米の文献を要約し若干の考察を加えた.

小児ストロフルスの統計的研究

著者: 中島静香 ,   水津礼子 ,   肥田野信

ページ範囲:P.775 - P.779

 ストロフルスは近年減少の傾向にあると考えられているが,その実態に関して全国の開業医の病院,大学勤務医を対象にしてアンケート調査を行い,外来における頻度,増減の有無,減少の理由等に関する興味ある回答を得た.また文献的にアトピー性皮膚炎や虫刺症との比較,及び鶏卵,チョコレート,殺虫剤等の生産高との比較検討も行い,ストロフルスの原因解明への資料としたい.結果は次のごとくである.
1)小児ストロフルスの頻度は本邦では著しく減少しており一般皮膚科外来では0.5%以下とみなされる.
2)地域差は日本国内ではほとんど差はなく,頻度の差はむしろ診断する側の要因によるところが大である.
3)皮膚科医と小児科医とで診断の率にさほど差はないが,大学と病院を併せた小児科でいくぶん高い傾向を示した.
4)過去70年間の経過を追うと,昭和40年以降の急激な減少がみられる.
5)小児に縁の深い食品(牛乳,鶏卵,チョコレート)等の生産並びに消費率とは逆の関係にあった.殺虫剤の増加に伴い減少するのは虫刺症との関係を示唆する要因になるかもしれない.

編集室だより

雑誌名の省略について

ページ範囲:P.726 - P.726

 最近,引用文献に掲載される雑誌名の略称は,1970年にAmerican National Standards Committceから出された「International List of Periodical Title WordAbbreviations」による略し方が,国際標準として,一般化してきました.皮膚科領域に関係のある言葉の例を下記にあげました.御投稿の際には,これらを参考にして下さい.

基本情報

臨床皮膚科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1324

印刷版ISSN 0021-4973

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